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【INTERVIEW】阿佐ヶ谷ロマンティクス『街の色』




貴志『自分の野望としては、リスナーの方が自分たちの音だけで一日を終えられるような音楽を作りたいです』


草野:今作「街の色」を発売して、周りの方々の反響はいかがでしょう?Apple Musicにも登録されていて、聞かれるチャンスやタイミングもより多いかなと思うのですが。
古谷:思っていたより聴いてもらえてるのは強く感じます。
貴志:以前に比べてぜんぜん反響が違いますね。
古谷:一番はyoutubeの再生回数だよね。如実に違うもんね。
貴志:そうだね。だけどCDを買ってもらえたらうれしいですね(笑)CDジャケットなども含めて一つの作品としてこだわってやってきたので。
草野:2014年に発売したアルバム『阿佐ヶ谷ロマンティクス』に収録されていた2年が経って、今作『街の色』は9曲が収められています。それ以外の8曲はこの2年ほどで制作されたんでしょうか?
貴志:「春は遠く夕焼けに/後ろ姿」を出したのが2015年7月なので、それ以外の6曲は恐らくその後に作ったものだと思います。
草野:今作「街の色」でのレコーディングはどういった感じで進んでいったんでしょう?
貴志:「レコーディングの前に、事前に合宿をしてプリプロダクションをしていました。なので本レコーディング中に大きな齟齬が発生したりなどはなかったです。
草野:徐々にブラッシュアップして、完成形に近づいていったわけですね。
貴志:そうですね。例えばSoundCloudにあがっている「道路灯」はプリプロ時に録音したデモ音源ですが、『街の色』に収録されたヴァージョンとは構成を変えた。プリプロをして曲を分析したから出来たことだと思ってます。SoundCloudのデモ音源の荒々しさも好きなんだけどね。
古谷:わたしもすごい好き!
貴志:このヴァージョンいいよね。『街の色』のレコーディングは、big turtle STUDIOSで録らせてもらいました。エンジニアのヤスさん(yasu2000さん)とはいい関係を築いた録れたと思っています。
古谷:このレコーディングのときは、ベースとドラムを録音しつつ、ギターやキーボードも同時にライン録りで録っていたので一発録りチックに録れていると思います。
貴志:ギターの音はラインで録って後からリアンプして制作したんです、結果的に一発録りらしさが残って良くなったなと思います。




草野:ありがとうございます。本作は先におっしゃったような、レゲエとポップスをうまく調和したみごとなアルバムになっていると思います。これは曲ごとによるのかもしれないのですが、曲ごとに歌やメロディの強く推したり、レゲエらしさを強く推したり、そういったバランスのとりかたを話し合ったりするのでしょうか?
貴志:多少は話はしているけど、そこまでこだわっていないんです。
草野:なるほどです。
貴志:だけど個人的に、日本人とロックステディはすごく合うとは思っています。ジャマイカも日本と同じ島国だし、他の音楽を吸収して自分のものにする点も似ていますし、あとメロディが立っている音楽という共通点やテンポ感も歌謡曲とは似通っている部分はあると思うんです。
草野:そういった貴志さんの狙いがうまく出ていて、バンドとして一つの色を強く出せているとも思います。いまのバンドシーンや音楽シーンではBPM的に速い曲が多いので、ゆったりと踊れるようなグルーヴでメロディが立っている音楽はうまくハマるんじゃないのかなと
貴志:ありがとうございます。ただしレゲエのビートを刻んでいるから裏打ちをいれなくちゃいけないとか、レゲエのビートじゃないと裏打ちをいれてはいけないとか、そういう考えは今はもうあまりないです。「春は遠く夕焼けに」とかはAメロでミリタントビート(レゲエとともに発展したジャマイカン4つ打ち8ビートのこと)を叩いているんですけど、ギターは裏打ちをしていない。だけどレゲエの雰囲気は出せたかなと個人的には思っています。
草野:歌謡曲やメロディについての話が多いですが、全編日本語の歌詞を書かれているのも、日本語にこだわりのようなものはあるからでしょうか?英語のほうがカッコイイから英語の歌詞を書く方もいるのですが。
貴志:歌詞が日本語というのは気にしたことも無かったですね、やれることをやっているだけです。
古谷:確かにもしも貴志が英語で歌詞を書いてきたら、「できることをやろうよ!」と言いつけると思います。
草野:ロディが強いとボーカルの歌声も歌詞もよくリスナーに響いてくるもので、実際この作品ではボーカル有坂さんの声が一番の聞き所にもなっているのですが、歌詞についてなにか明確なテーマや意識されていた点などはあったんでしょうか?
貴志:ボーカルの有坂が一番聴きどころになるのは、歌ものをやっている時点で当たり前だと思っています。そのなるようにみんなで曲も作ってます。歌詞は自分の中に思い浮かんだことを書いているので、客観的な歌詞にはなっていると思います。
古谷:実体験とかは基にしてるの?
貴志:どうなんだろう。無いとは言えないけど。
古谷:貴志のなかに一つの物語があって、自分がその中で動いてるのではなく、それを眺めて書いているという感じだよね。
草野:とても小説的だとも言えますね。
貴志:そう言っていただけると嬉しいですね。
草野:今作の歌詞を読みながら聞いた時、<過ぎ去ったものを見続けている>という視点や感覚を強く感じたんです。1曲だけ「春は遠く夕焼けに」だけは、ポジティブなマインドを歌っているように読み解けて、「これから来たる瞬間を迎え入れよう」というマインドを感じ取れたのですが
貴志:実は、あまり『春は遠く夕焼けに』はポジティブなマインドを歌詞にしたつもりはないです。ちょうどこの曲を書いた時は、自分が社会人になる前のモラトリアムの時期だったんです。ちょうどぼーっとしていて自分の部屋から見える風景を、当時の自分の境遇と連想させて悲観的に書いたつもりです。
草野:なるほど。
貴志:私の中で曲作りをするときは、コードとメロディと歌詞、3本柱で曲を書いています。コードで補えないならメロディで、コードとメロディで足りない部分は歌詞で補う、みたいな感じで作りますね。例えば「所縁」はコード構成も自分なりに上手くいって、リードトラックにしようと決めていたので演奏も華やかにしたんですが、曲を作る段階で明るい曲にしようとは思っていなかったので、無機質、無感情に思わせるような歌詞を入れてバランスを取りました。
草野:最後にお聞きしたいのですが、阿佐ヶ谷ロマンティクスというバンド名には<ロマン>という言葉があります。貴志さんご自身は、どういったところにロマンを受け取って、聴き手に与えていきたいと思っていますか?
貴志:うーん…ゆったりとした曲調をみんな受け入れてくれることかなと思います。あとは例えば「所縁」だけを1時間2時間とループさせて聞いていられるような、そういう音楽を作っていきたいですね。
草野:それは、いまの貴志さんにとってのロマンになりませんか?
貴志:それはロマンかどうかは分かりませんが、自分の野望としては、リスナーの方が自分たちの音だけで一日を終えられるような音楽を作りたいです。
(インタビュー日時)

<インタビュアー:草野虹 2月13日 新宿にて>

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2017.3.16 22:08

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