【INTERVIEW】Shingo Mimura『Heart Sky Door』

神戸を拠点にプロデュース/作・編曲/ベース・ピアノ演奏/音楽監督などマルチな才能で比類なき世界観を描き続けてきたサウンドアーティストShingo Mimura、自身名義としては初となるフルアルバム『Heart Sky Door-空のすきまに扉はひらく』を9/12にリリースした。
本作はピアノ、ベース、カリンバ、ガットギター、バイオリン、ビオラ、チェロをはじめとした多彩な楽器や、声、ノイズ、生活の中にある音や自然の音の質感をアレンジすることでより細かで複雑な心理的背景を描いている。成熟した心洗われる音の結晶が、全編に渡ってリスナーに語りかけてくるようなアルバムとなっている。
今回、そのShingo Mimuraにアルバム関する様々なことを語ってもらった。

Q1:作編曲/サウンドプロデュース/音楽監督/舞台音楽/演奏など様々な活動をされて来られたのですね?
Shingo Mimura(以下、S.M):元々はベーシストとして演奏活動が中心でしたがバンド解散後、音楽制作を始めました。
ベースはアンサンブルの1パートですが音楽全体を作りたいと思いました。
打ち込みの技術を学び始めて間もなく、ご縁があって映像に音楽をつけるお仕事を定期的に頂く機会があり、その後少しずつ様々なシチュエーションでの制作に携わらせて頂くようになりました。
その中でひとつひとつ学びながら経験してきたという感じです。
Q2:様々な音楽活動経験がありながら今回が1st Albumとは意外な感じがします。
S.M:長い間、好きで活動してきたつもりでした。実際、素晴らしい経験を沢山させて頂きました。また技術を高めたくて沢山学んできたと思います。
だけどここ数年、音楽仲間や新しい出会いの中でアーティストとして世界観や芸術性、内から湧き出る自己表現を持って勝負している姿をみてハッとしたんです。
果たして自分の音楽はこれで良いのだろうか?疑問を持つようになりました。
心から湧き上がる音楽を作りたい。
そこから作品作りを意識したのですが自分の中でフツフツと湧いてくる感情がありました。
音楽を始めた時のような、なんともいえないワクワク感がありました。



Q3:コンセプトのようなものは最初からありましたか?
S.M:自分にとって本当の癒やしとは何だろう、と漠然とした大きなテーマは最初からありました。
今まで生きてきた中でどんな状況、状態が心地良かったかとか考えながら。
神社や教会でお祈りしたり、あまり行けてないですが(苦笑)お墓参りに行った後になんとなくスーっとして前向きになれたりしたなぁと思っていて、そんな感覚をイメージしていました。
その後も色々考え、自分自身の人生を振り返ったりした結果、『心』や『魂』を肯定する事ではないかと思ったのです。
暗い話かもしれませんが(笑)、人生を歩んでいく事はほんと大変だなあと日々思っていて、精一杯生きていても悩み、後悔、怒り、妬み、様々な負の感情に支配される事も少なくありません。
好きな音楽をやっているなかでも幸せな反面、認められなくて悔しい思いや不甲斐なさを感じる事も沢山あります。
そんな感情って僕だけではなくて生きている限りどんな人でも持ってるんじゃないかなと思うのです。
だけど誰しも葛藤しながら声には出さないけど心の奥底に子供のように純粋で無垢で絶対に立ち入る事の出来ない神聖な魂、と言えば大袈裟かもしれないけど本当に大切な気持ちをどこかに持っているのではないかと思ったのです。
そんな感情の先にある『魂』が否定される事なく、全て肯定出来るような穏やかな音楽。
人生を美しいものと思えるような作品を作りたいと思いました。



Q4:壮大かつ美しい作品で映画音楽のように映像が見える感じがします。
S.M:ありがとうございます。
記憶の中で一番最初に感動した音楽が映画『E.T.』の音楽でした。
多分小学2年生位だったと思います。
映画を見ていて、映像とともに流れてくる音楽に全て持っていかれる感覚というか、今振り返ってもキラキラしている思い出です。
自分自身の良い音楽の基準というか、必要なものというか映像が見える音楽が好きなんです。
逆に不必要に音が入っていたりするTV番組とかあればすごく見辛かったり、あとシチュエーションで雰囲気にあっていない音楽が流れていたらなんか違うなと思ったり、口には出さないけど(笑)。そこは大事に思っています。



Q5:ピアノやストリングスなど生楽器が多様されています。他にも環境音を取り入れています。
S.M:ピアノ、ベース、ギター、カリンバ、シンセと一部の声は自身で弾いて録音、編集しています。
ストリングス、シロフォン、トイピアノ、ボーカル、声は依頼しました。
良い音、良い演奏ってなんだろうといつも疑問に思います。
綺麗でノイズが少ない方が良いというわけでもないし、演奏が上手ければ良いというわけでもないように思うのです。
汚い音でも音楽にとって必要な音があるような気がするし、音はそれほど良くなくても美しい音楽もあるし。
妥協という事ではなく、音楽の本質みたいなものがそこにあるのではないかと思っています。
先ほどコンセプトについてお伝えしましたが『全て肯定できるような音楽』という事が、感覚的にもつながっている感じです。
ノイズが何とも言えない質感を生み出す事があるのと同じように。
楽器の演奏は上手ではありませんが今回は自分で演奏、収録する事を重視しました。
間や響き、細かいタッチなど自分の感じている事を出来るだけダイレクトに注入したかったのです。
また録音に関してもマイキングを学びながら時間をかけて色々試してイメージに合う音を録音していきました。
スタジオで録音する事も考えましたが、今いる自分の環境含め丸ごとアルバムに収めるのも悪くないなと思っていました。
自宅周辺は六甲山の中腹ということもあり、自然の多い所です。ノイズの少ないスタジオより今、自分がいる環境も含めて音に残す事になんとなく意義があるように思ったのです。
スタジオ代がかからない分、マイクを買ったり出来ましたし(笑)。
ストリングスも自宅で収録しました。演奏依頼した神戸のTHE STRINGS代表でチェロ奏者の森さんには最初から自身で収録する意味を伝え、音楽にとって必要である事、自分の感覚で良い音を録りたいと想いを伝え、ご理解頂きました。
充実した学びの多い録音作業でした。
環境音や効果音はサンプリングも使用していますがほとんどは自宅で身の周りにあるものや、周辺の環境音を収録しました。
色々録音する内に生活の中にはユニークな音やリズムに溢れていて面白かったです。
遠くで鳴っている草木の音と近くで鳴いている虫や鳥の鳴き声、車の走る音や子供の遊ぶ声。全て無関係ではないように思えてきたり。



Q6:ジャケットのアートワーク、MVも自身で制作されました。
S.M:こちらも音と同様の考え方で技術がなくても出来るだけ自分のイメージを表現したかったのです。
だけど音楽を表現するよりハードルは高かったです(笑)、何せ全て初めての経験ですから。
本当に何から手をつけて良いかわからなかったですが少しずつ見えてきた時ははまりました(笑)。
最初はイメージのキーワードを並べて、言葉から連想する物や色、質感などに変換しました。
次にそれを表現する手段は何があるかなと考えたり、調べたりして取り組みました。

『Heart Sky Door-空のすきまに扉はひらく』のMVは六甲山をうろうろしながら撮影したのですが、映像を撮りながら自分が感じるもの、なんとなく音楽と共通するなぁと思った事がありました。
今は使われていないロープウェイの支柱がそのまま残っていて、すごく立派で重厚で今にも滑車が動き出しそう、だけどもう何年も使われていなくて野ざらしになっていました。
僕が感じたのは時間が経過したもののみが映し出す味わいみたいな、そこから感じる物語というか。
最初は真っさらできれいだったものが時間をかけて朽ちていく、だけどそれも美しかったり。
何となく人生みたいなものを感じるというか。作品全体のイメージに通じると思いました。



Q7:各曲のタイトルもイメージがあって魅力的ですね。
S.M:全編インストゥルメンタルなのでひとつひとつの曲を表す言葉はとても重要だと考えていました。
先ず日本語タイトルをシンガーで作詞家の高山奈帆子(a.k.a.Carneiro)さんにお願いしました。
仮のタイトルはありましたが、何も、イメージも伝えずにデモを聴いて頂き、言葉にして頂きました。
初めて各曲のタイトルを見た時、大袈裟ではなく命が吹き込まれたというか、物語が鮮明に見える感覚がありました。
すごくワクワクして、それまでに嫌というほど曲を聴いてきたはずだったけど(笑)聴こえ方が変わるほどでした。
次に日本語タイトルを英訳する為、まず翻訳家の立花陽一郎さんに依頼しました。
とても丁寧にイメージや伝えたい事を聞きとって下さいました。
打合せといいつつ、Skypeでお互いビール飲みながら(笑)、長時間かけて日本語タイトルに含まれたストーリーやイメージなどを伝えていきました。
またネイティブの方にも日本語タイトルのニュアンスやイメージが伝わる様に、同じく翻訳家のAlison Wattsさんにもご協力頂きました。
日本語と同じような表現がない場合はネイティブの方にも響くような表現を提案して頂きました。
おかげ様で英語、日本語ともにひとつひとつ個性的で響きに美しさがあって音楽とピッタリ合っていてとても気に入っています。

01. Heart Sky Door – 空のすきまに扉はひらく
02. At 1.5 Knots Over Still Water – 湖水の1.5ノット
03. Sarushima Heartbeat – 猿島の心臓
04. Shinjuku, A New Day Dawns – 新宿、東の空
05. Artless Beauty – 天衣無縫
06. Dasha Waits – ダーシャの待ち人
07. Tangled Fates – その糸を辿れば
08. Museum In The Deep Sea – 深海美術館
09. A Short Letter Of Farewell – 短い手紙
10. Spirits Of The Bodhi Tree – 菩提樹の精霊



Q8:今後の活動はどのように考えていますか?
S.M:今回のアルバムの世界観を表現出来るようなライブを考えています。
演奏面だけでなく演出全て自分でやってみたいなと思っていて、空間含めてアルバムの世界にどっぷり浸れるようなライブをしたいと考えています。
またハードル上げてしまいましたが(笑)。
めちゃくちゃ勝手な考えですが水族館や博物館、美術館、プラネタリウム、お寺や教会など、音楽を聴く場所ではないかも知れないけど、そういう既に形ある、空気の出来上がった場所とコラボが出来ないかなと思っています。
誰かがネットで言うと叶う可能性が高くなるよと書いていたのでしっかり希望は伝えさせて頂きました(笑)。オファーお待ちしています(笑)。
次作の事は少しづつ考えていますがこれからという感じです。
またソロ活動とは別にバンドというかユニットで音楽制作、ライブする事も計画していてこちらもとても楽しみです。



Q9:最後にリスナーにメッセージをお願いします。
S.M:ここまで長い文章を読んで頂きありがとうございました。
日々の生活の中で穏やかな時間を過ごして頂けるような作品になれば嬉しいです。
どうぞ宜しくお願い致します。


『Heart Sky Door』 / Shingo Mimura
2018年9/12リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD81
価格:¥2,200(税抜)
【Track List】
01. Heart Sky Door
02. At 1.5 Knots Over Still Water
03. Sarushima Heartbeat
04. Shinjuku, A New Day Dawns
05. Artless Beauty
06. Dasha Waits
07. Tangled Fates
08. Museum In The Deep Sea
09. A Short Letter Of Farewell
10. Spirits Of The Bodhi Tree

【副題】
01. 空のすきまに扉はひらく
02. 湖水の1.5ノット
03. 猿島の心臓
04. 新宿、東の空
05. 天衣無縫
06. ダーシャの待ち人
07. その糸を辿れば
08. 深海美術館
09. 短い手紙
10. 菩提樹の精霊


室内合奏団THE STRINGS 第33回 室内楽コンサート
「フットプリント。」
2018年11/10(土)兵庫県西宮市 カトリック夙川教会 地下聖堂
Open 14:00
一般:¥3,000
学生・身障割 ¥1,500(全席自由 定員80名)
未就学のお子様は保護者同伴で入場可・無料
Member:上新友祐(vo)
小野田享子(pf/arr)
堤沙織(chor)
ミムラシンゴ(ba/pf/arr)
【THE STRINGS】
ヴァイオリン:佐野美菜子/木村七沙
ヴィオラ:白石雅也
チェロ:森左介
Info

2018.11.6 12:00

カテゴリ:INTERVIEW, PU2 タグ:,