【REVIEW】ODORI -Dance Music-(グチャグチャンネル)/ 剤電



So Hayanoによるソロプロジェクト「剤電/zaiden」による舞台用ダンス曲のベストセレクションがグチャグチャンネルから発表された。得意とするフィールドレコーディングのコラージュ的な展開やノイズ成分に加えて、レコメンやrock in oppositionの流れも感じさせる陰影を帯びた旋律が美しい作品群に仕上がっている。


1. 嬌声 Japanese Sex Dance
やや広い空間リバーブを感じさせるパーカッションと単音で奏でられるシンプルなメロディーはやがて不穏なベースや電子音を従えて、エレキギターのインプロビゼーションへと展開する。左右の音の配置がとても美しく納まっており、ノイズまじりのインプロは出過ぎる事なく上品に響いている。

2. たんつむじーく(^^) / Tanzmusik
サンプリングやカシオトーンのリズムボックスを組み合わせて作られたワルツのリズムに電子音やギターが覆い重なる進行だが軽みを失う事なくトラックは進行する。カシオトーン・ハイハットのユーモラスなブレイクがマイナーコードとレコメン系アヴァンポップの架け橋になっている様は微笑ましくも美しい。

3. Der Todez King[死の王]
冒頭のパーカッション、続く旋律の一聴すると不可思議でトライバルな旋律と変調されたヴォイスは、どれも剤電らしいアプローチだと感じる。ワンフレーズを最後まで繰り返すミニマルな展開が旋律を強調する事でモンドミュージック的なアプローチが印象に残るトラックだ。

4. 紅色の供物 / CRIMSON
続くトラックは冒頭の深いエコーに包まれたアンビエントアプローチの意外性に驚くが、すぐに、やはり出過ぎないギターノイズがこれらのエコーに切り込んでいく。中盤、リズムトラックが大きく入れ替わりウォーキングベースの絶妙さに引き込まれる間もなく、再び穏やかなアルペジオ、そしてプログレッシブなドラム、ベースにギターのインプロが乗る。小さくまとめられているがシンフォニックな展開が美しい。

5. バレヱ / Ballet
ここではドラムとパーカッションのトライバルなループがゆったりと続く中に、スティールドラムを連想させる旋律とそれを補強するギター。フレットレスベースが奏でるベースのリフはニューウェイブファンクも連想させる。中盤から入るエレキギターは次第に電子変調されてノイズ成分が増す。

6. Baby,turns blue…
ギターが奏でるマイナーコードのワルツ。とても美しいエコーの中でオルガンと折り重なり、力強いドラムが切り込んで、6/8拍子の姿を見せる前半の見事な構成が素晴らしい。後半のヴォイスはrock in oppositionを連想させるオルタナティブオペラの様相でとても美しい。

7. TANATOS
荘厳なオルガンによるプログレッシブなイントロから、メタルパーカッションによるジャンクビートへの移り変わる瞬間の緊張感がとても素晴らしい。半音の転調を含むピアノの旋律は、バックのノイズトラックとの対比が絶妙だ。両者はそれぞれに干渉しあう事なく進行していく。徐々にのイズに包まれていく圧巻のエンディングによって作品は締めくくられる。


スカム、ノイズといった要素を背景にしつつ、カンタベリー、R.I.Oの流れとアヴァンポップを組み合わせたような仕上がり、言葉で言い表すとすれば回りくどい表現にならざるを得ない複雑な音楽性にかかわらず、仕上がりはとてもバランスの良い美しい作品群だと感じた。その辺りには剤電らしさもあるように思う。舞台で使われた様子については残念ながら体験していない為に分からないが、インパクトのあるこれらのトラックと対等に表現する舞台芸術というのはこれらのトラック同様に多くの要素を織り込んだものなのか、あるいは全く異なるシンプルな仕上がりなのかは非常に気になるところだ。実は同時期にTANUKINEIRIから配信開始された「mヲ想」というトイポップやアシッドフォーク要素も垣間みる興味深い作品がある。どちらもとても素晴らしい作品だ。

テキスト:30smallflowers(@30smallflowers


2015.7.23 8:53

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