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【SELF LINER NOTES】Madoka Ogitani アルバム『いつもどこかに』



音楽家 Madoka OgitaniがTwitterで2年ぶりのアルバムがリリース間近だとツイートし、どこかにセルフライナーをまとめたいと思っていると聞いた時、ほとんど条件反射でindiegrabへの掲載をお願いした。
その当時まだ新作の内容については何も聴いていない状態だったが前作『クジラのいる森』でその作品世界に圧倒された経験は、Madoka Ogitaniに対する圧倒的な信頼感を産んでおり、実際に先行配信された新作『いつもどこかに』はその信頼感に違わない作品に仕上がっていた。

可能なら、このセルフライナーを“読む前に”“読みながら”“読んだ後に”このアルバムを聴いてみて欲しい。
おそらくそれぞれに違う顔を見せてくれるはずだし、それだけで最低でも3回このアルバムを楽しむことができる。

︎アルバムができるまで

このアルバムを制作する少し前、自分が何を作りたいのかわからなくなってしまい、納得のいく曲ができない時期が続いていました。もっとイメージを膨らませよう、もっと広い世界を描こうと、肩に力が入りすぎていたのかもしれません。

自分が本当に作りたいものをリラックスして作ろう、そう思って制作を続けていたところ、「二人の生活」と「波と風とカモメ」の2曲ができました。この2曲ができたことで、今の自分は「誰かの中にある風景や感情」を描きたいのだと気がつきました。これは、自分のためではなくて「誰かのための音楽」を作りたいという気持ちの表れでもあったのだと思います。
以前から風景をスケッチするような楽曲はいくつも制作してきましたが、その多くは「自分が見た風景や自分が感じたこと」を内に向かう形で追求し表現したものでした。もちろん、聴いてくれる人がそれぞれ色々なものを感じて楽しんで欲しい、という気持ちはありましたが。

前作『クジラのいる森』では作曲、編曲、演奏、録音、ミックス、マスタリング、そしてジャケットまで全ての工程を自分一人で完結させました。しかし今作では、自分というフィルターは通しつつも、以前よりも自分の手から離れたところでの表現を目指しました。そういった試みの一つとして、littro rettleのande( @littrorettle )さんに声を入れてもらったり(M7)、松橋秀幸さんにミックスをして頂いたり(M8)、ずっと気になっていた河合真維さんにCDデザインをお願いしています。さらに、以前から音楽を使っていただいている森翔太さんや、森さんのお声がけで国分智之さん、五十嵐結也さん、松田直己さんにご協力いただき、MVまで作ることができました。
何人もの人と作品を作り上げることはとても刺激になりましたし、今までとは違う手応えを感じています。人のために作る、人と一緒に作ることで、スランプの原因になった「もっと広い世界を描かなきゃ」という想いも自然な形で叶えることができました。


このアルバムは、聴いてくださる方の中にあるイメージと合わさった時に初めて本当の意味で完成すると思っています。あらためて、この作品に関わってくださった皆さん、そしてこれから関わってくださるみなさんに感謝です。




『いつもどこかに』/ Madoka Ogitani
2018年3/23リリース
(フィジカルは4/11リリース)
フォーマット:CD/デジタル配信/ストリーミング配信
価格:
¥2,160(CD、税込)
$16.90(デジタル)
【Track List】
01. 今日へ
02. 二人の生活
03. 17才
04. 波と風とカモメ
05. 考え事
06. 突然の雨
07. 雨上がりのセカイ
08. 一人、あてもなく
09. まぶた
10. ノッテ・ステラータ
CD購入URL(Madoka Ogitani Web Shop)
bandcamp




︎曲解説 1

聴いた人が感じたことを大切にしてほしいので、曲解説は使った楽器や作業行程などを中心にお伝えしたいと思います。

1. 今日へ

フィールドレコーディングとリバース音、電子音が中心の曲です。音の波、音の粒を淡々と積み重ねていったり、だんだんとなくしていく作業を繰り返して完成させました。アルバム全体を包むような曲にしたかったので、他の曲とちょっとだけ差異をつける目的で唯一生楽器を使っていません。

2. 二人の生活

曲が進む中で色々な音が弾けだす楽しさ、小さなワクワク感が欲しいなと思い、たくさんの楽器を使いました。ウクレレ、ピアノ、ギター、シェイカー、シンセ……ぜひお気に入りの音を見つけてみてください。聴く度に耳で追いかける音を変えると、聴こえ方が変わって新鮮かも?

3. 17才

最初に録った下書きテイクをレコーディングの時に超えるのに苦労しました。準備を整えて気合を入れてレコーディングしたテイクよりも、フレーズを作る先からどんどん録っていく下書きテイクの方が良いと感じることは結構あります。作りたて録りたての“勢い”だとか“初期衝動”がすごく乗った感じは、なかなかレコーディング本番では出てくれないんですよね。特にこの曲は17才というテーマのもと作っているので、余計に下書きの粗さが良い味を出していたのかも。

4. 波と風とカモメ

前半部分はパーカッションを色々と使って雰囲気作りをしました。波の音もオーシャンドラムという楽器で再現しています。本物の波音でも良かったのですが、曲中ほぼ通しで鳴っている音なので、実際にどこかの海の波音を入れるとその現実感に縛られ過ぎてしまう気がして……。
ラストの方でチカチカ鳴っているのはサンゴの風鈴です。波を楽器にした分、ここで実際に海と繋がりのある音を入れられたのは良かったなあと思ってます。現実と非現実の良いところ取りができたような気がします。

そしてこの曲ではMVを作ってもらいました!構成などは全て森翔太さんと国分智之さんにお任せして、衣装は松田直己さんのセンスで作ってもらい、ダンスは五十嵐結也さんに即興で踊ってもらいました。色々な人の感性が組み合わさって奇跡的に調和しています。ダンサー五十嵐さんのふんどし、曲に合うのか……!?と思いきや、実際凄くマッチしていて神秘的な仕上がりです。3:40秒あたりからのシーンで、踊る五十嵐さんの周りに自然とカモメが集まってきた瞬間は、震えました。その前まではあんなにいなかったのに、カモメ……!



5. 考え事

子供用ヴァイオリン、紙、お菓子の音など、ちょっと変わった音を入れています。どれがどの音か、耳を澄まして探してみると面白いかもしれません。

6. 突然の雨

夏頃にレコーダーで録った雨と雷のフィールドレコーディングです。
雨の日に耳をすますと実はかなり色々な音が聞こえます。地面で跳ねる雨音、建物にあたる雨音、家の中なら窓にあたる雨音、地面を流れる水の音、植物や建物からしたたる水の音などなど。
そういったものをできるだけリアルに再現するため、雨降りの屋外全体の音、何かに雨があたる音、地面に流れる水の音など、複数の要素に焦点をあててレコーディングしていき、最終的にそれらを一つに調合しています。

7. 雨上がりのセカイ

「突然の雨」を録った後、外が晴れてきたのを見てこれも曲にしよう!と思い立って作った曲です。
最初は自分の声でデモを作っていましたが、以前から親好がありとてもピュアな声を持つandeさん( @littrorettle )に声パートをお願いしたところ、ガラッと世界が変わりました。やっぱり声が含んでる情報量ってすごい、同じメロディでも伝わるものがまるで違うと大感動。
また、本物の水の音と声に対してある意味異質な電子楽器や電子ノイズを入れたことで、「雨が変えたいつもとちょっと違う景色」をいい感じに演出してくれたように思います。

8. 一人、あてもなく

今作初導入楽器のウクレレベースと木琴を使いました。ウクレレベースは後述の「主な使用楽器」で写真を紹介していますが、これ本当にベース?と疑ってしまうような見た目です。音は味があって、この音に引っ張られて何曲も生まれました。木琴もやはり生楽器だと弾む感じやアタック感が出るので、曲が生き生きしてきます。あと木琴なんて叩いたの小学校以来でテンション上がりました。

ミックスは縁があり、凄腕エンジニアの松橋さんにお願いしました。松橋さんは普段ポップスのお仕事を数多く手がけているのですが、インストものやエレクトロニカ/アンビエントにも造詣が深く、結果、曲の世界観をぐわーーっと広げてくれました。自分だけじゃ表現できないものがたくさんあることを、改めて教えてもらいました。ほんとうに。

9. まぶた

今回のアルバムの中で一番抽象的なタイトルのこの曲。
まぶたを閉じて聞いてみて欲しいです。
みなさんには何が見えるのか、知りたい!

10. ノッテ・ステラータ

ノッテ・ステラータは星降る夜という意味。
西洋楽器だけで完結することもできた曲ですが、あえて民族楽器をいくつか入れています。さりげなく入れた民族楽器が生み出すちょっとした違和感、不思議さが、多様な美しさを表現してくれているように感じます。
この曲に限らず、トイ楽器や民族楽器など色々な楽器を曲に取り入れるのは、画一的ではない“いろいろな良さ”を表現したいと思っているからだったりします。

主な使用楽器

細かいものも多く全てを紹介するのは無理なので、主に活躍してくれたものだけご紹介します。

左からタイ楽器のスン、エレアコ、ウクレレベース、アコギ、ウクレレ、インドのゴピチャンド



大集合させるとなんとも愛らしい。ウクレレベースは今作が初めての使用で、「今日へ」「二人の生活」「17才」「考え事」「一人、あてもなく」とアルバム内の半分の曲で大活躍。今後もどんどん使っていきます。

小口径スネア、アンクルン、木琴



ウクレレベース以外の今作でデビューした楽器達。
アンクルンは竹でできている打楽器の一種で、揺らすとカラコロと気持ちの良い音がします。何も考えずにぼーっと揺らしているだけで癒されます。
スネアと木琴は音が大きく、布などで最大限ミュートして練習、冷や汗をかきながら最小限のテイクで宅録しました。


ここから先はその他細かい楽器達。

トイピアノ、グロッケン、カリンバ



赤いトイピアノとグロッケン、カリンバは今までの作品にもかなり登場している定番楽器です。

ヴォット、パンフルート



ヴォットとパンフルートという笛で、今作では「17才」「雨上がりのセカイ」「ノッテ・ステラータ」などでさりげなく使用してます。かなり気に入っているので、今後もっとこの笛類が目立つ曲も作りたいと思います。

シェイカー類



シェイカーなどのシャカシャカ類です。これらを単品または色々混ぜながら使います。白い小さなマラカスはベイビー用のおもちゃなのですが、作りも音もしっかりしていてもう何年も愛用しています。今は見かけないので、壊さないように大切に使わなくては。

パーカッション



曲解説でも触れた、「波と風とカモメ」で使用したパーカッションです。波の音のオーシャンドラムは真ん中の赤い枠のもの。




テキスト Madoka Ogitani(@mdksn)






『いつもどこかに』/ Madoka Ogitani
2018年3/23リリース
(フィジカルは4/11リリース)
フォーマット:CD/デジタル配信/ストリーミング配信
価格:
¥2,160(CD、税込)
$16.90(デジタル)
【Track List】
01. 今日へ
02. 二人の生活
03. 17才
04. 波と風とカモメ
05. 考え事
06. 突然の雨
07. 雨上がりのセカイ
08. 一人、あてもなく
09. まぶた
10. ノッテ・ステラータ
CD購入URL(Madoka Ogitani Web Shop)
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2018.4.11 17:04

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