【REVIEW】Sesler / Herhangi

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ハンガリーを拠点に活動するAdem KURTによるユニット、Herhangiが新作を発表した。多作なHerhangiだが、従来のElectronic路線に加えて、サンプリングパーツのリワークによるVaporwaveアプローチやリズムトラックのTechhouse的な要素が織り込まれて上品さが増したように感じた。

1.Peyderpey
左右に揺れるエレピのコードワークサンプリングに硬質なハイハット、サイン波を組み合わせたベース音というシンプルな組み合わせで始まる冒頭のトラックはHerhangiの新しい方向性を感じさせる。John Tejadaの質感を連想させるリズムトラックにMatthew Herbertを連想させるエレピの配置がとても好感触。静かに進行するシンプルな構成だが終盤のエレピのオブリがとても美しい。

2.Yorgunum Ve Agrilar
ここでは、Lo-Fi Electronica周辺でかつて話題になったPluxusのサンプリングリフが印象的。低音を絞り込んだヴォーカルを引き立てる音数を抑制したリズムトラックがサンプリングフレーズと対比しながらメロディーラインのバックを隙無く埋めていく。とてもバランスのとれたアプローチだと思う。

3.Yolda
再びエレピのコードワークとミューとギターが上品に冴えるトラック。四つ打ちであっても出過ぎないキックがトラックを静かに進めていく。中盤に転調コードが見せる景色の移り変わりがVaporwave的なオブリと合わさってこのトラックの聴き所を作っている。このトラックは当初、本作のオープニングを想定して作られていたようだが、Peyderpeyを冒頭に配置した事によって中盤の位置に差し替えられている。冒頭のトラックと並ぶ新鮮なアプローチだ。

4.Oda
パッド系のコードにAdem Kurt自身のヴォイスが折り重なる。ハンドクラップを細かく設定したリズムトラックが全体のバランスを取りつつ、ミニマルに展開するこのトラックは大きな展開は無いが繊細に設定されたエディットが美しい。Herhangiとしては新しいアプローチになるがとても心地よく納まっている。

5.Ayna
トランペットや、SEのサンプリング、パッド系のコードワーク、Techhouse的なハイハット、本作中では珍しくフロントに押し出されたキックとスネア、全てのパーツがやや混沌としているものの、きれいに納まっている。トラックの冒頭とエンディングでやや強調されるSEのディレイは本作中では珍しいアプローチで印象に残った。

6.Basit
続くトラックはある意味Herhangiらしい、シンセサイザーによるシンプルなリフレインに音数を絞り込んだリズムトラックがパーツの抜き差しを中心にして進行していくスタイルだ。Herhangiとしては極めて安定したアプローチと言える。

7.Toz
ギターのアルペジオを連想させるシンセフレーズのバックでアナログなSEがループする。リズムトラックはやや変則的なスネア配置が印象的で、時折差し込まれるヴォイスサンプリングとともに本作中ではもっともラジカルな構成ではないかと感じる。一方でElectronic路線とSEのループ、エンディングは自然音のディレイと、本作のあらゆる要素が程よく埋め込まれており最後に配置されるトラックに相応しい余韻を残す締めくくりだ。

全体を通して従来からのElectronic路線に、ミニマルなアプローチ、サンプリングやリワークを通じてのVaporwaveなど、過渡期という事になるのかもしれないが、だからこそ垣間みるあらゆる要素が加わって魅力ある作品に仕上がった。特に新しいアプローチはどれも上品な魅力があるように感じる。こうした新しいアプローチはここひと月の間に発表されたものが多く、今後の展開も楽しみだ。

テキスト:30smallflowers(@30smallflowers

2015.8.30 10:57

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