【INTERVIEW】主催者 中条(DANGBOORURECORD)に聞く『tiny pop fes』

「ポップスを獲得して手元に置いておくささやかな喜び」

–:「tiny pop」とは耳慣れない言葉です。ポップスのムーブメントという風に聞いていますがどのようなものになるのでしょうか?
中条:これはあくまで私の主観ですが、tiny popとはいわゆる新しいポップスのムーブメント、ポップスの様式美のアップデートを指す言葉ではないと感じています。hikaru yamadaさんはかつて、tiny popという言葉は「カンボジア出身のフレンチポップ歌手、TINY YONGから取りました」とtwitterで紹介されていました。



その真意を私は知り得ないのでTINY YONGとの関係は分かりませんが、ele-kingのコラムの冒頭で述べられる、「明確にポップス構造を持った、しかし小さくささやかな音楽」という説明が結局一番わかり易い説明なのかもしれないと今は思っています。この後に続く「ポップスを獲得して手元に置いておくささやかな喜び」というフレーズは本当に素敵な表現だと思いますし、ここでいうポップスは人によって全く違う時代、全く別の国の音楽を指すことになるでしょう。今の時代の音楽のあり方の一つを指す、裾野が広がりすぎて無数のジャンル名と多様性を獲得したポピュラー音楽の歴史を(それでも)尊重しつつも、自分たちでもなお新しい驚きを見つけて小さく遊び続けようとする音楽活動のことなのではないかと思います。
–:「tiny pop」をタイトルに冠するイベントを開催するに至った経緯を聞かせてください。
中条:改めてまず申し上げて置かなければならないのは、先程も触れたhikaru yamadaさんのコラムに出てくるtiny popという言葉と、tiny pop fesという音楽イベントは全くと言っていいほど関係がありません。あくまでtiny pop fesというイベントを名付けたのは私で、しかも十分意味を確信しないまま名付けてしまいました。この言葉の扱いを真剣に考えるべきだったと反省しています。この説明を読んでご不満になられる方もいるのは承知の上で経緯を正直に述べるならば、今回のイベント会場である上野公園の抽選申し込みのときに即席で名付けたイベント名です。んミィ(前述コラムで楽曲が紹介されているSoundCloudでの表記はNNMIE)が出るイベントで、上野公園の水上音楽堂という大きな会場でやるイベントだからフェスみたいになったら面白いな、そんな派手になるはずはないけれど、と思ってシャレに近いネーミングとしてTINY POP FESと名付けました。このあたりの経緯も含めて、ダンボールレコードのページにてこのイベントが始まることになったあらすじをご紹介しています。ご笑覧ください。
–:今回出演する方々……長谷川白紙さんやwai wai music resortさん、SNJOさん、んミィさん、mukuchiさん等々、先ほどのyamadaさんのテキストでいうところの「2018年以降」にインターネットでその音楽が耳に飛び込んできた方々が一堂に会しているというだけでも個人的に非常に魅力的に感じていたのですが、こちらはどなたがブッキングされましたか?
中条:主に私ですが、もちろん多くのかたのご協力のもとに成立したブッキングです。入江陽さんやhikaru yamadaさん、そして当然出演を了解していただいた皆様の協力なしにはこのようなブッキングが実現することはありませんでした。これもまたyamadaさんやtiny popを標榜する方たちとの意識のズレになりますが、2018年以降のインターネットを舞台に展開するミュージシャンで、かつtiny popというワードとリンクするような方々を精緻に選んでいく、というような計画性のあるブッキングではありませんでした。私のブッキングの唯一の方針である、自分がライブで見たい人を呼ぶ、という方針というかただのわがままが奇跡的にほぼ全部実現した結果です。結果的に魅力のあるブッキングになったと私は感じています。運が良かったというよりほかありません。tiny popと今回のブッキングの間にはつながりがあるかもしれませんが、それは皆様の協力と運の側面が大きいです。









–:各アーティストさんを見ると、東京以外にも大阪、京都、兵庫、九州とかなり広範囲から集まってきますが、これだけの規模で出演者を集めるのにはかなりご苦労があったかと思いますが。
中条:各アーティストへのオファーは基本的にはインターネットを介してのご連絡でしたし、今回の出演者の皆様には多大なご協力を頂きましたので、私自身は苦労というものはあまりなく、オファーという名のファンレターを書いたら返事が来て嬉しい!といったミーハーな喜びの気持ちが遥かに勝っております。
–:上野公園水上音楽堂というかなり大きな会場での開催となっていますが、この会場を選んだ理由をお願いします。
中条:ダンボールレコードのサイトにも書いたことですが、上野公園の水上音楽堂は案外安くで借りれるらしい、と今年の春のお花見のときに話を聞いて興味を持ったのがきっかけです。この噂自体は嘘ではありませんが、場所が安く借りれるからと言って安くイベントを開催できるわけでも簡単にイベントを運営できるわけでもないことに気づいたのはようやく最近です。コストを抑えて安くする方法もあったかと思いますが、会場に見合った内容にするべくいくらかリスクも取りました。皆様に楽しんで頂けるよう準備を進めています。

一つのイベントではあるけれどもいくつか別の世界が併存しているのではないか、などと想像して楽しんでもらえると良いなと思っております

–:今回のイベントのアートワーク(フライヤー、早割チケット)ですが、なまやけさんと大仏さんという2人のイラストレーターさんを起用して、複数のアートワークを用いるという珍しい展開をされていますが、この展開の狙いどころは?
中条:何かを計画してその狙いに向けて展開していった結果ではなく、一つのイベントに二つのフライヤーがあっても良いのではないかという子供のような思いつき、わがままでお二人にお願いをして実現しました。お二人には個性があり、しかも優しいアートワークを提供していただき大変感謝しております。あえて言えば、フライヤーが2種類あるのはなぜだろう?と不思議に思ってもらったり、一つのイベントではあるけれどもいくつか別の世界が併存しているのではないか、などと想像して楽しんでもらえると良いなと思っております。


画像左からなまやけバージョンのフライヤー、大仏バージョンのフライヤー



画像左からなまやけバージョンのチケット、大仏バージョンのチケット。
DANGBOORURECORDウェブショップより購入可能。


–:最後に主催者からこのイベントに来場する方や現在行くかどうか迷っている方に伝えておきたいことなどあれば。
中条:tiny popという言葉が指すものがまだ定まりきっていないように、tiny pop fesというイベントは、一つのシーンを共有する場所ではなく、まだ形の定まってないものや共有しようのないものも見え隠れするイベントだと思います。いま起きている新しい音楽の潮流を感じられるのはもちろんのこと、土曜の午後に「個人個人のもとに戻ってきたように思える」素敵な音楽の演奏を聞きながら過ごせることは貴重な機会です。ご来場される予定の方は楽しんでもらえるのは間違いないですし、この記事やイベントの情報を読んで興味を持たれた方は是非遊びに来ていただきたいです。穏やかなまま好奇心を満たせる楽しいイベントになると信じています。



『tiny pop fes』
2019年10/5(土)上野公園水上音楽堂
ACT:長谷川白紙 / その他の短編ズ / wai wai music resort / SNJO / んミィバンド / mukuchi / 入江陽 / にゃにゃんがプー / 横沢俊一郎&レーザービームス / ゆめであいましょう
DJ:小川直人(lightmellowbu) / 柴崎祐二(lightmellowbu) / F氏(lightmellowbu)
Open 11:30 / Start 12:00
限定早割チケット ¥3,000
DANGBOORURECORDウェブショップ
peatix
Adv. ¥3,500




2019.9.27 19:00

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