【REVIEW】basyo compi vol​.​3〜春のアンダーグラウンド感謝祭〜 / VA



2015年、年明け最初の注目作品になった前作、basyo compi vo​​.​​2に続く「俳句コア」3作目のリリースが本作だ。Twitterでは頻繁に話題になっており、注目を集める中でのリリースになったが前作同様に軽みを帯びたユーモアは変わらず、一方でシリアスなトラックは単体として聴いても聞き応えがあり、また句自体も独立して作品になり得るクオリティーで引き続き充実したコンピになった。

1. 筍委員長 – YASAKA IN THE SEA!! (track by soejima takuma) -OPENING-
音響的なピアノのアルペジオは、soejima takumaが得意とするスタイルだ。そこにユーモアを交えた句がかぶさると、俳句コアになる。前作のオープニングの堂々たる前口上とは対照的なオープニングになった。

2. 第一句 – 103i (track by soejima takuma)
続くトラックもsoejima takumaが得意とするスタイルで、最初のトラックからの流れはスムーズだ。このトラックでアルペジオを刻むのはアコースティックギター、入り交じる電子音が印象的だ。

3. 第二句 – abelest (track by EMDEE1)
ここでは前のトラックの電子音が伏線になって、やはりスムーズなつながりが美しい。transposeを設立し、絵と音楽を自在に行き交うbeat maker、EMDEE1によるブレイクビーツが歌を引き立てている。

4. 第三句 – BOOL (track by Yuko Lotus)
続く第三句は俳句コアの絶妙なミクスチュア、ポエムコアからBOOL、GORGEから Yuko Lotusによる作品だ。ここではシリアスな音を積み重ねながらも軽みを失わず、ある種のアウトサイダーアートを具現してるようにも思える。

5. 第四句 – abelest (track by canooooopy)
多様なサンプリングのサウンドコラージュを積み重ねるスタイルが印象的なcanooooopyが提示した俳句コアは意外にも抑制の効いたトラックだ。その分、言葉を強く印象づける仕上がりになった。

6. 第五句 – uccelli (track by tokomanonka)
前回のコンピではノイズコアトラックが印象的だったtokomanonkaだが、今回は細かくエディットされた波形がエレクトロニカマナーを支える仕上がりになった。uccelliによる色彩の強い句も印象的だ。

7. 第六句 – LTPIMO (track by LTPIMO)
前作同様、トラック、句ともLTPIMOによるものだが、両コンピの間にリリースされたゴルッチノイズEPの延長とも言えるGORGEスタイルを織り込んだトラックはLTPIMOらしい端正な電子音楽に仕上がった。

8. 第七句 – 村上大樹 (track by 線描)
線描によるノイズと雅楽のミクスチュアトラックは、前作同様にもっとも俳句コアの当初からのスタイルを受け継いだものだと言える。メッセージ性の強い句がノイズの中で言葉を引き立たせている。

9. 第八句 – koji itoyama (track by koji itoyama)
トラックと句の両方を制作したkoji itoyamaは、アンビエント・ノイズを配置したトラックが印象的だ。soejima takuma同様に静謐なピアノの凛としたトラックが美しい。

10. 第九句 – 黒柳鉄男 (track by Xem[Ryuho Kotoge])
ドローンを活かしたトラックをシリアスに落とし込まずに、朴訥としたリーディングスタイルで詠まれるユーモアを交えた言葉につなぐセンスが印象的な仕上がりだ。

11. 第十句 – ろはに (track by 3deciliter)
波の音とエレピの短いフレーズのループに続いて、ダッキングを効かせたリズムトラックが入る、レイドバックスタイルの美しいトラック。句はトラックの一部として美しく織り込まれており、波の合間に配置されている。

12. 第十一句 – komada (track by abelest)
エレピのフレーズとヴォコーダーの重なりがLo-Fiな美しさを醸し出している。ろはにと3deciliter同様に句をリズムトラックの中にオンタイムで配置する構成になっており、これらは俳句コアの新しいスタイルの提示に成功している。

13. 第十二句 – 三善出 (track by Duenn)
深いエコーと静謐且つ若干のダブ処理に包まれたノイズまじりのトラックに、三善出の句が乗る。こういう組み合わせの妙が俳句コアのユーモアを支えているのだと思う。

14. 第十三句 – ポスポス大谷 (track by kondo koji)
口琴奏者でもあるポスポス大谷が示したスタイルは、ホーメイに似たアンビエント効果を醸し出す。フィードバックノイズに囲まれたkondo kojiのトラックがこれをスピリチュアルに支えるがシリアスになり過ぎないバランスが見事だ。

15. 第十四句 – 3deciliter (track by 3deciliter)
薄氷のようにするどくエディットされた電子音が印象的なトラックだ。ろはにと3deciliterによるトラックと同様にここでも3deciliterは埋もれるようにして句が配置されている。とても美しい。

16. 第十五句 – 黒岩徳将 (track by tokomanonka)
俳句コアの王道スタイルといって良いだろう、tokomanonkaによる和テイストと、俳句集団「いつき組」での活動が印象的な現代の俳人、黒岩徳将による立体距離感覚溢れる句が折り重なる印象的なトラックに仕上がった。

17. 第十六句 – メトロノリ (track by canooooopy)
experimental popを展開するメトロノリによるアンニュイなリーディングは、俳句コアがこれまでに提示してきたスタイルと極めて相性が良いと言える。canooooopyはやはりここでも抑制の効いたコラージュを提示している。

18. 第十七句 – 線描 (track by Xem[Ryuho Kotoge])
ボーカルエフェクト、ノイズを配置したノンビートのトラックと深いエコー、アンビエントダブスタイルによる低音が徐々に深まる構成が見事なトラックだ。

19. BOOL × Yuko Lotus – 第三句(低速ver.)-ENDING-
このトラックは第三句のversionになっているが、スロウコアを極めたYuko Lotusのdディープサイケスタイルの中でやはりBOOLによるリーディングが印象的だ。

本作のサブタイトルにある通り、極めてアンダーグラウンド色の強い仕上がりになっている。そして前作までの2作と比較すると、リーディングをリズムトラックの中に織り込むスタイルのトラックが増えている。この点だけをとらえると非常にシリアスなアプローチと言える。ところが、コンピを通して聴くとシリアスさよりもむしろ愛すべきユーモアが勝るように感じる。そういった所は俳句コアの不思議な魅力なのかもしれない。

テキスト:30smallflowers(@30smallflowers



2015.4.17 11:08

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