【REVIEW】LTPimo / Rainforest EP (15min records)



15min recordsというレーベルをご存知だろうか。フィジカルリリースしつつ、ネットレーベルでもある15min recordsは、wack wack rhythm bandとも交遊のあるLike This Paradeを中心とした、未来型バーバンクサウンドともいうべき音源を(決して饒舌とは言い難いが)リリースしている。

その15min recordsが今年もっとも注力しているユニットが、LTPimo(ルトゥピモ)だ。Like This Paradeのフロントマンであるミサワマサノリを中心として作られたこのユニットは一言で言えば、Electronica、少し丁寧にキーワードを付け足すなら、細かくカットアップされたリズムトラックに、室内楽を連想させるストリングスと何重にも重ねられて浮遊する不思議なヴォーカルが乗っかった、まさに未来型バーバンクサウンドともいうべきトラックを作り上げている。

彼らは、Grantie recordsをはじめとしていくつかのネットレーベルのコンピに参加しているが、ホームの15min recordsでのリリースは意外にも少ない。2014年秋の時点でわずかに2枚のEPがリリースされているに過ぎないのだ。

今日はそんな彼らが15min recordsからリリースしたEPの中でも、「Rainforest EP」を紹介したい。
冒頭のタイトル曲でもある「Rainforest」だが、品な室内楽のようなストリングスと断片的な単語、もっというと「音」を発音するヴォーカル、細かく刻み込まれたリズムでカラフルだが透明な彼らの世界観に引き込まれる。決して華美にはなっていない。音圧も高くない。しかしトータルのバランスはとてもよく考え抜かれていると思う。タイトルから連想するような雨粒、屋根を打つ雨、そういった映像を簡単な楽器の組み合わせで想起させる手法は見事だ。

続く2曲目は「Forestrain」だが、これは「Rainforest」の続編だろうか。基本的な音色の構成は「Rainforest」と似ている。しかし冒頭の重なり合ったヴォーカルの和声や、リズムだけでなくサウンド全体がカットアップされた作りは続編と言っても、remixでもなくアプローチの違いからしても明確に別の曲ととらえた方が良いだろう。タイトルを含めた言葉の共通性は遊び心なのかどうか。とても難しいアプローチをやさしく表現する為に彼らがあえて選んだ方向性なのだろう。

3曲目の「Myhouse is where」は、このEPの中では唯一、雨というキーワードが直接登場しないトラックだ。砂原良徳のようなストイックなラウンジスタイルの電子音楽を連想させる前半から、一気に四つ打ちのリズムになだれこむ。しかしそれも次第にストリングスに覆われて、突如あらわれた雨雲のように辺りを包み、再びラウンジスタイルに戻っていく。ここでも歌詞は(歌詞というよりも本当に単語の羅列だが)やはり暗示的と言える。そう考えると、このEPのトータルコンセプトが見えてくるような気がする。

ラストの「Rainforest2」は、冒頭のトラックの別バージョンだろうか。冒頭の曲と比べると少し長めではある。といっても、このトラックも1分に満たない短さなのだ。そう、一聴して分かる事は、先に書いた通りのElectronicaサウンドだが、聴き終えて感じるのは彼らのトラックが恐ろしく短いという事。Flying Lotusがそうであるように、短いトラックに情報量を詰め込むというのは実はとても手のかかるスタイルだろう。それをあえて選んだ彼らの狙いは何か。トータルで3分未満という極めて短いこのEPの全体像を理解するためには、結果として何度も繰り返し聴くしかない。その繰り返しに耐えるサウンドに彼らは挑戦している。ポップである事を放棄せず、実験を繰り返す彼らへの興味は尽きない。

テキスト:30smallflowers(@30smallflowers

2014.10.25 3:24

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