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北 航平『Imbalance Order And World』インタビュー






京都を拠点に活動し類い稀な才能を持つ音楽家/打楽器奏者である北 航平による待望の3rdアルバム『Imbalance Order And World』が完成。世界的にも非常にレアでとても美しい音色を奏でるアレイムビラ(カリンバの一種)を中心として数種類のスリットドラムなどの音階打楽器、ジャンベやウドゥドラムをはじめとした膨大なパーカッション群、ピアノやトイピアノなど様々な生楽器と肉声を取り入れ更なる独自のスタイルを探求した本作に関して、制作スタイルやその手法などを中心に語ってもらった。

弱さや暗さの中から溢れ出る誰にも負けない強い熱量のようなものを表現できたらと思ってます

–:『Imbalance order And World』を聴かせていただいて、とても文学的で物語性があり、様々な感情が描かれているように感じました。
北 航平:そう感じてもらえたならとてもうれしいです。感情に関しては、今回の最新作はもちろん、1stアルバムの『endless cycle of rebirth』や2ndの『akashic records』からすべて一貫してなんですが、よくあるような明るく強く前向きな部分だけを描くというのはあまりしたいとは思わなくて、人の弱さや暗さ、複雑な葛藤なんかにも焦点を当てて描きたいというのはありますね。でもその弱さや暗さの中から溢れ出る誰にも負けない強い熱量のようなものを表現できたらと思ってます。物語性に関しては非常によく言われるんですが、そういう曲が好きなので勝手にできてしまうんです。むしろ無機質なものを作るのは感情移入ができず作業にノレないんで、持続して制作を詰めて行くのが難しい気がします。
–:楽曲制作時はどのような過程で作業を進めているのでしょうか?また比較的変わったアプローチなども見られますが、アイデアの源などを教えてもらえますか?
北 航平:まずは映像のイメージが先に浮かびますね。少しオカルト的で怪しく聞こえるかもしれないですが(笑)、頭上高くの空中に前後左右上下に広がる立体的な抽象イメージが浮かんでるんです。それがすごく大きな物から小さな物まで様々なサイズ、様々な色や温度を持っていて、しかも配置的にとても芸術的で絶妙なバランスで並んでるんです。例えるなら画家のミロの後期の作品みたいに。それをいつも音として分かりやすく具現化したいと思ってるんですか、それがなかなか難しくて、いつもその映像イメージの半分も具体化できていないかもしれない、というジレンマがあります。その為にもっと必要な技術を磨いたり、枠から外れた斬新な表現方法を常に模索しています。
–:北さんの作品は一般的にはエレクトロニカと呼ばれるジャンルにあると思いますが、その中では特にリズムに非常に個性を感じます。何かこだわっている部分などはあるのでしょうか?
北 航平:リズムに関しては、やはり打楽器奏者なのでそれについて考えることが好きですし、相当重要視してますね。苦労する点としては、昔から大好きな黒人音楽などのグルーヴと、先程お話した抽象イメージを具現化する作業をうまく融合させたいと思ってるので、その微妙な兼ね合いが難しいです。一般的なノリというものからあまりにも外れ過ぎると聴き辛いと思うので、自然なグルーヴも残したい。でもリズムにも映像的な表現や斬新な手法も取り入れたいし、と欲張りなんです(笑)
–:そのお話はアルバムを聴くとよく分かる気がします。正円でなく楕円で回っているようなグルーヴというか、直線ではなくジグザグ走行というか、何か不思議で複雑なニュアンスを感じます。
北 航平:ありがとうございます。でも、それは企業秘密というか(笑)、まあ、たいしたことではないかもしれないですけど、「3」と「4」の要素を同時に存在させることは非常に多くて、それをあえて意識して多用してたりしますね。具体的には、四分音符と二拍三連、八分音符と三連符、十六分音符と六連符などを同時に並走させることによって生まれる独特の時間の流れというのがあるように思っていて、これは非常に好きなニュアンスなんです。例えば、サルサなどのラテン音楽では4と3の要素が同時に進行するのは盛り上がる部分だったりアクセントとしてよく使われる手法でもあって、あの独特の空間や時間がグニャっと歪むような表現に昔からとても惹かれていて、この感じは何だろうと色んな実験をよくしていましたね。あとは、十六分音符のスクエアとスウィングの中間、いわゆる「ちょいハネ」みたいなことはよくあるのでもちろんのこと、八分音符の「ちょいハネ」はコントロールするのが意外と難しいのですが、ピンポイントを見つけるとすごく絶妙なグルーヴの回転をしてくれるので気に入っている表現のひとつでもあります。楽譜では表せないポイントが大切な気がしますね。



今回の3rdはアルバム全体の80%くらいが生楽器から生まれた音でできているんです

–:デビューアルバムから本作まで三作とも全てにボーカル&タイトル考案で参加されてるカルネイロ(ex.Fonogenico)の高山奈帆子さんの役割とはどういったものでしょうか?
北 航平:先ほどの物語性の話にも通じるんですが、僕が抽象的なバランス重視で作った作品に、彼女が具体的な「名前」というものを与えてくれることにより最後に生命を吹き込まれるんです。毎回あまりにもしっくりくるので、出来上がるたびに「ああ、この子(曲)はこういう名前だったのか」と本当に納得します。そして、もちろん彼女のボーカルも物語性には不可欠で、ビョークに通じるような空気感と、ある種少年のような個性的な声によって、よりアルバムの感情的な部分や色彩性を高めてくれていると思います。そういう意味では、僕の作品を完結させる役割を担ってくれていると思いますね。
–:技術的にはかなり高度で複雑なことをされてるのに、飽きずにすっと一枚を通して聴けました。
北 航平:最終的に全ての曲のバランスやディテールに至るまで細かくディレクションをしてくれた今回のアルバムのリリース元であるPROGRESSIVE ForMのオーナー・nikさんの手腕によるところは大きいですね。今回初めて一緒に仕事をさせてもらって、あらためて客観性というのは重要だなと思いました。いくら一人で全身全霊を傾けて推敲に推敲を重ねて制作していても、やはりどこか見えない部分というのはあるもんだと痛感しましたし、アーティストのこだわりと、リスナーの視点とを繋いでくれる役割というのは本当に重要だと感じました。
–:アルバム中で本当に多岐にわたる様々な楽器を使われてますが、一部を紹介してもらえますか?
北 航平:今回の一番のポイントとなる重要な楽器はやはりアレイムビラですね。これはアフリカの民族楽器カリンバを進化させて近代化したアメリカの楽器なんですが、サンディエゴの職人のおじいちゃんがほぼ一人で作っていて受注してから届くのにものすごく時間がかかりました。でも本当に綺麗で奥行きのある澄んだ音がします。4オクターブも音域があるのでほとんどの楽曲にも対応できますし、またステレオのライン端子も備わってるので、コンデンサーマイクでの空気感と混ぜて録音しています。あとは、RAV VAST DRUMというUFOのような形をしたスリットドラムも比較的たくさん使用しました。これはハングドラムとも言われる種類の音階打楽器で、ロシア産の物をドイツのお店から送ってもらいました。暗く深い、倍音をいっぱい含んだ音色が特徴で、普通に鳴らす単音や和音だけでなく、逆回転いわゆるリバースってやつですね、それがすごくザラザラした良い質感になるんですよ。なので、一聴したらそれとは思わない音も、そのRAV VAST DRUMの仕事だったりします。他にも、ジャンベやカホン、ウドゥドラムなど色々な打楽器群、それと今回はドラムセットも積極的に使ってみました。
–:元々はスタジオミュージシャンでドラムが専門なんですよね?
北 航平:実はそうなんですよ(笑)、ポップスのバックのお仕事はもちろん、ブラックミュージックなどのルーツ系やクラブミュージックなんか結構叩いてたんです。でも、今までの1stや2ndアルバムではほとんどドラムは使ってなかったので、せっかくドラマーなんだからもっとドラムを入れようよ、という声も結構多かったので、今回は頑張って入れてみました。といっても、いかにもドラマーのソロアルバムみたいな感じや、いわゆるよくある定型のドラムパターンという感じの入れ方にはしたくなかったので、色々と試行錯誤して、入れ方を考えるのに少し時間を費やしましたね。生音っぽい入れ方をしてない音も実は生ドラムだったりします。そういうドラムの音を含め今回の3rdはアルバム全体の80%くらいが生楽器から生まれた音でできているんです。その甲斐もあってより有機的なサウンドになったと思っています。アレイムビラなどの自分にとっての新しい楽器ではなくて、数十年訓練を重ねた楽器はやはり作品作りにおいても扱いやすかったですね。ドラムは、ほぼ脳内のイメージをそのまま自由自在に手足に伝えることができるので、そういう意味ではドラムセットを使ってみるのは成功だったかな、と思います。

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2017.6.2 19:38

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