【REVIEW】VA / basyo compi vo.2〜新春俳句コア〜 (basyo-label)
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2015年最初の注目作品になったこのコンピは「俳句コア」を打ち立てるbasyo-labelによる2作目のリリースだ。1作目で、30秒程度のトラックの中にオリジナルの俳句を詠み込むスタイルを確立した彼らが、多くの賛同者を携えて再び提示する俳句コア。その意欲作は前作を上回る刺激の多い濃厚な作品群に仕上がっている。
1. 新年の挨拶 – 鼈甲仮面
ユーモアを添えた前口上は、柔らかな声とシリアスでメロウトラックが印象的なbekko kamenが担当する。この軽妙さと後のシリアスなスタイルのバランスが彼らの魅力とも言える。
2. 第一句 – cuvboys (track by cuvboys & soejima takuma)
複数のヴォイストラックを重ねる事で和声を提示するポエムコアとしても新しいアプローチに、ノイズまじりの電子音が間断なく続く斬新なトラックでコンピはスタートする。
3. 第二句 – 矢野ミチル (track by tokomanonka)
深く抑制の効いたリズムとパッド系の和声が作るトラックのラジカルさとに織り込まれた文語調の現代俳句のバランス、超絶技巧寓話画集も有名な画家、矢野ミチルの世界観が詰め込まれている。
4. 第三句 – 寛治 (track by soejima takuma)
クールなクリック音と、バックを支える強いMC、息づかい、抑制あるリーディングスタイル、レイドバックスタイルのピアノの和声、動静のコントラストが見事な仕上がりになっている。
5. 第四句 – sonarr (track by 線描)
和楽器に伝統的な描写を踏まえた俳句を織り込んで展開するのは、basyo compi vol.1で突然に俳句コアスタイルを確立させた線描。俳句コアの王道とも言うべき安定感を見せている。
6. 五句 – abelest (track by 近藤孝次)
続くこのトラックも同様に、vol.1からのつながりを持つ。リーディングは一層内省的に踏み込まれてエディットされたヴォイス、やわらかな電子音の粒子とSE、軽みと深淵さが同居する。
7. 第六句 – maho- (track by tokomanonka)
ノイズコアトラックに乗せたリーディング、寺山修司や横尾忠則にも似た世界観でアンダーグラウンド感を隠さないスタイルで、余韻を残す言葉が印象的だ。
8. 第七句 – MA$A$HI (track by MA$A$HI & 線描)
ダッキングの効いたトラックにクールなMCが印象的なMA$A$HIが線描と組み、自身のハードなトラックの断片を思わせるギターノイズと雅楽のエディットを展開する。俳句は和英のMCで表現される。
9. 第八句 – toddy boy (track by 近藤孝次)
vol.1を発展させたスタイルがあるとすればこのトラックがまさにそうだと言える。エディットされたSEと織り込まれたノイズ、訥としたリーディングに現代俳句を詠み込む仕上がりだ。
10. 第九句 – 玲音 (track by Yuko Lotus)
GORGEを牽引するブーティスト、Yuko Lotusのトラックが印象的なこの曲では、Tomの代わりにミニマルに打ち込まれるトライバルディレイと深いドラムで短い中に自身の取り組みを織り込む事に成功している。
11. 第十句 – Yuko Lotus (track by Yuko Lotus)
続くトラックもYuko Lotusによるものだが、このトラックでは抑制の効いた深いキックに凛としたヴォイスで、GORGEをふまえつつ、美しく新しい静謐な世界観を提示している。
12. 第十一句 – 近藤孝次 (track by 近藤孝次)
フィードバックノイズに囲まれたこのトラックでは、差し迫ったMCが詠み込むレイドバックした光景と息づかいが印象的だ。詠み込まれるに従ってノイズが折り重なる深淵な構成になっている。
13. 第十二句 – Yavtic (track by kuroyagi)
ノイズまじりのギターのアルペジオ、Lo-Fiなサウンドは、sk8er以降のストリートを連想させる。ストレートなMCスタイルで柔らかな俳句を詠み、ざらついたトラックとのコントラストの中で言葉に印象を残す。
14. 第十三句 – LTPimo (track by LTPimo)
細かな電子音の配置による変拍子Electronicaスタイルとスピークマシンに逆回転SE、エコー、現代俳句を踏襲した言葉、自身のスタイルを崩さず俳句コアを織り込んだ意欲的な仕上がりだ。
15. 第十四句 – 甘葉 (track by 甘葉 & soejima takuma)
平安サイケデリックmeetsフリージャズ、倒錯した世界観を提示するこのトラックは、ピアノのフリーなコードワークと、テープエコーのヴォイスワークが冴えるラジカルなトラックだ。
16. 第十五句 – 線描 (track by 線描)
尺八とカリンバを連想させる不思議な組み合わせで構成される楽曲に、文語調の俳句が織り込まれたこのトラックでも線描はやはりVol.1を発展させた王道スタイルを提示する。
17. 第十六句 – YASAKA IN THE SEA !! (track by soejima takuma)
レイドバックスタイルの淡く枯れたバックトラックは、YASAKA IN THE SEA !!自身の活動を上手く発展させたスタイルが成功している。飄々としたMCとのコントラストが印象的だ。
18. 俳句ってなんすか?-エンディングテーマ- (song by ヒロポジドッグ)
エンディングはリーディングサンプリングをコミカルに提示して、俳句とは何か?と最後に問いかけてレーベルの軽妙さを表現する。この終わり方は爽快だ。
どのトラックも多くの陰影を刻み込んでいながらもラジカルである。このコンピは、決して束縛しないルールの一方で明確なコンセプトをまず示したこのスタイルで、結果として参加したアーティストの思わぬポテンシャルを引き出す事に成功したと言えるのではないか。非常にインパクトがありコンセプチュアルなコンピレーションに仕上がった。
テキスト:30smallflowers(@30smallflowers)
2015.1.4 23:24
カテゴリ:REVIEW タグ:basyo-label, ltpimo, tokomanonka, yuko lotus