【INTERVIEW】alicetales

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高校、大学とバンド生活に明け暮れ、会社や社会のなかに独り立ちしてもまだ、バンドサウンドに身を捧げる人がいる。
情熱的に、時には落伍しかけながらも、しがみつくように活動を続ける人もいる
『やりたいからやってる、やらされているわけじゃない、という感じです』
そう答えたのは、今回インタビューしたalicetalesだ。楽曲に込めるエッセンス、音楽への愛とともに、自分たちの立ち位置と信条をしっかりと胸にし、今後の作品を見据えるほどに大人びた姿を見た。
愛ゆえに、しかしながらマイペースに歩みを進んでいく、そんな彼らを切り取ったインタビューだ。(草野)

僕らはそこまでまじめに音楽について考えて活動をしているわけじゃなく、楽しいからやっている、というモチベーションなんです。やりたいからやってる、やらされているわけじゃない、という感じです。(nakamura)


ぼくがalicetalesというバンドを知ったのは、sugardropというバンドを好きだったことがきっかけでした。年末に行っている個人的なランキングにsugardropを選んだとき、nakamuraさんからツイッターで即フォローされて(笑)、僕も同じようにフォローしたことが始まりでした。数年したときに「そういえば最近活動しているのかな?」と思ってnakamuraさんのアカウントを覗いたところ、alicetalesというバンドを活動をされていたと。sugardropではドラムをたたかれていたわけですが、どういったいきさつがあって結成したのでしょうか?


kyosuke nakamura(Vocals/Guitar 以下nakamura):もともとは、僕がsugardropをやっている合間に、家でちょこちょこと宅録をしていて、その宅録をバンドサウンドで再現したくなったというのがきっかけですね。
—いつごろでしょうか?
nakamura:2014年の終わりごろ?
ichikawa(Guitar/Vocals 以下ichikawa):2013年の終わりごろじゃない?
nakamura:いや、2014年の終わりごろだったはずだよ・・・うんでもそれくらいですね。

—メンバーを探すタイミングで、まず最初に声をかけたのは・・・
nakamura:ichikawaくんですね。
ichikawa:光栄ですね。
nakamura:そのタイミングでichikawaくんがやっていたFloat down the Liffeyというバンドが止まっていたんです。彼は、僕が良いと思ってくれたものに対して良いと言ってくれたり、興味を持ってくれる領域も非常に似ていたし、彼は歌もうまいし、ギタリストとしてのセンスがすごく良いなと思っていたので、ichikawaくんに声を掛けました。
ichikawa:めっちゃ褒めちぎってるね(笑)


nakamura:ベースは僕の実弟ですね。昔から自分でバンドを組むことを考えたときにベースは弟だと決めていたところがあったし、というかあいつなら声かけたらやるというだろうと思って放っておいたんです。
ichikawa:兄貴権限だね。
nakamura:そうして弟をメンバーにも加えて、ドラムを探したときに弟が一緒にやっていたバンドのドラム、taskに声がかかったという。そういう感じでメンバーが集まりました。
ichikawa:2014年の頭にライブがすでに決まっていたんです。なのでそこから曲をメンバーと一緒に合わせる日々が始まりましたね。
—当時、nakamuraさんの手元にはどれくらいの曲ストックがあったんですか?
nakamura:50~60曲くらいですね。ただ、これは元々全然違う感じの宅録だったんです。僕自身がニューウェイヴがすごく好きだったので、ニューウェイヴやゴスっぽい音の宅録をやっていたんです。ただ、ギターポップやパンクな音ももすごく好きで通っていたので、一度そういう曲を宅録してみたところ、意外とハマっていることに気付いて、「これならバンドとしてやれるんじゃないか?」ということでalicetalesにつながったんです。
—なるほどです
nakamura:あと加えて言いたいのは、僕らはそこまでまじめに音楽について考えて活動をしているわけじゃなく、楽しいからやっている、というモチベーションなんですよね。新曲のために集まって合宿とかしますけど、夜にバーベキューとか予定していて、そのために早く曲を仕上げてさっさとそっちに移るとかね(笑)
ichikawa:もちろん前日には10時間くらいみっちり練習とかするけども。その次の日にね(笑)
nakamura:そうだね(笑)不真面目というわけではなく、やりたいからやってる、やらされているわけじゃない・・・というような感じですね。
—好きなバンドや影響を受けたバンドはありますか?
nakamura:好きなバンドはたくさんいますが、Huskar DuとSugarで活躍したBob Mouldのソングライティングにはすごく影響されたかなと思います。パンクなんだけどもポップですし、ノイズがあってもなくてもよい曲だと思わせてくれる、ギター一本で声だけのライブでも曲として十分に成り立つような曲が多いんです。もっと古い時代の人たちでも自分が影響された人もいますが、現代のバンドとしてやるのであれば、Bob Mouldのやり方はすごく合ってるような気がします。

ichikawa: 僕は、THE BEATLESとサザンオールスターズとスピッツですね
—alicetalesの音からするとぜんぜんそうは思えないですね(笑)
ichikawa:もともと、音楽を聴くきっかけになったのは桑田佳祐さんの「波乗りジョニー」だったんです。THE BEATLESは両親がすごく好きだったし、スピッツは高校の先輩が好きだった影響で好きになりました。3組とも僕にとって根底にあるバンドで、メロディアスでポップでキャッチーな音に惹かれてしまいます。

これまで作っている曲も実はアニメや漫画から取ってつけていたりアナグラムだったりするんです(nakamura)


—お2人はこのバンドでダブルギターを弾いてます。それぞれ違う楽器を弾くこともあるとは思いますが、<ギター>をどのようなものだと考えていますか?
nakamura:消耗品ですね。これは僕が尊敬しているバンドのblgtz(ビルゲイツ)の田村さんの家に遊びに行ったとき、家にギターがずらっと並んでいて、「どれもライブで使ってますね」と言ったら、「これも壊れてるし、それも壊れているし、あれも壊れてる」「全部壊れてるじゃないっすか!」「ああ、消耗品だからな」ということをやりとりをしたのが大きいですね(笑)
—それを捨てずに、大切に家においてあるというところに僕はびっくりです。大切な消耗品、だと
nakamura:確かに消耗品ではあれど、決して粗末に扱っているわけじゃない、その考え方に共感できますね。最近新しいギターを買いましたが、僕自身がそのギターを<扱っている>感覚がしないと、良くないように思ってます。
ichikawa: 僕は日用品ですね。僕自身の身の丈に合ったギターを使うといえばいいのかな
nakamura:取り回しが良い、感じだよね
ichikawa: そうだね・・・でも僕はギター壊したりとかしないですけどね!(笑)
—お2人とも仰っていることはすごく近いと思います、ギターに使われない、自分に合ったギターを使うことに注目してますよね。だからこそ、このバンドのサウンドはパンキッシュでありながら、トゲトゲしさがなく人懐っこさが耳を惹きます。公式HPをみて気になったのですが、映画はお好きなんですか?
nakamura:映画は好きです、アクション映画が好きですね。
—シュワルツェネッガーやスタローン、ブルース・ウィリスが出ているような?
nakamura:まさにそういったのが好きですね。
—ジェット・リーにアントニオ・バンデラスとか?
nakamura:好きですね。音楽で例えると、Captured tracks(ニューヨークのインディレーベル)から出ているようなバンドがだいたい好きになる、というのと一緒で、ハリウッドで大金つぎ込んで作られたアクション映画は誰が出ていようがが好き、みたいな感じなんですよ(笑)
ichikawa: やっぱり一番好きなのはバック・トゥ・ザ・フューチャーが好きですね。恋愛ものだと、小さな恋のメロディが一番好きなんですよね。
—それと同じくらい目をひいたのが、アニメについてなんですが・・・
nakamura:それ、長くなりますよ
全員:(笑)
nakamura:実は、alicetalesというバンド名自体が、そっち系のところから取っているんです。成人向けのゲームから取られているんですよ。
—というと、普通に東方とかアリスゲームとかアリスソフトになるんですか?
nakamura:それとは違うもので、15年くらいまえにRUNEというゲーム会社から発売された『今宵も召しませAlicetale』というゲームから取ったんです
—えーっとすいません、ぼくも結構やっているほうなんですが、初耳ですね。
nakamura:すげーエロいですよ(笑)
—これは公式ページでも確認できる話題ではあるのですが、nakamuraさん、かなりディープなアニメ好き・・・というかオタクですよね。ほかのメンバーがシンプソンズとか選んでいるのに、一人だけFLCL/ましろ色シンフォニー/まよチキ!/かのこんっていうラインナップで趣向が違う、この人やべーんじゃないかと思っていましたが・・・これは確実にオタクですね(笑)
nakamura:エロゲ声優の小倉結衣さんのライブに行くくらいにはそういう系統にどっぷりハマってますね。ライトな方ではなく、かなり好きな方だと思います。XEBECとエヴァやフリクリを作っているころのガイナックスが好きなんですよ。
ichikawa: 僕はこういう趣向のは見ていないんですよね、みんなに薦められていくつかは見ましたけど。
nakamura:俺の弟はガンダムが好きで、ベースよりもガンダムのほうがたぶん好きなんじゃないのかなぁ?(笑)バンド名がこういう感じなんで、これまで作っている曲も実はアニメや漫画から取ってつけていたりアナグラムだったりするんです。ただ、歌詞やサウンドはその元ネタとは一切関係ないので、ある意味では2度驚かせることができるというか、楽しめることができるというか。どのタイトルがどうというのは、想像にお任せします。
—なるほどです。ではその楽曲についてです、お2人の中でこの曲を聴いてほしい!このパートを聴いてほしい!というのはありますか?
nakamura:「ashwin」という曲ですね。この曲は僕が宅録でキッチリとアレンジしてメンバーにもっていった曲だったんですけど、みんなそれぞれ練習してスタジオで合わせたら、元々の曲とまったく違う形になって、しかもそっちのほうがより完成されていたんです。ギターソロとかも入っていなかったのに、ichikawaが超カッコイイソロを入れてきたりとかして・・・この曲があったからこうして続いてるなと思えますし、このバンドでやっていける!と思えたんですよね。

ichikawa: 僕は新しくリリースされたカセットとかsoundcloudにも公開されている「inverse」のイントロとか間奏に入っている英語部分を聴いてほしいですね(笑)
—ギターリフで始まるイントロなのにそこですか(笑)でもこの曲は本当にいいなと思いました。このリフ、完全にハードロックバンドのそれじゃないか!と
nakamura:まさにその通りで、ichikawaはハードロックも好きなんですよ。僕はPaul Gilbertとかが好きなんですけどね。
ichikawa: BON JOVIとかGUNS N’ ROSESみたいなスタジアムロックな感じね。大学時代に入ったサークルで最初にやったのがGUNS N’ ROSESの「Welcome to the Jungle」だったんです。
nakamura:先ほどの話にもつながりますが、こういうわかりやすいところで聴かせてくるメロディってすごく重要ですよね。
—そこが炸裂しているのが「inverse」でもあるということですね。

—今後、バンドとしてどんな活動をしていきますか?
nakamura:まず、今年中にアルバムを出せれば良いなと思います。これまでのリリースをコンパイルしつつ、いま作ってる曲を一緒に入れてアルバムに出来ればと思ってます。Deep Woundを経てDinasour Jrになってリリースされた彼らのファーストのように、初期衝動を詰め込んだ様な作品になればいいなと思います
ichikawa:こういうバンドみたいになりたい!というので一つ思うのは、Weezerの『Everything Will Be Alright In The End』みたいな一作を作れるバンドになりたい、というところですね。実はそれまで彼らを好めなかったのですが、この作品でかなり好きになれたんです。Queenらしかったり、Van Halanらしかったりして、僕が好きなバンドの音っぽさがそれぞれの曲に詰まっていて、たぶんメンバーも好きだからこそそういうのを出していったんだと思うんです。alicetalesでやりたいことといえば、個人的にはそう思います
—いま話を聞いて思ったのは、同じバンドメンバーでDinasour.JrもWeezerもVan Halanも好きだっていうことが共通認識になっている点です。普通、この3バンドのうちどれかは好めないとかあるはずなのに。
nakamura:基本的に、当人同士が仲悪いとかいがみあってるとかありますからね(笑)。
—カート・コバーンとアクセル・ローズ、みたいなね(笑) そういったところを並列に好きだと言えるのは、いまの時代らしさがあると思いますし、このバンドの強さなのかもしれないですね。
nakamura:ちょっと年上のバンドさん方と飲んだ時に、「Yo La TengoとPaul Gilbertを同じように好んで聴いてるとかいったら、自分たちが同じ20歳ごろでは仲間外れにされてたよ」って言われて衝撃を受けました。そういえば、メンバーで同じように好きなバンドといえば、LOVE LOVE STRAWがありますね
ichikawa:LOVE LOVE STRAWは最高だね
nakamura:LOVE LOVE STRAWみたいなバンドになりたいですね。







<インタビュアー:草野虹 2月25日 新宿>

2016.3.17 12:10

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