【INTERVIEW】either『Endless Summer Ends』

eitherが1stアルバム『Endless Summer Ends』をリリースする。
結成から約3年半でリリースされた彼らのアルバムには「青春発墓場行き」というコピーを掲げ、社会人として働きながらバンド活動を続ける彼らの疾走感やセンチメンタリズムといったeitherの要素が余すことなく詰め込まれている。
そしてそのアルバムを耳にした時にどこか「パッとしなかった自分の青春」に何かをしようとしてこのようなサイトを続けている自分を重ねてしまっている事に気がついた。
その疑問の答え合せをしてみたいと思いVo./Synの佐々木翔にインタビューを試みた。

今作を聞いていただければ僕らの全部が詰まっています!!

–: 約10ヶ月ぶりの新音源となりますが、アルバムの制作は何時頃から始まりましたか?
また、今回初出の楽曲についてはいつ頃作られたものですか?
佐々木翔(以下:佐々木) 1stシングルのツアー途中、2017年の夏ごろにアルバム制作の構想をし始めたと思います。デモCDを2枚出し、そろそろ全国流通でアルバムを作るぞ!と意気込んだ矢先、タイミング悪くメンバーの脱退と重なってしまったこともあり、一から曲を練り直そうとなりました。

M2.「Youthless」は、今のメンバー、ふみ君と村田さんが加入してから初めてみんなで作った曲で、2018年の頭にはライブでやり始めていたと思います。
M3.「メロンソーダ」は、当初テンポが速く、パンキッシュな曲だったのですが、納得がいかず、何度も試行錯誤し、レコーディングが始まる1、2週間前に完成しました。

既存曲の再録もあるので、結成当時からやっている曲から出来立てほやほやの曲まで、今作を聞いていただければ僕らの全部が詰まっています!!



–: 1st E.P.を出した頃と比べてバンドに変化はありましたか?
佐々木: 1st E.Pを出したころは“海外のエモバンドっぽい音を出す”というのがバンド内で一つのテーマとしてあったと思いますが、今は、自分らが出す音のジャンルに拘りはなくパンキッシュでキャッチーでノスタルジックで……”自分たちがかっこいいと自信をもって言える曲ならなんでも作ろう”と、なっています。

1st E.P.からメンバーが2人変わっているので、出てくる音、出したい音の意識が変わるのはもちろんなのですが、後加入にも関わらず、いろんなことをやってくれるふみ君、村田さんの為人にはだいぶ助けられました。
バンドを円滑に進めるために尽力してくれる2人には頭が上がりません。
お陰様で現在、最骨頂にメンバー間では”やってやるぞ!”感がメラメラみなぎっています!
みんな!やってやるぞ!!おー!!!
–: 1st E.P.の頃と比べると今作では日本語詞の比率が大きくなっているような気がしますが、このあたりは意識しての事でしょうか?
佐々木: 自分達は曲を作る際、メロディーを先に作るのですが、1st E.P.の頃は、英語詞が映えるのか、日本語詞が映えるのかを重点に置いて作詞をしていました。

M9.「Hometown」も上記のような理由で、作った当時は英語詞だったのですが、日本語詞の方が聞き手にダイレクトに伝わるはずなのに、英語で歌う意味はあるのだろうか…….と猜疑心に苛まれまして、思い切って日本語詞に変更いたしました。英語詞が映えると思っていた曲調でも日本語で歌っても違和感がない、聴いてくれる人によりわかりやすく曲を届けられる、そして何より歌ってて気持ち良い!ポジティヴなことしか起きないじゃん!と気づき、それ以降はできるだけ日本語詞で作り始めました。

「それなのに何故未だに英詞の歌もたまにあるのか」の問いに対し、僕から言えることは、僕らが愛してやまない英語で歌うバンドへの憧れがどうしても消えない……です!
Stay Gold!!!!!!!!!
–: Stay Gold!!!!!!!!! その英語で歌うバンドは佐々木さんにとって特別ですか?また、そのバンドへの思い入れとかエピソードがあれば聞かせてください。
佐々木: 完全に後追いなのですが、バンドをやろう!と志すきっかけになったバンドのひとつです!

自分には姉がいるのですが、中学生の頃姉の影響でハイスタを聞き始めました。

高校入学してすぐ、近所のマクドナルドでバイトを始めるのですが、当時、バイトリーダで大学生の”FUCK KEN”さんと言う先輩が在籍していました。

勘の良い方はお気づきだと思うのですが、PIZZA OF DEATHの”FUCK KEN”Tシャツをよく着ていたので”FUCK KEN”さんと呼ばれていました。

その”FUCK KEN”さんですが、にわかハイスタ好きの自分に、スペシャで再放送されたAIR JAM 2000のハイスタのライブ映像を焼いたDVDと、横山健の本(ムック 横山健)を貰うなどの布教活動をしていただきました。

“FUCK KEN”さんはギターをやっていたこともあり、その影響でギターを始めるのですが、AIR JAM 2000のハイスタのライブを見ながらのエアーギターで、気分は横山健になれていたせいで、ギターの練習はそこまで精が出なかった気がします。
ハイスタの活動はすでに休止しておりましたので、横山健信者になっていた自分は、健さんのライブにはめちゃめちゃ遊びに行ってました!

髪を半分だけ金髪にする(夏休みだけ)、健さんの梵字の入れ墨を胸にマジックで書く、PIZZAのTシャツ、ディッキーズ、バンズ……。

ハイスタが活動を再開すると聞いたときは本当にうれしかったです!やっとみられる!!!と。
もちろんハイスタの映画も見に行きました!
見終わった後、やっぱりハイスタは最高だな……となりましたし、ハイスタも苦労してんだ……俺は負けない!と非常に強い勇気を頂きました。

僕らの曲にツービートの曲は無いですが、気持ちはいつでもツービート、そして、いつも心の中に「Stay Gold」です!
–: E.P.、1stシングル、2ndシングルからも楽曲の新録が収録されていますが、新曲も含めて収録曲はどのような基準で選出しましたか?
佐々木: 構想段階で、今までの集大成になるようなアルバムにしたいと考えていました。”今作を買っていただいて、ライブに見に来ていただければいっぱい楽しめる音源”を一つのテーマに曲を選んでいます。

再録曲に関しては、今後もライブでやっていく曲を中心にリストアップしました。何度も言うようですが、初期収録段階からはメンバーが変わっているので、このメンバーで再度録り直したい思いもあり、再録するということに抵抗はありませんでした。特にM4.「Stolen Summer」はメインボーカルが変わっており、再録前後で全く雰囲気の違う曲になりました。そういうところも含めて、聞いてくださる方に楽しんでいただきたいです。



ずーっと全力疾走で駆け抜ける曲もあれば、ゆったりとした、物思いに更けて作った曲もあり、その振り幅こそがeitherの特徴でもあるのかな、と思います。

10曲並べたときに、十人十色じゃないですけど、それぞれ違うベクトルで最高な曲たちが並ぶよう意識はしました。いろんな音楽が好きな僕らが作った、僕ららしい、等身大で良いアルバムになったと思います。
–: 今回「少年時代」「Hometown」「OMOIDE INO HEAD」でゲストボーカルに小林ももさんを迎えていますが、こちらはどのような経緯で?
佐々木: 曲作りの最中、女性ボーカルが頭の中で歌っていることがあるんです。
「これは女性が歌ってくれたら最高だな~」と漠然と思うことはあったのですが、いかんせん、男汁100%!みたいなバンドをやっているもので、女性ボーカルには無縁だろうなあと半ばあきらめていました。

2017年4月に、我らがI HATE SMOKE RECORDSのBOSS THE OSAWAさんがやっているDANCE MY DUNCE SPECIALというイベントにお誘いいただき、ライブを行いました。20バンド前後が出ているちょっとしたフェスのような楽しいイベントだったのですが、そのイベントにももさんも弾き語りで出ていて、ライブを拝見させてもらいました。20人も入ればパンパンな場所でのスタジオライブだったのですが、小さなスタジオに響く美声……歌いだした瞬間にスタジオ内の空気は一変しました。僕を含めたダイブモッシュ最高マンたちが一秒を聞き逃さないぞ、と、ももさんの歌にみんなが耳を傾けていました。ダイブモッシュ最高マンの僕は、もう、とてつもないほど感動しちゃいまして、普段は人見知りでなかなか知らない人に声がかけられないんですけど、ライブ終わりに”最高でした”と声をかけさせていただきました。

ダイブモッシュ最高マンたちを唸らせた優しい美声の持ち主は、ギターを置いてもとても優しい方で「是非ももさんの声でコーラスをお願いしたいです」とのお願いに、嫌な顔をせずに快諾してくれました。

予定が合えば、ライブでも一緒に歌いたいなあと思っています。



恥ずかしいですが、基本的には現実の出来事を歌詞に落とし込んでいます。

–: キーボードが特徴的だと以前から思っていますが、どのような経緯でキーボードを入れようと思われましたか?
佐々木: 活動していたバンドが解散してしまい、暇を持て余していた頃、友達の家で”YOU TUBEを見まくる会”みたいな地獄のような暇つぶしをしていました。

夜も更け始めたころ、銀杏BOYZの『せんそうはんたいツアー』のライブ映像を見ていたのですが、BABY BABYの間奏でチン君がシンセを弾いていて、「すごくキラキラしていて全然違う曲に聞こえる!」と感じました。

“最高”か”あんまり最高じゃない”でしか曲を聴いてこなかった僕だったのですが「楽器が変わるだけで曲自体も全然違って聞こえる」と至極真っ当な考えにひどく感銘をうけまして、「これはきっと青春パンクバンドでシンセを弾けと言われているに違いない」という、自分勝手な勘違いをしてしまったことが原因です。

確かその後すぐ、黒見くん(ex. either)にバンドやろうぜ!ってラインをして走って家に帰りました。余談ですが、今使っているシンセは元々黒見くんが持っていて、僕に貸してくれているやつです。いつかちゃんと買い取ろうと思っています。
–: パンクバンドとして曲を制作するにあたってキーボードをどのように意識していますか?
佐々木: 如何に目立たせずにキラキラしたエッセンスを加えるか。を意識しています。
eitherにはずっとギターソロを弾いているバギオというギターヒーローがいるので、リードギターでどんなフレーズを弾くのかを確認してから、隙間を埋めるようにシンセのフレーズを考えています。

ただ、自分で作った曲のシンセフレーズがなかなか出てこないことがあり、そういう時はふみ君とバギオの3人で曲のイメージを共有しながらシンセのフレーズを決めていきます。
–: 歌詞を読んでいると青春を少し過ぎた人物のセンチメンタルな側面を強く感じるのですが、これらの歌詞は皆さんの現在の心境や実体験が反映されていますか?

佐々木: 僕自身、思い出ばかりに気を取られているんです。
もっとセックスフィナーレハッピーエンドな歌詞を書きたいなとは思うんですが、歌詞を書こうとすると、どうしてもいつかのリグレットみたいなことばかり思い出してしまい、センチメンタルな歌詞になってしまいます。

後は、単純に僕はナルシストだと思います。「夕日、河川敷、ひとりぼっち、イヤホンからはふくろうず」的なものに未だに共感できるし、童貞のルサンチマンが神秘的だと本気で思っているし、あの夏のラッキースケベより、過ごせなかった花火大会のことを歌いたい。

ナルシストだから何かあるたび感傷に浸っちゃう。何かあるたび感傷に浸っては「オレたち間違ってねえよな」って仲間内で共感し合う、みたいな面倒臭い男たちです。

それと、僕、大学に通ってないんです。だからか大学生の本当のキラキラした感じにはめちゃくちゃ憧れと劣等感が共存してます。
高校も工業高校でほぼ男子校で、あのころの思い出といったら、野球部の同級生に授業中ずっと乳首触られてるか、ヤンキーに肩パンされまくる。そんな青春しか過ごせなかった反動もあると思います。

過ごせなかった青春はいつでも取り戻せるぜ。って本気で思っています。

恥ずかしいですが、基本的には現実の出来事を歌詞に落とし込んでいます。



–: 1st E.P.、1stシングル、2ndシングル、今作全てのアートワークに「人の足(下半身)」が同じ構図で使われていますが、これはどのような意味が?
佐々木: 特に深い意味はありません。1st E.P.でジャケットを公開したときに評判が良かったので、そしたら次も似たような感じにしよう。
という流れで今に至ります。

ジャケットの絵を描いてくれているマエダくんは僕の高校の後輩で、軽音楽部で共に大きな音を出していた仲間です。マエダくんは今はバンドをやっていないのですが、年が経ってお互い環境が変わっても、こうして関わってもらえてることはとても嬉しいです。
–: 「OMOIDE INO HEAD」という曲名はNUMBER GIRLの「OMOIDE IN MY HEAD」を意識してつけられたものですか?
佐々木: 仲間内で吉祥寺の井の頭公園のことを”イノヘッド”と呼ぶのが流行ったことがありました。事あるごとに「イノヘッド行こうぜ!」みたいな。

2015年くらいに、スタジオ終わりにみんなで井の頭公園でだべって帰るみたいな最高な休日の過ごし方していました。ちょうどそのころ、当時好きだった子も吉祥寺に住んでいて、よく遊んでたんですよね。んで、井の頭公園で振られるっていう。そんなことを思い出しながら曲にしました。
なのでおふざけで「OMOIDE INO HEAD」という仮曲名で作って、そのまま愛着が湧いてしまって、仮曲名を変えずにここまできてしまいました。もちろん曲タイトルは「OMOIDE IN MY HEAD」のオマージュです。

「おっ!NUMBER GIRLっぽい曲かな!?」と思って聞くと肩透かしにあってしまうと思いますが、ゆったりとした曲で今作の最後を飾るに相応しい曲だと思っています!
–: NUMBER GIRLはeitherにとってどのような存在ですか?また、彼らの復活についてどのように思われてますか?
佐々木: あまり詳しくはないのですが、周りの人が喜んでいるのは僕らもとても嬉しいです!

>次ページ「当時はめちゃくちゃに思春期を拗らせまくっていたと思います」へ





『Endless Summer Ends』/ either
2019年3/13リリース
フォーマット:CD
レーベル:I HATE SMOKE RECORDS
カタログNo.:IHSR-080
価格:¥2,100(税抜)
【Track List】
01. In my room
02. Youthless
03. メロンソーダ
04. Stolen Summer
05. アスピレーション
06. アポロジーガール
07. 少年時代
08. リグレット
09. Hometown
10. OMOIDE INOHEAD


1 2

2019.3.12 12:00

カテゴリ:INTERVIEW, PU3_ タグ:, ,