【INTERVIEW】ロクトシチ『A DEEP WELL』



「バンドなんだから、アルバム出すでしょ?」というくらいの気持ちですよ


–:音源の話に移っていきますが、ファーストアルバム「6701」(ろくしちぜろいち)のリリースは2016年、制作していたのは2015年ごろですか?
白石:元ネタは2014年にはあったと思いますけど、録音したのは確かにその頃ですね。
加島:僕らの今までの音源は自主制作で、ミキシングは僕と白石でやってます。
–:このタイミングで聞くのも変な話なんですが、この2016年というタイミングで、アルバムを作るというのは、どう思っていましたか?今回のEP「A DEEP WELL」と前EP「Scenario EP」がSpotifyに載っていますが、例えばsoundcloudに1曲ずつアップしていって、ちょっとずつ知っていってもらったり、bandcampにリリース音源を出すなど、いろいろあったと思うんですが。
加島:その点は、正直まったくなにも考えていなかったですね。「バンドなんだから、アルバム出すでしょ?」というくらいの気持ちですよ(笑)
白石:いま活動が断続的になってるベースの山田や僕はそうなんですが、やっぱりCD盤を持っていたいというタイプなんですよね。貸し借りして楽しんだりできるので、僕としてはCDで出すということにこだわりがありますね。
–:このファーストアルバムについて、いま思うことはなんでしょう?
加島:いまでも最高の1枚だなと思ってますよ。僕は僕の曲が好きなので、ミキシングのときも泣きながらミキシングしてましたし(笑)このときは小川がまだ参加しておらず、ドラムスが変わるというタイミングでもありましたね。当時の持ち曲をぜんぶ集めて、1枚にしあげたという感じですね。
–:なるほどです。
加島:あと、これまでもそうなんですが、アルバムを作るために曲を作っていった、CDを作るために曲を作っているのがロクトシチなんですよ。ライブをやるために新曲が増えてきたので、アルバムにしました!という感じではないんですよ。
–:僕がこれまでロックバンドの方々と話をしてきた感じだと、ゴールはライブで披露することで、アルバム音源に収めるのは、その次という風に捉えている人たちが多かったんです。そういったバンドとは真逆の捉え方をしてきたロクトシチは、2016年にこのアルバムを出したあと、以前に比べてライブ活動もかなり多くなったと思うのですが、そこを通じて、なにか得るものや感じたことはありますか?
加島:1番の変化は、知ってくれている人が多くなってくれて、ライブに来てくれる人が増えたことですね。いっしょにライブを企画して、やってくれる仲間が増えたことも、1番に大きいですね。ライブハウスだけじゃなく、ネット上を通じての親交もあったり。
白石:たぶん僕らを一番周知させたのは、加島を中心にして作ったPVじゃないのかなと思います。僕らはPVも自主制作で作っているんですよ。アートワークも、歌詞カードも、僕たちで全部作ってるんです。僕らみたいな無名なバンドが、イチから全部作っているので、そこをみてくれる方が増えたからだと思いますね。特に「stylus has not yet jump」はそうですよね。



丸山:いろいろと並行してやっているので、大変だなぁというのが一番大きいですよ。
–:小川さんが加入されたタイミングはいつ頃からだったんでしょうか?
小川:このファーストアルバムの次に出した『Senario EP』を発売したあとですね。前から加島と友達で、音源も聴いてましたし、好きなバンドだったんですよ。ロクトシチのベースはさっきも名前が上がった山田さんがやってましたけど、休みがちになってしまうという話を聞いたとき、「もしかして誘われるんじゃないのか?」とうすうす感じてはいたんですよ(笑)
–:以前一緒にバンドをやっていて、音源も一通り知っているし、好きな音楽性だというと尚更そうですよね(笑)
小川:そうこうしているうちに本当に誘われたわけです。バンドのコンセプトとして、難しいことを求められているわけでもないですし、何よりメンバーの人となりを知っていたので、メンバーとして活動することにも、難しさなどは感じてませんでした。
–:新作EP『A DEEP WELL』の制作についてお聞きしたいんですが、いつ頃から制作に取り掛かりましたか?
白石:制作自体は去年2017年11月から今年2018年の2月にかけてですね。
–:かなり短いですね。昨年8月には既に今作のアイディアがあったということですか?
加島:そうですね。『Senario EP』のレコ発ライブがその8月にあったんですけど、そのときには新曲として1曲やっているんです。そのあとのライブでは、1曲も新曲を披露することなく『A DEEP WELL』を出しましたね。
–:それは先程おっしゃっていた「CDを出すために音源を作る」という意識のなかで制作されていたから、ということにもなりますよね。
加島:たしかに『Senario EP』を出すまえに、「2枚続けてEPを発売しよう」という話はしましたね
白石:録音としては確かに2枚立て続けだったけど、加島のなかでは曲のコンセプトがそれぞれ違ったんじゃない?
加島:僕としては、曲作りに変わりはなかったんですよ。でも、「それぞれこういうEPにしよう」という違いを出そうと気持ち、それがあったのは確かです。
–:『A DEEP WELL』の1曲目、ピアノのイントロ曲で始まるじゃないですか?なぜこの曲が1曲目に?
加島:1曲目には本来違う曲があったんですけど、ミックス段階で「ちょっと違うんじゃないか?」というのを感じていて、2曲目の「Nervemap」がこの作品のなかで一番ウケが良いということも考えて、30分くらいで作ったんですよ。
–:その1曲目2曲目の落差もあって、この『A DEEP WELL』の特徴がよくでているように思えるんです。『Senario EP』は真っ当なパンクっぽさを感じられるんですけど、『A DEEP WELL』はうるささと静けさを行き来するので、それもそれでインパクトを残してくれる。この2曲の並びが『A DEEP WELL』の核になっているんじゃないか?と思えます。それにとてもローファイなサウンドですしね。



白石:ミキシングは僕の自宅に2人で集まってやります。最初は仮でつくって、徐々に徐々に2人の好みを探しつつ徐々にやっていく、というような感じです。
加島:「ローファイだね」という声は確かに多くもらいますね。ミックスに関しては、狙ってこういう音を出しているわけではなく、僕らが持っている安価な機材でだせる、最大限の音質なんです(笑)頭の中ではスティーヴ・アルヴィニのようなサウンドが鳴っているんですけど、技術的・金銭的に、あのサウンドが出せるもののすべてですね。
–:それはもう仕方ないことですもんね(笑)録音はライン録りですか?マイクですか?
白石:基本的には、スタジオに入って、マイクを立てて録ってますよ。
加島:もっと良い音、良い環境で録りたいですね……(笑)
–:この音楽性でもっと良い音/サウンドとなると、アルヴィニのサウンド以外に方向性がなくなってしまうわけですもんね
加島:いや、それでいいんですよ。激しさの再現、濁った音の再現をしたいんですよ
白石:うん、それが一番やりたいよね。
–:じつは、この後に質問したかったことあるんです。「いまの僕の音楽を、誰にきいてほしいか?」ということなんですが、ずばりスティーヴ・アルヴィニでしょうか?
加島:うーん……個人的には高校時代の僕に聴いてほしいですね。
白石:そっちにいくんだ?
加島:そうですね。実は、作るときにずっと考えているんですよ、「友達とも遊ばず、親とも話さず、部屋でずっとヘッドホンをして音楽を聴いていたあの頃の僕が、この曲を聴いたらどう思うんだろうか?」と。陰気だったわけではないんです、ただただ音楽が好きすぎたんですよね。その頃の僕が愛聴する1枚になっていてほしいですね。
白石:僕は考えたこともないですよ!(笑)
小川:むしろちゃんと考えていた加島がすごいね(笑)
白石:ぼくとしては、できれば僕らと違ったタイプの人に聴いてもらいたいですね。J-POPをふだん聴いていて、ロックバンドをぜんぜん聴いていないような人とか。洋楽ロックを聴いてその音を鳴らそうとしているんだけど、どこか日本人らしさが残っているようなバンドを好きな人とか
加島:言いたいことすごくわかりますね、SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HERやLuminous Orangeってことですか?
–:なるほど。Hi-StandardやCOALTAR OF THE DEEPERSみたいな感じですよね。その捉え方だと、ロクトシチも同じ系譜になりますよね。海外のロックをそのままやりつつも、日本人らしさも残っていて、オルタナティブでカッコイイ姿になっているという。
白石:そういったバンドですね。ガチガチなアンダーグラウンド・シーンとJ-POPの間にいるようなロックバンドが好きですし、そういったロックバンドに触れてこなかった方々に聞いてもらいたいなと思います。
–:丸山さんはいかがでしょうか?
丸山:わたしは未来の人に聴いてほしいなと思います。とはいっても20年後30年後くらい先に、「このおばあちゃん、こんなことしてたんだな~」くらいな感じです。私が子供のころ、「この人は今こんなに歳をとっているけど、若い頃はこんな風だったんだな」というふうに考えることが多かったんで、そうみてもらえると嬉しいなと思います。
小川:ぼくは外国のひとに聞いてもらいたいですね。
加島:そうだね、外国人に聴いてほしいのもあるね。
小川:タイや台湾のインディーシーンがおもしろいという話を聴きますしね。でも一番身近なのは、日本在住の外国人にまずは聴いてもらって、僕らのライブに来て貰えれば嬉しいですね。
–:ありがとうございます。最後に、こういうふうなロックバンドになれれば……ということをお聞きしたいのですが。
加島:ちょっと会議してもいいですか?(笑)個々人で答えるとなると難しいですね。
小川:フェスに出たいですね、あとはライブハウスが積極的に企画したようなイベントに出たいですね。
加島:このままのスタイルで、追求するところは追求して、もっとカッコイイバンドになりたいですね。
白石:僕も加島と同じですね。現状維持というより、いままで出来ていなかったことをどんどんやっていって、もっとカッコイイバンドになれればと思います。
丸山:そのためにも、みんなが元気で健康なままで活動ができればと思います。時々思うんです、「僕は何歳までこういうバンド活動ができるんだろうな?」と。なるべく若々しさを保って活動できればと思いますね。

(4月下旬 池袋 インタビュアー:草野虹)





『A DEEP WELL』/ ロクトシチ
2018年3/7リリース
フォーマット:CD
レーベル:Kerosene Records
カタログNo.:KRSE3
価格:¥1,296(税抜)
【Track List】
1. Intro
2. Nervemap
3. Our distorted concerto
4. Dramatic farce
5. In the car
6. Harbor
7. Giant set free
ディスクユニオン

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2018.5.15 12:00

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