【INTERVIEW】エレファントノイズカシマシ


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目線を固定させての思想の受け渡しというか、一方通行の矢印というか、そういうのはもう古いし好きじゃない。

そういえば、音源はフリーで出しているものがあると記憶していますが、ノイカシのリリース作品ってどういう感じで作られてます?。
片岡:フリーの音源と、カセットと、CD-Rと、DVDですね。今、新しいの作ってるんですけど、あんまり出す気はないです。
そうなんですか??
片岡:もう出してもしょうがないですしね。前の出したの1年前なんだけど。
剤電:でも、欲しいって人はいるんですよね。
先日G.G.G.G.でフリーのライブ音源出してましたよね?あれは反応や、ダウンロード数、いかがでした?
片岡:数はわかんないですけど、結構みんな聴いてたみたいですよ。
そうなんですね。結構なファイルサイズだったので…。
片岡:1ギガですね。
剤電:ギガにしたかったんですよね、とにかく。メガじゃないぞと。
片岡:ちゃんと「G」ですからね。
剤電:かさましして…ギガにするために。
あれはあえてでかくしたんですね。
片岡:元々一番良い音質で出したかったんで。CD-Rにしたら圧縮するしかないんですけど、圧縮はしたくなかったし。ギガファイル便でギガは共有できるんで。
「G」を共有しろって事ですかね。
剤電:ゴジラにあわせて(笑)
あと、今までの作品見てると映像作品の印象が強いんですよね。DVDとか360°回転するカメラで延々ライブを映し続けたり。アート方面への志向というか、映像に強いこだわりを感じるんですよ。


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ELEPHANT NOIZ KASHIMASHI 360 ELEPHANT NOIZ KASHIMASHI

片岡:そうですね…でもアートじゃないんですよね。エンターテイメントです。まず、俺らが答えを出せないし出さないから。声かけじゃないんで。勝手に拾って勝手に深読みして文章とか書いてくれたらいいんじゃないかなって思ってます。
あと思想を一枚岩にしないっていう事があって、それを結構大事にしてますね。バンドだったらコンセプトがあって、打ち出したいメッセージがあって動いてる。例えば歌詞があったとしたら、ある程度はそうなるのかなと思うんですけど、俺はそれは必要ないかなと思っていて。モンゴル帝国みたいな、国はでかいけど民族も言葉もバラバラで。なんとなく「俺らで占領しない?」って行動原理だけがある感じ。ある程度の大きさで動いてはいるけど、1人1人の考えは別のもの。ひとつのバンドとして同じステージに立ってはいても、思想はみんな違う。そういうのが大事なんじゃないかなって。
先日のトイレ工事とのセッションの時も、周囲で色々やっていて、どこを見ていてもいいって感じがありましたね。
片岡:そうですね。なんか一方向だと教室みたいな感じになっちゃって。みんな1つになっちゃうと動きにくくなるし、カルト的にエスカレートする可能性もありますよね。自分からそういう縛りをわざわざ規定するのが嫌だったんですよね。
なるほどね。
片岡:お客さんの目線を固定するっていうのも、もう嫌なんですよね。客席の後ろとか色々な場所(時にはノイカシライブ中の控え室でも)で音を鳴らしたりっていうのは、俺がアラバキロックフェスでサンボマスターを観た時に、隅の区画の一番前で観てたんですよ。
で、横から他の区画を見たら、みんな所謂J-ROCKノリの、その場で片腕を上げて上下に跳ねるみたいな動きをしてて、それがすごく気持ち悪くて。お客さんにそんなカッコ悪い動きをさせたくないっていうか、そうなるようなライブはしたくないんですよね。それは例えば前の方に映像モニターがあって、みんなでそれを見てそこから情報を頂いてる様な状態だからそうなるんじゃないかと。そういう図式はもう嫌なんです。お客さんがいて、俺たちが鳴らしてて、その間に境界は必要ないよって思っています。目線を固定させての思想の受け渡しというか、一方通行の矢印というか、そういうのはもう古いし好きじゃない。
剤電:やっぱりライブ中にお客さんを見てもみんな違うわけじゃないですか。そういうのが僕は好きで。
これ、言っちゃっていいのかわかんないんですけど(予想以上の集客に会場大混乱、スタジオ側より厳戒態勢を敷かれ、当日の模様の口外は禁止された)吉祥寺のスタジオでノイカシのライブをやったんですけど、あの時にお客さんで来てたって二人とこの間知り合って、一人は「REMO(女性ボイスアーティスト)さんがめちゃくちゃカッコよかったです!!」って言ってて。もう一人来てた人は「どうしていいかわかんなくて泣いちゃった」って言ってて。涙ぽろぽろ流して。
片岡:それは…かなりいいですね!
剤電: いいですよね!!!その子は初めてノイズを見たのがその吉祥寺の時らしくて、どう対応していいかわかんなくて怖かったらしいんですよ。そのぐらい受け取り方が違っていいし。「でかい音だ!わー!!」ってなってもいいし、泣いちゃってもいい。
片岡:死んでもいいですよね。
一同:(笑)
剤電:うん、死んでもいい(笑)
片岡: そういう怖いところ、、本能的にヤバさを感じるライブっていうのはあっていいと思うんですよね。例えばノイズを見世物的なものとして考えるならば、怖さを取り除く必要って全く無いと思うんですよ。かと言って生肉を投げればいいのか…まあ衝動として投げてしまったっていうアプローチとしてはありだと思うんですけど。ただそれが(暴力的な行為などが)セオリーになってしまうのがよく無いってだけで。生肉もそこに突然ある訳じゃないし。
要は、椅子が揺れて画面が飛び出す、水が飛んでくる、ぐらいで感動してるやつら。そんなもんじゃないのに。生のライブっていうのは。体験っていうのは。
既成の枠の外から出てくるものを客が受け止めて、何らかの体験や発見を受け取るための装置がノイカシって事ですかね。
片岡:ちょっと話変わるんですけど、曲があって、アーティストがいて、でもそこに心酔してもせいぜい20〜30年で終わるじゃないですか。そうじゃなくてDNAを残したいっていう人間の根本的な欲望に忠実でいたいんですよ。
例えばボブ・マーリーとか子供が凄く沢山いるじゃないですか。その子供が(彼が死んでも)音楽をやってる状態ってのがあの人の理想だったのでは?と思うんですよ。自分のDNAが残って、それがまた音楽で続いているみたいな。人間としてやりたいってのはそういう事なんですよ。エレファントノイズカシマシを通して「こういう聴き方もあるんだぜ」って体験を広く共有していきたいなと。
そういう意味ではノイズって一番やりやすいし、まだまだ可能性がある気がする…。
逆に、見てる側としてノイズってどうですか?
ノイズってジャンルで結構聞くのは、ノイズってものがどういうものなのかよくわからないって人が結構いて。個人的には会場にいて分からないのかなって。それこそ好きなようにすればいいのにって思うんですけど。「どうノったらいいのか教えてよ」って感じる人は結構いるみたいですね。
剤電:それはね、甘えですよ(笑)
片岡:お前ら何十年4つ打ちに踊らされてんだよって(笑)
剤電:よく言われるんだけど、剤電さんリリース多いから追えないって言われるけど、追えよと(笑)お前こんなネット社会でいくらでも手段あるんだから追えないってのは怠慢だろと。もしくはそんなに僕のこと好きじゃないか(笑)
片岡:仕事辞めたらいいんだよ(笑)
indiegrab見ればいいじゃんと(笑)
剤電:宣伝ですね(笑)
片岡:なんか…小林さんなんかある?
小林:いや、ないですないです(笑)
片岡:「小林」ってマークがどんどん無くなってく(笑)
小林:「小林:・・・」って入れといてくれれば(笑)
片岡:まんじりともしない状態を表してくれれば(笑)…なんかみんな答えを提示してほしいみたいで。
ノリ方がわかんない…いわゆるビジュアル系とかってノリ方があるわけじゃないですか。アイドルとか。そういう答えがあるわけで、その中で楽しむんだと。でも、ノイズはセオリーがないし、セオリーがあるんならノイズの意味がないわけじゃないですか。
前もtwitterで言ったんですけど、かっこいいノイズを自動演奏するアプリがあったら使うか?って言われたら使わないし。でもノイズを自動演奏するアプリ使ってるようなライブしてるやつが多すぎるから「わかんない」って言われるんですよ。「この人のリバーブは他より若干深い」とか。そんな違いで新しくなるかって言ったら絶対新しくならない。
せめてブロックぐらい投げろと。
剤電:正直、大曲くんってギターがいた時は、結構暴れまくってましたよね。彼はテレビぶっ壊したりするんですよ。
小林:僕があげたギターをその日にぶっ壊す(笑)
一同:(笑)
剤電:僕それ客で見てました(笑)
それ見てる側は面白いけど、当事者としてはどうだったんですか?
小林:すごい落ち込みました。
剤電:大曲くんがいなくなってから変わりましたね。彼はいわゆる「暴力担当」で。ノイズとかハードコアのライブでよくいる突っ込んでく人っていう。
片岡:その感覚ってちょっとアリというか羨ましいですね。ギター壊すのはいけないことですけど…例えば5万円のギターを5万円分使うのに普通10年かかるとしたら、その時間を30分に凝縮したライブってのはひょっとしたらかっこいいのかもしれない。その30分に命かけてるとしたらかっこいいですよね。
小林:僕はギター壊されたとしか(笑)
剤電:当事者としては(笑)
大曲くん期とそれ以降ってのは全然違うんですね。


エレファントノイズカシマシ、大曲くん期

小林:大曲くんいた時は、音わかんなかったから。
片岡:いわゆる「シャー!」っていう。集団投射。
小林:ノイズの壁があるんですよ。
剤電:今みたいに流れがあるんじゃなくてずっとノイズの壁があるっていう。
小林:大曲くんがいなくなってその壁がなくなった。
片岡:あの時のやり方には、大曲くんが合ってたんですよ。
小林:あれはあれで色々勉強になったしね。
片岡:でも大曲くんやめて耳鳴りなくなったよね。
剤電:気絶したりしてましたからね。

みんな憂鬱な時代なんで、憂鬱じゃなくなりたいですね。

今後ライブをやってみたい環境とかあります?
片岡:東京湾。
剤電:僕は銭湯ではずっとやってみたいって思ってますね。
片岡:船の上とか。あと、結婚式。
一同:(笑)
片岡:結婚式やばいですよね。ご飯も食べれるし。
剤電:ちゃんとやりますよ(笑)小林さんなんかあります?
小林:前も言ったけど、全員机の上。
一同:(笑)
小林:全員この一卓で。
片岡:みんなでマクロミルやるみたいなやつね。
小林:みんなでお金を稼ぐ。このライブ中に何十円稼げたか、みたいな。みんなで文字を入力していくけど、値段の高い文章はどんどんベテランに入力されて半角の安い文字ばっかり残って、2時間ぐらいやっても100円にもならないっていう。
片岡:これだけ頑張っても牛丼も食えないバンドマン(笑)
小林:一回のライブで全員でいくら稼げるかっていう。
一番やばい発想な気がする(笑)
剤電:みんな憂鬱な時代なんで、憂鬱じゃなくなりたいですね。


インタビュー/テキスト:sabadragon(@sabadragon)

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2016.6.26 20:00

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