【INTERVIEW】壊れかけのテープレコーダーズ 小森清貴インタビュー『楽園から遠く離れて』

壊れかけのテープレコーダーズ アーティスト写真


「こんなにも酷いことが現実に起こるのか?という位酷い時代」だと、常日頃ずっと思っており、それが日々加速/増幅しているように捉えております

–:今作は「2020年代という時代が表出した作品」と語られていましたが、「2020年代」は小森さんにとってどのような時代だと捉えていますか?
小森:あくまで個人的かつ、ことばを選ばずの率直な所感を述べると、「こんなにも酷いことが現実に起こるのか?という位酷い時代」だと、常日頃ずっと思っており、それが日々加速/増幅しているように捉えております。

そう思われない方には不快に受け取られるかもしれない回答で大変申し訳ないですが、本質問は「私」にとっての2020年代という捉え方という主旨であった為、「私」はそう捉えております。
–:M01の「lost paradise」ですが、先ほどの制作時期の表を見るとバンドアレンジが完成してからライブでの初披露までに一番間が空いています。こちらはどのような理由からでしょうか。
小森:これはですね、元来2022年8月に予定されていた私達の15周年記念ワンマンライブで初披露するつもりで制作を進めてたのですが、その月に遊佐と私が立て続けにコロナに罹患してしまい、かつ私の自宅待機期間がワンマンの日と重なってしまい延期となり、披露の機会が後ろ倒しになった為です。その後の月のライブ等ですぐ披露することも出来たのですが、この曲への想い入れや曲の特性からワンマンで披露したく、延期後のワンマン(2023年2月)まで披露を見送りにしていました。



–:M08「夢の、終わりの、そのあとで」で巨大な「断絶」「違和」が現実化しているような気持ち……現実化しているというよりは漠然としていたものが可視化されているように感じたのですが、この楽曲が生まれたバックボーンについてお聞かせください。
小森:2020年のいつだったかは失念したのですが、多分緊急事態宣言の状況下で、人がいなくなった街を歩きながら、ある日遊佐(Vo./Org.)が私にこう言いました。

「今までの時代が実は本当は夢で、今起こっていることが本当の現実の姿だったのではないか、と思うことがある」

本人が覚えているかは定かではないですが、この遊佐のことばがずっと私の中で残っており、そこから楽曲のイマジネーションが沸いたのを覚えています。

「漠然としていたものが可視化」というのは、確かにそうですね。
的確な指摘のように思えました。

奇しくもコロナ禍によって表出してしまった、これまで漠然としたベールで覆い隠されていた世の中や人間の本当の姿のようなもの(多分、その多くは残念ながら悪い意味を帯びていたと思います)の可視化という状況が、この楽曲のバックボーンとなったのかもしれません。



聴いてくださった方々が感受した想いの総体のようなものが、最終的にその作品の本当の姿になると思っています

–:今回のアートワークですが、歌詞カードを広げると表1以外の部分が見えてイラストレーションの全容が確認できる形になっています。こちらの制作がどのようなやりとりで出来上がったかを聞かせてください。
小森:まず前提で、今作アートワーク(絵)を担当頂いた森千咲さんとの出会いからご説明させて頂きます。

森さんとの出会いは最近で、昨年2023年9月に行われた壊れかけのテープレコーダーズとほたるたちの共同企画「懐中電灯の月」(w/割礼)のイベントフライヤーを描いて頂いたことがきっかけで出会いました。(尚、「すごく良い絵描きがいる」と森さんの起用を提案してくれたのは、ほたるたちの松尾翔平君でした)

実際完成したイベントフライヤーが本当に本当に素晴らしく、その後もっと森さんの作品を観てみたいと思い個展にも足を運んだり、また森さんの方でも壊れかけのテープレコーダーズのライブにお越し頂けたりして、親交が深まりました。

アルバムの録音自体は2023年7月から開始しており、その時点ではまだ私達の中でジャケットの明確な方向性イメージはついていなかったのですが、録音が完成に近づいていく時期と、森さんの作品に触れた時期とが交差し、「この人しかいない!」という神の啓示的なものに導かれ、今作のアートワーク制作の依頼をさせて頂くに至りました。

制作工程的には、マスタリングまで全て完了した完成型アルバム音源を森さんに聴いて頂き、特にこちらからどういう絵を描いて欲しい等の指定はなく、森さん一任で思うがままを描いて頂きました。

結果、出来上がったのが手にとって頂いた通りの超大作で、そこには間違いなく私達が『楽園から遠く離れて』というアルバムで描きたかったものが(あるいは、それ以上のものが)絵画となり現出しており、初めてその仕上がりを見た時、心の底から感動で震えたことを覚えています。

また、少し本題と話が逸れますが、ダダオさんによる全体のデザイン構成や、盤面に使われている船木和倖さんによる写真も素晴らしいので、上記森さんの絵も含めてフィジカル(CD)を手に取って頂けたら嬉しいですね。

時代錯誤と受け取られるかもしれませんが、質問文に記載頂いた「歌詞カードを広げると表1以外の部分が見えてイラストレーションの全容が確認できる形」のように、フィジカルならではの想いが込められてた装丁になっていますので。

配信だとどうしても「表」しか見えてきませんが、実はレコード/CD作品のアートワークとは「表」ではないところに、物語があったりするんですよね。
–:まだリリースイベントが残ってはいると思いますが、とりあえずリリースが終わった今の段階での感想や手応えはいかがですか?
小森:感想としては、これは新譜リリースの際は毎回思うことなんですが、ようやく鳥を籠から放てたなと。レコード作品として他者に触れられる環境下に放つことで、ようやく楽曲達が自由になれたと感じています。そして自分たちが込めた想いを超えた領域にある、聴いてくださった方々が感受した想いの総体のようなものが、最終的にその作品の本当の姿になると思っています。なので、これから本当の姿での作品が生まれゆくのだと思っています。

手応えについては、ネット上/リアル問わずで真摯に作品を聴いて頂けたんだなあという感想に沢山出会えたので、「手応え」というとちょっと大袈裟なんですが、作って良かったなという達成感を感じることが出来ました。

因みに1つだけ感想を紹介させて頂きたく、Xで以下のような投稿がされていたのですが(面識は無い方です)こんなふうに受け止めてくれた方がいたなら、例えそれが世界の中でたった一人であっても、作品が生まれてきたことに意味があっただなと思っており、そう考えると「手応え」というものも、あったのかもしれません。

素晴らしいロックを聴くと「これは俺だけの為に存在する曲だ。俺だけに向けて歌ってくれているんだ」と感じる。人は誰もがみんな何も持ってなんかいないし、いつだって人は1人だと気付かせてくれる。音楽と自分の間には遮るものが何もない。壊れかけのテープレコーダーズの新譜を聴きながら思った。


感想を届けてくれた方々、また言葉にせず胸の内にだけ留めている方々も、『楽園から遠く離れて』を聴き何かをこころに感じ取ってくれた全ての方に感謝を。ありがとうございます。

インタビュー/テキスト:sabadragon


『楽園から遠く離れて』壊れかけのテープレコーダーズ アートワーク
『楽園から遠く離れて』
/ 壊れかけのテープレコーダーズ
2024年4/3リリース
※2024年3/22のリリースイベントより先行販売開始予定
フォーマット:CD/デジタル配信
レーベル:HALF-BROKEN TAPERECORDS
カタログNo.:HBTR-004
【Track List】
01. lost paradise
02. 10年前、10年後
03. 梢
04. The Waste Land
05. ai
06. ノスタルジア
07. グロリア
08. 夢の、終わりの、そのあとで
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ディスクユニオン
マルチリンク

【クレジット】
全作詞作曲:小森 清貴
全編曲:壊れかけのテープレコーダーズ

録音・ミックス:三木 肇 (M&N録音サービス)
at 調布 SUN MUSIC STUDIO、西荻窪 UEN  2023 July – November
マスタリング:狩生 健志

アートワーク:森 千咲 
デザイン:dadao
写真:船木 和倖




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2024.5.10 12:00

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