【NEWS】KAOMOZI 「合成音声使用」縛りの企画コンピ『POST DAISY BELL』リリース決定  荒木若干、mnmnmnmn、appy、佐藤乃子、⍼、豆屋、ヤギイラオ、Elitetao、越前が参加

『POST DAISY BELL』V.Aアートワーク

ネットレーベル KAOMOZIによる「合成音声使用」縛りの企画コンピ『POST DAISY BELL』が1/29にリリース決定。

電子音楽を中心にノイズ、インダストリアル、アンビエントNoise、industrial、ambientからキャッチーな歌モノまで、「音楽に通底するポップネス」をキーワードに作品発表し続けるネットレーベル KAOMOZI。

今回はオーナーの駒澤零が9名のボカロPをキュレーションし、起用したコンピレーション形式のアルバムとなった。

KAOMOZIでは零進法やu.u、佐々木虚像などレーベル発足当初から非ボカロ文脈でボカロを使用した作品が一定数あり、その存在感はインターネットナード音楽/クラブミュージックの中で咀嚼され再構築され続けてきた合成音声の無記名な在り方として独立した立ち位置に存在している。

レーベルZINE『KAOMOZINE』内でのOMOIDE LABEL、ゆくえレコーズとの鼎談の中ではニコニコ動画を離れBandcampを中心に独自進化していった合成音楽の話が言及され、その筆頭としてゆくえレコーズで作品がフィジカルリイシューされている全自動ムー大陸や、world’s end girlfriendのレーベルVirgin Babylon Recordsからリリースするでんの子Pなどの名前が挙げられている。
また、2010年前半のMaltine RecordsやZOOM LENSなどのインターネット・レーベルではクラブミュージック文脈でキャラクター性を脱色され、純粋な楽器として使われている合成音声音楽がしばしばリリースされていた。
bo enの人気をはじめ現代にもその流れは脈々と存在する。

前述のVirgin Babylon Records所属の窓辺リカやPAS TASTAのquoree、トラックメイカーのKAIRUIなどは熱心な初音ミクユーザーでありながらキャラクター主義的な消費と中立に位置している。
それは冨田勲やDCPRGが合成音声に接近したころのアプローチとは全く異なるもので、新技術への興味ではなく、自分の記憶を喚起させる切実なトリガーとして機能しながら、同時に物語やMV主義の比重が重いニコニコ文化とは別の路線での表現を確立している。

こうした流れを経て近年は、ニコニコ動画シーンの側でもいよわ、長谷川白紙、原口沙輔あたりを明確にリファレンスに据えた作風のクリエイターが多く登場してきている。
アカデミカルと高い技術力によって構築された音楽性を、10代をはじめとする若年層が限られた環境下で何とかなぞろうと懸命に努力し続けることにより、日々常識から外れた作曲手法やジャンルの楽曲が生まれ続けているのは興味深い。
この流れを受けて2024年初頭を機にコミュニティは入り混じり、不思議な様相を呈している。

KAOMOZIでは今までポップスをテーマに、そのどれにも属せる可能性を持った楽曲たちを扱ってきた。バンドサウンドやブートレグ文化などファン層が明確に定まった界隈に固執せず、それぞれが内面にもつポップネスを眼差し続けることで、レーベルはJ-popを真っ向から肯定してきたといえる。

あらゆるジャンルをメタ的に横断し不文脈に生きる合成音声の存在を鼓舞し許容する土壌のもとで、キャラクターや視覚的な物語要素とコミュニティ意識の強いニコニコ系譜の「ボカロP」たちがこちら岸への音楽を制作したら一体どんな新しい景色が見えるのだろうか。

ハイパーポップや電子音楽のアーティストで何度も歴史として掘り返されるミーム文化、同時に明確に距離をおかれ、多くのアーティストから過ぎ去った青春のように語られ続けるインターネット音楽。
辿ってきたルートがそれぞれ異なるだけで、すべては接続され、干渉しあって、まだ見ぬ地平へと推進していくべきである。
「DAISY BELL」にはじまるコンピュータの歌声は多種多様に歩みを進め、進化し、また別の場所で絡み合い、複雑に未来を紡ぎ続ける。

いまこそ合成音声楽曲、ボーカロイド・ソングスの可能性を、あらゆる視点から受け止め、攪乱するべきではないだろうか。

コンピのフィジカル版は1/26開催のイベント即売会『THE VOC@LOiD M@STER 58』の駒澤零/零進法合同ブース【C36】にて先行販売される。
翌週の1/29にはBandcamp、各種サブスクリプションサービスでの配信/販売もスタートする予定とのこと。

【コメント】
ロックが演歌のように前時代的な音楽として扱われる未来なんて誰が想像したでしょうか?かつて革命であり、斬新だった合成音声もいまやすっかり生活に根付いたように思えます。

未来から化石になったわたしたちを眺めたとき、そこに横たわる歴史書にはなにが書かれているのでしょうか。様々な垣根やしがらみに囚われることなく双方向的に影響し混ざりあう音楽たちの行く末を、わたしはこの目で見てみたい。デイジー・ベル以後の音楽を!
– 駒澤零


『POST DAISY BELL』V.Aアートワーク
『POST DAISY BELL』
/ V.A
2025年1/29リリース
(2025年1/26開催ボーマスで先行販売)
フォーマット:DLカード/デジタル配信
レーベル:KAOMOZI
【Track List】
01. 荒木若干 – たましいごと
02. mnmnmnmn – さくれつ
03. appy – Thunderbird
04. 佐藤乃子 – 巡巜巜‹‹…
05. ⍼ – 道化
06. 豆屋 – Farewell, Hateful Summer
07. ヤギイラオ – マジカルバナナ
08. Elitetao – 赤くて誰もみていない
09. 越前 – inside out
Bandcamp
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2025.1.22 21:00

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