【REVIEW】At Uplink shibuya in search of blind joe death / Ryo Takematsu
これは、ドキュメンタリー映画『ブラインド・ジョー・デスを探して – ジョン・フェイヒーの物語』上映&LIVE(出演:武末亮、牧野琢磨)イベントのRyo Takematsuによる演奏の記録である。フェイヒーのライブ映像とインタビューで構成された映画の上映に続いて行われたRyo Takematsuによる演奏という構成は、静謐で美しい表現に包まれた見事な演出だった。
1. ENO
熱気と拍手に包まれた冒頭から一転して静謐で穏やかなアルペジオがはじまる。Eを基調にして、ゆったりとアルペジオで2つのコードを行き来する。John Faheyに同名のトラックがあるかどうかは分からなかったが、Brian EnoのMusic for Airportsにおけるピアノのアプローチに近い穏やかな幕開けとなった。
2. RED PONY
これはWine and rosesというタイトルでも知られるトラックで、マイナーコードで半音階下がりのベースラインが印象的な曲だ。John Faheyのオリジナルレコーディングと比較するとここでは、だいぶ穏やかな音で表現されている。前のトラックからのつながりと対比が見事だ。随所にはさみこまれたテクニカルな演奏もとても自然に楽曲を支えており聴き入ってしまう。
3. ON DOING AN EVIL DEED BLUES
穏やかな空気に吸い込まれるようなオーディエンスの暖かい拍手に包まれて演奏はひと呼吸おかれる。アームをつかったRED PONYの演奏の後ではある意味、必要な呼吸なのだろう。そして呼吸はそのまま自然にこの曲に流れ込んでいく。原曲ではJohn Faheyが中盤から幻影のようなスライドギターを披露するが、Ryo Takematsuの演奏はそのJohn Faheyのアプローチをそのまま受け継いでやはり見事なスライドギターを披露している。
4. IN CHRIST THERE IS NO EAST OR WEST
MCをはさんで、最後にJohn Faheyが多く取り上げたイギリスの賛美歌であるこの曲が紹介される。Ryo Takematsuはこの曲にはJohn Faheyの魅力が詰まっているという趣旨の紹介をしている。まさにその通りで、美しいアルペジオと幻想的で神話的なコード進行、繰り返されるシンプルなフレーズ、最後にゆっくりと楽章を締めくくるアプローチを含めてJohn Faheyの魅力を詰め込んだ構成だ。
演奏が終わると会場はあたたかな拍手に包まれる。それはゆっくりと拡がっていく感情を共有する空気そのものだ。シンプルな演奏とアプローチの中に、John Faheyの雰囲気を余すところなく織り込んだとても穏やかで真摯な演奏に仕上がった。
テキスト:30smallflowers(@30smallflowers)
2015.6.29 8:21
カテゴリ:REVIEW タグ:JAPAN, ryo takematsu