【INTERVIEW】 fraqsea『Flowing Ice Prism』

2009年から作品発表とライブパフォーマンスを行ってきたAyaによるソロプロジェクト fraqsea(フラクシー)、近年では2020年6月にデンマークと日本のメンバーからなるユニットS.N.Eを始動させ初の全曲日本語歌詞で9曲を収録したデジタルアルバム『Shiroi Yuki』をリリースするなど精力的に活動、ソロとしては2016年1月の2ndアルバム『Star Cocktail』以来6年振りとなる3rdアルバム『Flowing Ice Prism』に関してご本人に話をうかがった。

今回のアルバムは、雪や氷など冷たい音世界をコンセプトとしました

–:まずはリリースおめでとうございます!『Flowing Ice Prism』はfraqseaさんのこれまでリリースされてきた様々な作品の集大成的な側面も大いに感じられ、全編に渡り凝縮された素敵な楽曲が詰まっていますね。まずはfraqseaさんの作曲を含む創作への発想の源的なところを教えて下さい。
fraqsea:ありがとうございます! そう言っていただき幸いです。
2年前にパソコンやDAWを一新してから、何となく手付かずだったのですが去年の3月辺りからまた曲作りをしたいなと思うようになり、約半年かけて今回の収録曲を完成させました。新たな気持ちで制作に取りかかれたことが私の中で大きいです。

制作する時はいつも、自然の情景をコンセプトにしています。自然には普遍的な美しさを感じるからです。
葉が風に揺れている様子、日差しが雲間から降り注ぐ情景にイメージを巡らせたり、美しい映画、絵画などにインスピレーションを得ています。



–:本作『Flowing Ice Prism』で聴いて頂きたいポイントを教えて下さい。また全体でも個別でも何かコンセプト的なポイントはありますか?
fraqsea:今回のアルバムは、雪や氷など冷たい音世界をコンセプトとしました。
ですが、M6″Yuragi”は春の暖かさをイメージしています。そういったあたたかみのある音も感じていただけたらと思います。

それとリズムを用いた楽曲が多いので、今までのアンビエントな要素とはまた違ったスタイルをアプローチできたのではと思います。歌においてはキャッチーなメロディーであることを心がけているので、やはり歌を聴いていただきたいですね。



–:アルバムタイトルの『Flowing Ice Prism』はとても素敵な響きに感じます。このタイトルにした意図や思いといったところを教えて下さい。
fraqsea:ありがとうございます。これは自分の好きな言葉を繋いだ造語です。1つのことにあんまり固執せず、風の赴くまま進んでいきたいという思いと、Ice Prism=氷がキラッと光るといった、一瞬の美の尊さという意味合いを表しています。

“月”という名のつく楽曲には名曲が多いなと感じています

–:では幾つかの収録曲についてお聞かせ下さい。オープニングを飾る「Texas」は憂いたボーカルとギターが印象に残ります。聴き所などご紹介をお願い致します。
fraqsea:この曲は歌詞から制作しました。最初の” I’m alone on the bed. “のフレーズから雨の降る情景をイメージし、エモーショナルな楽曲となりました。ギターで雨の音を表現して、ノイズギターで抑揚をつけました。こういったリズムにギターを乗せるのは新鮮でした。



–:M2「Crystal Bird」は都会の摩天楼をゆったりと舞うようなスケール感のある楽曲ですね。どのような発想の元に制作されていったのでしょうか?
fraqsea:この曲は元々、トラックのみ作っておいたものなのですがどうボーカルを乗せていこうかと、試しては保留、をくりかえして完成させるのに時間がかかりました。ミニマルなトラックなので、ボーカルで変化をつけました。自身でも思い入れのある曲です。

PROGRESSIVE FOrM · fraqsea "Crystal Bird" from "Flowing Ice Prism" PFCD106

–:M9「Altostratus」はfraqseaさんのハスキーな歌がタイトなトラックと重なり本当にクールな楽曲ですね。どのような発想の元に制作されていったのでしょうか?
fraqsea:この楽曲も、Crystal Bird同様にボーカルをどう入れていこうか、試行錯誤しました。
このご時世、なかなか思うように人と会えなかったり出かけられない、うまくいかないことも多々ありますよね。そんな中でボーカルを何パターンか歌い試してみて、比較的ことば数の多い歌詞を入れることにしました。



–:アルバムのエンディングを彩る「Moon River」はとても素敵なカバーに仕上がっていると思います。聴き所などご紹介をお願い致します。
fraqsea:“月”という名のつく楽曲には名曲が多いなと感じています。その中で今回はMoon Riverを弾き語りさせていただきました。リヴァーブを薄くかけてエレキギターで弾きました。
数日かけて歌を何パターンか録ったのですがレーベルオーナーのnikさんに最終的に選んでいただいたボーカルが、深夜に声を抑えめに、座りながら録った1テイク目のボーカルだったのが意外で驚きでした。良い感じに力が抜けていたからかもしれません。
今回のアルバムのマスタリングも手がけて下さった音楽家・スティールパン奏者の町田良夫さんにスティールパンでコラボレーションしていただきました。ギターとスティールパンのあたたかみのある音が綺麗に融合されていると思います。
しっとりとゆったりと、聴いていただきたい曲です。



–:白猫をモチーフにされたアートワークが非常に可愛らしくて好印象です、簡単にご紹介をお願いします。また実際完成されたCDを見てどのように感じられましたか?
fraqsea:こちらの白猫は、家で暮らしているモネという3歳の猫です。nikさんから、うちの猫をジャケットにしたらどうかという提案をいただいたんですね。そこで、モネがサンキャッチャーで戯れている様子を撮りました!
実際にアルバムを手に取ってみてまず感じたのは、紙ジャケットの心地よい手触りです。
内面には、全面に写真が載っており、盤の文字はホログラムになっていてキラキラとして可愛らしいんです。そういった細やかな部分にレーベルの拘りを感じます。



困難な時代であっても、芸術、音楽に触れて人々の心が穏やかで、平和であってほしいです。

–:楽曲制作に対するアプローチや、楽曲制作で常に意識していることは何ですか?
fraqsea:制作する時は、曲にもよるのですがあまり具体的なイメージを作らないように心がけています。まずは自由に作ってみて、徐々に形にしていくパターンが多いように思います。シンセサイザーやギターに触れて、この音は水の滴のよう、粉雪が舞う音、とイメージ付け、そこからフレーズを紡いでいきます。
それと、昔書いた歌詞やトラックをそのまま使ったり、少し変えて用いることもあります。M8″Magic Flight”は10年くらい前に制作した曲なのですが、当時のメモを見ながら、シンセサイザーは手弾きで、歌詞もあえて変えず当時のままで再現してみました。
様々なアプローチを試みることが曲作りの楽しさです。
–:これまでに影響を受けたアーティストを教えて下さい。
fraqsea:My Bloody Valentine, Slowdive, Radiohead, Ashra,Broadcast など轟音の中に美しさを感じる音が好きです。
–:最近のお気に入りのアーティストや作品を教えて下さい。
fraqsea:Fox & Tiger, Alex Lustig
アルバムはBonobo”Fragments”,
Shallou”Magical Thinking”
–:これからの音楽シーンについて、特にフィジカル、配信、ライブなど、アーティストの視点でみる今後や将来像的なところを教えて下さい。
fraqsea:今はライブストリーミングやサブスク、色々なコンテンツがありますね。それだけ自由な選択肢があり好きなものに出会いやすい時代です。
私もライブストリーミングを楽しんだり、サブスクを利用したり、レコードショップに行ってCDを買ったりします。色んなものが手軽に得られる分、レコードショップに出向き好きなCDを買うことや、どんなものに出会えるのか、ワクワクする感覚ってやはりいいなぁと感じます。
今は音楽も然りレコードプレーヤーの人気が活発だったり、カセットテープでリリースされるアーティストがいたりと、アナログの魅力や、リバイバルブームが続いていますね。これからも今と昔が融合された新たなコンテンツだったり、皆が楽しめるものが増えていったら良いなと思っています。
困難な時代であっても、芸術、音楽に触れて人々の心が穏やかで、平和であってほしいです。


『Flowing Ice Prism』
/ fraqsea
2022年1/26リリース(予定)
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD106
【Track List】
01. Texas
02. Crystal Bird
03. Mermaid Tail
04. Summer Rain
05. Celeste Blue
06. Yuragi
07. Paradise Apple
08. Magic Flight
09. Altostratus
10. Moon River
Amazon
タワーレコード

【クレジット】
All Music & Lyrics by Aya

Except M10 Steelpan by Yoshio Machida
Mixed by Atsushi Takahashi from Atelier Pink Noise
Mastered by Yoshio Machida at amorfon


2022.3.10 18:00

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