【INTERVIEW】壊れかけのテープレコーダーズ『End of the Innocent Age』


徐々に徐々にかたちが形成されていく、その過程が好きなんですよね

–:いつも小森さんが作られた曲をバンドでどのように仕上げていくのでしょう? 今作の収録曲を1曲、例に挙げておしえてもらえますか。
小森:全曲共通しているんですが、歌詞、メロディー、テンポ、展開や曲の尺、骨格となるリズム・パターンなど、大枠は私個人の時点でわりとかっちり決まっています。それを簡易的な譜面に起こし、スタジオで皆で合わせながら組み立てていく。で、それを録音し持ち帰り、今度は大枠から細部へ、アレンジの方向性を組み立てていく。大体どの曲もこんな感じの作業の繰り返しで出来上がっていきます。

ただ、個々のフレーズは皆の個性を生かしたいので各々に振って、あまり「このフレーズを弾いてくれ」という指示はしないですね。あ、でも、オルガンのフレーズは結構指示するかもしれないな。

デモ作って皆に渡して、っていうのは昔からやらないです。で、やっぱりスタジオで歌い、そこに皆が合わせていって、最初は手探りで、だけれども徐々に徐々にかたちが形成されていく、その過程が好きなんですよね。
–:本作の曲作りや演奏をするうえで影響を与えた具体的な音楽や映画、小説、言葉、出来事などあればおしえてください。
小森:難しい質問ですね。日々いろんなもの、ことに影響を受けますからね。強いて、このアルバムの根底部分での影響をあげるとすると、イングマール・ベルイマン監督の『野いちご』(1957年)と、楳図かずお『わたしは真悟』(1982~86年)かもしれません。

あとは人の死。特に親しい友人であったり、周りや尊敬するミュージシャンの死というものには、常に創作を行う過程で、心の深い部分に大きな影響を与えていると思います。



自己を投影しているつもりはなくとも、歌詞に登場する登場人物は、どこかしら作者である私の要素を内包している者達なのかもしれないです

–:アルバムの軸となった、あるいはもっとも手ごたえを感じた曲は?
小森:軸となった曲は1曲目の“無題”、手ごたえを感じた曲は7曲目の“evergreen”です。
“evergreen”に関しては、歌詞もメロディーも全部、我ながらなんて素晴らしい曲を書くんだと自画自賛しています。
–:30代の自分や精神病棟の彼(“イノセンス・ロスト”)、初老の男(“oldman’s dream”)など歌詞で描かれるさまざまな人物、あるいはシネマティックな情景は、どのくらい小森さんご自身を投影したものなのでしょうか。
小森:投影はしていないですね。シネマティックな情景の曲であればあるほど、私個人は歌詞の世界の外側にいるかと思います。ただ先に言ったように、音楽は、自分自身の日々の暮らしの中からからこぼれ落ちたもの、剥がれ落ちたものだと思っているので、そう捉えると楽曲とは「作者自身」、なのかもしれませんね。

なので自己を投影しているつもりはなくとも、歌詞に登場する登場人物は、どこかしら作者である私の要素を内包している者達なのかもしれないです。
–:ドラムス/パーカッションに高橋豚汁さんが加入して以降、フル・アルバムとして初の作品になりますが、リズムがより多様になって、楽曲の新しい豊かさを生んでいる印象を受けました。バンドとして、高橋さんによって壊れかけのテープレコーダーズにもたらされたものはなんだと思われますか? あらためて、高橋さんをメンバーに迎えた理由もおしえてもらえるとうれしいです。
小森:(高橋が所属していた)Far Franceのようなオルタナ/ジャンクなバンドから、吹奏楽のマーチングや、ポップスのバックまでこなす柔軟性、懐の広さ。それらがそのままこのバンドにおいても、楽曲に多様性をもたらしてくれたと思っており、感謝しています。

あと、豚汁君は非常におしゃべりで、スタジオの中でも実によくしゃべり、全体のバンドのムードも朗らかになったというか、和気藹々とした雰囲気になりましたね。昔は私も、メンバー仲良しである必要なし。一触即発の緊張感こそがロック!という持論でやってきましたが、今は、やるなら穏やかに、そして楽しく長く続けていきたいと思っているので、現在の雰囲気はすごく健全で、過ごしやすいです。

豚汁君に声を掛けたのは、前任のドラム、44Oの脱退が決まった当時(2016年秋)、いくつか候補に浮かびあがったドラマーの中で、一番暇そうだったのが豚汁君だった(笑)。実際、音楽の現場から全くもって離れてて。昔から友達だし、上手いのも知ってるので、もったいないな、ということでした。

4人で初めて一緒にプレイした時に、“踊り場から、ずっと”(2013年のシングル)という曲を演奏したんですけど、あの時の「確信」は、忘れませんね。



–:最後に、壊れかけのテープレコーダーズの音楽制作において、何か制約はありますか? この言葉やコードや音色や世界観は避けている/意識して盛り込んでいる、楽器は増やさないなどなど、どんな小さなことでも、あればおしえてください。
小森:やはり自分はどこまでいっても「うた」と「メロディー」が好きな人間なので、それが良くも悪くも制約になっているのかなとは思いますね。だからといって「うた」や「メロディー」を排除したいとは思わず、より大きな意味での、例えば歌詞も歌もなく、メロディーもないのに、たまらなく美しい旋律を持った「うた」に違いないというような、そんな音を常に奏でられたら、理想ですね。

意図して避けているものとしては、「個人の思い」。「私はこう思う」ではなく、「私はこう思うが、あなたはそうは思わないかもしれない」という、相反する存在の可能性を常に含んだ作品を作りたい、と思っています。自分が想像し得ない想像力が介入できる「余白」を残しておきたい。「私はこう思う」という表現は、私がしたい表現とは少し違うのかもしれません。

楽器編成は、このままの編成を特に変えることなく、想像力が枯渇するまでやりたいかな。まだまだ、新しいものが生まれ、より色んな楽曲を作ることができる可能性、予感しかしていないので。

そう考えると、壊れかけのテープレコーダーズは、なかなか自由なバンドだと思いますよ。そういえば、私が考えたわけではないんですが、本作の宣伝キャッチコピーが「ロック・フリーダム!」でしたね。要するに、続けてきたそれを、シンプルにこれからも続けていきたい。ただ、それだけです

インタビュー・構成:Kana Takami





『End of the Innocent Age』
/ 壊れかけのテープレコーダーズ
2020年5/20リリース
フォーマット:CD/デジタル配信
レーベル:MY BEST! RECORDS
カタログNo.:MYRD136
価格:¥2,300(税抜)
【Track List】
1. 無題
2. イノセンス・ロスト
3. boys & girls
4. stand by me
5. Hello, Destiny
6. oldman’s dream
7. evergreen
8. 希望

小森清貴:Vocal, Guitar
遊佐春菜:Vocal, Organ
shino:Bass
高橋豚汁:Drums, Percussion
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作詞・作曲:小森清貴
編曲:壊れかけのテープレコーダーズ
録音 トラックダウン:狩生健志(YAKEN STUDIO)
マスタリング:中村宗一郎(PEACE MUSIC)
画:秋永悠
デザイン:ダダオ





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2020.5.8 19:00

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