【INTERVIEW】Theムッシュビ♂ト (1/2)
Theムッシュビ♂ト。
大阪を中止として活動するシンガーソングライターにして、「J-POP」を中心として扱うネットレーベル「ポジティヴレコーズ」主宰。
他にも近年ではロックバンド「BaaBooFAZ」のキーボーディスト、女性シンガー「沙糸しろたま」のプロデュースやアイドル「吉野なお」への楽曲提供等、その活動は多岐に渡っている。
その彼が、アルバム「キラーチューンズ」以後初となるEPのリリースを控えていると聞き、インタビューを申しこんでみた。
フライングEP: we can(not)fly』
1.ソニックウェーヴ/Sonicwave
2.翼をください/You Can (Not) Advance
3.スタンドアローン/Stand Alone
http://mayoware.seesaa.net/article/414009048.html
アートワーク:中川一
つけてみそかけてみそ
EP『フライングEP: we can(not)fly』
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sabadragon:
おまたせいたいたしました。
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Theムッシュビ♂ト:
いえいえ!
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sabadragon:
まず簡単な自己紹介をお願いいたします。
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Theムッシュビ♂ト:
TheTheムッシュビ♂トと申します。シンガーソングライターです。
トラックメーカー、ネットレーベル「ポジティヴレコーズ」主宰、ロックバンド「BaaBooFAZ」のキーボーディストという顔も持っていますが、この名義で活動するときの第一義はシンガーソングライターです。
好きなアイドルは菅谷梨沙子さん(Berryz工房)です。よろしくお願いします。
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sabadragon:
まずは今回のEPの完成おめでとうございます。
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Theムッシュビ♂ト:
ありがとうございます。
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sabadragon:
今回のEPは、迷われレコードさんからのリリースとの事ですが、この制作はどの辺りからスタートしたものなんですか?
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Theムッシュビ♂ト:
2013年秋にCDアルバム「キラーチューンズ」をリリースして、そこから暫くは燃え尽きじゃないですけど、CDを売ることを考えてて新作に歩を進められなかったんです。
その間に、自分がプロデュースした沙糸しろたまの「君に届け」をリリースしたり、BaaBooFAZのレコーディングとリリースで動いたりしていましたが、TheTheムッシュビ♂ト本体は「菅谷梨沙子レコーズ」からの企画盤「La Puclle/Le Soleil」しかリリースしてなくて。
でも、そうしているうちにどんどん停滞してきて、メンタル的にかなり落ち込んで来てたんです。それもあって、7月頃、心機一転する為に「今から新しいアルバムを作ろう!まずはリードトラックをネットリリースしよう!」と決めて着手しました。
迷われレコードさんからのリリースにしたのは、今までも沢山リリースさせて頂いたし、自分の原点の一つであるレーベルなので、そこからまた始めたかったんです。
単純に迷われレコードさんが好きですしね(笑)
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sabadragon:
では今回のEPは新しいアルバムのリードトラックという立ち位置という事ですね。
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Theムッシュビ♂ト:
そうですね。
「ソニックウェーヴ」がアルバムのリードトラックです。
アルバムは今年中のリリースを目指して作り始めていますが、「ソニックウェーヴ」ができるまでがほんとに長かったです。
すぐにできると思って、その時点で中川一さんにジャケットイラストをお願いして、7月中にはジャケットが上がってたんですが、結局かなり寝かせてしまいました。
「ソニックウェーヴ」が実際に楽曲として完成したのは10月でした。
そこからミックスやマスタリングなどが仕上がったのが、エンジニアを担当したミンカパノピカ鋭司さんのスケジュールの関係とか色々あって、先月頭になったんですけど。
この曲名は、一番最初に作ったバージョンが「音より速く君の元へ」みたいな歌詞で、そこから取ったんですが、そこから完成までに3回くらい、歌詞もメロディもアレンジも全部消してリセットしています。
なかなか納得できるものにならなくて、その間は本当に苦しくて、これができなかったら音楽辞めようってとこまで思い詰めたり。
それで、10月に完成したこのバージョンについてもそのリライトの痕跡として「ソニックウェーヴ」という曲名を残したんです。
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sabadragon:
以前の楽曲と比べてもかなりモードチェンジしているので大変だったと思います。
そのモードチェンジのお話になりますが、今までの活動を見ていると初期の頃の音源から比べると々ポップな方向へと向かっていましたが、ここに来てその方向性が加速してると感じました。これは意図的なものでしょうか。
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Theムッシュビ♂ト:
ありがとうございます。
ここ2年くらいで「ポップミュージックであること」についてかなり自覚的になりました。
ごく初期のスカムな方向性は、今にして思うと単なる逃げでした。
覚悟と信念を持ってそういう音楽をしているアーティストの方々は尊敬しますが、自分にはそういったものがなかったなと今は思います。
それと、やっぱり聴く人が楽しくなったり明るい気持ちになったりするもので在りたいなと思っていて、今回の作品では復活第一弾ということもあり、やりすぎなくらいポップにしようと思いました。
その辺り、Berryz工房にハマったことも一因かと思うんですが、やっぱりわかりやすいポップミュージックっていいなあと。
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sabadragon:
「やりすぎなくらいポップ」は名言ですね(笑)
そのあたりは「ソニックウェーヴ」のイントロの部分から既に漂ってきています。
そのような方向に決定付けたものは何だと思われますか?
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Theムッシュビ♂ト:
ありがとうございます(笑)
簡単に言えば「開き直り」じゃないかと思います。
僕はラブソングばかり作ったり歌ったりしているんですけど、そんなスタイルでありながら、昔から「恋愛弱者」っていう意識が強くて、恋をする度に自分が気持ち悪かったり、「相手にされてない感」を感じたり、「どうせ失恋するに決まっている」って思い込んだりして、いつも勝手に惨めな気持ちになっていたんです。
今まで一度も自分から好きになった人と男女の関係になったことがないですし。
前作「キラーチューンズ」のリードトラック「FIT」は「男は須く大事な人の王子様にならなければいけない」という歌詞で象徴されるように、そんな自分が「好きな人の為にカッコ良くなろう」と一歩踏み出した曲で、当時としては大きなブレイクスルーだったんですけど、そこから時間も経って、結局「カッコ良くないといけない」という意識が自分を縛って、余計に惨めになってしまったんです。外見とかだけの話じゃなく。
そんな中、EditerでDJの3106さんに勧められた清 竜人さんの「MUSIC」を聴いたんですけど、このアルバム、男性ボーカルで電波ソングとかアイドルソングみたいなのやってて、凄く気持ち悪いんですよ。褒め言葉ですけど。でも、凄く泣けるというか芯から救われたというか。今回の作品の音楽性の種明かしみたいな話なんでこの話はあんまりしたくなかったんですけど(笑)、「キモくていいんだ」と開き直って、カッコ付けることもやめようと思ったきっかけがこのアルバムだったんでそこは正直に白状します(笑)
それでまあ、「#ムッシュキモい」を経て「許してにゃん!」と言えたっていうか。
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sabadragon:
なるほど。
理想的な自身ともっと自然な状態の自身のギャップを埋める作業とでもいうんでしょうか。
そのせいかもしれませんが、今作はムッシュさんの作品の持つ「内面の吐露」というテーマ性を保ってはいるんですが、従来の詞との大きな違いとして、明確な対話の形式になっていますね。
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Theムッシュビ♂ト:
そうですね。
「FIT」が「理想の提示」だとしたら「ソニックウェーヴ」は「自然な状態の肯定」ですね。
「キモくて良いんだ!」ってブレイクスルーしたときに、以前のような、レトリックが多くて難しい言い回しを多用した歌詞って一見カッコ良いけど相手には伝わりにくいなと気づいたんですよ。
「キモくて良い」ってことは「素のまま相手にぶつかっていける」ってことで、それが「対話の形式」になることを促したのかなって思います。
できるだけ素の言葉で相手に伝えよう、「自分にしかわからない言い回し」は極力避けよう、と。
というか、この曲の歌詞については作詞したって感覚がないです。好きな女性への想いを文字数も何も考えず思いつくまま勢いで書いただけです(笑)
「私信」としてのEPリリース
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sabadragon:
「好きな女性」って部分に突っ込んでいいですか?(笑)
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Theムッシュビ♂ト:
はい(笑)ちょっと怖いですけど、話の流れ的に外せないですよね。
ちなみに、片思いです(笑)恋人とかでは全くないです。
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sabadragon:
ここまでのインタビュー内容を総合してざっくりと言うと今回の「ソニックウェーヴ」は「好きな女性」への気持ちと彼女に対するパーソナルな語りかけ…という楽曲という事でよろしいですか?
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Theムッシュビ♂ト:
そうですね。
EP全体がそうですけど、「ソニックウェーヴ」は特に「私信」という意味合いが強いです。
勿論、それをリリースしているので「私信という体のエンターテイメント」として捉えて頂いても構いません(笑)
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sabadragon:
ただ、その「私信」の部分は今までにない「ポップ」な部分に明確に貢献してますね。
先ほどのお話とも絡みますが、「あるべき」である視点から聴き手というものを上手に認識した強みでしょうか。
J−POPというテーマ性から言えば今までで最もそのジャンルにコミットした作品かと思います。
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Theムッシュビ♂ト:
ありがとうございます。
うーん。多分ですけど、「好きな人に聴いて欲しい」という気持ちに特化して、作品の焦点を今までにないくらい絞り込んだことが功を奏したんじゃないかと思います。
「誰に一番に聞いて欲しいか」って自問して、その「その子にだよな」って自答して。
歌詞もメロディもサウンドの方向性も全部「その子が気に入ってくれて、聴いたときに笑顔になるもの」を志向したんです。
勿論、実際はドン引きかもしれませんし、音楽は「人の心を癒したり元気付けたりするもの」であると同時に「暴力装置」であるとも思ってて、それを相手に向けてしまうことに対して一抹の不安というか怖さもありますけど。
ちなみに、ドン引きで思い出したんですが、「ムッシュキモい」という台詞はインディーアイドルとして活動中の吉野なおさんにやって頂いたのですが、その録音について「(ムッシュを)キモいと思ってないから難しい」と言われたので、自分のガチでキモいエピソードをこっそり教えました。
そしたら、「それはほんとにキモい」ってドン引きされて、結果「できました!」と(笑)
あと、曲中に唐突に「つけてみそかけてみそ」のCMを入れたのは、その子が聴いたときクスッとでもしてくれたらいいなあと(笑)
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sabadragon:
その「つけてみそかけてみそ」は確か製造販売元にコンタクトを取られたとうかがっているのですが、その辺のエピソードについてお願いします。
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Theムッシュビ♂ト:
「つけてみそかけてみそ」は愛知県を中心に販売されている調味料で、愛知では知らない人はいないくらいメジャーな存在なんですが、その製造販売元であるナカモ株式会社様に商標使用許諾を求めたところ快く許諾して頂きました。
この「つけてみそかけてみそ」は僕と「好きな人」との個人的なエピソードというか、まあそんな感じのアイテムなんですけど、そういった極私的な「おふざけ」にオフィシャルな「お墨付き」が付くことで、ある種の「本気度」をアピールできるかなと(笑)あとは、そこからCMソング…なんて展開も妄想しました。完全に妄想ですが、終止形で終わるメロディなので歌詞を改変したらほんとにCMソングっぽくなります!!(笑)
ちなみに、「許してにゃん」はももちこと嗣永桃子さんからの許諾を貰い忘れてました!不覚!
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sabadragon:
実際にCMソングとして提案してみるという予定は?(笑)
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Theムッシュビ♂ト:
反響を見てから、ですね(笑)
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sabadragon:
インディーから企業タイアップというテストケースになると面白いと個人的には思いますね。
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Theムッシュビ♂ト:
そうですね。
そう言った意味でも実際にタイアップしてみたいです。
どう道筋を作ったらいいかわからないので、ちょっと考えてみます。
商標使用許諾を得た時点で道筋の第一歩を歩み始めてる感もありますけど(笑)
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sabadragon:
上手くいくことを心から願いますね(笑)
その部分に関して曲中に語りが入る事に80’sポップス的なものを感じますが、これは80’sポップスへのオマージュなのでしょうか。
また、そのあたりのポップミュージックに思い入れなどがあれば。
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Theムッシュビ♂ト:
あ、それは言われて初めて気づきました(笑)
80年代ポップスと言うより、意識したのはミュージカルですね。
ただ、思い入れや詳しい知識は乏しいですけど、やっぱり黄金期のポップスの、完成度の高いエンターテイメント性は目指したいところです。
あの頃のポップスは、歌手も作詞家も作曲家も一流の職人だって思いますし。
>>「【INTERVIEW】Theムッシュビ♂ト (2/2)」に続く
2015.2.15 1:54
カテゴリ:INTERVIEW タグ:JAPAN, theムッシュビ♂ト, 迷われレコード