【INTERVIEW】ロクトシチ『A DEEP WELL』
ポスト・パンクやハードコアを愛し、その音をかき鳴らすものは、未だに後を絶たない。
今回のインタビューは、東京都内で密かに活動を続け、DIY精神をつらぬくポスト・パンクバンドへインタビューした。
ギターをもって、一番自然に、一番カッコよく音を鳴らせるのが、このロクトシチの音なんだと思います(加島)
- –:ロクトシチのライブ活動や音源販売は2015年頃から始まっていますが、いつ頃から始まったんでしょうか?
- 白石:2015年の6月頃に初ライブをしたので、たぶん2014年ごろから活動がはじまったかなと思います。
- 加島:最初は、僕がフリーターでバンドを続けていて、その時に組んでいたバンドともう一つ別のバンドとして、僕と丸山の2人でロクトシチを始めたんです。そのあと、すぐに社会人として会社で働くようになって、組んでいたバンドを辞めて、ロクトシチは趣味として続けようと思っていたんですよ。片手間で、社会人バンドとしてやろうかなと。ライブ活動をする1年前、だいたい2014年には曲を作っていて、打ち込みサウンドに2人ボーカルで歌っているようなものだったんですが、「バンドで再現しよう」と思うようになっていって、いまのメンバーに声をかけたんです。
- –:みなさん友達だったんですか?
- 加島:大学時代にはいっていた軽音サークルのメンバーが主ですね。小川くんは別のところからです。そのときはみんな社会人で、音楽からは離れていたんですが、声を……「暇つぶしにやってみませんか?」と声をかけさせてもらったんです(笑)
- –:すごい下から入っていったんですね(笑)
- 白石:いやでも、確かに最初はそういう風でしたよ(笑)
- 加島:当時は仕事が忙しすぎたので、Gorillazみたいに曲作ってウェブで公開!そうして活動していこうぜ!とか思っていたんですけどね。
- –:ロクトシチ というバンド名なんですが、どういった経緯があって、この名前になったんでしょう?
- 丸山:わたしが名付け親です。どっからどこまで話せばいいかわからないですが……数字の6と7が好きだというに説明しています。細かく話すと、子供のころに数字を擬人化して遊ぶということをしていて、そのときによく現れていたのが6と7と8で、そこから愛着があったんです。たまに9が入ってきたりして……
- 白石:そうだったんだ(笑)
- 加島:いま初めて「9」の存在を知りました(笑。
- –:いまようやく詳しい話が明かされたようで(笑)いまは六人編成で活動されているとのことですね。
- 小川:ベースに関しては、僕ともう1人のメンバーの山田くんで、それぞれのプライベートと相談しつつ交代しつつ弾いている状況なんですよね。
- 加島:やむにやまれぬ事情なんですが、いまはそういう風に活動していますね。
- –:もうすこし根本的なところをお聞きしたいんですが、いつ頃から楽器を始められたんですか?
- 加島:みんな18歳のころじゃないですかね?
- 小川:中学だったかな
- 白石:僕は中1ですね
- 加島:僕は高校の頃ですね、軽音部でコピーバンドをやるのがきっかけですよ。
- –:音楽と出会ったり、楽器を引くきっかけになったバンドはありますか?
- 白石:中学の頃、野球部のカッコイイ友達がL’Arc~en~Cielのコピバンとして文化祭にでたんです。その姿をみて「カッコイイ!!」と思って父親に頼んでみたところ、その文化祭でラルクの曲を弾けないなら辞めろと言われ、「わかりました」といってやり始めたんです。割とネガティブな理由なんですけど、飽き性な僕のことなので、1曲も弾けずにすぐ辞めるだろうと親は思っていたらしいです。
- 加島:僕はTHE BLUE HEARTSですね、中学時代に出会って、「やるしかないだろ」という感じでした。
- 小川:僕はGLAYですね、僕ら年が近いですし、こうなりますよね(笑)
- –:たぶん僕とも歳が近いのがうすうす分かります、やはりそうなりますよね(笑)そのあと、メンバー皆さんは大学で出会うわけですね。
- 加島:そうですね。小川とはちょっと違った形で出会っていて、僕らはさっきも話したフリーターのときに組んでいたバンドで一緒だったんですよ。
- –:なるほどです。この人に影響されたといえよう方がいらっしゃれば、教えていただきたいのですが。
- 小川:プレイの面では、亀田誠治さんになりますね。椎名林檎さんや東京事変はもちろん、平井堅さんや西野カナさんでも演奏していることもあって、よく聴いてたりますね。人となりは正直わからないんですけど、フレーズなどを弾いて練習してます。
- 加島:僕はFugaziのギー・ピチョット(ガイ・ピッチオット)ですね。あとはAt The Drive-Inのオマー・ロドリゲスです。
- –:FugaziとAt The Drive-inは公式サイトでも明言されているように、大きな影響源だと思うのですが、どういう風に出会いましたか?
- 加島:大学に入って、音楽をいろいろ聴いてるときに、ズバっとハマって、これだ!と思えたのが大きいですね。
- 丸山:わたしはほんとに昔の話ですけど、SPEEDですね。10代のころはそういったポップなものばかりを聴いてますね。
- 白石:僕はNumber Girlの田渕ひさ子さんかな……と思うんですけど、プレイにそれが出ているかはわからないですね(笑)加島とは好きな音楽が被っていて、Dinasour.JrやSonic Youthもお互いに好きですよ
- 加島:ロクトシチの音楽は、僕ら2人の音楽性や趣味がかなり反映しているんです。
- –:だれが作曲されているんでしょう?セッションから始まったり?
- 加島:基本、僕がひとりで大体を作ってしまいます。大元となるアイディアからある程度作って、みんなに「このフレーズをベースに好きに弾いてくれ!」という風に送って、みんなで思い思いに作ってきたものを組み上げていく感じです。曲の構成や、大事な部分を壊さないでくれれば大丈夫なので。
- 小川:僕としても困ったこともないんですよね、そういう風に投げてくれるとやりやすいので。こっちからアイディアを出したら、結構キャッチはしてくれるので、そのへんは固定概念なく、柔軟にやっていけてますね。
- –:ギタリストお2人で、いろいろと話し合うことはあったりしますか?
- 白石:最初の頃はちょっとしたけど、いまはないですよ。いまだと、ポーンときたら、ポーンと返して、「はいオッケー!!」という感じですすみます(笑)
- 加島:白石へ最初に送るギターも、じつはギター1本分フレーズしか送ってないんです。いまの音源を聴いて鳴っているフレーズも、実は白石さんがフレーズやソロを新しく加えてくれたものが多いです。彼が送ってに対して、僕がまた新しくフレーズを組み込んだりしますけど、基本オールオッケーなんですよ(笑)
- –:ここは白石さんにお聞きしたいんですけど、ただただ「爆音で音を鳴らしたい!」と考えたり、「このフレーズだからこう合わせると面白い」など、いろいろな解釈で考えられると思うんですが、ご自身はどう考えてらっしゃいますか?
- 白石:ここまで話をしてくれたとおり、ロクトシチの基本的な流れとして、加島が一通り作ってきて、ベース・ドラム・ギターで一捻りを入れることが多いわけなんですが、加島が作ってきた曲は「僕がここに入る余地はないんじゃないか?」と思えるくらいの完成の曲が多いんですよ。ただ、バンドってそこに一つスパイスを入れると、まったく曲の毛色が変わったりすることが多いじゃないですか?なので、色んな人にいろんなことを感じてもらえるようなフレーズを、気をつけて作っていますよ。パンクなギターで送られてきたら、ドロドロっとしたフレーズをあわせてみたり、不協和音をあえて出してみたり。いろいろと意識しています。
- –:詞先でつくります?曲先でつくりますか?
- 加島:ケースバイケースですね
- –:こういった音楽をやっていますし、失礼ですがほぼ曲先で作っているものだとばかり考えていました。
- 加島:英語で歌を歌っているんですが、メンバーはみんな英語ができないんですよ。なので、僕が日本語で書いたポエムを、三重県に住んでる英語が堪能な友人に送るんです。彼には、「意訳でも直訳でもいい、文の構成もまったく気にせず、好きに翻訳して!」と伝えてます。彼から翻訳してもらった文章を受け取って、そこからいろいろと曲や歌詞を作っていきますね。日本語で書いたときはサビになりそうな部分が、まったくそうじゃなくなったり、逆に普通に書いた所がとてもカッコよくなったりしますよ。
- –:その方法で多くの曲を作ってきたんですか?
- 加島:そうですね。さっきケースバイケースと言ったのは、その元ネタはあっても、曲と詞を作るのは同時作業だからなんです。曲でカッコいいものができたらそっちに歌詞を合わせることもあるし、逆もまたあります。
- –:英語で歌うのは、やっぱり好きだからですか?
- 加島:英語で歌われた曲のほうがカッコイイから、というのが一番ですね。
- –:その点、丸山さんいかがですか?英語しか歌わない、日本語で歌いたいなと思えるときとかありませんか?
- 丸山:それはたしかに思いますよ。でも、わたしがこんなこというと変ですけど、わたしは歌がうまくないし、日本語で歌を歌ってしまうとまるで役立たずになってしまうと思いますね。英語の発音は良くしていきたいなと、ちょっとした目標はありますよ(笑)
- –:なるほどです。いま活動をしているなかで、リスペクトしているバンドや尊敬しているバンドはいらっしゃいますか?
- 丸山:Home is a fireというバンドですね。ピコピコした音が心地よくて、とても好きですね。
- 白石:同世代だと、The Taupeというバンドですね。最近になって対バンしたことあるんですが、一方的にライバル視というか、好きだと思えるバンドなので、これからも対バンできればいいなと思います。
- 加島:エレファントノイズカシマシですね。彼らと初めて知り合ったのが東京大学の五月祭にでたときだったんです。メンバー全員が様々な活動をふくめて活動されているので、そのバイタリティの凄さに尊敬してます。彼らのライブを見ていると、「このバンドのメンバーになって活動したい!」とすら思えてきて、嫉妬心も半分ありますけどね(笑)
- –:さきほどもありましたけど、FugaziやAt The Drive-Inから影響をうけてもいて、いまエレファントノイズカシマシという名前もあがりました。ロクトシチの音楽には加島さんや白石さんの音楽性が色濃く出ているという話でしたけど、ノイズの方向性には走らないんですか?。
- 加島:ギターをもって、一番自然に、一番カッコよく音を鳴らせるのが、このロクトシチの音なんだと思います。
- –:興味半分ですが、エフェクターはおいくつもってますか?
- 加島:僕は歪みしか使わないので5個くらいですね。白石さんが多いんじゃないんですか?
- 白石:僕でも8個くらいですね。最大でいうと、マルチエフェクターの音色あわせて40個くらい使っていたこともありますよ。ノイズのためにつかっていたエフェクターもあったんですけど、どんどんと壊れていってしまったのと、煩わしくなってきたので、いまはより少ない数ですね。
- 加島:でもまぁ、エフェクターは曲中で使ってないんです。曲作りのときにもお互いに考えていたのは、「変なエフェクターを使わない」ということでしたもんね。「これ何の音で作ってるんだ?」と思われないためというか
- 白石:そもそもフレーズ自体がヘンなものが多いのに、余計わけわかんなくなってしまうんじゃないのか?ということを感じていたんですよ。
- –:「なんだこの音は!?」というのが好きなひともいたりするのに、なぜなんでしょう?
- 加島:ギターの音は、ギターの普通の音が一番カッコいい、ということです。たしかにノイズが好きですけど、ハウリングや歪みの問題じゃないですか?シンセサイザーみたいな音色なら、シンセサイザーで弾きましょう?ということです。ギターの音色を残しながら、ギターらしいプレイをしたいですしね。
- 白石:そうだね。音色やエフェクターありきではなく、あくまでギターサウンドありき、ということです。
- –:そのあたりに、ロクトシチのロックバンドなスピリットを感じますね。
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『A DEEP WELL』/ ロクトシチ
2018年3/7リリース
フォーマット:CD
レーベル:Kerosene Records
カタログNo.:KRSE3
価格:¥1,296(税抜)
【Track List】
1. Intro
2. Nervemap
3. Our distorted concerto
4. Dramatic farce
5. In the car
6. Harbor
7. Giant set free
ディスクユニオン
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2018.5.15 12:00