【REVIEW】bahnhof::zoo / Reachin’ Out EP(TENTH DEGREE RECORDS)
Juke作品を多く発信しているアムステルダムのbahnhof::zooが、ポートランドのレーベルTENTH DEGREE RECORDSから新作を配信した。サウンドを構成する要素は前作Amsterdam Footworkから大きな変化はないが、ヴォーカルトラックのメロディラインは一層明確になり、トラックのコラージュ感はカラフルに仕上がっている。
1. Reachin’ Out
スタンダードなJukeセオリーの細やかなハイハットとハンドクラップとリムショットのイントロにヴォーカルが重なると一気にメロディーが楽想を広げる。キックの配置と折り重なるコラージュ感がとても心地よい。中間部のエモーショナルなメロディーの盛り上がりは非常にコンテンポラリーな仕上がりで洗練されている。このトラックがリードとなって、後半にリミックストラックが配置されている。2. Let it Go
冒頭からスライドを意識したメロウなベースラインはサンプリングを置き換えたスタイルがとても印象的で、倍速BPMとの組み合わせがスムースなトラック。ここでもオブリの効いたヴォーカルサンプリングがエモーショナルで美しい。細かく刻まれたリズムトラックが次第に倍速寄りになることで中間部のミニマル感が強調されるスタイルは前作を踏襲しているが、ここでもやはりヴォーカルトラックのメロディーが上品さを添えている。3. Time in Yr Life
Vaporwaveで好んで使われる沈み込む様な低めのチューニングが印象的なスネアがメロウさとJukeの細かなBMPの両方を支えている。フレーズが明確なリードシンセの中間部はネオソウル風でもあり、ブラックシネマのサントラのようでもある。テンションが細やかに配置されたコードワークのはめ方が美しい。4. Baby Come Back
倍速のループを意識した打ち込みで高音気味のベースラインとシモンズ風のシンセドラムとピッチを上げたヴォーカルサンプルの芸の細かさに引き込まれる。回転数を上げたように響かせつつ、低音は前後のトラックとも違和感なく配置しており不安定さと安定感が入り混じるトラックだ。5. Torn Apart
本編最後のこのトラックはサックスやエレピのサンプリングがメロウさを引き立てており、ほぼVaporwave的なアプローチ。そこにやはりメロウなヴォーカルが折り重なることでとても美しいトラックに仕上がっている。Juke感が薄れる間奏部分で聴かれるコーラス風サンプリングがとても美しい。この中間部で展開する多幸感はとてもカラフルで印象的だ。本編の後、CRZKNYらによるReachin’ Outのリミックスが5トラック収録されている。Jukeを踏襲したスタイルからVaporwave、メロウ寄りのスタイルまで幅広くバランスよくトラックが揃っているが、ここではよりストイックでミニマルなスタイルのトラックでもヴォーカルの配置が意識されているように感じる。それだけ歌の印象が強い作品ということなのかと思う。
Grime、Juke、Vaporwave、といった細分化されたスタイルを程よく取り入れつつ、全体としてはスタイルの細分化をあまり意識させないヴォーカルトラックの折り込み方が非常に上品に仕上がっている。これまでのサンプリングコラージュの作風から一歩踏み出した部分がリスニングとしての聴きやすさを引き出している。どちらもとても素晴らしい作品だ。
テキスト:30smallflowers(@30smallflowers)
2016.4.12 11:47
カテゴリ:REVIEW タグ:bahnhof::zoo, electronic, future bass, juke, Nederland
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