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【INTERVIEW】HeatMiser『When I’m drifting in the morning』



私みたいに一人で音楽をやっていると「女性シンガーソングライター」みたいな枠組みに入れられがちなところがある、そういう枠組みとは決別したい(HeatMiser)

–:当初はレーベルと契約してリリースする話もありましたよね?
HeatMiser:そうなんですけど、条件面などで折り合わない部分があったので、結果的には自主制作という形でリリースすることになりました。具体的には、制作費とか原盤権についての部分ですね。自分の音楽を安売りするつもりもないですし、やっぱり先が見えない手段は取りたくなかったんですよね。
–:具体的にレコードのどんなところが好きですか?
HeatMiser:なんだろうな。私はもうスマートフォンで音楽を聴くのをやめていて、Apple Musicとかも使うのをやめたんです。大量消費みたいな感じが切ないなと思って。だから、わざわざレコードで買ってレコードで聴くという、その過程が好きなのかもしれないですね。単純にモノとして持っている感じもいいですよね。CDで既に持っているものも、レコードで買い直して聴いたりしています。最近だと、ザ・ビーチ・ボーイズの「スマイリー・スマイル」をレコードで買い直して聴いていますね。
–:今回は、マスタリングに海外のエンジニア(Zlaya Loud)を起用していますが、なぜ彼に依頼することになったんでしょうか?彼のキャリアを調べても、ソニック・ユースやトータスといったバンドの作品も手がけている一方で、アイシスやアルテリアのようなアンダーグラウンドのバンドとも仕事をしているのが非常に印象的です。
HeatMiser:自分の好きなバンドに関わっている人を片っ端から検索して探したんです。「カート・ヴァイル エンジニア」とかのキーワードで。その中で、ソニック・ユースとかスパークルホース、ローとか、とにかく自分の好きなバンドを全部並べて検索したら彼の名前が出てきたんです。彼の手掛けた作品の並びを見たら、広義でいうところのノー・ウェーヴというか、アンダーグラウンドを理解している人だろうと思ったので、この人だったら私の意図するところが伝わるんじゃないかと。それで連絡を取ってみて、自分の好きな音源もいくつか添えて、こういう感じにしたいと伝えました。試しに1曲マスタリングしてもらって、その仕上がりを聴いて間違いないなと。
–:今作はCDとレコードでマスタリングを分けているということですが、予めアナログでのリリースも視野に入れていたわけですね。
HeatMiser:彼の方から、デジタルとアナログのマスタリングを別に作りたいと提案があってそうしたんです。そういう点でも、彼に頼んだことは正解でした。
–:前作では、スラップ・ハッピーの「Blue Flower」とフリーディ・ジョンストンの「The Lucky One」をカバーしていましたが、今作にもティム・バックリィの「Once I Was」とドアーズの「Indian Summer」のカバーが収録されています。どちらも60年代から70年代に掛けてリリースされた曲ですが、この2曲を選んだ理由は何でしょうか?
HeatMiser:単純に、いま歌いたい曲だったからですね。歳を取ればまた違う曲がやりたくなるでしょうけど、いまやりたかったのがこの2曲でした。アルバムにカバー曲が入っているのが好きなんですよ。カバーしている曲によっても、そのミュージシャンのイメージって決まるようなところがあるじゃないですか。
–:カバー曲を選ぶセンスというのは確かにありますよね。あと、10/21に開催されたアルバムのリリースライブについても聞かせてください。ゲストにはBoys Ageとメルツバウを呼んでいますが、Boys Ageは以前主催されていたフェス(ROCK GOD DAM 2013)にも参加していましたよね。
HeatMiser:そうですね。Boys Ageの音楽は日本人離れしてると思いますし、DIYで全部やっているところを本当に尊敬しています。ライブも何回か見ているんですけど、日本の土壌との違いというか、ある種の異質感みたいなものは、私も彼も感じている気がするんです。
–:一方でメルツバウはどうですか?アルバムの表現が際立つ組み合わせだと思いますけど、このブッキングについては単純に驚きましたよ。
HeatMiser:ヤバいですよね。メルツバウの秋田さんは私とかBoys Ageのモデルになる人だろうなと。海外に拠点を移して活動して、そこで評価を得ている。そういう人たちと繋がっていくことが自分にとってプラスになるだろうなと思ったし、私の目指すところとして出演をオファーしました。日本では、私みたいに一人で音楽をやっていると「女性シンガーソングライター」みたいな枠組みに入れられがちなところがあるんですよ。実際、そういうイベントからのオファーもよくあります。でも、そういう枠組みとは決別したいという意思表示でもありますね。
–:ご自身のサイトで公開されているリリースノート(https://www.heatmiser-tokyo.com/releases/comment/)で、本作のレコーディング期間に糧にしたアルバムとして幾つかの作品をピックアップして挙げていますよね。これらの作品からの影響というのはどう捉えていますか?
HeatMiser:誰かは誰かに影響を受けているはずだし、またその影響を受けて生まれた人がいるはずなので、私のなかでは全てが点と線でつながっていると思っています。
–:その中でも、今作の制作にあたって特に大きな影響を受けていると感じるものはありますか?
HeatMiser:フランク・ザッパの『Freak out!』、彼の混沌とした感じというか、全部ごちゃ混ぜにして爆発するような感じは素晴らしいですよね。あとは、テンプテーションズ。私はモータウンも好きで、元々はポール・ウェラーがモータウンを好きって言っていた影響で聴くようになったんですけど、アルバムに入っている「Hackney, Rainy」という曲のちょっと跳ねたベースラインなんかはモータウンを意識しています。あと、ビートルズでは『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』が一番好きなんですけど、ドラムについてはこの頃のリンゴ・スターの叩き方を意識していますね。メロディーやボーカルの雰囲気とかは、マジー・スターだったり、モハーヴィ3に影響を受けているかなと。





–:それらの作品以外で、最近よく聴いてるものはありますか?
HeatMiser:デヴィッド・アレンのゴングをよく聴いてますね。たぶんドラッグとかの影響で曲もサイケなものが多いですけど、音楽に対しては非常にストイックな人だったんじゃないかと思います。彼が来日した際に、ジム・オルークが俺じゃなきゃPAはできないから俺にやらせろ!って言って実際にやったらしいですね(笑)。あと、キャプテン・ビーフハートも好きでよく聴きます。彼の音楽を聴いていると、なんて音楽は自由なんだろうっていつも思います。
–:来年には、また海外ツアーに出るんですよね?
HeatMiser:そうですね。ヨーロッパは前回行った際にしっかりとした反響があったので、ロンドンを中心にフランスやイタリアなどはしっかりブッキングできそうだなという手応えはあります。
–:最後になりますが、エリオット・スミスのトリビュートライブを計画してるらしいですね。非常に興味深いんですが、それについて教えてください。
HeatMiser:本当は今年開催しようと思って、エリオット・スミスを好きって公言しているミュージシャンに連絡を取ってみたんです。七尾旅人さんとかMO’SOME TONEBENDERの百々和宏さん、あとトクマルシューゴさんやキセル、klan aileenなどですね。その中で、なかなかスケジュールが合わなかった部分もありましたし、やるならしっかり計画してやりたいと思ったので、改めて企画しようと思っています。実は、リリースライブを開催する10月21日がエリオット・スミスの命日なので、そこで開催できればと思っていたんですけど、また来年以降で狙って企画したいなと思っています。


プロフィール:HeatMiser
1995年生まれ 現役大学生 礒尾奈加子のソロプロジェクト。
高校在学中に海外からバンドを招聘して音楽フェスを主催し、2015年のメアリー・ルー・ロードの来日ツアーではバックバンドを務めるなど、ボーダーレスかつDIYなスタイルで活動を続けるシンガーソングライター。16年リリースの1stアルバム『at dawn』に続き、2ndアルバム『When I’m drifting in the morning』をリリース。

『When I’m drifting in the morning』/ HeatMiser
2017年9月13日リリース
フォーマット:CD/ LP(12inch)
レーベル:自主制作
カタログNo.:HM002(CD)、HM003(LP)
価格:¥1,620(CD)¥3,780(LP)
【Track List】
01. Truck Stop Girl
02. Dream Boy
03. He Has Glasses On
04. Once I Was
05. Yamamoto
06. Indian Summer
07. HOTEL KIP
08. Hackney, Rainy
09. When I’m drifting in the morning
10. Rena
11. Theremin Noise


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2017.12.8 20:48

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