【REVIEW】selected works MORI / tameike(neRecords)
http://nerecords.tokyo/release/ne_002/ne_002.html
2015年4月に始動したネットレーベル・neRecordsがコンピ「hidamari」に続いてリリースしたのが本作だ。tameikeは、これまでに自身のsoundcloudを通じて、ポストロック、ノイズ、アンビエント、ミニマル、エレクトロニカなど幅広いトラックを発信しているが本作はそれら一連の作品を総括するようなバランスのとれた内容になった。
1.sampling and life
軽くコードをとりながらトップラインがメロディーを紡ぐオルガンのサンプリングフレーズが複数の積み重なるブレイクビーツの上に微妙に拍子を外しながら配置される。中盤のリズムトラックの部分的なミュートがとても美しい。メジャーコードが引き出す明るさと配置の偶然性に引き込まれるトラックだ。
2.on the hill factory
シンプルな電子音にピッチベンドが施され、淡白なフレーズを組み立てていく。細かく刻まれたハイハットに深く入り込むキック、大きな展開を持たせず、音色も絞り込んだ中で、トラックの抜き差しで構成を作り上げる様は不思議な効率性を感じる。
3.░░░░ Remaster
主に複数のキックとそれを細かくカットアップした音だけで構成されたミニマルエレクトロニカである本トラックは、従って音階を持たず、表現方法も極めて限定的だ。それでも、一定のフレーズにはとても音楽的な工夫が施されている。トラックの前半、最初に登場する四分音符を維持しつつ細かく刻むフレーズと続くリズムを反転させるフレーズの組み合わせが音楽的な魅力を放つ。楽曲後半は、逆回転混じりの音律をもったパーツがフェイドインで登場するが、キックのフレーズと徐々に重なりあっていく様はシンプルだが壮大な楽想を思わせる。
4.play in the woods
アコースティックギターによるアルペジオ、フィールドレコーディングされた人々の会話、リバーブ、手のひらで叩くパーカッションが刻むリズム。トラック後半は細かく配置されたサンプリングによるリズムが徐々に登場するが基本的にはフィールドレコーディングサウンドの流れを断ち切る事はない。やがて静かにフェードアウトして続くトラックへとつながる。
5.Heeey
続くトラックもフィールドレコーディングを主体としているが一層細かく刻まれて配置されている。やや前に出てくるダッキング、中盤から登場するシンセベースと冒頭から続く簡単なコードのフレーズがとても明記で清々しい。後半はとてもミニマルなループアプローチが登場した後に冒頭のテーマが繰り返される。自然体のエレクトロニカとサンプリング配置された細やかなリズムの組み合わせが興味深い。
6.Raw bit
力強いキックの四分打ちにサンプリング、基本的にはミニマルな構成が続くが、上モノの音色をシンプルに抑制する事でミニマル性を打ち出す様は見事だ。とくにエレピによるコードフレーズはインプロ的な偶発性を漂わせつつもブロックコードを朴訥と刻むべく配置されているが、その意味はトラック後半のディレイによって次第に明らかにされる。この辺りの構成は見事だ。
主にはフィールドレコーディングがオーガニックな響きを織り交ぜ、慎重に吟味された音色による短いフレーズやミニマルなアプローチが電子的にこれを発展させるという方法でトラックを構成している。どの曲も音は丸みを帯びた印象の音色から鳴っており、淡白な世界観とフレンドリーな質感が重なりあう仕上がりになった。
テキスト:30smallflowers(@30smallflowers)
2015.5.25 2:54
カテゴリ:REVIEW タグ:JAPAN, nerecords, tameike
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