【INTERVIEW】sassya-『脊髄』


ほぼほぼ初対面、「よろしくおねがいします」と出会って、音でぶつかりあうような、そういうものを今後も求めていきたい(岩上)

–: ありがとうございます。sassya-でやりはじめるとき、オリジナル曲はどれくらいあったんでしょう?
岩上 non-communicationというバンドを組んでいて、そこでの曲はあったんですけど、それ以外には曲がなかったんですよね。最初にsassya-として入ったスタジオ練習で、先日MVを公開した「だっせぇパンクバンド」の原型が出来た感じでした。
–: その名前が、sassya-のファーストアルバム『non communication』になる、というのは以前のインタビューでお伺いいたしましたね。2012年から2016年に発売されるまでの4年間は、ずっとライブをし続けていたんですか?
岩上 そのアルバムの前に、もう絶盤になっているEPも2枚発売しています。でも基本的には、ライブ活動をずっとし続けてきましたね。「ぶちかます!」っていう感じで発散していた日々でしたね。
–: 『non communication』での収録曲は、その4年間でやりつづけてきた曲を収録していたんですか?
岩上 その時は、だいたい1年半くらいの間で作り上げた曲を収録していますね。2枚のEPに入れた曲は収録してなかったはずです。
吉原 EPを作ってるときは、割とポンポンと曲が作れていたんですけど、このファーストアルバムを作るときは、結構時間がかかった覚えがあります。というのも、EPのときは岩上がデモを持ってきてたものから作ったんですけど、このころから、スタジオでセッションをして作るようにどんどんシフトしたんですよ。
岩上 そうですね、確かにその頃からですね。
野口 わたしの意志が反映され始めたのも、その頃からですね。こういうフレーズが弾きたいというのを出すと、どんどんと取り入れていくようになっていきましたし、たまたま弾いていたフレーズが採用されたりとかして。
岩上 『non communication』で「CUT OFF」という曲があるじゃないですか?ベースから始まる曲なんですけど、あのフレーズがまさに「たまたま弾いていた」フレーズなんです。



–: とても意外だなとおもいます。sassya-の音楽は、岩上さんの爆発力を中心にして制作されていると思っていたので、そこまで2人の意見が反映される制作事情とは思ってなかったです。
岩上 目的はいい曲を作ることなので、曲が良くなれば、僕としてはオッケーなんですよ。それに、一人だけのパワーだと限界があるんですよね。なので2人が意見を出してくれるのは最高ですよ。
–: その辺、エゴが出てきたりはしませんか?
岩上 うーん、でも歌詞は基本オレが書きますしね。
野口 最終決定は岩上さん次第だもんね?
吉原 うん、詰まったら「岩上、どう?」と聞いて…。
野口 「うーん……」となったらダメですよね。岩上さんを燃やさないといけないんですよ、やっぱり(笑)
–: なるほどです。『non communication』を出したことで、なにか変化はありましたか?
岩上 達成感はめちゃくちゃありましたよ。吉原さんはなにかありましたか?
吉原 「マジでやっていくんだな」という覚悟みたいなのが生まれたよね。
野口 ああーそれは本当にそうですね。
吉原 EPを出したときはフラっと録音して、枚数もそこまで多くは出してなかったけど、ファーストを出したこのときは、やっぱり意識は変わりましたね。

Photo by 小磯晴香



–: 2017年には、2~3ヶ月に1度自主企画を行うようになりましたし、そこでロクトシチやslakと出会ったことは、とても大きな出来事なんじゃないのかな?と僕は思ってます。というのも、sassya-の音を聞いて、「この音と近い音が出せるバンドは、東京や関東にどのくらいいるんだろう?」と考えたとき、かなり限られてしまうと思うんですよね。その意味では、自主企画でライブ活動をしつづけた2017年は、かなり覚悟のいることだと思えたんです。
岩上 おっしゃるとおりです。近しい音を出せるバンドを探すというと、ライブハウスでブッキング担当している人にとっても、かなり厳しいものがあると思うんですよ。今から考えると危ない側面もあるし、そういった担当の人にはちょっと失礼になるかなとも思うんですけど、かなり意固地なバンドに見られてしまうと思うんです、ほかのバンドを寄せ付けたくない、というようなね。ただ、あの1年があるから、今につながっていると思うので、良かったかなと思ってますよ。
吉原 『non communication』を2016年年末に出して、明けた2017年になって、この自主企画シリーズが始まったことで、「sassya-とはなんぞや?」というイメージをハッキリさせようという意味もありましたよ。それまでは色んなバンドと対バンしていましたけど、僕らのセルフイメージを作るという意味では、かなり良かったと思ってます。
野口 自分たちが好きだと思えるバンドとやらせてもらったので、先程のロクトシチやslakだけじゃなく、今でも繋がりを持てる方が多いんですよね。
岩上 ここまで話していてなんですけど、オレは身内ノリで盛り上がるのはすごくイヤなんですよね。ほぼほぼ初対面、「よろしくおねがいします」と出会って、音でぶつかりあうような、そういうものを今後も求めていきたいなと思います。

人の人生を変えるくらいの衝撃を他の人にぶち当てるためには、もっともっと多くの人に、届くべき人に届けたい(岩上)

–: そこからアルバムを新たに作ろう!となっていった流れは気になりますね。
岩上 2017年はひたすらライブをやっていた1年になったんですけど、「やっぱり音源を出さないと認知される機会が減るな」ということにいきづいたんですよね。そこで、「2018年には絶対に音源を出そう!」ということを決めたんです。ロクトシチとslakとのスプリットを出すことも踏まえたら、「流れ的にも出せるんじゃないか?」とも思ってました。
吉原 2017年の途中から、ライブでしかやってない曲が半分くらい、『non communication』に入ってる曲で半分くらいのセットリストになってしまって、「これはいかんぞ」と思ってもいましたよ(笑)
岩上 今作のレコーディングを始めたのは今年(インタビュー収録時は2018年12月)6月からなので、1年半の間で出来上がってきた曲が中心になったアルバムですね。「over」と「だっせぇパンクバンド」は昔からあった曲を久々にやってみて、かなりウケが良かったので収録してみたんです。それもロクトシチが呼んでくれたライブがきっかけになっていたりします。昔とぜんぜん違っていたし、新しい感触をいれてみたくなったというか。
–: なるほどです。
岩上 あとはまぁ、「この日にレコーディングします」と締切が決まると、めちゃくちゃ頑張って曲作りはしましたね。一番新しくできたのは、実は「脊髄」なんです。レコーディング開始1ヶ月前にやっと 出来上がった曲でした。
野口 アレンジを変えまくったんだよね。
岩上 いまの形になったのが1ヶ月前だったんです。



–: セカンドアルバムが出来上がって、率直な感想を聞かせてください。
岩上 いやーーヤバイでしょ、どう考えても。これも極端な話ですが、これが売れなかったら、オレは死ぬしかないです。
野口 また死ぬ(笑)
–: すぐ死にたがるやつですね(笑)でも、今回のインタビューを通じてみると、この言葉が冗談じゃなく、かなり本気の重みがあります。でも年内発売を目指していた作品ですが、2018年ではなく、2019年の1月に発売になるという。
岩上 良いじゃないですが、景気づけに。オレらの音でぶっ飛んでくれれば。
–: マスタリングを務めているのは、TSUBAME STUDIOの君島結さんですよね?。uri gagarnや幾何学模様、今年2018年ですとKlan Aileenのアルバムでもマスタリングなされていた方で、ファーストアルバムやライブを見てきた自分としては「録音の仕方で、ここまで変わるものなのか!」とかなり驚かされる内容になってます。
岩上 そこまで言って頂けると、とてもありがたいですね。君島さんが手がけてきたバンドは以前から好きですし、ミキシングやマスタリングを手がけた作品も何枚も聴いてきて超好きだったし、君島さんとの繋がりも、色んな出来事や繋がりが生んでくれたものなので、すごく光栄です。
–: この作品の良さの一つに、「楽器そのものの音や音色がまさしく鳴っている」感じがあるんですよね。ギターはばっちりとギターの音そのものですし、スネアの音はしっかりと硬い音、ベースの鳴りもちゃんと聴こえる、この「ちゃんと鳴らされている感じ」が人間っぽさや熱量をものすごく感じさせてくれるし、sassya-のライブにも繋がる感じがありますよね。
岩上 僕が聴いていた「あの音」を、しっかりとアップグレードした音じゃないと、音源としても曲としても披露したくないですよね。
–: sassya-のセカンドアルバムを聴いていて特徴的だなと思ったのは、いわゆる「速い」と感じられるような曲がないということです。BPMとして速い曲はありますが、4つ打ちのダンスビートや2ビートなどのドラミングがないですし、ハードコアのような刻み方もない、どことなくスローな感じがするんです。
岩上 BPMとしては速いかなとは思いますけど、たしかにハードコア的なものはないですよね。
吉原 「だっせぇパンクバンド」くらいじゃないかなと思いますね。そのイメージに合うような曲だと。
岩上 たしかに。過剰なビートをやるのはロックバンドが好きな人なら誰しもがやると思いますが、限りなくオーソドックスでシンプルに、聞きやすいけど、「なんかおかしい」という感じ。そういう曲が好きですし、そういう曲が集まったのかなと思います。あと、ミックスのときに、「聞きやすさ」を求めたのも大きいと思いますね。



–: そうなんですか?
岩上 イヤホンやヘッドホンで聴いてもあんまり疲れないような音や音圧、それを求めたのはありますよ。迫力はあるんだけども、迫力ありすぎないようなサウンド、エクストリームな音楽かもしれないけど、日常のなかでも聴けるようなサウンド、そのギリギリを限りなく求めました。この点は君島さんにもちゃんとお伝えしましたね。議論を重ねるという感じではなく、体感的に受け取ってくださったとは思います。
–: なるほどです。ドラム/ギター/ベースのアンサンブルでいうと、ギターの刻みは速いけど、ドラムとベースはそこまで速くないという構成がかなり多いと思うんです。ドラムの刻みも確かにオーソドックスだし、ベースフレーズも運指的に動きまくるものでもないですし。それにいわゆるショートパンクな曲が一つもないので、さっきのような「速い曲がない」という印象になったんだなと。いまのお話を汲んでみて思うのは、確かに、ここまでハードコア寄りなロックサウンドなのに、めちゃくちゃゆったりと聴いてしまえるということなんです。
岩上 僕の狙いどおりですね(笑)
–: それでいてギターもボーカルも、歌詞もちゃんと聴こえますしね。先程もちらっとお話にあがりましたが、岩上さんの爆発力を支えるためのドラム/ベースのお2人のプレイなんだということ、あらためて感じます。
野口 岩上がものすごく激しいし弾きまくるので、私がうるさすぎたり詰めたフレーズを鳴らすのはやめようというのは意識してます。なるべく私は引いた感じでやっていて、なるべく引き算をして、必要な部分だけを鳴らしたいと思うタイプなので、それもありますよ。
岩上 それとこれはしっかりと伝えておきたいんですけど、僕自身は目立ちたいタイプでもなんでもないですし、このバンドの中で目立つポジションを引き受けているということはないですね。 3人の音でのバランス、そこを一番に考えてますよ。
吉原 ギターソロとかないしね。
岩上 そうですね。
–: 逆にいうと、実は吉原さんがスネアだけを叩くところが結構あるんですよね。吉原さんが「ターンターンターン」と叩いていて、野口さんのベースがスっと入るパターン、ちょっとした変化はあれど、アルバム全曲に入ってるんじゃないか?ってくらいで頻繁に出てきます。3人組バンドなので致し方ない部分はあれど、これだけ多いのも面白いですし、3人それぞれに目立つ部分があるという意味では、なるほどなと思います。
岩上 あと言えるのは、野口は弾き語りでソロ活動をしていて、吉原さんは作曲もできるし、この2人は別のバンドでも一緒に活動しているんです。3人とも作曲ができるので、曲を俯瞰的に捉えて演奏ができるというのは大きいアドバンテージかなと。プレイヤーに徹していても、エゴがギリギリ出過ぎないで、バランス良くバンドアンサンブルができるバンド、それが一番カッコイイロックバンドだとぼくは思っています。
–: なるほどです。ファーストアルバムとセカンドアルバムを地続きで聴いてみると、「街」と「孤独」についての歌が非常に多いですよね。しかも、ファーストアルバムでもセカンドアルバムでも「暴力」について触れる曲があります。この辺のテーマ性はあるんでしょうか?
岩上 オレがそれだけしかできないからかもしれないですね。
野口 わたしが口を挟むのも変ですけど、本当にそのことだけを考えているんだと思います。
岩上 うん、そういうことしか考えてないのもあるよね。ただ、同じテーマや切り口でも、もっと深い描写だったり、もっとエグい言葉や音楽を引き出したりして、どんどんと巨大化していく。そんな感じで、それだけを歌うだけかなと。
–: その筋でいうと、より局所化したなと思います。ファーストアルバムの「街」、セカンドアルバムの「東京」、一気に明確になったのが面白い対比になっているんです。
岩上 うーん、東京はオレが住んでいる街ですし、身の回りのことや身近なことを歌にしたら、やっぱり局所化したなという感じですかね。半径何メーターかの、生活のことについての歌ばかりですよ。オレが仕事から帰っているときに感じたことや、目に写った情景とか、そういったことしか歌にしてないですね。
–: 歌詞はどれくらい時間をかけているんでしょう?
岩上 めちゃくちゃ時間を掛けてますね。すぐにポンっとはできないですよ。
野口 レコーディング直前まで悩んでますよね。
吉原 なんならタイトルだって決まってないし(笑)
野口 そうそう(笑)実際レコーディングで歌って初めて内容を知るくらいなんです。
–: ははは(笑)こうして聴いてみると、何かしらに怒ってるし、苛立ってるし、ムカついているし、不平不満がめちゃくちゃあるんじゃないか?と思ってしまうんですよ。そのなかで、「暴力性への憧れ」っていう歌詞がドンとくると、もう諸手を挙げてしまうというか。突き刺さるんですよね。パワーワードが連発ですし、その間の行間だけでリリシズムを感じさせてくれるというか。
岩上 そこまで言いますか(笑)
–: ちょっと言い過ぎたかとは思いますが(笑)ライブで1年間やりつづけてきたことで、バンドの音と言葉にめちゃくちゃ自信があるんだなというのがすごく伝わってきますよ。
岩上 それは本当に同じように思ってます。ライブ中の俺らは最強でしょ?くらいの気持ちですからね。それをこうしてアルバムにできたことは、一番良いことだと思ってます。あとはもう売っていくだけですね、そうじゃないと……オレ死んじゃいますね……
吉原 ああ、若き命がまた散るんだね……(笑)CDよりもライブのほうがロックバンドはカッコイイと思うし、僕らも当然カッコいい音を出せてると思うんで、ライブに来てくれたら本当に嬉しいですね。
岩上 そうですね。ライブで、見に来ている人間も僕らも爆発してしまうような、そういうライブが出来たらいいなと思います。
野口 あれじゃない?岩上さんにとってみれば、高校のときに出会ったサンボマスターと同じような「人の人生を狂わせるような」ライブがしたいっていうことになるんじゃない?あのときの衝撃を、他の人にも与えたい!っていう。
岩上 おお……良いこと言ったね(笑)本当にそうですね。当然ですけど、僕ら認知は広くされたいなと思っています。何故かというと、人の人生を変えるくらいの衝撃を他の人にぶち当てるためには、もっともっと多くの人に、届くべき人に届くようになること、それが最初の一歩だと思いますし、このアルバム『脊髄』がきっかけになれば良いなと思っています。

インタビュー・テキスト:草野虹(12月4日 新宿にて)




『脊髄』/ sassya-
2019年1/9リリース
フォーマット:CD
レーベル:Kerosene Records
カタログNo.:KRSE8
価格:¥2,000(税抜)
【Track List】
1. 東京
2. No way
3. SANE
4. over (Album ver.)
5. dear steel
6. manner
7. だっせえパンクバンド
8. T
9. 脊髄



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2019.1.13 21:00

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