【INTERVIEW】『ライブ・アット・シェルガーデン』について、CHIBOに聞く

1966年、陳信輝、加部正義とのミッドナイト・エキスプレス・ブルース・バンドに始まり、ゴールデン・カップスと並ぶパワーハウスや、今なお活動中のSKA-9など、本牧ロック・リジェンド、CHIBO。1980年代初期に活躍したベイサイド・ストリート・バンドのライブ音源が発売されたのを機に話を伺った。氏が経営する横浜・本牧のブギーカフェに何度か足を運ぶうち、氏の言葉の端々に、パワーハウスやその発展形パワーハウス・ブルース・バンド、そしてベイサイド・ストリート・バンドは、モノの考え方も含め、音の革命を目指し実践した、その最初ではないかと思うようになった。

子供の頃からたくさんブルースとかR&Bをコピーしたり聴いたりするじゃないですか。それが、シャッフルされて出て来るんじゃないかな。

-:このライブ盤CDのマスターになったカセットテープ自体が、客席でのオーディエンス録音ですが、とにかく音がデカいんですね。パワーハウスのLP(1969年 東芝EMI「ブルースの新星~パワー・ハウス」)もそうでした。チーボーさんのは日本のバンドにはない音のデカさなんです。外タレと日本のバンドのライブの出音の違いって、体力や体つきの違いとしか説明出来ないわけで。
CHIBO:そうなんですかね。
-:アメリカのバンドみたいなんですよ、このベイサイド・ストリート・バンドは。
CHIBO:よくわからないけど、そうだったらうれしいな。
-:ドォーンと音の塊が来ますね。
CHIBO:そうかな。バンド全体でくる感じ?
-:バンド全体でデカい。そしてそこに、R&Bを感じる。ロック・バンドをバックにしたソウル・シンガー、それがチーボーさん。
CHIBO:日本では、僕らの前の時代は、あんまりいなかったかな。
-:その後も実は日本のロックには外国のロックのようなバンドがあまりないんですよ。
CHIBO:そうかもな。自分は外国のバンドに感じるように、歌もバンドの一部みたいなに考えています。
-:それ、このライブ音源で一番先に感じたことです。何で楽器を持たないヴォーカリストの人が……。
CHIBO:1人のボーカリストというよりもバンド全体でいく感じですかね。
-:そう思いました。
CHIBO:自分もそう思いました。
-:たいていは、まずギターを弾いてみてそこからバンドが始まると思うんですけど、そうではなくて最初からボーカリストとしてやろうと思ったのですか?
CHIBO:ドラムもちょっとは出来るんですけど、ボーカルがすんなりいっちゃった、という感じかもしれませんね。勘違いかもしれませんけど(笑)ボーカリストが好きだったのかもしれませんね、最初から。エリック・バードン、リトル・リチャード、ヴァン・モリソン、とか。
-:子供の頃から楽器に親しんでいたということはなかったんですか?
CHIBO:ないんですよね。少しは出来るんですよ、見よう見まねで。ハーモニカとかちょっとは。でも練習したということはなくて感覚的にやっている感じなんですよね。
-:曲作りは全部チーボーさんですが楽器の感覚から作るのではなく。
CHIBO:メロディーやリフを自分で作るんですよ、降りてくる感じで。そしてギターやピアノの人にコードをつけてもらう。子供の頃からたくさんブルースとかR&Bをコピーしたり聴いたりするじゃないですか。それが、シャッフルされて出て来るんじゃないかな。



今だからこうやって分かってもらって話せるじゃないですか。でも当時は誰もわかってくれなかったよ。わかるわけねえよな(笑)

-:そしてこのライブ盤CD、次に思ったのが、他で感じることのないセンスの凄さ。センスでしかない、センスだけのバンドなんですね、ベイサイド・ストリート・バンドは。もちろんパワーハウスもですが。これこそが横浜なのかなと思ったんですが、例えば、ゼムよりもシャドウズ・オブ・ナイトである感覚。横浜だと周りもみんなそうだったんでしょうか。
CHIBO:周りはよくわからないですけど、自分はゼムよりも不良って言ったらおかしいですけど、B級のガレージ、そしてパンク・バンドに繋がる、何か反発じゃないですけど、そういうのが好きなのかもしれません。
-:シャドウズ・オブ・ナイトはアメリカのバンドで…、
CHIBO:イギリス臭いアメリカのバンド。何かB級で荒っぽいんですけど、感じるものはありましたね。好きですよ。ゼムも最高なんですけど。
-:こういった感覚的なものというのは今だとよく分からないんだけど、チーボーさんの音楽を聴いていると、なるほどそうなんだ、と分かるわけです。チーボーさんがバンド始めたちょうどその時期、1966年から68年はイギリスのロックが急に変わってきた頃ですよね。ビートルズだと「ラバーソウル」「リボルバー」、ヤードバーズもサイケデリックになったり、クリームやジミ・ヘンドリックスも。このあたり、チーボーさんは演ってないですよね。
CHIBO:パワーハウスの時はクリーム、ジミ・ヘンドリックスの方には向いた時があったんですよ。でも自分はガレージ・ロック・バンドをやりたかったので、葛藤がありました。
-:モッズの感覚を感じました、モダーンズ。ブルースはアメリカであって、それがリバプールなどを経由して広まったけどイギリス人は研究する感じ。イギリスでもモッズの快楽主義、そんな感じをチーボーさんから受けます。
CHIBO:それで音楽もブルースもR&Bもイギリスのその辺のバンドから遡っていったんですよ、自分。レコードはアメリカのバンドのものも買っていたんですけど、感じるのはイギリスのロックから。そこからさらに遡っていって、ボ・ディドリーやラリー・ウィリアムズに入っていったんです。だから完全に影響されたものは最初はイギリスのバンドですね。変わった子だったね、子供の頃は。今だからこうやって分かってもらって話せるじゃないですか。でも当時は誰もわかってくれなかったよ。わかるわけねえよな(笑)



-:中学や高校は普通に行ってたんですか。
CHIBO:自分は中学から日大日吉、高校1年でクビになり、鎌倉のセント・ミカエルに行って、停学になりながらもかろうじて卒業はしました。
-:最初に知り合ったのは誰なんですか?
CHIBO:(陳)信輝ですね。
-:遊び友達?
CHIBO:あっ!いや、加部(正義)です。
-:近所だったんですか?
CHIBO:(加部)マーちゃんの家はちょうどその山(本牧山頂公園)の向こうあたり。当時はアメリカン・スクールのパーティでバンドで演ったり、ダンスを踊ったりしてました。
-:そういうのが、今の感覚では分からないんですね。関内の中川三郎のディスコで演奏したりとか。
CHIBO:ベベズ(1966~68年、パワーハウスの前身)の時は出てました。
-:バンドで?
CHIBO:そこでジョーちゃん(柳譲治)のムーと出会ったんですよ。ムーは特別に上手くて。R&B、ソウル・ミュージックですよね。それがすごい上手くて。僕らはカッコつけているだけでしたからね(笑)それでね、仲良くなって精鋭が集まって合体してパワーハウスになったんですよ。(ムーから柳譲治と野木信一、ベベズからCHIBOと陳信輝)
-:音楽好きの仲間が集まって……
CHIBO:遊ぶ、踊る、バンドやる、そしてファイトもある。そういう所だったんですよね、本牧は。土曜日はパーティがどこかであって。
-:具体的な場所だと?
CHIBO:YCAC(横浜カントリー・アンド・アスレティック・クラブ。その体育館)。それが変化して日本の不良がダンス・パーティをやりだした。不良でもその文化はあったんですよ。「ルイ・ルイ」や「ホワッド・アイ・セイ」を踊るとか。アメリカ文化が強かったって事になるのかな。ちょっと先輩に、ゴールデン・カップスの(デイブ)平尾さんもいました。
-:それと、レコードは(米軍住宅の)PX(物品販売所)から誰かから買ってきてもらったんですよね?
CHIBO:頼んで買ってきてもらうか、そこで待ってて買ってきてもらってました。ヤードバーズやゼムのレコード、ラヴィン・スプーンフル、プリティ・シングスなんかも。
-:ラヴィン・スプーンフル!やっぱりこのセンスですね。
CHIBO:あと、ヤング・ラスカルズ。

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『ライブ・アット・シェルガーデン』
/ CHIBO & THE BAYSIDE STREET BAND
2020年5/13リリース
フォーマット:CD
レーベル:SUPER FUJI DISCS
カタログNo.:FJSP392
価格:¥2,400(税抜)
【Track List】
01. ほっといてくれ HOTTOITE KURE
02. マイ・ガール MY GIRL
03. トンネルぬければ TUNNEL NUKEREBA
04. ロンリー・レイニーデイ・ブルース LONELY RAINY DAYS BLUES
05. あいつはプティ・ブル PETITE BOUR
06. ザッツ・オールライト THAT’S ALL RIGHT, MAMA
07. スタンド・バイ・ミー STAND BY ME
08. ドキ・ドキ・トゥナイト DOKI DOKI TONIGHT
09. ヘイ・ヘイ・ヘイ HEY HEY HEY
10. ブルー・スエード・シューズ BLUE SUEDE SHOES
11. スロー・ダウン SLOW DOWN
12. リトル・ガール LITTLE GIRL
13. ボニー・マロニー BONY MORONIE
14. ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー BRING IT ON HOME TO ME 〜 ユー・センド・ミー YOU SEND ME
15. テイク・ユー・トゥ・ヨコハマ TAKE YOU TO YOKOHAMA

演奏:CHIBO & THE BAYSIDE STREET BAND
ボーカル:CHIBO
ベース:オイル平尾
ギター:中屋隆
ギター:TARO
ドラム:野木三平
キードード:ミッキーJr.
1983年5/26(横浜 新山下)バンド・ホテル シェル・ガーデン



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2020.6.22 12:00

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