【INTERVIEW】sassya-×VACANT『split CD』


東京のsassya-、インタビューは今回で3度目となる。
今回はスプリットCDを発売するとのことで、彼らがリスペクトを贈るVACANTとの2マンインタビューである。
FUGAZIやShellacといった80’sアメリカンポストハードコアや、他にも愛聴する音楽をもった彼ら2組。
そんな彼らから発せられるサウンドも近しい、やはり似たもの同士か・・・と考えてはいけない。
2組にとって決定的な違いが露わになったインタビューであり、『VACANTとは何者か?』という部分もハッキリ見えてくるインタビューだ。

アップデートが行われなくなったり、新曲のアイディアが出てこなくなったら、VACANTは終わりになってしまうかもな(山村)




–:今回はVACANTとsassya-さんが2組でスプリットCDをリリースするということで、インタビューをさせていただきます。 sassya-さんのこれまではここ1年のインタビューを読まれれば分かって頂けるということで、名古屋のVACANTにスポットを当てたいのですが……。
山村:よろしくお願いします!
–:公式サイトなどを見た時、since 2012という言葉が出てきます。結成は2011年頃でしょうか?
山村:そうですね。結成は名古屋にstiff slackというレコード屋がありまして、そこの店主にメンバーを紹介してもらったのが始まりです。自分は元々北海道の函館生まれなんですけど、名古屋でバンドをしたいと思った時にメンバーが見つからなくて、店主に相談してたんです。とある日、店主に呼ばれて行ったら見知らぬ人が1人いて、横に並ばせられて、店主に「好きなレーベルを同時にせーので1つ言ってみて?」と言われたので、「Touch and Go」と答えたら、彼も同じように答えていて、「好きなバンドを1つ言ってみて?」と言われて、「The Jesus Lizard」と答えたら、彼も同じように答えていて。「はい、じゃー2人一緒にやりなさい」って言われて始まったんです。その見知らぬ人は、ベースの森リーダーです。そこから紆余曲折を経てドラムは今で4人目、今回でSTAGE4です。
–:最初に音楽に触れたのはいつの頃か覚えていらっしゃいますか?
山村:10歳の頃に聴いたWANDSの「時の扉」ですね。まだ8センチCDの頃でした。友達の家で聴かせてもらって、すごく衝撃を受けて、すぐに自分もラジカセを買ってもらって、そこから色々聴くようになったんだよね。あと、函館にはCDの自動販売機があって……。
岩上:え、そんなのあるんですか?初めて聞きました。
山村:あったんだよ(笑)それのおかげでSpitzとかZARDとか、ヒットチャートに入ってる音楽を聴いてました。
–:めちゃくちゃ思い出が詰まってますね。いつ頃から楽器を演奏するようになったんでしょう?
山村:最初はベースだったんですけど、LUNA SEAのJの影響ですね。テレビに出てた時に思いっきりベースをアンプにガゴーンと叩きつけた姿に、所謂雷に打たれたみたいな衝撃を受けて、「俺もベースを壊したい!」って思ったんですよ。
–:そっちですか!?(笑)
山村:衝動がおかしいんですよ、この時からすでに(笑)その1年後くらいにお小遣いを貯めてJモデルのベースを買ったんですけど、それまではティッシュの箱に段ボールの切れっぱしを付けたモノに輪ゴムを張って、「おお弾ける!こういう感じか!」っていう風に作って練習していたんですよ。TAB譜の読み方も塾の先輩に教えてもらったりして。で、その後実際にLUNA SEAが函館に来たのを観に行って、めちゃめちゃ興奮して感動して「俺は一生バンドをやっていく」って決めたんです。その後にギターにも触れてみて、「あ、ギターのほうが良いかも」と思って、そこから20歳くらいまではずっとギター一辺倒で、ボーカルはやっていませんでした。
–:そこから音楽にノメリ込んでいくわけですよね。
山村:そこからだと、いわゆる90年代のヴィジュアル系バンドは当然聴きましたよ、hideのソロも大好きでした。そうこうしているうちに97年のAIR JAMも始まったので、BRAHMANやTHE MAD CAPSULE MARKETSといったバンドも聴きました。当時はフジロックも始まった頃で、ミクスチャーロックも大きい存在だったんです。Rage Against The MachineにRed hot chili peppersもいたし、Limp bizkitやIncubusもそう。ヴィジュアル系、エアジャムなどのメロコアに、洋楽を含んだミクスチャーロックの3本立て。それが自分のルーツを形成してると思います。
–:そこからいまの音楽へと繋がっていくのが全く見えないですね……。
山村:そのあとに、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやELLEGARDEN、ストレイテナー等を聴いて、で、ハマった人のルーツを掘っていくって聴き方をずっとしていたので90年代のUSインディやエモに辿り着いたんです。Weezer、Jimmy Eat World、The get up kids、Sunny Day Real Estateとか。でも、FUGAZIを聴いた時は「なんだこれ?」って最初は理解出来なかったんだよね。
岩上:ああ、わかります。僕も最初はそうだったかもしれないです。
山村:だよね?「なんだこれ?」「でもグっとはくる」っていう感じはあったけど、そのときは寝かせてたんだよね。「いつかわかるかもしれないな」って。
–:その感覚わかります。いまじゃなく、いつかグっとわかる時がくるかもしれないぞと。
山村:そうそう。で、27歳のころに名古屋に移り住んで、stiff slackでFUGAZIの『INSTRUMENT』を買ったんですよ。
岩上:なるほど、たしかに映像を見たらすごくわかりますよね!あれを見てぼくもハマりましたもん。
山村:そこから、FUGAZIはもちろん、The Jesus LizardやShellacも「あーー!なるほど!」って、超カッコイイじゃん!これってなって。そこから今の音楽性に繋がっていくんですよ。



–:僕がいうのもおこがましいですけども、単純に、めっちゃくちゃ音楽聴いてますよね?
山村:めちゃくちゃ聴いてるね。本当に大好きだもん。ブリット・ポップやテクノやもちろんオルタナやグランジも通ってるし、The Postal Serviceからのエレクトロニカ界隈も聴きましたね、morr musicなんかは今でも好きですよ。当時雑誌に載っていて気になったものは軒並み聴いてました。
–:ここまでいろんなバンドの名前があがってきましたけど、一番フェイバリットなロックバンドをあげるとするならどのバンドでしょう?
山村:うーん……Rage Against The Machineかな。いまだに全然聴くし、トム・モレロのギターはめちゃくちゃコピーしたからね……今気付いたけど、今回の曲でもトリッキーなプレイをやってる所があると思うんだけど、あれはトム・モレロの影響だと思う。ちなみに最初に買ったエフェクターはワーミーだからね(笑)
–:sassya-とVACANTが出会ったのはいつ頃だったんでしょう?
岩上: 僕らからはっきりとアプローチしたのは、新代田FEVERでMETZが最初にライブしたときですね。それよりも前に個人的にVACANTのライブを見に行ってたんですけど、たまたまそこに山村さんがいたんですよ。「せっかくこんなに近くにいるし、音源を渡してみよう」と思って渡したんです。
山村:もらった音源を聴いたとき、「良いじゃん」って素直に思えたんだよね。そのあと名古屋に来てライブした時に見に行って、「やっぱりカッコいい」とより強く思ったんですよ。
岩上: 2016年に1stアルバム『non communication』を出して、翌年2017年にライブしたときですね。話かけてくださって。
山村:ベースの森リーダーと一緒にね。彼は微笑んでただけだったけどね(笑)
岩上: そうだったかもしれないです(笑)この2017年は数ヶ月毎に自主企画をやりまくっていた時期で、このタイミングで一緒にやるしかない!となって、夏にツーマンライブをやりました。たしかそのあと、対バンはやってなかったですよね。
山村:たしかに。表立ってはそうだね。
–: そこがお聞きしたい点のひとつなのですが、ロクトシチやslakといった、いわば「同胞」と言えようバンドとの繋がりを大切にしてきたsassya-からみて、このタイミングでVACANTを呼んだというのはなぜなのでしょうか?
岩上: これは端的にいうと、VACANTが活動休止していて、やっとメンバーが揃ったという話を聞いたとき、「やるべきだ」と思ったからです。単純にぼくら2バンドで音源をつくる、ゲストのかたをお呼びしつつ、ライブをやって、観客もぼくらもブチ上がる。これ以上に楽しいことはないわけで、そのために僕らが選んだのがVACANTだったと。
–: ソロでの活動をされていたとはいえ、3年以上もの間、VACANTととして新しい音楽やバンド活動をしてこなかったわけですが、こうして新たに活動を始めるときに難しさはありましたか?
山村: うーん、3年前に活動を止めた頃は本当に壊滅的な状況で、物凄くフラストレーションがあって、自分達に影響を与えてきた音楽を聴きたくない所までいっていて。それまでとは全く別の音楽を聴いてたくらいなんだよね。それで新しくバンドを始めるしかないかなとも思って、新しいギターを買ったんだよね実は。
岩上: そうだったんですか?
山村:そうなの。で、ソロも始めたりしてて。でもとある日、ベースの森リーダーから「新しいドラムが見つかりそう」って連絡がきたんですよ、「え?やれんの?じゃーやってみるか」って新しいドラマーのユンベ君と初めてスタジオで合わせた初日から新しい曲を作り始めたんですよ。
–: なんのこともなく、急に作り始めたんですか?
山村:そう。森リーダーが「こういうフレーズがあるんだけど」って弾き始めたから、「じゃあギターはこんな感じか?」って合わせて、その日に1曲出来たんです。その曲は最近のライブで1曲目にやってる曲なんだけど。その日から毎回アップデートが行われているだけなんですよ。
岩上: それはすごいですね。
山村:スタジオに入る度に、なにかしらのアップデートがあるんだよね。だからこのアップデートが行われなくなったり、新曲のアイディアが出てこなくなったら、VACANTは終わりになってしまうかもな……とは思ってます。活動再開してからSTAGE4と謳って活動してるんだけど、あれは冗談じゃないんです。
–:sassya-とVACANT、互いに見た時、どの部分が良いと思いますか?
山村:sassya-の音楽にはちゃんと「怒り」があるんだよね。ただヤケになってるだけじゃなくて。ロックバンドにはそれがとても重要だと思ってて。そして自分達のオリジナリティを追求してるスタンスにも共感を覚えたんだよね。
岩上:ぼくはVACANTの音楽にも「怒り」はあると思いますよ。「3分間で聴く人の心をぶち上げる」っていう、これロックがやってきたとてもシンプルなやり方を、剥き出しにやっているところだと思います。衝動をそのままに出しているところが、すごく良いんです。彼らが音を鳴らしている場所だけ、時間軸も何もかも別の所にいるように見えてきたりしますしね。

(写真:小磯晴香)



>次ページ:家で弾いてても燃えないし、やっぱりデカイ音で鳴らないと分からないことが多すぎる(岩上)



『sassya- × VACANT split CD』
/ sassya- × VACANT
2020年1/8リリース
フォーマット:CD
レーベル:Kerosene Records
カタログNo.:KRSE20
【Track List】
1. 吠えないのか
2. 特火点
3. 1200W PILOT
4. Freedom of Expression
特設サイト

1 2

2020.1.12 21:00

カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:, ,