【REVIEW】HUSH『When You Smile』 セルフライナー&青春のアルバム
ザ・ビーチボーイズ、プリミティヴズからペインズまで広くネオアコ、インディーロックを咀嚼した名古屋のバンドHUSHが新EP『When You Smile』 を6月29日にリリースする。M-2コーラスでCRUNCHの堀田倫代、M-4リミキサーとしてHouse Of Tapesも参加する強力盤だ。
先日、HUSHのフロントマン小出雄司からindiegrabに手紙が届いた。セルフライナー、元ネタから彼らが影響を受けたアルバムまで語り尽くされた内容を一挙掲載する。
1.When You Smile
実は数年前に録音して、代表曲としてずっと無料配信をしてきました。ラジオでオンエアされることも多く、僕達の中でも最も露出が多い曲です。どうしても形に残したくて1st EPのタイトル曲にするつもりでしたが、新曲を優先したために一度見送りました。
今回のリリースにあたりすべてを再録音。漠然と「自分たちはこういうバンドだったのか」とひとつ答えが出た気がしてます。ソングライターとして言えば、もしかしたら僕の最高傑作かもしれないと自負しています。
元ネタとしては、The Primitives 「Crash」、ギターソロ前はThe Pains Of Being Pure At Heart 「Everything With You」です。なんとなくスネオヘアー 「ウグイス」も感じられます。
2.18 -eighteen-
ボツ曲になった歌詞を活かすためにしばらく寝かせといた結果、別進行で作曲したグッドメロディがうまく言葉を拾ってくれました。特に大きな盛り上がりがないところに価値があると思っていたものの、当初はどのようにして「聴ける曲」にするかが課題でした。
無茶振りとも言えるゲストにCRUNCHの堀田さんを迎えて、万事解決!曲の持つ雰囲気と彼女のイノセントな歌声が本当にうまく調和が取れてる。今さらだけど「死んでしまいたい~♩」なんて歌わせちゃってごめんなさい。
元ネタとしては、特に歌詞はThe ピーズ 「実験4号」に影響され、また曲はThe Hit Parade「You Didn’t Love Me Then」、そしてPrimal Scream 「Velocity Girl」、Flipper’s Guitar 「Joyride」の雰囲気が感じられないでしょうか?
3.Ellie My Love
こういうナンチャッテ英語の3分間ポップスを作るのは好きですが、いつも作詞には苦労してしまいます。そんな時は架空の女の子の名前を出してしまえば、否が応にもラブソングに大変身!そこに深い意味なんていらない…Boy Meets Girl的な内容があればOKなのさ。
この直球でキャッチーなサビはそこらの若造ならきっと恥ずかしがって真似できないだろう。アレンジ的にもメンバー近藤くんの手腕が遺憾なく発揮されてる。どことなくElvis Presleyっぽいのも面白い。
元ネタとしては、Tracey Ullman「Breakaway」、日本のJITTERIN’JINN 「アニー」、the pillows「Rodeo star mate」あたり。
4.Woo-Wah (House Of Tapes Remix)
「台湾のいすずのCM」に起用された「Woo-Wah」が前作に収録されてるので、これ見よがしに宣伝文句にしたものの、日本では未オンエアのため本人達も含め誰もいまいちピンときてないのでは、と思っていた矢先に契約が更新され計2年間オンエアされるということが決定。
「もう少しあやかろう!次はリミックスだ!」ということで、古くから付き合いのあるHouse Of Tapes氏に依頼。彼特有のパッチワークのようなRemixがきっと2016年のフロアを熱くするでしょう。
ちなみにFatboy Slimみたいにと依頼したらスーパーカーみたいになってました。
『When You Smile』/ HUSH
2016年6/29リリース
フォーマット:CD
レーベル:69records
カタログNo:sxne-006
価格:¥1,080(Tax In)
【Track List】
1.When You Smile
2.18 -eighteen-
3.Ellie My Love
4.Woo-Wah (House Of Tapes Remix)
全国TOWER RECORDS+Amazonで販売
続いてはHUSHが曲作りで影響を受けたアルバムです。
スネオヘアー『a watercolor』
バンドをやり始める前の学生時代によく聴いていました。
スピッツにも通じるJ-POPのフィルターを通したオルタナロックの印象で、
単純に海外バンドの真似事にならないサウンドが昔から好きでした。
ただ今まで曲作り時に意図的に意識したことはなかったのですが、
出来上がった曲たちを改めて聴いてみると、かなり影響を受けてるなと感じます。
スーパーカー『スリーアウトチェンジ』
この名盤の呪縛に囚われた人たちはたくさんいると思いますが、僕もその中の一人です。
初めて聞いた瞬間に「こういうバンドやりたい!」と思ってしまったのもあって、
なんだかんだやってても最終的にここに戻ってしまうというか、初心に返ることができる。
だからか僕はバンドの1stアルバムというものが大好きなのかもしれないですね。
フリッパーズギター『ヘッド博士の世界塔』
最初聴いたときはピンときませんでしたが、色々と名盤やジャンルを探ったうえで
再度聴き直すと実はとんでもないアルバムだったんだなと衝撃を受けました。
ルーツへの愛を表明することがカッコイイことだと新たな価値観を植え付けられました。
聴くたびに新たな発見があるような、そんな要素を曲に盛り込めたらと意識しています。
The Pains Of Being Pure At Heart『The Pains Of Being Pure At Heart』
曲作りするうえでバンド内の共通言語って結構大事なことだと思うんですけど、
僕等はメンバーの好みが異なるので、実は結構少ないんですよね。
その中でも何度も名前が挙がるくらい全員の意識の中にあるだろう数少ないアルバム。
単純にキメやフレーズを拝借したこともいっぱいありますが(笑)
稲妻級の衝撃ではないけど、周りに流されることなく、普遍的であることに魅力を感じてます。
The Hollies『Stay With The Hollies』
僕等は結成当初はもっとガレージロック的なことをやっていたんですが、
楽曲にコーラスを意識的に取り込だ辺りから自然とポップになっていきました。
その中で「バンドはどこへ向かうのか」とある種の青写真を模索してた頃に
ひとつの指針として捉えて、もしかしたら今もそこへ向かってるのかもしれない。
若さあふれる当時恐らく10代だった彼等にアラサーの僕等が歩み寄っています(笑)
The Beach Boys『The Beach Boys Party』
がっつりスタジオで録音した音源に後でガヤを録音した疑似ライブ盤になってしまいますが、
このちょうど良いラフ感とハッピー感が聴いてて心地よいんですよね。
言い訳っぽくなりますが、僕等は決して技巧派なバンドではないので(笑)
何かしら壁にぶつかったりすると、このパーティに参加したくなります。
おまけ 1stEP『About A Fever』の元ネタ・リスト
1.About A Fever
R.E.M. 『Losing My Religion』です。グッドメロがあればサビはいらないって思ってました。
2.Woo-Wah
Frankie Lymon & The Teenagers 『Why Do Fools Fall In Love』、それにHanson 「MMMBop」です。
3.Dumb
掛け声はIggy Pop「Funtime」、The Velvet Underground 「White Light/White Heat」を意識しました。ドラムはJesus And Mary Chain「Upside Down」です。Pixies 「Debaser」の影響も今思えば。
4.Dear Tracy
1910 Fruitgum Company「Simon Says」と、影響を受けたアルバムでも挙げたThe Beach Boys 「Tell Me Why(The Beatles Cover)(From The Beach Boys Party)」。さらに付け加えるならEverly Brothers 「Bye Bye Love」、The Newcolours 「Call On Me」でしょうか。
テキスト by 小出雄司(HUSH Vo. G.)
2016.4.16 13:00
カテゴリ:REVIEW タグ:crunch, house of tapes, hush, JAPAN