【INTERVIEW】onett『LAST ROMANTIC!』

子供の頃に無邪気に音楽を楽しみ、血肉となっている音楽を自分が今やりたくなり、つくりました
- –:M01「Stay Alive!」の「イラミナのロックに揺れてる」の「イラミナ」とはPuffのイラミナさんですか?
- onett: そうです(笑)イラミナさんのつくる音楽が好きなのと、この曲のメロディが降りてきたとき「イラミナ」という名前が一緒に降りてきたのでそのまま歌詞にしました!
- –:onettさんの曲に周辺の誰かの具体的な名前が出てくるのはめずらしいですね。イラミナさんというかPuff周辺とはお付き合いがあるんですか?
- onett: プライベートでの付き合いはまったくないんです。対バン経験があったり、Xでイラミナさんと相互フォローの関係で、2、3回メッセージ送り合ったり、そんくらい。ただ、Puffはライブのパフォーマンスだけでなく、さまざまなカルチャーをキュレーションした音楽イベントを開催したり、ビデオに遊び心があったり、総合的にかっこいいですよね。こないだライブに遊びに行ったとき名前を使うことを許可いただきました(笑)
- –:M11「誰もが帰りたい、その後」はE.P.『やさしさについて』に収録されている「誰もが帰りたい」の後日譚ですか?
- onett: そうです。「誰もが帰りたい」では登場人物が一抹の不安を抱えながらも幻想的な島に1人でたどり着くところで曲が終わりますが、「その後」ではその島での出来事と登場人物の心情が描かれています。
- –:onettさんは過去に膨大なライブラリがあると思うんですが、今回その中から「三井のために」のリメイクをしようと思ったのはどうしてですか?
- onett: ライブでガンガン演奏したくなったんです。超良い曲だし昔演奏しててめちゃくちゃ楽しかった記憶があるんですが昔の音源のアレンジは演奏パートがぐちゃぐちゃしていたので楽しいわりにライブ向きではなかったんです。それを最近思い出してリメイクしました!
- –:「慕情」(2020年)「やさしさについて」(2023年)というここしばらくの作品では大分落ち着きのある作品を作ることが多かった印象なのですが、今作ではまた勢い、疾走感のある楽曲が結構なウェイトを締めているように見受けられます。
この辺り、前作とのモードの違いみたいなものはありますか?
- onett: おっしゃるとおり前作まで落ち着きのある作品が続きました。この時期、シリアスで内省的なことを歌いながらも軽やかにバンドサウンドをのっける尾崎豊の1st『十七歳の地図』やBOØWYの『JUST A HERO』の音像に明確に影響をうけてつくりました。その2枚は子供の頃はスルーしていて大人になった自分が聴き返したときに、とても感動したのがきっかけでした。本作でやりたかったのは子供の頃の自分が影響うけた60年代のバブルガムポップ、チェンバーロック、70年代のパンク、80年代後半から90年代中頃のUS/UKインディー、日本のネオアコ、J-ROCK、J-POPでした。原体験というか子供の頃に無邪気に音楽を楽しみ、血肉となっている音楽を自分が今やりたくなり、つくりました。すると歌詞は置いといて、音像は必然的に煌びやかで明るく、快速的である曲が多くなりました。
- –:「歌詞は置いといて」というあたりについて伺いたいんですが、今作ではかなり歌詞で気になっている箇所があるのですが……厳密に言うと2017年の「いきなりヌーヴェルヴァーグ/新世界」頃からonettさんの歌詞にどきっとする/印象的なフレーズが多いと言いますか、onettさんがあまり社会や未来といったものを明るく捉えてないと伺えるようなワードが歌詞に印象的に顔を出すようになって、その傾向がこのアルバムでは強まってる気がするんですね。特に「Calcifer We Are」あたりで顕著だなと思うのですが。
その辺りについてonettさんご自身の意識としてはどうですか?
- onett: 言語化できるか自信ないですが説明を試みます!まず前提として自分(他人もそうであってほしい)の価値観、物事の判断基準は常時、仮固定された状態です。そのときその環境、自分に置かれた(あるいは自認した)立場により相対的に変化します。そこで、いつ頃からなのかは思い出せませんが(『いきなりヌーヴェルヴァーグ/新世界』のときにすでに意識していたかもしれません)、少なくとも『エスプリ』から本作までは歌詞を書くとき、社会や未来に対して「そこに諦念がある」「それは諦念でない」という微妙に相反していない2つのスタンダードが常にあり、その2つがせめぎ合うことで複雑な(支離滅裂と言ってもいいかもしれない)内容の歌詞になります。両者はバランスを取ろうとしているわけではなく、ねじれながら形づくられるため、社会や未来に対して悲観的に見える曲が生まれるのかもしれません。
- –:ありがとうございます。「諦念」というワードはわかりやすかったです。
諦念を前提としながらもおそらく一緒にいる誰かと生きていこうとするというストーリーをonettさんの曲には感じたりしています。
個人的な質問になってしまうんですが、今作を最初に聞かせていただいた時に最初に惹かれた曲が「Misery」だったんですが、この曲はどのぐらいのタイミングでできた曲ですか? - onett: 「Misery」はアルバム制作の終盤のほうで2024年の11月頃ですね。ちょうどその頃にフランス映画『ラ・ブーム』を見たのがきっかけで生まれました。
- –:今回のアルバムでonettさんが特にお勧めしたい曲を3曲挙げるとしたらどれになりますか?
- onett: うわー難しい。2曲は決まります。最初にできた「ドレスたち」と「Y2K」ですね。あとの1曲はその日の気分によってですね。「エブエブ(アルバム・ヴァージョン)」だったり、「誰もが帰りたい、その後」だったり、「ドライブ」だったりですね。
- –:「ドレスたち」と「Y2K」マストなんですね。この2曲についていつ頃のタイミングで出来た曲か教えてください。作られたきっかけがあればそちらもお願いします。
- onett:「ドレスたち」と「Y2K」が生まれたのはまだ日が上りきっていない涼しい夏の朝、都知事選が終わって数日経ったときくらいですかね。朝起きて、コーヒーを飲むためにお湯を沸かして、その間何も考えなしに窓辺に置いてある電子ピアノの前に座って、適当にぽろろんと弾いていたらメロディを思いついたんです。普段は働いているときや誰かと喋っているときなど”ストレスを感じながら活動していて、その活動への集中力が続かないとき”に雑念のようにメロディが湧き出て、そのメロディを帰宅したときに覚えていたら曲におこすのが私の作曲のきっかけのほとんどなんですが、この2曲のメロディは自分の頭のストックになく、この上なくリラックスした状態で生まれたメロディでした。歌詞についても苦しまず、すらすら言葉が出てきたのです。こちらは言葉のストックというか鬱憤があったからすらすら出てきたのでしょう。
編集で使う音色もスムーズに決まったし録音もうまくいった。「Y2K」のボーカルトラックなんかは仮歌のつもりで簡単にセットできるダイナミックマイクで録ったら良いテイクだったのでそのまま使いました。不思議な体験でした。苦しまずに鬱憤をきれいに吐き出すことができたからお気に入りの曲なんだと思います。
- –:先日アルバムアートワークが発表されましたが、こちらの制作にあたってイラストレーターのたざきたかなりさん、デザインの嵯峨山諒さんとのやり取り等はありましたか?合ったとしたらどのようなやり取りだったか聞かせてください。

- onett:本作のイラスト担当のたざきさん、デザインを担当してくれたcarpoolの嵯峨山さんとの出会いもPASSiON RECORDSのイベントがきっかけでした。その日の会場でたざきさんのZINEを買ってお話をしたときcarpoolの作品「Come&Go」のジャケットを描いた方だと知りました。

『Come & Go』/ carpoolアートワーク
- 「Come&Go」のジャケットはとても印象的なイラストだったのでずっと覚えていたんです。その後、私の家族が店主をつとめる書店「ゆとぴやぶっくす」にたざきさんが遊びに来てくれたり、私もたざきさんが
PARK GALLERYというギャラリーの方と行なってるPodcast番組のイベントに遊びに行ったり、交流は続きましたが、2024年の初夏に西武池袋本店で行われたたざきさんの個展を見に行ったときに原画の迫力に心が躍動し、そのときはじめてonettがアルバムをリリースする際はたざきさんにイラストをお願いしようと思いました。
たざきさんがオファーを引き受けてくださった数日後にたざきさんに浦和に来てもらい、ノーアイデアの状態からアートワークについて話し合い、いろんな連想や脱線を繰り返しながらジャケットにあるような「ビルの立体駐車場と、浮遊する車」のイメージをつくっていきました。デザイン担当の嵯峨山さんについてはたざきさんを通じてデザインのお仕事をお願いすることにしました。お願いする前に嵯峨山さんがデザインを担当されていた作品をいくつかリサーチしました。それぞれの発注元と嵯峨山さんの指示、意向、関係性がわからないため嵯峨山さんらしさがどのへんに出ているのかを見出すことはできませんでしたが、どのデザインもユーモアとアイロニーが同居していて、カラーもポップですがショッキングではなく、平熱を装った静かな情熱のような印象があり、おそらくここに嵯峨山さんらしさがはみ出しているのだろうと思い、それが私の好みのデザインだったのでお願いしました。私たち3人は幸運にも同世代であったため、CDについて見てきたことに共通の認識が多く、本作のアートワークは少ない説明と確認だけでスムーズに進行し、あまり苦労しませんでした。また、お互いがお互いをリスペクトしつつも、彼らのアウトプットには確かな誇りを感じました。2人に上げていただいた試案の数々は私を驚かせました。必ず新たな発想、レイヤーとなるものを持ってきてくれたのです。私のフィードバックもおそらく彼らが想像していた部分と異なる点があり戸惑わせてしまったところはあると思います。そして、アートワークが佳境を迎える頃には私たちより少し年上の高橋元希さんも協力していただけることになり、一体感を持って制作は進みました。私たち4人のやりとりはほとんどオンラインのチャットでのやりとりでした。しかし、あの制作期間中、私たちは確かに4つ首を持ったドラゴンとなり、せめぎ合う炎の中で気合の入ったCDが生まれたのです。
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『LAST ROMANTIC!』
/ onett
2025年2/28リリース
フォーマット:CD
レーベル:PASSiON RECORDS
カタログNo.:PSON-045
【Track List】
01.Stay Alive!
02.ドライブ
03.真・三井のために
04.Losing
05.Calcifer We Are
06.追憶の調べ
07.Last Romantic!
08.事物的
09.Misery
10.エブエブ(アルバム・ヴァージョン)
11.誰もが帰りたい、その後
12.結ぼれ
13.喜びの朝、アゲイン
14.ドレスたち
15.Y2K
Amazon
【初回特典】
『LAST ROMANTIC!』ジャケットイラストステッカー
※特典はなくなり次第終了となります。
【レーベル直販&ライブ物販】
初期活動秘蔵音源CD-R『ポップパンク期のオネット』
01.恋に恋した日々は終わった
02.彼氏になってよ
※特典はなくなり次第終了となります。
PASSiON RECORDS
7周年party『Thanks!』
2025年2/23(日)吉祥寺WARP&WARPスタジオより、onettの8th New Album『LAST ROMANTIC!』の先行発売が決定
吉祥寺WARPフロア内のonett物販ブースにて販売開始されます!
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PASSiON RECORDS
7周年party『Thanks!』
2025年2/23(日)吉祥寺WARP&WARPスタジオ
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SHOP:HALO HALO RECORD / tunelessmelody bookstore / たざきたかなり / megumi yamazaki / ニシダキノコ / 大橋裕之 / 夕暮宇宙船 / まるちゃん食堂 / 寺田食堂
Open 13:30 / Live Start 14:00
Entrance ¥4,000(+1d)
※再入場自由(リストバンド確認あり)
チケット予約:
Tiget
PASSiON RECORDS 公式HP
PASSiON RECORDS 公式Twitter(現X)
※マスクの着用は個人のご判断となります
2025.2.21 12:00
カテゴリ:INTERVIEW, PU1 タグ:JAPAN, onett, passion records, pop, rock