【INTERVIEW】colormal『merkmal』



バンドマンとトラックメイカー、いまの日本のポップシーン・インディシーンを賑わしている彼らは、同じミュージシャンでありながら、その姿はまったく異なる。
方や複数人での楽器演奏で、方や自身とPCソフトで、それぞれに音楽を生み出す。そこから編み出される音楽が、もしも同じようなベクトルへと向いていたとしても、似ている部分も生まれれば、やはり非なる部分も随所に感じられるわけだ。
だがもしも、その2つの在り方が1人の人間のなかで交わったとき、いったいどんな化学変化が人間の中から生まれるだろうか。
ニコニコ動画での初音ミクらを中心にしたボカロミュージックは、一つの答えを示したと思う、そのなかから米津玄師という巨星を生み出したことを思い出してみよう。
もはや2つそれぞれの姿は、別々に隔てられたプレイヤースタイル/ミュージシャンではなく、1人の人間がもつ別々のペルソナ/隣人のようなもの、作家の平野啓一郎氏の言葉を借りれば『分人』といえる。
今回の主人公、colormalことイエナガは、まさにバンドミュージックとラップトップミュージックが体内で交配した人物だと言えよう。彼が生み出した『merkmal』は、バンドミュージックとも、ラップトップミュージックとも、どちらにも置ききれない、谷間でヒッソリと奏でられたポップソング集だ。indiegrabのスタッフ面々も、彼のアルバムがリリースされた直後に大きな衝撃を受け、今回のメールインタビューと相成った。淡々と、しかしながらも真摯に答えてくれた。その神秘を覗いてみよう。




一言で言うとギターは「唯一の趣味」なのかもしれません(イエナガ)

–: 今回はインタビューをうけていただきありがとうございます。まずはバイオグラフィをお聞きしたいですが、「colormal」という名前の由来はなんでしょうか?
イエナガ:colormal(カラーマル)は元々名義を決めずに宅録での活動をスタートさせ、初めて作った曲「さまよう」をマバセレコーズのコンピ「click noise vol.1」に収録してもらうことになったので急ごしらえで作った屋号です。由来はなく、読み方も難しいので少し後悔しています。
–:なるほど。好きなミュージシャン・バンドはだれでしょうか?
イエナガ:好きなミュージシャン・バンドというと、かなり多くなります。本作「merkmal」にもオマージュを混ぜ込んでいるGRAPEVINEやTRICERATOPSなどの90年代の邦楽ロックや、一昔前の下北?高円寺っぽいバンドが好きです。ボーカロイドを中心に活躍されている、みきとPさんが昔やっていたセンチラインってバンドなんかは、まさに僕が好きなその雰囲気ですね。最近足繁くライブに行くな、と思うのは赤い公園です。

あと、一人の色が強い音楽をやっぱり好きなんだと今回の製作を通して再確認しました。バンドをやめて志摩さん一人になってしまったドレスコーズや、スネオヘアーは高校生の頃に「フォーク」を弾き語ったりしていましたね。今作の製作時期にSerphやkettelあたりのエレクトロニカを聴いていたり。洋楽は趣味としてプログレッシブロックのCDを集めていますが、これは本当に音楽とは少し剥離した趣味といった感覚ですね。GONGやAreaを高校生の頃に聴いたのを発端によく漁っています。

エモ系も好きと言えるかはなんともなのですが、Climb the MindをきっかけにThe Life and TimesやFailureとか。これらも、作る音楽にこそ影響は出ていないのかもしれませんが、コード感から押し寄せる切なさなどは血肉になっていると思います。
–:そういったなかでも、深く・強く影響をうけてきたミュージシャンやバンドはいますか?
イエナガ:もともと音楽を聴き始め、ギターを持つまでに至ったきっかけはMr.Childrenでした。親がカーステでかけているのをこっそり持ち帰ってはMDに移して聴いたりして。宅録を知って「自分も宅録を始めたい!」と思ったのは、ヒトリエのギタリスト・シノダさんが過去にソロでやっていたcakeboxやエヌオシさんがきっかけですね。両者共にターニングポイントであり、やはり影響は強く受けていると思います。ここを起点にたくさんルーツに向かって掘って音楽を聴いてきたので。あとは、自分が音楽を作ることになってから知ったたくさんのネット上の音楽たち。nemo asakuraさんやふにゃっちさんの音楽は宅録を始めた頃から聴いていたし、最近だとlow pop ltd.や君島大空さん。みなさんサウンドクラウドがメインですが、たくさん刺激を受けましたし、一人でやる音楽に勇気を貰ったり影響を受けていると思います。
–: ディープかつ広範に聞かれてますね!。これまでにバンドを組んだりとかしてきましたか?
イエナガ:高校生からギターを手にしてからずっと今に至るまでコピーバンドばかりしていました。高校生の頃はthe pillowsやBase Ball Bearのコピーをしたり、ベースでthe telephonesやPOLYSICSを弾いたり。かなり節操なくやっていましたね(笑)自分の曲をライブで演奏したことはありませんが、大阪のSSW・林青空さんのサポートギターやマバセレコーズのwho’s lollipop?のサポートを単発でしたことがある程度といった感じです。もしかするとステージに立った回数は人より多い方かもしれませんね。



–: これまでにバンド活動をしてきていないのにもかかわらず、ソロ活動としては「バンドサウンド」を志向しているのは、やはりバンドミュージックがお好きだからでしょうか?
イエナガ:「これまでにバンド活動をしてきていないのに、ソロ活動としては「バンドサウンド」を志向しているのは、やはりバンドミュージックがお好きだからでしょうか?」とのことですが、もちろん、自分がどんな時も聴いてきた音楽がバンドサウンドだからというのもあります。自分も全くバンド活動をしていなかった訳でもないので。ただ、それ以上にプレイヤーとしてギターが好きだからだと思います。きっと音楽を作らなくなっとしてもギターは弾いていくだろうなあと思うくらいなので。
–: プレイヤーとしてギターが好きだ、とのことですが、今回の作品「merkmal」でもそういった嗜好性がハッキリと出ていると思います。ご自身にとって、ギターと自分の関係性を言い表すなら、どういった感じになるでしょう?ボヤっとしたイメージでも構いません
イエナガ:一言で言うと「唯一の趣味」なのかもしれません。高校生になって初めて手にした時に、これが青春だと確信してずっとギターばかり弾いてきたくらいで。アンプのツマミをひねった時に自分の全部が大きくなった気がしてしまったんでしょうね…まあ、それがきっかけで受験に失敗したんですけど(笑)その後の予備校生活でどうしてもギターが弾きたくて宅録を始めたので、やはりギターだけが趣味なんだと思います。自分の音源に対してもギタリストでありたい気持ちが常に出てしまっているなと自覚しています。

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『merkmal』/ colormal
2018年1/17リリース
フォーマット:CD / デジタル配信 / ストリーミング配信
レーベル:マバセレコーズ
カタログNo.:M!002
価格:¥1,500(税込、CD)
【Track List】
1.夢みる季節
2.大きな怪獣
3.まばゆい
4.さまよう
5.花に嵐
6.日記
7.東京
8.鎹

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2018.3.5 12:30

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