【INTERVIEW】『Lukewarm』 さとうもか & 入江陽
「さとうもかのフルアルバムがリリースされる」という一報は、私を興奮させるのに十分なビッグニュースだった。
SoundCloudで彼女の音源を見つけた有名なディガーたちを虜にしていったさとうもかのフルアルバム。しかもプロデューサーに入江陽を迎えての作品だという。
そして公開されたMV「Lukewarm」は、これらの驚きや期待値を大きく上回る衝撃だった。
思えば以前彼女にインタビューを試みたのは2年半前。
そこから彼女は音源のリリースや各所でのライブ、自主企画等様々なキャリアを積んでいる。
この2年半で彼女はどのように変わったのか、どのような環境でこの名曲を含むアルバムを作り上げたのかを聞いてみたいと思い、以前インタビューを行った縁でお願いしてみたところ入江陽も交えてのインタビューをさせていただける事になった。
死にそうになりながら頑張りました!
- –:アルバム『Lukewarm』のリリースおめでとうございます。前作から約2年ぶりのリリースとなりますが、今作はいつ頃から制作が始まっていたんですか?
- 入江陽:何かの用事で関西へ行った時に、岡山駅のスタバでアルバム作りのことを、もかさんと相談して、その頃からです!あれはいつだっけな……。
- さとうもか:たしかあれは7月くらいだった気が……!
それから、かなりまったりペースでポツポツと作っていたんですけど、12月くらいに「1月中に完成させよう!」って話し合って、1月に死にそうになりながら頑張りました! - –:今回のアルバムで「Lukewarm」「最低な日曜日」「Wonderful voyage」「April in my memory」はSoundCloudにデモバージョンが上がっていた曲ですが、他は新曲ですか?
- さとうもか:アルバムのために作ろうと思って作ったのは「old young」と「2つのわたし」だけで、他のはここ1年くらいで作ったものもありますし、「Hello,Valentine’s day」なんかは学生時代に作った曲な気がします!
- 入江陽:SoundCloudのバージョンが、デモというよりは作品として完成していて、そことの戦い(笑)がまず、自分の中ではひとつのハードルでした。戦いというより、それはそれ、これはこれ、という別の良さを作っていく作業ではあるのですが。
- –:タイトル曲の「Lukewarm」は、確か2017年5月に開催されたカフェオ猫と15の椅子でのライブで歌っていたと思うんですが、いつ頃できた曲なんですか?また、どういう状況でできた曲なのか聞かせてください。
- さとうもか:曲自体は1年前あたりに出来ました。その頃かなりスランプというか、音楽をあんまりしてない時期で……毎日普通にだらだら楽しく過ごしていて、何も頑張りたくなくて、幸せな生暖かいような日々に流されてばかりで、なんかホントだめだな……けど幸せだしこのままでいいや、なんて事を考えて出来た曲です。
- –:その辺りがこの歌詞にうっすらと流れる気だるさに繋がっているんですね。では「Lukewarm」というタイトルの意味も?
- さとうもか:その名の通り(?)生ぬるい 気だるいようなイメージです。
ぬるいお風呂に入ると、浸かってたら気持ちいいけど、出ると寒いので、ずっとダラダラと居てしまって動けなくなっちゃう みたいなかんじですかね……! - –:「Lukewarm」を始めて聴いた時に、もかさんのソングライティングがものすごく高いレベルに達したと思いましたし、実際にこのMV自体が公開10日ほどで既に12,000回近く(3/14現在)再生されている曲なのですが、曲ができた時の手応えはいかがでした?
- さとうもか:曲自体が出来た時は、久しぶりに曲できて嬉しいという気持ちだけだったのですが、ずっとデモ作りしていなかったし、久々にSoundCloudにでも載せよっかな、と思いデモを作った時に、偶然トラックをつけるというボタンを見つけたので、やってみたら 結構かっこいいかも!となりました。それが結構自分の中では新しい発見でした。
そしてこの曲を今回のアルバムに入れることになった時に、入江陽さんから Teppei Kakudaさんを紹介して頂き、めちゃくちゃカッコいいアレンジをして下さったので すごく感動しました! - 入江陽:もちろん、もかさんの音楽が素晴らしいのですが、Teppei Kakudaくんのサウンドアレンジ(今回はこの曲だけですが)や、ジャケデザインの牧野桜さんの絵、ビデオの小鉄さんや、ミックスの中村公輔さん。なにか彼らの作るもののエネルギーがうまく一点に集まったのか、想定よりたくさん再生されていて、とてもうれしいです。
- –:「最低な日曜日」は今回LUVRAWさんのfeat.という事で非常に驚いたんですが、こちらはどのような経緯で実現したんですか?
- 入江陽:LUVRAWさんが時々もかさんのSoundCloudをTwitterで紹介されていたので、参加いただけないか思い切ってメールで相談してみました!LUVRAWさんは、もかさんの大ファンだとおっしゃっていて、ワクワクする楽しい作業となりました。個人的なポイントとしては、LUVRAWさんが普段客演で参加される曲は、ビートがしっかり入った曲が多い印象だったため「今回はビート無しで薄い伴奏でいきたい」と思っていましたので実現してうれしいです。もかさんも自分もLUVRAWさんとは、CDのマスタリング日に初めてお会いすることができました。
- さとうもか:ちなみに、初めて会ったマスタリングの日は、LUVRAWさんがめちゃくちゃ美味しいドーナツを買ってきて下さり、みんなで食べました!!
わたしはCDで誰かと共演をした事がなかったので、ジャンルが全然違うLUVRAWさんとの共演は、自分でもビックリしたし、本当に面白くて、新しい発見が沢山あり、最低な日曜日という曲がLUVRAWさんのおかげで、さらに切ない曲に仕上がったと思います。 - –:「Wonderful voyage」は前作である『The Wonderful Voyage』のタイトルと同じ名前の曲名ですが、確かこの曲のデモトラックは前作リリース後に公開されていますよね。楽曲自体はいつ頃できたものですか?また、この「Wonderful voyage」というワードに対するもかさんの思い入れがあれば聞かせてください。
- さとうもか:この曲は、前作を知ってる人は、なぜ前作に入ってないんだろう?と思うと思うのですが、なぜかと言うと、ただ単に 前作のリリース直前に出来たので入れられなかった という理由です(笑)。
ですがこの曲はとても大切な曲で、編曲もオーケストラ風で、中々いいかんじに出来たと思っています。
Wonderful voyageというタイトルにしたのは、今までの色んな事を感じた人生を 素晴らしい船旅のようだったな、と感じたことがあったからです。 - –:入江さんがfeat.で参加している「殺人鬼」はこのアルバムの中でも異彩を放っている…入江さんのカラーが強く出た楽曲だと感じたのですが、この曲はいつ頃、どのように作られた曲になりますか?
- さとうもか:この曲も、1年前くらいに作りました!
2年前に実家から今の家に引っ越したのですが、隣の家の人が本当にまじでヤバくて、個人的に陰で”殺人鬼”と呼んでいるのですが、その人がきっかけで出来た曲です。絶対にわたしが音楽をしている事に気付いてないので、きっとこのCDを買うことは永遠にないだろう!と踏んで、今の家に住んだ記念に、この曲を入れようと思いました。
アレンジはほぼhikaru yamadaさんと入江さんにお任せしたのですが、想像以上の殺人鬼のサイコパス感が出ていて、サイコーすぎて送られてきた時に爆笑してしまいました! - 入江陽:この曲は、hikaru yamadaさんにサウンドアレンジで参加してもらいました。このアルバムはビートがある曲が少なく静かな曲が多いので、バランスとして騒々しい(笑)のが一曲あっても良いかなと思いました。yamadaさんのおかげで楽しい曲になった気がしております。
プロデュースする、と言いつつ「なるたけ何もしない」ということを目指しました(笑)
- –:お2人はどのような経緯で知り合ったんですか?また、今回入江さんのプロデュースが決定した経緯について聞かせてください。
- さとうもか:2.3年くらい前に、モナレコードのライブに出演したときの共演者に入江陽さんがいて、そこで知り合いました。
- –:確か私も見に行ったやつですよね。Portraitsや伊藤尚毅さんが出てた。確か…2015年の5月ですね。
- さとうもか:そうです!それから何度か共演があり、仲良くしてもらっていたのですが、ちょうど私が周りの同級生たちが就職してバリバリカッコよく働いてるのをみて、自分もそろそろ夢を見るのは程々にして、就職とかした方がいいのかな……なんてことを考えた本当に次の日に、入江陽さんから”MARUTENN BOOKS”という入江陽さんの作ったレーベル兼出版社からCDをだしませんか?というお話を頂きました!素晴らしいタイミングでした。
そこから始まったかんじです。 - 入江陽:そんなタイミングだったんですね!いま知りましたが、うれしいです(笑)。もかさんがCDを出せないと思っているというような話を聞いていて、いやいや、自主でもCD-Rでも、なんでも楽しくDIYで出せるよ!と(笑)。その後、音源が出来てきてから、P-VINEさんに企画を持ち込んだ形ですね。もかさんの音楽が面白く、とても美しいので、飽きずに楽しく続けて欲しい、という気持ちがありまして、それは自分のエゴかもしれないし、音楽をやめる人たちのことも全然否定するつもりはないのですが、飽きずに楽しく続ける方法があるかもしれないよ、みたいなことを伝えたかったのが、自分の一番の動機です。
- –:今回のプロデュースで、入江さんはどのような箇所に力をいれましたか?
- 入江陽:プロデュースする、と言いつつ「なるたけ何もしない」ということを目指しました(笑)。楽器を、もかさんではなくミュージシャンたちが主に演奏している前作アルバムと異なり、今作では、もかさんの演奏のクセや揺らぎの魅力を生かしていく方向にしたいと考えていました。もかさんからもらった演奏データのうち、要らないものを慎重に取り除き、どうしても追加が必要そうな場合だけ、追加してゆきました。
- –:ギターやピアノの生っぽさというか臨場感を大事にした曲が多いと感じましたが、やはりその辺りも意図的なものだったんですね。
- 入江陽:臨場感はとても大事にしました。ほとんどの録音素材は、もかさんが、もかさんの部屋で演奏し、もかさん自身が録音したものです。演奏している瞬間の雰囲気を最大限生かしたいと思っていました。
- –:今作の楽曲を一通り聴いていると古い映画音楽を聴いてるようなノイズが随所に入っていますが、やはりそのような効果を狙ってのものになりますか?
- 入江陽:偶然入っていたノイズでも、雰囲気が良ければ残し、あとは、曲に合ったムードを作る目的でエンジニアの中村公輔さんにミックスの際にテープノイズのような質感を足していただいたりしました。
- –:映画といえば、以前もかさんのインタビューで好きな映画についてうかがっているのですが、入江さんは映画はどのようなものが好きですか?
- 入江陽:両親の影響で映画は好きです。「冒険者たち」という古いヨーロッパ映画、SF映画「フィスス・エレメント」とか……。イーストウッドの「マディソン郡の橋」という恋愛映画は、わりと駄作扱いだと思うんですが、自分は大好きですね……。MARVELのアメコミ映画も好きです。挙げだすとキリがないです!最近はNetflixやHuluでドラマや映画を見すぎていて、目の疲れがひどいです(笑)。Huluで「バイス・プリンシパルズ」というふざけたコメディドラマをみてますが、これは、もかさんが教えてくれました。
- –:お二人で映画のお話とかされるんですね。音楽と映画以外の話だとどんな事話しているんですか?
- さとうもか:いつも何を話してるか忘れましたが、最近あった面白い話とか、何もないけどほんとにただ面白い話とかですかね。
入江さんは、とてもフレンドリーな方で、結構いつもギャグを言ってるイメージがあるような、ないような。 - 入江陽:主に、音楽以外のふざけた話をダラダラするのが、楽しいですね。
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『Lukewarm』/ さとうもか
2018年3/14リリース
フォーマット:CD
レーベル:P-VINE
カタログNo.:PCD-22405
価格:¥2,200(税抜)
【Track List】
01.old young
02.Lukewarm(1stリード曲)
03.あの夜の忘れ物
04 .最低な日曜日 feat.鶴岡龍(LUVRAW)(2ndリード曲)
05.2つのわたし
06.Hello,Valentine’s day
07.Wonderful voyage
08.ひみつ
09.殺人鬼 feat.入江陽
10.April in my memory
プロデュース:入江陽
作詞作曲:さとうもか
エンジニア:中村公輔
ゲスト参加:入江陽、鶴岡龍(LUVRAW)
ドラムス:秋元修(M-1、M-10)
編曲・演奏:Teppei Kakuda(M-2)、hikaru yamada(M-9)
デザイン:牧野桜
ミュージック・ヴィデオ:小鉄
A&R:今村方哉(P-VINE)
2018.3.14 15:00
カテゴリ:INTERVIEW タグ:hikaru yamada, JAPAN, luvraw, pop, teppei kakuda, かねこきわの, さとうもか, 入江陽, 小鉄
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