【REVIEW】Sleep well / There Is A Fox(Tanukineiri Records, Dear Ear Records)



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Hiro Makinoが拠点をカルフォルニアから京都に移して、あらためて活動をスタートしたThere is a fox。今回は自身のレーベルDear Ear RecordsとTanukineiri Recordsによる共同リリースとなった。Tanukineiri Recordsからのネット配信と合わせてフィジカルも製作中というこのEPはアシッドフォークとポストロックを行き来する浮遊感あふれる仕上がりになった。

1.Sleep well sea moon
ゆったりとしたアコースティックギターのアルペジオを包み込む電子音、深いリバーブの中で漂う2声の淡いヴォーカル、fonda500を少しだけ連想させるリラックスした質感。目を閉じてゆったりと身を委ねたい。後半、ノイズまじりのギターや細やかな電子音が時折混じってゆっくりとエンディングへと向かう作りが気持ちいい。さりげなく使われたストリングスや、明確なハーモニーなど、丁寧に紡いだサウンドが特徴的だ。

2.sunday
シンプルなモノラルのブレイクビーツと水の音、短いフレーズのループ、とても小さく精緻な空間を織りなすサウンドスケープは中間部で雨音がクローズアップする事でその奥行きをあらためて確認する事になる。ポストロック的なアプローチとサウンドスケープの偶然性をうまく引き寄せたインストトラックだ。

3.raincoat
再びアルペジオと淡いヴォーカルに彩られたこのトラックは、EPの中でもっとも単音のメロディーが全面に押し出された冒頭から、ブレイクをはさんで次第に音と音が重なり合うまでの流れ、そしてユニゾンでメロディーを補強するサビから間奏のファルセットのリフレインに向かう流れ、大きな二つのシーンが重なり合う構成がとても美しい。曲順もちょうど真ん中に配置されているが、このトラックにはEPのあらゆる要素が詰め込まれている。

4.morning clouds
ディレイでテンポをはかるエレピのコード進行、かすかに聞こえるSE、和声を積み重ねる電子音、細かく区切られたサイン波とノイズ、ナレーション、フリーにコードを支えるベースライン、すべてがバラバラに始まりながら一つの高みに向かってしだいに姿を重ねて行く。耳を澄まして音をの重なり合う様をしっかりと構成に結びつけた意欲作といえる。

5.bad day again
ギターが刻むコード、電子音がこれを支えながら淡いヴォーカルがはじまる。エンディングにふさわしいリフレインを重ねるミニマルな構成が美しい。このトラックでは何重にも折り重なったヴォーカルが印象的だ。一つのフレーズを次々と重ねて、それでいて重厚になり過ぎず淡さの残る質感がどこまでもゆったりと心地よく響く。

全体を通してヴォーカル曲とインストを交互に交えつつ、互いの要素を少しずつ相互に織り込む事で淡い雰囲気とポストロック的な質感が無理なく同居している。とても慎重に配置されたトラックと音使い、粗くカットアップされながらも構成の中に確実に組み込まれたノイズとリバーブにとけ込む淡いヴォーカル、アコースティックギター、すべての要素が有機的に組み合わさった作品だ。

テキスト:30smallflowers(@30smallflowers


2014.12.7 14:18

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