【INTERVIEW】HOPI「そもそも、完成形ってないと思うんですよ」


少ないライブでも「聴かせたいところ」はちゃんと聴かせたい。なので、いい塩梅・いいバランスをどんどん模索していきたいですね(岸野)

–:レコーディングするときはどうしてますか?
渡辺:基本的にはパソコン上で終わります。宮尾の歌だけは、ちゃんとスタジオで録っていますが、トラック作りや作曲のためにスタジオへ入るということはないですし、殆どがデータのやりとりで終わります。 ギターの録音も自宅で録るもんね?
岸野:そうだね。ギターも自分で家で録音しちゃうことが多いです。
–:ミックスは渡辺さんのご自宅ですか?
渡辺:そうですね。ほかのところでミックスをしたことはないのですが、いまの環境で結構いろんなことは出来てるなと思っています。一通りミックスを終えたなと思ったタイミングで、家を出て散歩なんかをしながら音源を聴き直して、さらにブラッシュアップをしたりします。リヴァーヴやエコーなどのエフェクトを使ってこういう質感にしてみようとか、キックやベースの音量や質感を極端にしてみようといったアイデアもそういった過程から出てくることが多いですね。





–:なるほどです。
渡辺:ライブでも制作の過程で出てきた思考が反映されてると思います。今の編成だと、宮尾のヴォーカル以外は、全てラップトップ内で完結しているんですが、だからこそできる表現をしたいと思ってます。ライブ中でも、ドラムの音を普通だとありえないくらい押し出してみたりとかするんですよ。そういうのがバッチリとハマる瞬間があると、ひとつ向こう側に行けたなって思います。これはたぶん、こういう編成じゃないとできないことですし、自分としても一番やりたい音楽の形なのかなと思っています。
–:リミックスを手がけている方々が、日本のエレクトロミュージックの重鎮だったりビッグネームな方々が手がけられていますよね。もちろん人選は色々とあると思うんですが、そういった界隈に注目しているのは意識的なんでしょうか?
岸野:the morningsでもそうだったんですが、いろんな場所で演奏させてもらっているんです。でも同時に、こう言ってしまうと失礼かもしれないですが、良くも悪くも立ち位置がどっちつかずになりがちなんです。HOPIの場合は、聴かせたい部分/聴こえていく部分としてはエレクトロ寄りのフィールドの方が伝わりやすいと思っていますよ。
–:いまはEPやシングルを発表していますけど、アルバムなどは作る予定はあるんでしょうか?
岸野:2018年の夏から、継続的に新曲をリリースしていて、1月28日にEelという新曲とMiiiくんのリミックスを配信して一段落します。今は春くらいに新しいリリースができれば良いなと思って動いてますよ。
渡辺:定期的に世の中の目に触れること、それを今は最優先にしています。
岸野:そうだね。もっといってしまえば、アルバムという形式には囚われていないです。出来た曲出来た曲をどんどんリリースしている今の感じで、いい感じに活動できているので。
宮尾:うーん、リリースペースは私が『降りてくる』待ちで止めてしまっているところがあるので、2人には申し訳ないですね。もしもこの2人が、もともとのペース感でやっていたら……2週に1曲はいまのクオリティで出来ているかなと。
岸野:毎月リリースのときはきつかったですけどね。僕はある程度スケジュールどおりに間に合わせているので、宮尾のところで止まって……。
渡辺:僕がケツカッチンになるというね……(笑)



–:こうして話を伺っていると、ライブのときのお三方を思い出しますね。いまのライブですと、どんどん原曲とは異なった展開とアレンジがつづいていくじゃないですか?いまの話で言うと、音楽センスを基にした「反射合戦」だったり、アドリブを重ね続けるような流れになっていて、とんでもないものが披露されているなと思わされるんです。
岸野:「あれ?いま何が起きてるんだ?」って思う瞬間、たまにありますよ。
–:いまのHOPIの音源ではバスドラとスネアがパチっとハマるような4つ打ちだったりダンスビートが基調になってる曲って少ないじゃないですか?
岸野:そうですね。
–:だけども、そのグルーヴがすごく心地よいんですよね。でもそこから先、見ている僕としては……ちょっと失礼ですけど「なんでここまでの音楽をやるんだ……?」と不思議になったりもします。先程も言ったように「ものすごいものを見ている」と呆気にとられてしまうから、かと思うのですが。ライブをやっている側として、「お客さんが自分たちの演奏や曲の展開についてこない」という雰囲気を感じたりしますか?
岸野:それは割と感じます。毎回のライブは、そことの勝負というのはあります。
–:以前見させてもらった神楽音さんでのライブがとても印象的だったんです。そもそも音圧が段違いで、ベースの鳴り方が半端ない。音圧のせいで服が肌にペタっとくっつくんじゃないのか?くらいのもので(笑)2018年で見たライブでも衝撃的なものでしたね。
渡辺:あのライブは僕らにとっても印象的でした。ただ、ここまですごい音圧だと観ていて辛くないか?というのは僕たちの中では話題になったりもしましたね。
岸野:なので、いまはその感じからは変えようと思っていたところなんです。
–:ぼくの感覚でいうと、普段体験しないことなので、すごく楽しいなと思ってましたね。
渡辺:それは草野さんがちょっと変なんだと思います(笑)
宮尾:わたしも気持ちいいものだと思っていたんですけど、友人に「HOPIの音圧がすごすぎるから、ライブ行かない」とまで言われてしまったんですよ。
–:お三方はどうなんでしょうか?辛いですか?
渡辺:僕は大丈夫ですけどね。
宮尾:わたしもです 。
岸野:僕らはライブの本数が多いわけでもないので、少ないライブでも「聴かせたいところ」はちゃんと聴かせたい。なので、いい塩梅・いいバランスをどんどん模索していきたいですね。曲そのもののクオリティには自信をもっているので、あとは鳴らし方、一番伝わりやすいかたちで伝えたいです。バンドみたいな爆音ではなく、分かってくれる人にバッチリと分かってもらえるような、そういう鳴らし方を求めたいですね。
–:なるほどです。
岸野:僕らはもともとロックバンドをやっていたので、こういう形式でのライブにはまだまだ慣れていない。この数年の間、短いスパンでライブのシステムや機材がどんどん変わっていってるんです。毎回ライブでの課題が見つかっているので、それを一つ一つ潰して、トライアンドエラーを続けているといえば良いんでしょうか。
–:そう聞きますと、ライブでのHOPIは、未だに完成形がない、ということなんでしょうか?
岸野:それもちょっと違うんです。そもそも、完成形ってないと思うんですよ。なにかやったら、「こうしたほうが良かったのでは?」と思うことが毎回あるんです。一種の癖なのかもしれないですね。何をやっても「完成形」とは思わないだろうなと。曲単位で「これめっちゃやばくない!!?」「ヤバすぎでしょこの曲は!」と盛り上がることはありますけど(笑)
–:なるほどです。これはちょっと別の話筋になるんですが、ライブで音楽を届けるのがゴールなのか、音源を届けることでゴールとなるのか、その辺の意識もバンドによって異なってくるとは思うんですが、HOPIの場合はどうなんでしょう?
岸野:音源は音源の良さもありますけど、ライブでは別物って感じはしますよ。そこは見えきってないよね?ライブとかだと音源よりもあからさまにエフェクトをかけたり、部分部分で変化をつけていくこともできるので。
渡辺:ライブでは、見ている人が何を求めているとか、を感じ取りつつ、僕らが感じている気持ちいいところとの共通点を探しながらパフォーマンスをしています。ベースはこのくらい出ている方がいいんじゃないか、とか、考えながらね。
–:そうきくと、ジャズっぽいですよね。その瞬間のお客さんの反応やムードにどんどんと合わせていく感じは。
渡辺:そうですね。僕はDJもやっているんですけど、その感覚にも似ているかもしれないです。
–:「今日の客、この感じなら、もっとベースは落としたほうがいいな」と思ってプレイしたりとか?
渡辺:そうですね、そういう感じです。「もっとベースがあったほうが良いな」と上げることもあるし、「ギターはもっと上げてみよう」とか 。その場で自分がこう感じたからこういうパフォーマンスをした、というのが正しいと思ってますし、同時に、色んな声を聞いて、反省して、もっと良くしていくというサイクルです。
–:これは3人別々になるかとは思うんですが、「今日のライブ、スゴイ良かったな」と思い出深いライブはありますか?
岸野:これは狙っていうことではないんだけど、草野くんが以前来てくれた3月に神楽音でやったときのライブがあるじゃない?(単独主催イベント「SUN」)あのときが思い出深いですね。僕らがすごく良かったし、何よりお客さんが僕らを「感じよう」としてくれた、「分かってくれよう」としてくれたライブだったと思えたんです。この日はバンド初の単独主催イベントだったということもあり、僕らとお客さんの間にすごくグルーヴがあったし、「僕らのことがハッキリと伝わった!」と実感がもてたんです。
宮尾:じつは私も同じです。HOPIのライブで初めて「エモさ」を感じたんですよね。
渡辺:僕もその日は良かったと思いますね。けど、ここ最近のライブのほうが良いなという感覚が個人的にはあります。プロダクションやライブの運びもすごくいい感じになってきていると思います。
–:「こういう曲が作れたら、ゴールだなと」と思える曲は、どんな曲でしょう?
渡辺:なんすかね……朝焼けを一緒に迎えられるような曲が作れたら良いなと思います。
–:朝の4時5時あたりで刺さってくるような曲ですかね。
渡辺:アメリカにBurning Man というフェスがあるんです、砂漠のど真ん中で、主催が場所だけ提供して、出演者や客のみんなで舞台や音響、食事も、服も、テントとかを持ちよるような形式のフェス。一日中何かしらの音が流れてるんですが、特に夜から朝になっていく時間帯のDJ MIXを聴くと、感動的な瞬間がいくつもあるんです。TychoというバンドがDJとして出演した際のが「Sunrise Set」というMIXがすごく良くて……。最後に彼ら自身の曲をかけるんですが、たぶんこの曲が流れているとき、ものすごい朝焼けが訪れてたんだろうな、っていう情景がくっきりと想像できるんです。そういう曲が作れたら、自分たちだけでなく、聴いている人たちの心も動かすことができるんじゃないかなと思っています。



インタビュー・文:草野 虹(渋谷 2018年11月末)




「Eel」/ Hopi
2019年1/28リリース
フォーマット:デジタル配信
【Track List】
01. Eel
02. TY Remix by Miii
iTunes/Apple Music
Spotify

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2019.2.24 12:00

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