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INTERVIEW

【INTERVIEW】塚原啓によるソロ・プロジェクトrakia 新作『Eclectic Color』インタビュー



サウンドクリエイター塚原啓によるソロ・プロジェクトrakiaが6年ぶりにリリースしたアルバム『Eclectic Color』。
坂本龍一によるオーディション番組での紹介や、前衛舞踏・演劇への楽曲提供、スペイン国営テレビ主催のクラブイベントへの参加といった経歴を持つ彼が、ブランクの間に訪れたヨーロッパの風景や芸術作品、そして日本国内の厳しい景色をモチーフとして作り上げたというこのアルバム。
彼にインスピレーションを与えたもの、そのインスピレーションをどのように吟味し、作品を形作っていったのか。
これらを掘り下げるべく塚原啓=rakiaに行ったインタビューを行ってみた。

美術で培ったノウハウが音楽制作に置き換えられているイメージかもしれません。

:6年のブランクですが、本作のトラック制作はいつころからスタートしたのでしょうか?
rakia:最初の2年間はネットが繋がらない環境に身を置いて居たため、充電期間といいますか…一旦音楽から離れ、旅行と絵画製作等を行い展覧会に出品したりしておりました。その後、震災で実家や東北の親戚が被災した為2年程,DIYのツールを一式揃えてリフォームや再建へのボランティア活動を行っておりました。生活全体が安定するに従って、一度は処分した機材を海外のオークションサイトを利用して買い戻したりして…リペアやメンテナンスも含めて、海外の人とのコミュニケーションをとるのに相当な時間とエネルギーを費やしました。
:確かに6年というと間に震災もありましたね。。機材を買い戻すといっても結構大変だったのではないですか?
rakia:当時は多少円高だったのでタイミングとしては恵まれて、憧れのビンテージシンセをコレクターの方から入手できたり、急激に安価になったサンプラー等の機材も購入する事ができました。又、新しいMacに加え0.S9にしか対応していない使い慣れたアプリケーション用に敢えて古いMacを買い戻したりしました。…そんな感じで、漸くセットアップ期間に入ったのが2014年秋頃で、トラック制作を再開できたのは2015年初旬からです。
:一貫したサウンドの統一性に圧倒されました。すべてのトラックが揃った後で、もう一度全体を見直して整合性をとるといったことを行っているのでしょうか。あるいは、サウンドを組み立てる前に精密に計算したものなのでしょうか?
rakia:僕の場合、義務教育だった頃から絵画(水彩、日本画)版画(ドライポイント)を制作していた時期が有り、無意識といいますか体感的にその制作過程そのものが刷り込まれておりまして。恐らく、美術で培ったノウハウ(組み立てる前に計算、完成型から逆算する習慣)が音楽制作に置き換えられているイメージかもしれません。
:完成型から逆算する習慣、というのはものすごく分かる気がします。
rakia:故に、幸か不幸か…DTMならではのポピュラーな制作手順は行っておらず、絵画制作に於ける“取材~スケッチ~パネル作り~構図/下図作り~本描き=納得がゆく迄描き込む”スタイルがそのまま“取材~モチーフ制作~ベーシックトラックを構築~マテリアル単位での解体~再構築を繰り返す”過程にピッタリと重なり合う感覚で制作を行っております。建築家が模型作りをバインドする流れと全く同じフローです。そのようなアプローチを試みているせいか自ずと一貫した世界観を表現する事が出来ました。

Y.M.Oの“テクノデリック”の様なアルバム構成が理想だったりします。

:アルバムは、1-4曲目までで小さく一周、その後5曲目からは最初の1-4曲目を踏まえて大きく構成を辿るといったような2部構成のような印象も受けました。曲順について意識されているところはありますか?
rakia:曲順に関してはnikさんとのやり取りで決めました。正直、1曲目の選考は非常に悩ましかったです。耳から入る情報は無限ですが、実際リスナーの立場で考えると連続して同系列のトラックが重なると恐らく脳の処理の仕方が漫然とするでしょう。その辺りは起伏を考慮して曲順を変えたセットを幾つか用意して相当に吟味しました。
:かなり慎重に配置されたんですね。オープニングはとてもスムーズで、素晴らしいと思います。
rakia:冒頭としてのスタートダッシュ的な躍動感を持たせる、楽曲としてのフックを提示する、示唆したいイメージを持続させる、持続したイメージを落ち着かせる…といった1サイクル。要するに、DJ的掟のような起承転結を、曲同士の前後関係を通じて役割を持たせている事は確かです。In Blossomで明確に切り替ります。
ご指摘の通り、5曲目からsideBに移行するニュアンスです。おこがましいですが、Y.M.Oの“テクノデリック”の様なアルバム構成が理想だったりします。

美術館等で、工芸品や肉筆絵画をダイレクトに見る行為そのものが、トラックメイキングの発展に繋がる重要なファクターであると考えております。

:ヨーロッパと日本のEclecticというコンセプトですが、例えば「ヨーロッパ的な役割」はすべてこの音響、といった音色による役割指定というよりも、和声感覚であるとか旋律であるとか、伝統的な音楽の部分に静かな折衷を感じました。それはとても抑制された美しさだと思います。ヨーロッパ、日本、それぞれで印象に残る景色というのはありますか?
rakia:確かに、音色あるいは音響で「ヨーロッパ的な役割」は表現そのものが困難かもしれません。音楽的な部分、すなわちコード感及び旋律的な音列(インターバル)を適宜設置する事により平均率に対してよりヨーロピアンだったり、ジャポニズムな折衷感を醸し出していると思います。
:表現そのものが困難というのは確かにあるかもしれませんね。そこに絵画の役割も自然と折り重なるようなところがあったのでしょうか。
rakia:景色に関してですが、ヨーロッパは逆光を差して黄金色を帯びた広大なドイツの麦畑や、朝霞がかったスイスのルツェルン湖がとても印象的でした。そのイメージで当初“Swan”のタイトルでインストとして制作しましたが、後になってリリックとvoiceを作って頂いた為、真逆なモチーフをそのまま“The Desert Of The Moon”として発展させました。日本では、青森県白神山地沿いの夕暮れ時の日本海が絶景でした。さらには奈良の吉野山から見下ろした山桜も圧巻でした。青森、奈良それぞれ晩秋と早春の時期に訪れ“Tidal Flow” 及び“Cherry Petals Falling”のモチーフ制作のインスピレーションの源となっております。
:音楽がキーになって記憶が蘇るということをよく聞きます。ここれはむしろ逆で(音を制作する訳ですから当然ではありますが)、景色がキーになってサウンドを具象化する、ということになりますが、トラック毎に明確にこの景色、といったような分離があるのでしょうか。あるいは大きな物語のようなものが作品全体を覆っているというようなイメージでしょうか?
rakia:前述したものは景色や心象がトラックに具象化されておりますが、曲によっては完全に“無”の状態からモチーフを作りつつ(往々にして季節感は影響しますが)、一旦クールダウンさせて、再度別解釈で構築しトリミングを施した結果、ベクトルが明確になり作品として成立したものもあります。今年の1月にモチーフを作った…White Landscapesはその試みの典型です。逆に、2月に入ると早朝や夕方に“渡り鳥の群れ”を多数見かける様になり“Migratory Birds”のベーシックな部分を作ったり…と身近な日常からヒントを得てます。ですので、トラック毎にこの景色という分離よりも、その後の“高みに昇華/発展させる処理”に重心を置く事が、結果として景色と結びつくのではないかと思われます。
:景色、心象、無、日常、そして再び景色…と。
rakia:更に、個人的な経験則としては美術館等で、工芸品や肉筆絵画をダイレクトに見る行為そのものが、トラックメイキングの発展に繋がる重要なファクターであると考えております。理由は通常の音楽(当然、主軸であり影響もある)からの刺激と比べ、より気分がフラットになり、客観的に“イケてるか、否か?”分別が付き易くなるという空間的な感性が備わる様な気がします。尚、作品全体に関しては、それほど俯瞰しておらず、偶然の賜物とでも言えますが…トラック単位で臨んでいる為、大きな物語といった括り等は特に意識しておりません。
:rakia名義では今後、どのような活動を考えているのでしょうか?
rakia:音の質感やトラックメイキングのスタンスは今まで通りですが、個性的な女性ボーカリストをフィーチャーしたメロディアスな楽曲にもトライしてみたいと思います。機会があればライブ活動も視野に入れたいと思います。

インタビュー 30smallflowers(@30smallflowers)


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『Eclectic Color』/ rakia
2016年10/15リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD62
価格:¥2,000
【Track List】
01. Cherry Petals Falling
02. Day Dream feat. Manami
03. Tidal Flow
04. After The Rain
05. In Blossom
06. Reflection feat. Hiroe Baba
07. Migratory Birds
08. Nostalgia
09. The Desert Of The Moon feat. Hiroe Baba
10. White Landscapes
11. Water Drop


30smallflowersによるrakia『Eclectic Color』レビューはこちら
↓↓↓
【REVIEW】Eclectic Color / rakia(PROGRESSIVE FOrM)

2016.10.15 12:00

【INTERVIEW & REVIEW】gift to her / guitarsisyo (PROGRESSIVE FOrM)

2016年1月に3rdアルバムが配信されたばかりのguitarsisyoだが、早くも4thアルバムが届けられた。従来からリズムトラックに乗せた折り重なるアコースティックギターのアルペジオが印象的な安定した作風を保ち続けているが、今作は淡さを残しながらも音色の多様性やリズムトラックの透明感にも配慮されたトラックが多く収録されている。



1.toou
幾重も重なるギターのアプローチは音響的にも前作とも近い感触を持つが、ややダビーなブレイクビーツがとてもクリアな音色を保っている。外観は前作の延長ともとれる。しかしリズムトラックは今作のオープニングとして新しいアプローチをさりげなく、そして下降する美しいコードと共に深く提示する力強いはじまりかたともとれる。ここでの音響処理は以降のトラックでも随所に埋め込まれているようが気がする。静かだがオープニングにふさわしいトラックだ。

Q1このリズムトラックの音響は前作までの作品と比較してとてもクリアにリズムトラックが押し出された気がします。例えば、トミーゲレロのような要素を一層クリアにしたような印象です。前作から程なくして発表されたアルバムの1曲目としてはとても驚きました。このトラックはいつ頃作られたものなのでしょうか?前作とは明確に区別されているのでしょうか?
guitarsisyo作ったのは多分去年の中頃?だったと思います。基本的に曲作りは、時間があるときに断片断片で作って、あとでまとめる作業をするということが多いので、前作がどうだったから区別するとかそういうことはあまり考えていないです。ちなみに、トミーゲレロという名前くらいしか知らないのです…すみません…。
2.tpgk
冒頭のクリアなピアノのフレーズは絶妙に揺らぐことで、Hip Hop経由のサンプリングカルチャーが透明感を伴って昇華したような印象を残す。電子音を重ねながらトラックは進行するが、時折に挟みこまれるアコースティックギターの叙情的なオブリがECMのレコードのような感触を残す。
3.osk feat. hikyo
続くトラックでは非常にクリアでオンマイクなギターとリバーブに淡く揺らめくhikyoのヴォーカルの重なり具合が心地よい。ここでも繰り返されるフレーズは各所に揺らぎが織り込まれている。そこにリズムボックスの端正なノートが挿入されることでフォークトロニカとHip
Hopが入り混じる奥行きある響きを作り出している。

Q2この揺らぎと端正なリズムボックスのバランスがとても好きです。このトラック、どのパーツもナチュラルメイクというのか、丁寧な音響とナチュラルさが同居していて素晴らしいと思います。例えばヴォーカルRECの際には、例えば歌い方や言葉の散らばし方などあらかじめイメージを共有されていたのでしょうか?
guitarsisyo歌については、すべてお任せです(笑)。お互い離れたところに住んでいるので、カラオケ状態の音源をお渡しして、歌トラックをスタジオで録ってもらい、歌ファイルだけを頂いて、こちらですべてエフェクト処理、ミックスをしました。個人的にhikyoさんの声質が好きで、多分自分の曲に合うだろうなとは以前から思っていたので、私的には想定内(笑)の出来です。
4.dbnrm
細やかに配置されたリズムトラックとサンプリング音が印象的な冒頭部分にギターのアルペジが重なる瞬間、リズムトラックがミュートされギターを中心としたオーガニックな音が目の前に広がる瞬間、ピアノとギターが淡く交差する瞬間、シーンが切り替わるごとにそれぞれの美しさが刻まれているとても繊細な楽曲。どの瞬間も音響がとても印象に残る作りになっている。
5.sra
電子音が静かにコードを刻み、ディレイによってリズムが提示され、ギターはゆっくりと端正なアルペジオを刻む。シンプルなコード進行が物語を進めていく。中間部で入れ替わる細かな電子音の美しさに続くリズムトラックは意外にも高速感を持ったキック。シリアスさに寄り過ぎず穏やかなユーモアさえ感じさせる余裕のある表現に成功している。

Q3このトラックはシーンの切り替えが見事だと思います。特に後半に向けてのJUKEの倍速感覚とも違う、ダビーな音楽でもなく、なんとも予想外の展開なのですが、ある種の余裕とユーモアを感じてしまいました。そのような感じ取り方はどんなものでしょうか?
guitarsisyo私的には、あまり凝った展開ではないと思っています。多分ですが、ポストロックとかマスロックとか言われるジャンルの方々の曲を聴いていたからそういう影響からもしれないですね。そういう中だと「ベタ」かなと感じているくらいです。
6.teks
前曲から程なくつながるが、ここでは再び端正なブレイクビーツが再現されている。リバーブに暖められたスネアと透明感ある電子音に寄り添うギターのアルペジオ。静かに7thを入れ込むアプローチや、中間部以降で強調され繰り返される転調、音の動きがとても絵画的なトラックだ。
7.sbe
複雑な和声が示された前曲との対比でシンプルなコード進行が引き立つこのトラックでは、ピアノにMarei
Suyamaを迎えた淡いインタープレイが印象的だ。ピアノを覆うどのパートも大きく出すぎることなく、シンプルなコード進行を印象付けるべく一体となるようなアレンジと音の分離具合の対比がとても美しい。美しさへの配慮の多いトラックだ。

Q4冒頭にも登場する管楽器の音色からもっとvaporwave的な展開を予想したのですが、むしろ自由に広がるピアノや前曲との対比でのシンプルなコード進行が印象的でした。曲の並び方がとても効果的だと思います。(が、曲順が見えてきたのは制作のどの段階あたりなのでしょうか。こうした繊細な並べ方というのは相当時間を掛けて練った構成なのかなと想像しました。そのあたりのお話を伺えたらと思いまして質問させて頂きました)
guitarsisyo曲順については、レーベルの方と相談して決めました。全曲揃ってからですね。今回のアルバムは今までだったら、全て自分で考えないといけないところを客観的に見てくださる方がいたので、大変助かりました。
8.cbmh
リードトラック的な明快さを持ちつつ、ギターが旋律とアルペジオの中間点のようなフレーズを奏でている。複雑さと明快さを併せ持つトラックだが、端正なバランスがそれらを両立させている。ギターの揺らぎはかつてのミニマルミュージックも連想させる。あらゆる要素が織り込まれている。
9.ansl
朴訥なピアノのブロックコードを支えるブレイクビーツ。美しい転調をはさむコード進行、ギター、電子音、オブリとリズムトラック、表情の移り変わりがとても自然で、楽曲の展開を意識せず、つい聴きいってしまう。中間部以降徐々に音が集まり集中力を増す。このゆったりした淡い変化が美しい。
10.slw
朴訥としたピアノとギター、楽曲は静かにレイドバックしたブレイクビーツに乗せて、美しくもシンプルな進行の中での物語のシーンを切り開いていく。ここでも端正で美しい世界はキープされているが、時折みせるギターのオブリをとらえる音響が美しい。ピアノの細かな打鍵、ゆったりしたフレーズ、旋律以外の要素も一体となって淡い世界観を醸し出している。
11.life is dictionary
最後に収録されたこの曲では、淡さはリバーブの中に残しつつ、ダイレクトな音響のギターがそれを引き立てる。陰影を帯びたコードや、静謐なブレイク、サイン波を引き伸ばしたような低音の余韻、どのパーツも自らの短いフレーズをもっており、それらが揺らぎながら寄せては分離するサイクルに包まれていく。soejima
takumaによるミックスがラジカルな側面と叙情的な背景を同居させることに成功している。とても美しい。

Q5soejima takumaさんとの音楽的な相性はとても良いと感じました。シリアスさやアーティスティックな側面が時折ユーモアでうまく包まれていることがあったり、とてもラジカルな部分が時としてむき出しになっていたり。。ミックスによって変わった部分、変わらない部分というのはありますか?
guitarsisyo元々は、ギターとエレピのかなりシンプルなものだったのですが、soejimaさんがピアノを足してくれたり、ミックスしてくれたことで最後の曲に相応しい感じになったかな?と思います。
Q6どうしても伺いたいと思っていたことがありました。それは不思議な曲のタイトルについてなのですが、、逆に最後のトラックだけは明確な単語になっていますね。そして”dictionary”という言葉。前作までのタイトルも含めてとてもdictionary的だなという集約されたイメージをこのトラックに求めてしまうのですが。。(が、そんな深読みはアリでしょか)
guitarsisyoタイトルは付けるのが苦手なのと、dawのファイル名も製作開始年月日なんですよね。で、尊敬する宮内優里さんの曲タイトルも結構適当だったので(笑)、「あ、もうこれでいいや。」という感じで付けています。一応、ある単語の頭文字のアルファベットを取っているんですが、思い付きでつけているので殆ど覚えていません(笑)。
最後の曲だけ明確な単語なのは、昔、音楽的にかなり影響を受けた人とユニットを組んでいたことがあって、そのときのユニット名なんです。もうその人とは音信不通で今どこで何をしているかも分かりませんが、もしこれを見たら思い出して頂ければありがたいなと。なので、楽曲については全く関係無いですね(笑)。
Q7最後に、このアルバムに込めた「家族への想い」というのはどういったものなのでしょうか。(私は、そこにある種のメランコリーと、自我っていうのでしょうか、、そういうものが縦軸、横軸で交錯する、、とても複雑な、肉親ゆえの、、的な想いを感じてしまいましたが、、そのようなものなのでしょうか)
guitarsisyoあんまり深い意味は無いですが、僕のように嫁や子どもがいて、音楽で生業を立てていない人が、音楽活動を続けるのって意外と難しいのかな?って思います。それが出来るっていうのは、やっぱり家族が理解して許してくれているからだと思うんですよね。そこに対する感謝という意味でこういうアルバムタイトルにしました。ま、結局、楽曲には何の関係も無いですね(笑)。
そういう意味から言うと、次のアルバムタイトルは「gift to her vol.2」とかになりますが、それは避けます(笑)。
基本的にはこれまで通り、不思議な曲名と美しいアコースティックギターが織りなす世界観はしっかりと提示されているが、多様性がその世界をさらに押し広げることに成功しているのではないかと感じる。「家族への想い」をタイトルに込めたという本作は、家族故のメランコリーを持った陰影を残しつつ、自己の透明感はキープする。そういったタペストリーを連想させる折り重なった世界を幾重にも提示してくれる作品に仕上がった。


インタビュー 30smallflowers(@30smallflowers)



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『gift to her』/ guitarsisyo
2016年7/17リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo.:PFCD59
価格:¥2,000(税抜)
【Track List】
01. toou
02. tpgk
03. osk feat. hikyo
04. dbnrm
05. sra
06. teks
07. sbe
08. cbmh
09. ansl
10. slw
11. life is dictionary
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All Tracks Written, Produced & Mixed by guitarsisyo in Japan
Except:
M2 Vocal by hikyo, Recorded by CatooO NO asoviva
M5 & 11 Additional Production & Mix by soejima takuma
M7 Piano by Marei Suyama
Mastered by Yoshio Machida
Model by mirei
Artwork by rieko w, guitarsisyo
Design & Layout by nik
Thanks to: bit, horse ride park, sexy chocolates, selvasupina, CatooO, NO asoviva, My Family & All Friends

2016.7.26 21:00

【INTERVIEW】エレファントノイズカシマシ

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ノイズ集団エレファントノイズカシマシ。
パッケージングされた音楽を嫌うかのような激しいパフォーマンスと常識を踏み越えるライブを続け、東京のアンダーグラウンドシーンに大きな歯型を残し続けている。
今回indiegrabでは全体的なシルエットが見えにくい彼らにフォーカスを合わせるべく、メンバーの片岡フグリ、小林ムーク、剤電にインタビューを試みた。

いいですね、パートって。バンドみたいですね(笑)

本日はお集まりいただきありがとうございます。まず、自己紹介としてお名前とパートを教えていただけますか?
剤電:いいですね、パートって。バンドみたいですね(笑)
片岡フグリ(以下片岡):じゃあ剤電からお願いします。
剤電:ノイズ作家の剤電です。
ノイズ作家??
剤電:カルチャーブロスに書かれました(笑)でもけっこう気に入ってます。
片岡:「エレファントノイズカシマシ」って書いてないの?
剤電:書いてない。
私も剤電さんの参加ユニットの全容って、把握しきってないです(笑)
小林ムーク(以下小林):えー、シンセとか モノとかをやっている小林ムークです。以上です(笑)
よろしくお願いします。
片岡:総合司会の片岡フグリです。
一同:総合司会(笑)
片岡:『自分は総合司会です』と、エレファントカシマシの宮本さんが自己紹介で言っています。
剤電:あ、そうなんだ(笑)
インタビューってされた事ありますか?
片岡:いや、ないんじゃないですか?
剤電:1回だけ、youtubeでやってたラジオ番組で、お話しをした事がありますね。
ラジオ出演みたいな?
剤電:MOGIKOJINさんっていう、ドラムソロとか企画とかやってる方のネットラジオに出演させて頂いたことがあります。その時は華屋与兵衛で死んだうちの犬の話とかして、あとイチヤマ君(motherpill)っていうウチらの友だちも何故か同席してて、完全に危ない人たちって感じで…。
あ、あれの後にKLONNSもあって…その時も僕いたんだけど全然話が盛り上がんなくて(笑)モギ(MOGIKOJIN)さん、心折れちゃって…多分。探せばまだMOGIRADIOっていうのが音声で上がってるかと。



G.G.G.G.は重い、巨人系の音楽。

よく私「エレカシ」って略しちゃうんですけど、正式な略称としては「ノイカシ」ですか?
小林:ノイズ…エレカシ?(笑)
片岡:様々な略称がありますね。ノイズエレカシという略称をかつて使ったのは小堺さん(インキャパシタンツ)だけです。バリエーション出しちゃうとtwitterで見つけにくいし、ノイカシが一番使い易いです。
(twitterアイコンなどに用いられている)ノイカシのロゴマークってどなたが作ったんですか?
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片岡: あれはエイフェックスツインが作りました。
一同:(爆笑)
片岡: いや、俺が作りましたけどね。でもあの会社に頼んだらいいんじゃないかな。デザイナーズ・リパブリック。10万ドルぐらい払って。
剤電:デザイナーズ・リパブリックにお金払って「エイフェックスツインのマークみたいなやつお願いします」って。
小林:断られるんじゃない?普通に(笑)
片岡: (デザイナーズ・リパブリックの)展示会に行った時、オウテカがずっと流れてたんですよ。
小林: オウテカ流れてたの?
片岡: オウテカ流れてた。っで、これなんていう人の曲ですか?って受付で聞いたら、「オウ⤴︎テカ⤴︎っていうアーティストです」って。
一同:(笑)
剤電: オウ⤴︎テカ⤴︎?
片岡: オウ⤴︎テカ⤴︎
小林:イントネーションが(笑)それ、説明してる人も知らないよね。全くそういうのに精通してない。
ノイカシって正式なメンバーは今何人いるんですか?
片岡:5人ですよ。メンバーが出れない時とか、特別な編成の時とかは助っ人が入ります。
一時期すごく人が増えていたような印象があるんですが。
片岡:G.G.G.G.(エレファントノイズカシマシの別名義ユニット)とかやってたからじゃないですか?


(LIVE) G.G.G.G. (a.k.a GREAT GIANT GIGANTIC GRAVITY)

G.G.G.G.はユニットとしてはいつ頃から始めたんですか?
片岡: 半年ぐらい前かな。(2015/8/9 新宿ゴールデンエッグにて初ライブ)G.G.G.Gを組んだきっかけは、ライブに出れないメンバーがいたけど、どうしても出たいライブに誘われて。でも、いないメンバーがいるのに、エレファントノイズカシマシって名義は使いたくないなと思って。G.G.G.Gという新しいバンドで出演することにしました。
剤電:それでやってみて結構良かったんでもう4回ぐらいやってるという。
小林:メンバー全員出れる時も。誰も欠員してないのにG.G.G.G.でやったりする(笑)
剤電:でかい音でやりたい時とかはG.G.G.G.ですね。
片岡:そうですね。確かにね。
今は、使い分けができてるんですね。
片岡:爆音系のイベントだとG.G.G.G.でやろうみたいな感じになりますね。
剤電: G.G.G.G.は重い、巨人系の音楽。
巨人系の?
剤電:アイアンジャイアント…心優しい巨人みたいな。


2016.6.26 20:00

【INTERVIEW】Boyish岩澤が語る新作『STRINGS』「いままで僕が聞いてこなかった音楽を発見して、昔と今の音楽がつながっていく、そういうのが楽しくて」

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人は成長する。
音楽の話なのに何を書いているんだ?と思われるだろうが、本当にそう思えるのだ。
東京のインディバンドBoyish、彼らを知る人はこの記事を読む時、これまでの作品と新作『STRINGS』とを聴き比べながら読んで欲しい。一人の人間が生み出し、多人数で奏であう音楽が、これほどに変わることができるのか、と。
その驚きをもとにして今回のインタビューでは話を聞かせてもらった。今作を生み出すまでにいたった経緯はもとより、音楽を生み出す上での彼自身の信条と、これからの彼が目指していく未来像が少しだけ垣間見えると思う。

おかげで「What’s going on」のベースは全部弾けますよ(岩澤)

お久しぶりです。
岩澤:お久しぶりです。前のお話っていつでしたっけ?
僕が1年前に『Bad apple』を作った時ですね。あの時はFor Tracy Hydeの管くんと一緒に話をしてくれたんですよね。
岩澤: そうでしたね。セカンドが出た翌年のすぐでした。
あの時は、バンド結成のいきさつや、For Tracy Hydeの管くんと一緒にバンド組んでいたという話、好きな音楽とかその時見えていたヴィジョンについて、お互いの作品についていろいろと話してくれたんですよね。でも、実はあの時、僕の口からはセカンドアルバムについての話をそこまでしていなかったんですよね。
岩澤: はい。
Boyishの『Sketch For 8000 Days Of Moratorium』については、Belong Mediaにて僕とKalan Ya Heidiのおかざきくんとでディスクレビューを書いたんだけども、要約すると、<BPMが早くて、ウォールオブサウンドなギターサウンド、これまでよりもロックバンド然としつつもシューゲイザーっぽさもあって、メロディの良さが際立っている>というような話でした。いまの岩澤くんから見てみると、前の作品はどういうふうに映りますか?。サウンドとしての変化、制作したのも2年前ということで立場や感じ方もいまとは思うのですが。
岩澤: うーん・・・当時やりたいことはちゃんと詰め込んだし、それなりにできた作品だとは思うんだけども、録音とかはやっぱり当時から納得はいってないですかね。ファーストのときは、メンバーそれぞれが録音したものをミックスした作品だったんですけど、前作はバンドっぽいノリにプラスして宅録風な要素を詰め込んでいて、ある意味では実験的なアルバムといえるんですよね。ギター1つにしてもかなり重ねてて重ねて・・・という作業もあったので、無理がある作品というか
なるほど。それは制作にも響いたりしましたか?
岩澤: いえ、この時はむしろ制作費は抑えられてると思います。ただ今回の作品を作ったあとのいまにしておもえば、ギターをたくさん重ねることが必ずしも正解にはならない、ということに気づけましたね。
ありがとうございます。メンバーの交代やライブ活動を経て、なにかバンド内での変化などはあったんでしょうか?
岩澤: ギターリフとかアレンジメントで「これはこうしたほうがいいんじゃないのか?」とかちょこちょこと話をする程度で、ライブを重ねていくことでの変化は実はあまり多くなかったですね、むしろCDやレコードを漁って聞くことでかなり影響を受けてると思います。
まさにその話に繋がるようなお話をお聞きしたかったんですが、ストレートに言って今回発売する『Strings』はこれまでの作品とは一線を画すような作品になったと思います。聴く音楽が変わったんじゃないのか!?と疑うくらいんだったんですが、どうだったんでしょう?。
岩澤: USインディやオルタナとかネオアコみたいなものを嫌いになったわけではないんです。RASAというソウルミュージシャン・ユニットがいるんですけど、いまのミュージシャンじゃないし、かなりレアでマイナーな方なんですが、その人達を聴いて、「おっ、面白いな、ソウルミュージックを聴いてみよう」と思えたんです。そこから、マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールドとか、あとはフィリーソウルとかもよく聴きました。
ダニー・ハサウェイとか。70年代ソウルですよね。
岩澤: 川崎にTOPSっていうソウルやジャズ系のレコード屋があるんですけど、帰り道とか用事がある時にはそこに入っていろいろ探しましたね。ちょっとお値段が張るから必ず買うということでもないですけど、知識とか興味を継続して保つ意味でも。
なるほど。前作を出してから今作を出す間で、東京のインディが大きく変化したといえば、ロックバンド然としたサウンドではなく、ポップバンド然としたサウンドとしたバンドが大きく受け入れられたことにあると思いますし、そういったバンドがどんどんと増えていっているのも事実です。もしかして、Boyishの変化は、そういった流れに乗っかろうという軽い感じだったんでしょうか?
岩澤: 僕はそういうのは一番嫌いですね(笑)
うん、わかっていて聞いてみました(笑)むしろそういったものじゃなく、岩澤くんの中での変化が如実に現れたということですよね。
岩澤: そうですね。でも、確かにそういうサウンドが世の中にも受け入れられているのはわかります。星野源の『Yellow Dancer』は僕もよく聴きました。全部が好きな曲!ということでもないですけども。
いろいろ聞いたと言いましたけど、どれくらい聴きました?50枚くらいですか?
岩澤: いや、もっと多いです。TOPSで買ったレコードもあれば、僕自身はツタヤでCDをガンガン借りるタイプでもあるので、棚一つ分以上は全然聴いてます。あとは、去年くらいに横浜の赤レンガで行われた『70’sバイブレーション!YOKOHAMA』っていうイベントがあって、70年代や80年代のロックを掘り直そう!みたいなイベントがあったんです。YMOやはちみつぱいとかはっぴぃえんど、当時使用された楽器の展示とか、影響された音楽の展示があったんです。いままでは70年代というところに大きな注目はしてなかったんですけど、ソウルミュージックとかこのイベントの影響がすごく大きかったですね。
ソウルへの傾倒は他のメンバーにとってはどう見えていたんでしょうか?
岩澤: メンバーもメンバーで様々です、人間椅子好きだったりCOALTAR OF THE DEEPERSが好きだったりする人もいるし。ブラックミュージックと同時進行でシュガーベイブ界隈が影響を受けたミュージシャン・・・例えばシンガーソングライターのアルゾとか(Alzo & UdineのAlzo Fonte、1972年にファーストアルバムを発売)、The Lovin’ SpoonfulとかThe Fifth Avenue bandとか(60年代末のロックバンド)、ああいうバンドのノリを取り入れたかったんです。
そこはメンバーと意思疎通してやれたんですか?
岩澤:いや、別に
岩澤くんの中でということですね
岩澤:演奏面でそこまでやってしまうと、モロにそこまで近づけたいわけでもないので、あえて黙っていたんです。
インプットの内容がだいぶ変わったことで、創作としてアウトプットする術がだいぶ変わったんじゃないのかな?とは思いましたが、そこはどうなんでしょう?
岩澤:音楽理論とかコードでいえば、メジャーセブンスやマイナーセブンス、ちょっと変わったコードを加えていくのは意識しましたね。これまではカポタストつけて分数コードを弾いていくのが主だったんですけど、それだと作れる音楽が限定されてしまうんですよね。
そこの変化は、岩澤くん個人の成長がBoyishに大きく影響していくという意味でかなり大きいと思えますが、面白がってドンドンやれたということなんでしょうか?
岩澤:うーん、確かにそうですね。
いまサラッと仰りましたが、方法論を一気に変えつつ、コード進行のクセみたいなものも気にしてやっていくのは、かなりドラスティックな変化にも思えます
岩澤:いや、そうでもないんですよ。ファーストの頃にも同じような形でやっていたりするので、方法論としては未知のものじゃないです、ただまぁかなりの曲をコピーして理解しようと努力はしましたね。おかげで「What’s going on」のベースは全部弾けますよ
今作のデモ音源をメンバーに投げた時の反応はどんな感じでしょう?
岩澤:「いやーだいぶ変わったねぇ-!」っていう感じでしたね
岩澤くんの作曲能力の進化だけじゃなく、「変わったよねー」と言いながらもこの変化についていって表現していく他のメンバー4人、音楽が変わるとベースとドラムは必然的に変わっていくもので、岩澤くんの大胆な変化に対応して表現していこうとするメンバー4人の凄さを感じます。
岩澤:ドラムの酒井とベースのMav.がいなかったら、今作は成立していないんですよね。ドラムにしても、「ソウル系のこういうドラムを叩きたい」というとすぐにレスポンスしてくれたりして、この2人の理解力の高さがなければうまくいかなかったです。だいぶ無茶振りだったなと思いますけど、だからこそ、めちゃくちゃ信頼できます。
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これまでよりはっちゃけよう!外にでよう!というような意識はあったんですけど、実際歌詞を書いてみると・・・

2016.5.25 12:00

【INTERVIEW】OMOIDE LABEL主賓ゆずちん、大いに語る『ミュージシャンやDJが陽の目を見る場所を作りたい』

Jukeとの出会いはCRZKNYさんの音源を聴いたことがきっかけです(ゆずちん)


2012年、音楽を愛する日本人の中でTraxmanのあの一作は大きなショックを与えた。
BPM160で細いシンセベースがウネり続け、2拍3連を時たまにはさみながら「一体どの楽器で拍をとってるんだ!?」と注意しても決して解き明かせないシカゴからの新たなマジック、それがJuke/Footworkだった。

だがそれ以上に驚異的だったのは、日本人トラックメイカーからのレスポンスの速さ。次から次へと新たなボムトラックが生まれ、実力のあるDJが台頭、本場シカゴからも一目置かれるようになったのが日本のJukeシーンである。

今回特集するOMOIDE LABEL、その主賓であるゆずちんは、トラックメイカーに陽の目を与える檜舞台を着々と作り、多くのリスナーと同じくこの音楽に魅了された一人でもある。いまの日本のジュークシーンを引っ張る男に惹きつけられた彼にとって、コンピレーション作品『JUKEしようや』シリーズにはやはり熱い気持ちを宿らせていた。彼と彼のレーベルを追いかけながら、日本のJUKEシーンの特異性を封じ込めた今作品を覗き込んでみよう。

         CfSxaY1UUAASbGF


こんにちは、ゆずちんさん
ゆずちん:どうもです。突然だけど、草野さんに聞きたいことがあるんだよ。
はい?なんでしょうか?
ゆずちん:僕はこれまでindiegrabのニュースと言う形でオモイデレーベルをピックアップしてもらい続けてきたし、他のメディアさんでは取り扱っていかないようなフィールドの音楽をニュースにしてくれていて、『indiegrab、すげぇな!』みたいなところがあったの。でね、そこに草野くんが入ることは個人的にすごくデカイニュースだったんだよ
なるほど(笑)でもそこをデカイものとして捉えてくれるのは多分10人もいないと思いますよ(笑)
ゆずちん:いやいやいや。でさ、なんでindiegrabに入ることになったの?
僕は今年で30歳に近い年齢になってきていて、これまでずーっとロックバンドとかを追いかけてましたが、音楽が好きで色々な音楽を聞いてきて、もっといろんな音楽があるんだよーという気持ちでディスクレビューをいろいろなメディアさんに寄稿していたんです、そうしたらindiegrabの方から声をかけていただいたんです。あと、ツイッターなどを介してこういったエレクトロニカやハウスミュージックをdigできるような感じになってきたんです。それまでもテクノとかハウスは聞いていたけど、リスナーがトラックメイカーさんみたいにどんどんdigしていくようになっていけるようになったのは、ネットによるものが本当に大きいと思っていますね。
ゆずちん:ロックバンドしか追いかけてこなかった、というのはオレもそうだね。
僕は1年くらい前に『Bad apple』というジンを作っていました。なぜそれを作ったかというと、東京にはいろんなミュージシャンがいるなかで、様々なシーンが形作られてすごく盛り上がっているのは住んでいてとても良くわかる。でも、横を繋いだりできる読み物やメディアがないよな、そのミュージシャンがいかに面白いか?を答えてくれるメディアがないよな、この雑多さを希釈せずにギュっとまとめあげているメディアがないよな・・・と思ったからなんです。
ゆずちん:それはすごいよくわかるね。うちのオモイデレーベルも、そういうハブになれる存在になりたいと思っているんだよ。
例えば、一昨日はハウス系のDJイベントがあって、昨日はV系のロックバンドのライブ、今日はインディロックバンドのライブ、明日はアニソンのDJイベント、明後日はしんみりとしたシンガーソングライターのライブがある・・・なんてことがザラにあるわけじゃないですか?。でもいま上げた5つのミュージシャンや各々のファンが、残り4つのミュージシャンを見た時に「あ、こいつ知ってる、すげーやばかったんだよね」みたいなことってそうそう起こらない、横同士で知らないんですよ。いや、ライブハウスの人はもちろんみてるから知ってるだろうけども(笑)
ゆずちん:うん、そうだね(笑)
それって、もしも自分が音楽を作る身として考えた場合、インスピレーションが湧くような状況なのかな?と疑問に思えたんです。加えて、音楽っていう不思議な力でハイになりたい人間・・・ファン同士になるとどうだろう?実は凝り固まってるんじゃないのか?、その<知らない>という状況は「音楽を聴いてハイになる」機会を逸してるんじゃないのか?なんて思えたんですよ。
ゆずちん:面白いこと考えてるねー、え、これ草野くんへのインタビューなの?
いや、あの、あとちょっとしたら戻りますよ(笑)そういった感覚があったので、<これは面白い音楽じゃないか?><この人らはヤベーんじゃねぇのか?>という人にインタビューをして、何を考えて音楽を作っているのか?何をきっかけにして音楽を作り始めたのか?というのを聞いてみたい、それを広めることでより多くの人にインスピレーションを与えられればと思ったんです。
ゆずちん:僕もそこは考えてるなぁ、うまくできているかは別としてね
個人的には、うまくできているか?できていないかは置いておいて、「やってるか?やってないか?」に重きを置いてますね。という流れの中で、オモイデレーベルさんから発売された『JUKEしようや Barren Illusion ~ Remember Hiroki Yamamura ~ 』が、いかにして生まれたのか、ないしは、オモイデレーベルの源泉を明らかにできればと思います。よろしくお願いいたします。
ゆずちん:ふふ(笑)よろしくお願いいたします。いやでも、よかったよ、そういう気持ちで草野くんがやってるのが知れて。僕も話しやすくなったよ。賛同してるというか共感してるというか、その気持に近しいところで今回の作品を作ったのはあるので。
         
       <OMOIDE LABEL最新リリース 『Emocute’s Etude No​.​1』>

ざっくりとしたお話なんですけど、ゆずちんさんはこれまで音楽と聞いてきたり触れ合ってきたりしたのかをお聞きしたいんですが。
ゆずちん:高校とか大学もそうですが、大学卒業後もコピーバンドをやっていたんです。もちろんアマチュアだったんですけど、「今日はこの曲やりたいねー」とか話して、その曲の歌詞を読んでコードを書いていくんです。
・・・・え?ちょっと話が見えないんですけども・・・。
ゆずちん:えーっと・・・例えばくるりのこの曲やろうよってスタジオで話しをして、その場で曲を流して僕が聞きながらコードを書いていくんです。「こんな感じかなー」「じゃあここのパートはちょっとむずかしいからこういう風にしてー」と仲間と話して、コピーをするんですよ(笑)
それって巷の楽器屋で売ってるようなコピー譜を買ってコピーするわけでもなんでもないわけですよね。
ゆずちん:そうですね。
普通のコピーバンドとは、ちょっとかけ離れた感じがありますねそれは(笑)
ゆずちん:それは楽しかったですけど、すごくきつかったですね。ベタな曲しかやっていなかったとはいえ。
TOKIOみたいですよね。「家つくろう」「なにからいく?」「木から作ろう!」的なそういう(笑)
ゆずちん:そんな感じです。大学まではバンドとかやってなかったんですけどね。ライブハウスでライブをやろう!という目標もなかったので、その場で集まったらその時のノリでセッションをしてみる、みたいなね。
昔、僕も近しいことをやっていたことはありましたが、それは僕が覚えてる曲をコードで弾いていってコピーする、みたいな感じだったので、ゆずちんさんのようなとっさにできる感じはなかったですね。
ゆずちん:コピーバンドだけどセッションしてるような感じでね。
そこからいまにつながるような出来事があったんですね?
ゆずちん:ツイッターが面白かったんですよ。
いつごろから始めたんですか?
ゆずちん:2009年ですね。コピバンの流れがちょっと食傷気味になったころで、ヒップホップが面白く思えた時期でもありました。オモイデレーベルでも最初はヒップホップの人に声をかけてるしね。なんというか、バンドって大変じゃないですか?
まぁいろいろ理由はあるとは思いますけど大変だとも思います(笑)
ゆずちん:ヒップホップのほうが軽やかに思えたんですよ。連絡とかするのにもいちいち面倒だったりするし(笑)
バンドからは離れてトラックメイクへと没頭していくわけですね、どんなトラックを作るようになっていったんですか?
ゆずちん:最初はマッシュアップを作ってたんです。それまではチープなテクノトラックを作ってたりはしたんですよ、ネットで公開しよう!と思えたのはネットの影響ですね。迷われレコードさんにTHE BEATLESのマッシュアップを乗っけていただいた時に、「ああ、ネットレーベルも面白いぞ」とも思えたんです。Lil’諭吉さんとかを当時聞いたりとかして、センスバツグンで心惹かれてドンドンと聞くようになってハマっていって、そうして今回のリリースに至るわけですよ!
ちょっと待ってください、トビすぎです(笑)。
ゆずちん:いやでも・・・
そこに飛ぶ前に、飛ぶ前にお話をしたいんですけども、いいでしょうか(笑)
ゆずちん:はい・・・
ゆずちんさんの中で、自身が運営しているレーベルでの既発曲以外で、思い出深い1曲をあげていただけますか?
ゆずちん:えー!草野くんだってそれをそう言われたら大変でしょう?
大変ですけど、これだな!という1曲が僕にはあるんです。ゆずちんさんにとってそういう曲があればと思って。
ゆずちん:本当?パッと思いついたのは・・・Weezerの「Tired of sex」かな。Weezerでのセカンドアルバム『Pinkerton』の1曲目だね

         

うわぁーーー!!マジすか。オレもWeezerならこの曲ですよ!。最高ですよね。ブレイクしたファーストの次のアルバム、みんなが期待していた2枚目のドアタマにこの曲!
ゆずちん:本当に衝撃的、すっごいカッコイイですよね。これが本当に思い出深い1曲かどうかはあれですけど、確実に僕にとって影響は大きかったですね。だって、Weezerが好きならスピッツが好きじゃない?。僕はスピッツも好きなんですよ。スピッツが好きならスーパーカーも好きで・・・みたいなファミリーツリーがあって、大学の時にそういう数珠つなぎをずーっとテーブルに書いていったこともありますよ
なにしてるんですか(笑)僕は脳内でずーっと暗唱していくような感じですね。スピッツはハヤブサ以後とフェイクファー以前で結構好みに差が出てしまうんですよ。
ゆずちん:さっきのコピバンの話にも近しいんですけど、バンド毎にクセがあるじゃないですか、ミスチルだと転調が多くて、くるりだとラストに転調がくるとか。スピッツはコードがCかAかDが多くて、シンプルでわかりやすいなものが多くて人を捉えるような曲を生み出し続けられる、そこに彼らの凄さがあると思うんです、日本のロックバンドで一番好きですよ。
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『Jukeしようや』シリーズも同じように海外の人に聴いてほしいと思って作っているんです

2016.5.3 22:00

【INTERVIEW】宇宙初のポエムコア・アイドル owtn.

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宇宙初のポエムコア・アイドルowtn.。
アンダーグラウンド感の強いのジャンルであるポエムコア界にその可憐なルックスをもって降臨し、キュートでありつつ鋭さを持つ詩で聴き手に強烈な印象を与えていく。
また、彼女のプロデューサーとしてもyano munenoli、Franz Snake、SCIBATTLON、SLATE/Glimus等の並々ならぬメンツが顔を揃え、mus.hibaの作品にゲストボーカルとして参加等、以前からindiegrabとしても気になる存在であった。
そんな彼女にBOOL主催のイベント『おもしろダークネス』でご挨拶をする機会があったためインタビューを申し込んでみた。


「本物のowtn.だ!実在してるんだ!!」

先日の『おもしろダークネス』ではご挨拶にお応えいただきありがとうございました。3/12日『甘噛みモーニングコール』と『おもしろダークネス』東京1日2公演を終えてみていかがですか?
owtn.(以下o):こちらこそ、お時間いただきまして、ありがとうございました。
今回は1日2公演ということで、リハなど準備含め早朝から深夜までずっと動いていましたが、ファンのみなさん、共演者・スタッフの方々に温かく迎えていただき、うれしく思いました。
ライブとしても、満足いく良いパフォーマンスが出来たと思います。

『甘噛みモーニングコール』ではナマコプリさんや栗原ゆうさん、Pastel Pantsさんなど、わたしと同じく「自作型」のアイドルさんたちとの共演で良い刺激をもらいましたし、『おもしろダークネス』では、ポエムコアの聖地、西麻布BULLET’Sでライブを出来て、感慨深いものがありました。
あ、BOOLさんと念願の2チェキも撮りました!(笑)
東京でのライブは既に何度もご経験されているかと思いますが、北海道でのライブとの違いはありましたか?また、以前『クリエイティブ北海道ナイト』で台北でのライブがありましたが、海外と国内の違いなどがありましたらお願いします。
o:やはりどちらも、普段触れ合うことのできないファンの方々とお会いできるのがとても嬉しいですね。みんな「本物のowtn.だ!実在してるんだ!!」とおっしゃいますが、わたし的にも「普段画面越しに見ているヲタさんたちだ〜!ホンモノだ!」って感じです。(笑)
海外はまだ、台湾の一回しか経験がないのですが、現地の方々は日本語のリリックでも純粋に音楽として聴いてくれて、壁を感じることはありませんでしたね。「言葉はわからないけどいい!」みたいな。
でもやっぱり、外国の言葉で自分の詩の微妙なニュアンスを伝えられたらいいなと思うので、引き続き英語は勉強中です。
あ!台湾の女の子たちはみんな元気いっぱいでオシャレで、日本からきたわたしに興味津々でした。美容専門学校の子たちが、メイクのお手伝いで楽屋に入っていたのですが学校の話や今流行ってるものの話をして、仲良くなれたのがうれしかったです。
『おもしろダークネス』のMCで現在アルバムを制作中とおっしゃってましたが、現在公開できる範囲で構いませんのでどのようなものになるか 教えてください。
o:これは…まだまだ内緒の部分も多いのですが、プロデューサーの交代もあって、ちょっと趣の違うものになりそうです。
これまでのリリースは「水」を連想させる作品が多かったと思うのですが、ただ綺麗とか雰囲気の良さだけじゃない、そんな一枚にしたいです。
人の精神世界というか…感情を掘り下げたものにしたいという意図があって、今までの良さは残しつつ、新しいことにも挑戦していく作品にしたいな…。
なにより朗読の技術が以前よりついてきたと思うので、もっと言葉を聞かせる、そして考えさせるものにしたいですね。
…もちろん「以前に比べて」なので、まだまだ半人前と自覚しています。(笑)
アルバムはどのような感じで制作が進んでいますか?以前のインタビューでiPhoneを使用して朗読を録音しているとおっしゃってましたが、現在はどのような制作環境でポエム・テープを制作していますか?
o:以前と変わらないです、iPhone6のまま、アプリもディクタフォンのままですね。
編集ソフトはAudacityと、リアルタイムではないのでわからないのですが、多分Windows創世記みたいなシンプルな環境なんじゃないかと思います。(笑)
でも、シンプルだからこそ操作性が高く、今のところ不自由していません。
ただ…そろそろインターフェースとマイクは購入しようと考えていて、目星をつけている物があります。
マイクは色々話を聞いたり調べたりして、SHUREのKSM9HSがいいかなぁと。
PCは古いiMacとLIFEBOOKを併用していたのですが、無理をさせすぎたのかiMacが動かなくなり(笑)、今はLIFEBOOK1台で編集などの作業をしています。


>>次ページ「自分にとっての「詩」はそもそも「呼吸」に相当するものだと考えています。」

2016.4.17 21:00

【INTERVIEW】nemo asakura & 結川ユイ『haruno yuki EP』

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迷われレコードのフィジカルリリース第7弾としてリ3/16に全国流通版を開始した『haruno yuki EP』。
これまでソロワークが目立っていた千葉の宅録エモーショナルnemo asakuraが北海道出身のシンガー・結川ユイをプロデュースして生み出された作品である。
ネットレーベルとしては老舗の域に達してきた迷われレコードが昨年から打ち出しているフィジカルリリースというネットレーベルの一つの到達点と言うべき活動。
そして、各所でその才能と技術力に対する高評価を受けつつもbedroom music的な路線を続けてきたnemo asakuraが見せる全国流通版という作品に対するスタンス。
シンガー、結川ユイが見せる「歌う」という活動と、その活動のために見せるエネルギー。
これらの思いが2016年という時代に交錯して出来上がった傑作『haruno yuki EP』。
その“現象”に対し、indiegrabでは彼らにインタビューを敢行してみた。
一つ間違えれば見逃してしまいそうな、大きな音楽界というフィールドから見ればささやかな動きから出来上がった傑作に対するサブテキストとしてどうぞ。

haruno yuki EP
『haruno yuki EP』/ 結川ユイ
2016年3/16リリース
フォーマット:CD
レーベル:迷われレコード
価格:¥1,080
【Track List】
1 春の雪
2 must be there  
3 Apple girl  
4 夕暮れ過ぎて恋花火
迷われレコードリリースページ
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歌っているうちにもっと本格的にやりたいなと思って。それで仕事を辞めてフリーター期間を経て上京してきました。

— :結川さんは東方界隈でも活動をされているんですよね?
結川ユイ(以下 Y):そうですね。
— :ずっとそのような感じで活動されていたんですか?
Y:最初はニコニコ動画で「歌ってみた」をあげていたんですが、上京してきてから東方界隈の人に知り合いが増えたので声がかかりやすくなったんです。
— :じゃあ東方界隈に関わり始めたのは上京後なんですか?
Y:そうですね。
— :元々は北海道にお住まいでしたよね。上京されたのはいつ頃ですか?
Y:大体3年前ですかね。
— :プライベートな質問になってしまうんですが、結川さんが北海道から東京に来られたのにはどのような理由が?
nemo asakura(以下 N):(いきなり)師匠(nemo asakuraはsabadragonをこう呼ぶ)の写真録ってビリー・コーガンと並べてtwitterにアップしていいっすか?
一同:(爆笑)
— :ど、どうぞ(笑)で、質問いいですか?
Y:なんでしたっけ?(笑)えーっと…私普通に北海道で就職して一人暮らしをして部屋で宅録してたんですけど、歌っているうちにもっと本格的にやりたいなと思って。それで仕事を辞めてフリーター期間を経て上京してきました。
— :じゃあ歌い手としてもっと大きいフィールドでやるために東京へ…。
Y:そんな感じですね。
N:俺との活動がでかいフィールドかどうかわかんないけどね(笑)
— :(リリース時の)営業とか行かれたんですか?
Y:初めてタワレコに行きました。
— :あ、タワレコって行かないんですか?
Y:地元になくって「都会のもの」ってイメージが強くて。タワレコとかHMVは。だから敷居が高くて今まで入った事なかったんですよね。
— :北海道ではどうやってCD買われてたんですか?
Y:TSUTAYAですね。
— :ああ、なるほど!結川さんはルーツとしてはどんな音楽を聴いてきたんですか?
N:俺、今回結川さんにボーカル依頼しておきながら結川さんの音楽性一切知らない!
— :それ凄いな!!(笑)
N:結川さんがtwitterであれが好きこれが好きみたいなのを書いてるのは知ってるけど、特に音楽の話とかしたことがない。まあ誰とも音楽の話ってしないんだけど(笑)
Y:私も深く音楽を知ってるわけじゃないからなんとも言えないんですけど、私小学校3年ぐらいまで凄くオタクだったんですよね。アニメが好きで。で、その時に初めて買ったCDが米倉千尋さんのCDで。私はほぼアニソンしか聴かずに育ったんですよね。それで今に至るんですけど。
— :今も現役で聴かれていると。
Y:中学生の時にマキシマム・ザ・ホルモンにはまりベースボール・ベアも聴き始めて。周りがすごいバンプ・オブ・チキンとかRADWIMPSとか言ってるから…周りと違うものを聴きたくなって。
nemo asakura・sabadragon:すげー(笑)
— :北海道にいらっしゃった頃は一人でやっていたんですか?
Y:1人ですね。私が中学生ぐらいに頃にニコニコ動画が始まって、最初は普通に見てたんですけど高校に入った頃に「歌ってみた」が盛り上がってきたので高2ぐらいの頃に投稿し始めたのが始まりですね。
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— :じゃあそこから上京していろんなところのゲストボーカルをやるようになったと…。今回迷われレコードからのリリースですが、どういう経緯でリリースに至ったのかという事を聞かせていただけますか?
N:迷われレコード自体がフィジカルリリースするという話になって、レーベルオーナーの山岡迷子から「nemo asakuraとしても何か出さないか」という話になったんですよ。で、せっかくリリースをするので商品価値の高いものを作ろうと。ちょうど結川さんには以前自分の企画で歌ってもらったりしていて。じゃあ結川ユイの作品集を作ろうと。で、リリースの順番の問題もあって(迷われからのリリースは)一番最後ぐらいに出そうという話になって。ちょいちょい作ったりイラストレーターの方に発注したりしてかなり時間が経ってしまって。
— :じゃあ話としてはだいぶ前から?
N:だいぶ前から。
— :迷われレコードのフィジカルリリースが始まった頃からって事ですね。じゃあお二人はずっと前からお知り合いだったんですね。
N:ずっと前ではないよね?
Y:ずっと前ではないですね。
N:結川さんが上京してきたあたりに自分の企画でボーカリスト探していて。twitterで誰かいないかなーとチラチラみていたら見つけたという。
Y:私がそのtweetをみてふぁぼったんですよね。
N:俺ふぁぼとか全部チェックしてるからね(笑)んで、「ああ、この子上手い」と。
— :ネットでの自意識の高いnemo asakura的に(笑)ふぁぼから始まったコラボという事ですね。じゃあnemoさんからのオファーでEPの制作に取り掛かったと。そのオファーを受けた時の結川さんの印象は?
Y:割とこう…ふわっとしてて…。
N:軽いノリだったね。「どうすかね、やってくれます?」って感じで。その時はまだ全国流通って話では無かった気がするんですよ。
— :迷われレコードのフィジカルリリース立ち上げ頃だとそうかもしれないですね。
N:山岡さんからね、「CD出したい」って言われて「ああ、そうですか」って感じの話だったと思って。そこからどんどん話が膨らんでいって…。
— :最初はとりあえずフィジカルを出すという話があってから、山岡さんが流通経路をどんどん作っていったという事なんですね。という事で全国流通という事なんですが、その辺いかがですか?Amazon等にも名前が出ていますが。
N:ヨドバシドットコムのサイトで予約できるの無茶苦茶笑ったんですけど。なんだよ、ヨドバシドットコムって(笑)
— :その辺も山岡さんの努力の結果という事で(笑)
N:まだなんか実感として、全国流通って感じがなくって。ああ、そうなんだって。ショップが置いてくれるかどうかはわからないからね。
— :でもネットではボタンひとつでどこからでも買えるようになるって事ですよね。

>>次ページ「そう、俺のプロデュース作品(笑)」へ

2016.4.9 21:00

【INTERVIEW】CICADA『Loud Colors』

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2010年以降、東京と関西を中心にしたインディバンドの興隆/ムーブメントを振り返れば、
バンド≠ロックという暗黙がどことなく浮かび上がり、同時に、華やかかつ躍動的なショーを目指したアクトが多かった。
CICADAは、そうした活況に満ちたムーブメントからをも自らを遠ざけつつも、
ブラックミュージックを中心にした音楽愛とフレイヴァーを血肉化し、
東京の闇に光を照らそうとするバンドとして名乗りを上げることになった。
昨年2月に発売されたファーストフルアルバム『BED ROOM』から今年4月に新作『Loud Color』の発売に至るまで、鋭さを増していく彼らのスタイル、
その始まりと現在を聞くことができた。

おじいちゃんが音楽やりたいなら仕事なんてするんじゃないと言ってくれたりして。家族が工面してくれたのが大きかったです。(若林)

2012年からこれまで3年ほど活動を続けてきたということですが、どういった形でメンバーが出会ったんでしょうか?。
若林とも (Gt&Key 以下若林):2012年に僕がmixiでメンバー募集をして、木村くんと最初に出会って、城戸ちゃんと櫃田ともちょっと後に出会って活動をしていました。及川は木村くんが誘ってきてくれたメンバーで、2013年から5人で活動をしてきました。
なるほどです。それまではどういった形で音楽と関わってきたんでしょうか?
櫃田良輔 (Dr 以下櫃田):僕は小学校の時にブラスバンドに入ったのが始まりですね。ドラムをやるようになったのは中2の頃から、ヤマハで習い始めたんです。僕はその時には広島住んでいたんですけど、(当時)組んでいたバンドのメンバーが進学するので大阪へと移住し、そのあと同じメンバーと共に上京してきたんです。
その時は既に現在のCICADAのようなバンドだったんですか?
櫃田: 全く違いますね。当時やっていたバンドは4つ打ちのポップバンドみたいな感じですね。
城戸あき子(Vo 以下城戸): あれだよね。ダンスロック的な音だったよね。
若林:ウルフルズとか歌モノロック、っていう感じのバンドだったね。
櫃田: そうだね。逆にCICADAのようなサウンドは全く知らなかったですし、通ってなかったんですよね。
城戸さんはどうだったんでしょうか?
城戸:わたしは大学の音楽サークルでコピーバンドをずっとやっていて、いざ大学を卒業するというときに本格的にやってみたいなと思ったのがきっかけですね。それまでは音楽をやっていこうとは全然思ってなかったんですけど。
櫃田: 初めてのバンドだもんね。
城戸:そうなんです!。
若林さんはどうでしょうか?
若林:中学1年のときにギターを始めたのがきっかけですね。高校卒業ともにこっちに上京してきました。
ということは櫃田さんのようにバンドとともに上京とか、進学して上京ということでなく
若林:そのまま単身で上京してきて、『さてどうやってやっていこうかなー?』って(笑)
いやいや、漫画みたいじゃないですか(笑)木村さんはどうでしょうか?
木村朝教 (Ba 以下木村):兄がドラムをやっていて、その影響で音楽を聴くようになった中学の頃からベースを弾くようになりました。バンド活動を始めたのは高校の頃からで、大学の頃にはサポートミュージシャンとして仕事を幾つかもらうようになったんです。あと、もともと僕がやっていたバンドでギター/キーボードが抜けてしまったことがあって、そこで目をつけたのが若林で、最初は僕から声をかけたんです。
CICADAを組む以前のお話ですね
木村:そうですね。その時は2度3度ライブをやって、『自分の活動を追求したい』と言われて離れてしまったんですが、それから2年後に彼から連絡が来て、『ベースをやってくれないか?』と言われたのは嬉しかったですね。
及川さんはいかがでしょうか?
及川:小学校のときにピアノを習っていて、中3のときにドラムを叩いてましたね。
櫃田: 元はドラマーだよね。
及川:当時はスラッシュメタルとかヘビーメタルバンドを組んでたんです。それ以降はずっとキーボードですね。今でも暇な時間ではスタジオとかでもドラム叩いてることが多いですね。
及川さんは若林さんとともにこのバンドのコンポーザーですが、作曲する時はドラムから入る感じなんですか?
及川:確かにそうですね。打ち込みでドラムフレーズを作るのが始まりになりますね。やっぱりドラムがカッコよくないと曲もカッコいいものにならないと思うので。
CICADAというバンド名にした理由はなんでしょうか?直訳すると「セミ」という意味になりますが
若林:スーパーファミコンの『フロントミッション』というゲームが好きだったんです。そのシリーズにある『フロントミッション オルタナティブ』に出てくるロボットから取ったんですよ。
すごく懐かしい(笑)ゲームはお好きなんですか?
若林:ゲームは大好きですね。上京してからずーっとやってましたね。
音楽やりたくて上京してきて、仕事やバイトしつつ、ゲームをして音楽して・・・
木村:バイトもしてないでしょ?(笑)
若林:してないね(笑)おじいちゃんが音楽やりたいなら仕事なんてするんじゃないと言ってくれたりして。家族が工面してくれたのが大きかったです。
好きな音楽や影響を受けた音楽を一つあげるとすると誰でしょう?
若林:最近よく聴いている、という意味ではZeebraをよく聞いてます。KGDRのファーストアルバム『空からの力』も聴きますし、ソロ作品だと『THE RHYME ANIMAL』、新しく発売されたアルバム『25 To Life』もよく聞きますね。

木村:僕はRed Hot Chili Peppersがすごく好きで影響を受けてます、ライブも何度か行ったことありますね。Fleaが一番好きで、ソウルミュージックやファンクを聴くようになって、FunkadelicやSly & The Family Stoneを聴くようになりましたね。テクノのような、バンドものとは違う音も全然聴いてたりもします。
Derrick Mayとか?
木村:Derrick Mayは若林から教えてもらいましたね。UnderworldやChemical Brothers、一番最初に聞いたのはThe Prodigyでしたね。でもやっぱり、一番好きなのはRed Hot Chili Peppersですね。

ありがとうございます。若林さんはいかがでしょう?
若林:好きなのはいっぱいありますけど、最近iPodで一番聴いているという意味でASIAN KUNG-FU GENERATIONですね。「新世紀のラブソング」をよく聴いてます。
『マジックディスク』ですね。世代としてよく聴いていたんでしょうか?
若林:僕はもうちょっと後の世代なので、AIR-JAMをモロに直撃した世代ですね。でもあの当時思い出してみると、X JAPANを主にずっと聴いてました。
そこからDerrick Mayへとつながるところに、大きな変遷がありそうですね。
若林:音楽いっぱい聴いてみようと思って有名どころを手あたり次第に聴いた時があったんです。そのなかにNirvanaの『In Utero』を聴いてクリティカルヒットして、そのおかげで「より聴いていこう」と思えたんです。ちょうどその頃はロックンロールリバイバルが流行っていたこともあり、海外の音楽がどんどん広まっていた時期でもあったのは大きかったですね。

城戸さんはいかがでしょう?
城戸:いま私が目指してるのはエリカ・バドゥなんです。それまでのコピーバンドでは日本のポップスをやることが多かったんですが、StarFes.’14で彼女を見て、ボーカリストとしての存在感や色気に衝撃を受けて、彼女みたいになれればとも思ってます。メンバーからはいつも色気がないとか言われてますし(笑)そういうものを出せたらと思ってます。

木村:一緒に見に行ったよね
城戸:そうだね。2人でね。
なるほどです。櫃田さんはどうでしょうか?
櫃田:ぼくはマーク・コレンバーグですね。創ちゃん(及川)が入ってきたとき、ロバート・グラスパーを薦められて聴いたのですが、そのアルバムでドラムを叩いているクリス・デイヴを聴いて「ドラムでこんなことができる人がいるのか」と知ったんです。その後に出たグラスパーの作品を聴いたときにはマーク・コレンバーグがドラムを叩いていて(Robert Glasper Experiment 『Black Radio2』 2013年発売)。彼が叩いてる姿を見たくてyoutubeで探して見たら、もう衝撃でした。
どんな風に見えたんですか?
櫃田:僕、美しいのが好きなんですよ。ツイッターとかでもよく使うんですけど
城戸:使うね、「美しい」って(笑)
櫃田:音も、フォームも、全部が合わさって美術品のように完成されたドラムをたたいてるんですよね。僕はいまあの人のようになりたくて叩いてます。

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彼らもカッコイイ、オレらCICADAもカッコイイ

2016.3.19 0:00

【INTERVIEW】alicetales

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高校、大学とバンド生活に明け暮れ、会社や社会のなかに独り立ちしてもまだ、バンドサウンドに身を捧げる人がいる。
情熱的に、時には落伍しかけながらも、しがみつくように活動を続ける人もいる
『やりたいからやってる、やらされているわけじゃない、という感じです』
そう答えたのは、今回インタビューしたalicetalesだ。楽曲に込めるエッセンス、音楽への愛とともに、自分たちの立ち位置と信条をしっかりと胸にし、今後の作品を見据えるほどに大人びた姿を見た。
愛ゆえに、しかしながらマイペースに歩みを進んでいく、そんな彼らを切り取ったインタビューだ。(草野)

僕らはそこまでまじめに音楽について考えて活動をしているわけじゃなく、楽しいからやっている、というモチベーションなんです。やりたいからやってる、やらされているわけじゃない、という感じです。(nakamura)


ぼくがalicetalesというバンドを知ったのは、sugardropというバンドを好きだったことがきっかけでした。年末に行っている個人的なランキングにsugardropを選んだとき、nakamuraさんからツイッターで即フォローされて(笑)、僕も同じようにフォローしたことが始まりでした。数年したときに「そういえば最近活動しているのかな?」と思ってnakamuraさんのアカウントを覗いたところ、alicetalesというバンドを活動をされていたと。sugardropではドラムをたたかれていたわけですが、どういったいきさつがあって結成したのでしょうか?


kyosuke nakamura(Vocals/Guitar 以下nakamura):もともとは、僕がsugardropをやっている合間に、家でちょこちょこと宅録をしていて、その宅録をバンドサウンドで再現したくなったというのがきっかけですね。
—いつごろでしょうか?
nakamura:2014年の終わりごろ?
ichikawa(Guitar/Vocals 以下ichikawa):2013年の終わりごろじゃない?
nakamura:いや、2014年の終わりごろだったはずだよ・・・うんでもそれくらいですね。

—メンバーを探すタイミングで、まず最初に声をかけたのは・・・
nakamura:ichikawaくんですね。
ichikawa:光栄ですね。
nakamura:そのタイミングでichikawaくんがやっていたFloat down the Liffeyというバンドが止まっていたんです。彼は、僕が良いと思ってくれたものに対して良いと言ってくれたり、興味を持ってくれる領域も非常に似ていたし、彼は歌もうまいし、ギタリストとしてのセンスがすごく良いなと思っていたので、ichikawaくんに声を掛けました。
ichikawa:めっちゃ褒めちぎってるね(笑)


nakamura:ベースは僕の実弟ですね。昔から自分でバンドを組むことを考えたときにベースは弟だと決めていたところがあったし、というかあいつなら声かけたらやるというだろうと思って放っておいたんです。
ichikawa:兄貴権限だね。
nakamura:そうして弟をメンバーにも加えて、ドラムを探したときに弟が一緒にやっていたバンドのドラム、taskに声がかかったという。そういう感じでメンバーが集まりました。
ichikawa:2014年の頭にライブがすでに決まっていたんです。なのでそこから曲をメンバーと一緒に合わせる日々が始まりましたね。
—当時、nakamuraさんの手元にはどれくらいの曲ストックがあったんですか?
nakamura:50~60曲くらいですね。ただ、これは元々全然違う感じの宅録だったんです。僕自身がニューウェイヴがすごく好きだったので、ニューウェイヴやゴスっぽい音の宅録をやっていたんです。ただ、ギターポップやパンクな音ももすごく好きで通っていたので、一度そういう曲を宅録してみたところ、意外とハマっていることに気付いて、「これならバンドとしてやれるんじゃないか?」ということでalicetalesにつながったんです。
—なるほどです
nakamura:あと加えて言いたいのは、僕らはそこまでまじめに音楽について考えて活動をしているわけじゃなく、楽しいからやっている、というモチベーションなんですよね。新曲のために集まって合宿とかしますけど、夜にバーベキューとか予定していて、そのために早く曲を仕上げてさっさとそっちに移るとかね(笑)
ichikawa:もちろん前日には10時間くらいみっちり練習とかするけども。その次の日にね(笑)
nakamura:そうだね(笑)不真面目というわけではなく、やりたいからやってる、やらされているわけじゃない・・・というような感じですね。
—好きなバンドや影響を受けたバンドはありますか?
nakamura:好きなバンドはたくさんいますが、Huskar DuとSugarで活躍したBob Mouldのソングライティングにはすごく影響されたかなと思います。パンクなんだけどもポップですし、ノイズがあってもなくてもよい曲だと思わせてくれる、ギター一本で声だけのライブでも曲として十分に成り立つような曲が多いんです。もっと古い時代の人たちでも自分が影響された人もいますが、現代のバンドとしてやるのであれば、Bob Mouldのやり方はすごく合ってるような気がします。

ichikawa: 僕は、THE BEATLESとサザンオールスターズとスピッツですね
—alicetalesの音からするとぜんぜんそうは思えないですね(笑)
ichikawa:もともと、音楽を聴くきっかけになったのは桑田佳祐さんの「波乗りジョニー」だったんです。THE BEATLESは両親がすごく好きだったし、スピッツは高校の先輩が好きだった影響で好きになりました。3組とも僕にとって根底にあるバンドで、メロディアスでポップでキャッチーな音に惹かれてしまいます。

これまで作っている曲も実はアニメや漫画から取ってつけていたりアナグラムだったりするんです(nakamura)


—お2人はこのバンドでダブルギターを弾いてます。それぞれ違う楽器を弾くこともあるとは思いますが、<ギター>をどのようなものだと考えていますか?
nakamura:消耗品ですね。これは僕が尊敬しているバンドのblgtz(ビルゲイツ)の田村さんの家に遊びに行ったとき、家にギターがずらっと並んでいて、「どれもライブで使ってますね」と言ったら、「これも壊れてるし、それも壊れているし、あれも壊れてる」「全部壊れてるじゃないっすか!」「ああ、消耗品だからな」ということをやりとりをしたのが大きいですね(笑)
—それを捨てずに、大切に家においてあるというところに僕はびっくりです。大切な消耗品、だと
nakamura:確かに消耗品ではあれど、決して粗末に扱っているわけじゃない、その考え方に共感できますね。最近新しいギターを買いましたが、僕自身がそのギターを<扱っている>感覚がしないと、良くないように思ってます。
ichikawa: 僕は日用品ですね。僕自身の身の丈に合ったギターを使うといえばいいのかな
nakamura:取り回しが良い、感じだよね
ichikawa: そうだね・・・でも僕はギター壊したりとかしないですけどね!(笑)
—お2人とも仰っていることはすごく近いと思います、ギターに使われない、自分に合ったギターを使うことに注目してますよね。だからこそ、このバンドのサウンドはパンキッシュでありながら、トゲトゲしさがなく人懐っこさが耳を惹きます。公式HPをみて気になったのですが、映画はお好きなんですか?
nakamura:映画は好きです、アクション映画が好きですね。
—シュワルツェネッガーやスタローン、ブルース・ウィリスが出ているような?
nakamura:まさにそういったのが好きですね。
—ジェット・リーにアントニオ・バンデラスとか?
nakamura:好きですね。音楽で例えると、Captured tracks(ニューヨークのインディレーベル)から出ているようなバンドがだいたい好きになる、というのと一緒で、ハリウッドで大金つぎ込んで作られたアクション映画は誰が出ていようがが好き、みたいな感じなんですよ(笑)
ichikawa: やっぱり一番好きなのはバック・トゥ・ザ・フューチャーが好きですね。恋愛ものだと、小さな恋のメロディが一番好きなんですよね。
—それと同じくらい目をひいたのが、アニメについてなんですが・・・
nakamura:それ、長くなりますよ
全員:(笑)
nakamura:実は、alicetalesというバンド名自体が、そっち系のところから取っているんです。成人向けのゲームから取られているんですよ。
—というと、普通に東方とかアリスゲームとかアリスソフトになるんですか?
nakamura:それとは違うもので、15年くらいまえにRUNEというゲーム会社から発売された『今宵も召しませAlicetale』というゲームから取ったんです
—えーっとすいません、ぼくも結構やっているほうなんですが、初耳ですね。
nakamura:すげーエロいですよ(笑)
—これは公式ページでも確認できる話題ではあるのですが、nakamuraさん、かなりディープなアニメ好き・・・というかオタクですよね。ほかのメンバーがシンプソンズとか選んでいるのに、一人だけFLCL/ましろ色シンフォニー/まよチキ!/かのこんっていうラインナップで趣向が違う、この人やべーんじゃないかと思っていましたが・・・これは確実にオタクですね(笑)
nakamura:エロゲ声優の小倉結衣さんのライブに行くくらいにはそういう系統にどっぷりハマってますね。ライトな方ではなく、かなり好きな方だと思います。XEBECとエヴァやフリクリを作っているころのガイナックスが好きなんですよ。
ichikawa: 僕はこういう趣向のは見ていないんですよね、みんなに薦められていくつかは見ましたけど。
nakamura:俺の弟はガンダムが好きで、ベースよりもガンダムのほうがたぶん好きなんじゃないのかなぁ?(笑)バンド名がこういう感じなんで、これまで作っている曲も実はアニメや漫画から取ってつけていたりアナグラムだったりするんです。ただ、歌詞やサウンドはその元ネタとは一切関係ないので、ある意味では2度驚かせることができるというか、楽しめることができるというか。どのタイトルがどうというのは、想像にお任せします。
—なるほどです。ではその楽曲についてです、お2人の中でこの曲を聴いてほしい!このパートを聴いてほしい!というのはありますか?
nakamura:「ashwin」という曲ですね。この曲は僕が宅録でキッチリとアレンジしてメンバーにもっていった曲だったんですけど、みんなそれぞれ練習してスタジオで合わせたら、元々の曲とまったく違う形になって、しかもそっちのほうがより完成されていたんです。ギターソロとかも入っていなかったのに、ichikawaが超カッコイイソロを入れてきたりとかして・・・この曲があったからこうして続いてるなと思えますし、このバンドでやっていける!と思えたんですよね。

ichikawa: 僕は新しくリリースされたカセットとかsoundcloudにも公開されている「inverse」のイントロとか間奏に入っている英語部分を聴いてほしいですね(笑)
—ギターリフで始まるイントロなのにそこですか(笑)でもこの曲は本当にいいなと思いました。このリフ、完全にハードロックバンドのそれじゃないか!と
nakamura:まさにその通りで、ichikawaはハードロックも好きなんですよ。僕はPaul Gilbertとかが好きなんですけどね。
ichikawa: BON JOVIとかGUNS N’ ROSESみたいなスタジアムロックな感じね。大学時代に入ったサークルで最初にやったのがGUNS N’ ROSESの「Welcome to the Jungle」だったんです。
nakamura:先ほどの話にもつながりますが、こういうわかりやすいところで聴かせてくるメロディってすごく重要ですよね。
—そこが炸裂しているのが「inverse」でもあるということですね。

—今後、バンドとしてどんな活動をしていきますか?
nakamura:まず、今年中にアルバムを出せれば良いなと思います。これまでのリリースをコンパイルしつつ、いま作ってる曲を一緒に入れてアルバムに出来ればと思ってます。Deep Woundを経てDinasour Jrになってリリースされた彼らのファーストのように、初期衝動を詰め込んだ様な作品になればいいなと思います
ichikawa:こういうバンドみたいになりたい!というので一つ思うのは、Weezerの『Everything Will Be Alright In The End』みたいな一作を作れるバンドになりたい、というところですね。実はそれまで彼らを好めなかったのですが、この作品でかなり好きになれたんです。Queenらしかったり、Van Halanらしかったりして、僕が好きなバンドの音っぽさがそれぞれの曲に詰まっていて、たぶんメンバーも好きだからこそそういうのを出していったんだと思うんです。alicetalesでやりたいことといえば、個人的にはそう思います
—いま話を聞いて思ったのは、同じバンドメンバーでDinasour.JrもWeezerもVan Halanも好きだっていうことが共通認識になっている点です。普通、この3バンドのうちどれかは好めないとかあるはずなのに。
nakamura:基本的に、当人同士が仲悪いとかいがみあってるとかありますからね(笑)。
—カート・コバーンとアクセル・ローズ、みたいなね(笑) そういったところを並列に好きだと言えるのは、いまの時代らしさがあると思いますし、このバンドの強さなのかもしれないですね。
nakamura:ちょっと年上のバンドさん方と飲んだ時に、「Yo La TengoとPaul Gilbertを同じように好んで聴いてるとかいったら、自分たちが同じ20歳ごろでは仲間外れにされてたよ」って言われて衝撃を受けました。そういえば、メンバーで同じように好きなバンドといえば、LOVE LOVE STRAWがありますね
ichikawa:LOVE LOVE STRAWは最高だね
nakamura:LOVE LOVE STRAWみたいなバンドになりたいですね。







<インタビュアー:草野虹 2月25日 新宿>

2016.3.17 12:10

【INTERVIEW】 House Of Tapes ― 混沌かつポップを目指すエレクトロニカ

PitchforkMTV81等の海外メディアで所属レーベルTanukineiriと共に紹介され、2015年7月にはTeen Daze、NYANTORAとの共演を果たした名古屋在住のトラックメイカーHouse Of Tapes。 その勢いを駆って主催イベント『Nagoya-Elektronic-Fes』を昨年12月に開催するなど、精力的にライヴ活動を行っている。 今年2016年4/16(土)には早くも第2回が開催される同イベントについて話を聞いた。

Interview by 森 豊和(@Toyokazu_Mori)




House of tapes artist photo

House Of Tapes https://twitter.com/House_Of_Tapes



ナゴエレ2016フライヤー

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4/16(土)にエレクトロニカ、アンビエント、テクノ中心の音楽イベント第2回を行うとのことですが、今後も継続されるんですね。
House Of Tapes(以下 H):はい。『音楽愛+名古屋愛=ナゴエレ』をキーワードに続けていきたいです。今回から入場者全員に、出演者のコンピレーションCDを無料で差し上げます。
会場の名古屋spazio ritaは地下鉄矢場町駅から東へ5分程度の便利な場所ですね。地下鉄から地下道でセントラルパークを横切って。
H:spazio ritaはクラブやライブハウスではなく多目的イベントスペースなんです。生演奏だけでなく、絵の展示、トークショー、映画上映会など、様々なイベントをやっていて面白い場所だと思います。
徒歩圏内には僕がお世話になっているFile-UnderStiff Slackなどの独立系レコードショップや栄パルコ等があって便利な場所です。
 
西に少し歩きますが大須にRECORD SHOP ZOOもありますね。ところでトラックメイカーは音源をネット・リリースして終わりでもいいのに、主催イベントまで始めたのはなぜでしょう? 何かきっかけでもあったのでしょうか。

H:2015年夏に東京の西麻布Bullet’sでライブしたことがきっかけです。蛍光灯で演奏する伊東篤宏さんや、東京で活動するトラックメイカーの皆さんとご一緒して刺激を受けました。 そして、名古屋や東海地方にも素晴らしいトラックメイカーがいることをもっと多くの人に知ってほしいと思いました。それがきっかけです。
名古屋のトラックメイカーといえばfredricsonさん(レミ街 / tigerMosのキーボード奏者)など有名ですね。でも食品まつりさんは横浜に移りましたし、あまり横のつながりは目立たないように思います。
H:名古屋は、あくまで私感ですが、東京や関西に比べてシーンが形成されておらず、閉塞感が漂っている気がしています。そして仰る通り、東海地方のトラックメイカーさんでも、拠点を関東に移したり。
有名になるために地方在住では限界があるかもしれませんね。上京する理由はもちろん他にも色々あるとは思いますが。
H:名古屋や東海地方で活動しているトラックメイカーさん達と繋がって、一緒に名古屋を盛り上げたいんです。そういう場を作れたら。そういった気持ちが最初にあります。イベントを始めた一番の理由です。
 
それでは各出演者の紹介をしていただけますか?
H:各プロフィールはフライヤー画像に載っていますので、ライブを見た僕の感想を言いますね。まずSOMA 奏間さん。海外での豊富なライブ経験に基づく圧倒的なビートを繰り出すかた、才人です!

海外のフェスといいますと?
H:彼はヨーロッパのフェスのメインステージでプレイされたりしているんです。海外のイベントでの観客の雰囲気、その場の空気をつかんでらっしゃるんだと思います。そして神戸からのゲストで、Jomyakさん+下村唯さん。電子音楽とダンス・パフォーマンスを融合したステージ。

電子音楽だけに止まらない表現活動をされているかたですね。
H:今回はさらにVJも加わります。前回同様つかさハニーさんにVJを全編していただきます。経験に裏打ちされた圧巻のVJを見せてくれます。壁2面使って音に合わせて次々と展開するビジュアルがとても新鮮だったので今回もお願いしました。
つかさハニーさんのVJは観ていて飽きないですね。
H:はい。そしてrobotmeさんは徹底的にミニマルでシンプル。ループミュージック好きには堪らない感じです。


Vista Visionさんは宇宙的アンビエント。独自の世界観が炸裂します。ビートを強調した他出演者の音に対して、アンビエントな表現を得意とされる彼を合わせたくて、第1回に続いて参加してもらいました。


そして主催の私House Of Tapesは、今回の出演者の方々はビートを強調する方が多いので、メリハリをつけつつ、ポップなメロディを炸裂させたいと思います。
House Of Tapesの新曲についてお伺いしたいです。最近発表された曲はほとんど披露されますか。
H:ええ、そのつもりです。

まず「Twinkle Color」はトイトロニカを作りたかったとのことですが美しい曲ですね。
H:ありがとうございます。ポップさを全面に出してメロディを紡ぎました。
対して「Disorder!!!」「Rev-Ex」はその反動で大暴れ、ないし原点回帰しているかのような。
H:混沌好きな僕ですが、「Disorder!!!」は混沌を混沌だけに終わらせないというテーマで作りました。「Rev-Ex」は現在の僕のテクノを、そのまま出す、というテーマの曲です。
硬派なハードボイルドな感じですね。これらの曲はただぶっ壊すのではなく、破壊の後の再生といいますか、戦争や自然災害で荒廃した土地に、草花が芽生えるように、後半キラキラしたメロディーが生まれる瞬間がありますね。
H:適確な表現をありがとうございます。混沌かつポップな曲作りを指向していますが、混沌なだけで終わらず、音楽的にするということを心がけているつもりです。
また過去のデモである「アネモネの花を食いちぎった」については、架空のベースレス・サイケデリックバンドの曲、というコンセプトで作りました。ヴォーカルや歌詞、雰囲気を面白くしたつもりです。

house of tapes flaoting
3/1配信の新曲「Floating Ache」については?(Apple Musicで聴けます)
H:僕の中では最近の流れでつながっていて、ただ明るいだけでなく、不穏なコード進行を入れてみました。それをどれだけポップに聴かせられるか、考えながら作りました。
ありがとうございます。それでは最後に、今後のナゴエレをどういったイベントにしていきたいですか?
H:ナゴエレをライフワークにしたいです。東海地方で埋もれているトラックメイカーさん達を世に紹介していく。繰り返しますが、一緒に名古屋を盛り上げたいんです。そのためにHouse Of Tapesも成長したいです。いつか枯れても、限界を感じても、成長しようと努める心があれば、成長できると思うのです。名古屋を拠点に東京や他の地方からお誘いがあれば喜んで出演したいし、期待に応えられるよう成長したいです。
SOMAさんのように海外からオファーがあれば?
H:ぜひ行ってみたいです!
お話を聞いていると、House Of Tapesさんにとって、音楽は生きること、感情そのものなんだろうなと感じます。『音楽愛+名古屋愛=ナゴエレ』というキャッチフレーズ通り。
H:ええ、僕にとって音楽は血液です。全身を巡る、愛おしい血液。僕は混沌とポップさを織り交ぜた曲を追求しています。楽曲制作して発表するサイクルが短いのは、死を意識しているからです。いつ死ぬか分からないから、生き急いでいます。



最後に

以前、彼は海外メディアSoundfrinedsのインタビューで「Nice Dream」という曲について「涙が出るほどの、多幸感あふれる曲が作りたかったのです。しかしそれだけではなく、せめて眠っている時だけは良い夢を見たい(逃避では無く)、現実と対峙して疲弊した後の癒やしの曲になれば」と答えていた。

彼にとって音楽は、美しい癒しであり、ユーモアを交え、他者を楽しませるものであるべきなのかもしれない。そしてそれこそが彼にとっての「音楽的」ということではないか。

そう問うと、彼は静かにゆっくりと、しかし力強く頷いた。

 

house of tapes elefes
『Nagoya-Elektronic-Fes 2016春』
2016年4/16(土)名古屋矢場町spazio rita
Act: SOMA 奏間 / jomyak+下村唯 (神戸) / robotome/ Vista Vision / House Of Tapes
VJ:つかさハニー
open 17:30 / start 18:00
adv2500(1D込)/ door 3000(1D込)

2016.3.4 21:00

【INTERVIEW】fraqsea『Star Cocktail』(PROGRESSIVE FOrM)



シャーベットポップと評されることの多いShellingでヴォーカル/ギターとしても活動しているayaのソロプロジェクト 《fraqsea》による、2013年以来約2年半振りとなる2ndフルアルバムが発表された。アルバムは、全体の印象として声を引き立てるために極めて慎重に配置されたトラックのバランスの良さがとても上品に響く作品に仕上がっている。一方でシューゲイズのアプローチもごく自然に配慮されており、主には電子音によって構成されているにもかかわらず必ずしもエレクトリックな印象ばかりではないところや、抑制された出過ぎない音圧などの目新しさも印象的だ。これらの音を取り巻く環境について、indiegrabはayaに伺ってみた。

︎「今回のアルバムは声の加工をほぼせず
ポップソングを意識しました」

Shellingはとても心地よいシャーベットポップなサウンドが印象的です。浮遊感あるヴォーカルはShellingの中では時としてある種の孤高の印象、遠く手の届かないところで歌われている印象もあります。この辺りはソロプロジェクトでは少し距離感が違うようにも感じます。歌詞やメロディーの印象でしょうか。ソロプロジェクトfraqseaとShellingでは歌い分けているという意識はありますか?
fraqsea(以下 f):Shellingでは映像の浮かぶ音楽というものを意識した音作りをしています。歌い方に関しても声を音の一部として捉えているので輪郭をなくした加工作りをして表現しています。fraqseaでは、そういったジャンルや世界観を決めず、自由に創作します。今回のアルバムは声の加工をほぼせずポップソングを意識してのアルバムとなりました。
例えばWe’ll Go To See The Seaは、Shellingよりも、一層バンド的な、つまりギターと声をメインにした楽曲ですが、今回fraqseaでこの曲は不思議とバランスよく収まっているように感じます。この曲を含めて、ソロプロジェクトとShellingでは楽曲は使い分けを意識していますか?
f:楽曲作りにおいてはShellingもfraqseaも、おもちゃで遊ぶような感覚で、始めはイメージの括りをせずにまず機材を触っていく中で形にしていきます。そこでShellingの曲として作るか、fraqseaの曲として作るかと決める場合もあれば、いじっていく内にfraqseaになったりもします。
なるほど、後からこれはfraqseaに相応しいな、ということが見えて来るというときもあるんですね。
f:そうですね。それからShellingでは、バンドとして楽曲のアレンジを出し合い化学変化をしながらどのように完成していくかといったつくりかたをしています。映像が浮かぶ音楽だったり、より芸術性に沿った音響的な部分を意識しているのですが、ソロではジャンルを括らず自由な曲作りをしているので自然と弾き語りの楽曲も増えていきました。We’ll go to see the seaもその内の1曲です。
今回の作品はいつ頃、生まれたものなのですか?
f:今回のアルバムの楽曲ほとんどは、2015年の1月に出来た曲で、1ヶ月で20曲位作りました。元々フロアミュージックを好んで聴いているのですが、この頃は特にハウスミュージックを聴いている内にShellingでもfraqseaとしてでもなく単純に、こういうのやりたいなぁと思い立って作ってみたんです。それは新たな制作の仕方でした。
これらの楽曲は特に発表することもなかったのですが、PROGRESSIVE FOrMレーベルオーナーのnikさんからアルバムリリースのお話をもらった時に、デモでも構わないから今ある曲をいくつか送ってほしいと言っていただいたので今回、日の目をみたという形です。

︎「この2曲はイメージやテーマが始めに自身の中であり制作したので楽曲の世界観が出しやすかったです」

アルバムを通して聴くと、冒頭の曖昧果実とラストのNear The Rainはどちらもとてもオーガニックな印象を併せ持つアンビエントスタイルが印象的ですね。
f:あるアンビエントイベントにお誘いいただいて、そのイベントに向けて作った楽曲がNear The Rainです。曖昧果実も、以前コンピレーションアルバムのお誘いがあり制作した楽曲です。この2曲はイメージやテーマが始めに自身の中であり制作したので楽曲の世界観が出しやすかったです。
収録曲や曲順は、つまりこの2曲で全体を挟む構成は、アルバム制作のどこ段階で見えてきたものなのでしょうか?
f:アルバム収録曲を決める時に送ったデモ曲の中にこの2曲も送っていて、nikさんがセレクトしたという形です。収録曲、曲順などもお任せしました。
PVを作られた2曲(My Own Way, Always With U)はフロア仕様でありながら抑制の効いたトラック、タイトル曲(Star Cocktail)はポップなメロディーが印象的な仕上がり、これらの曲はアルバムの軸になっていると思います。
f:Always With Uについては、メロディーの構成は元々あり、それに装飾していくような形で始めはうわもののシンセサイザーからフレーズを作っていきました。後からリズムをどう作ろうかと考えた時に、自分の思う幻想性(音響、空間的な)のある音とクラブミュージック寄りのリズムを融合させたらどうなるだろうという試みから出来た曲です。抑制という風には自身では思わなかったのですが、こういった経緯からそう思う方もいらっしゃるかもしれませんね。イメージとして近未来都市や再生、前進、といった楽曲作りに努めました。歌詞に”舞い上がる好奇心を再生させる”とあるのですが、実は昔作った曲の歌詞の一部で。過去に書いたものだけど今もそれは残っていて、その歌詞には未来に前進する気持ちが書かれていて。それが不思議に思ったし、おもしろいと思い、そのまま使用しました。それからMy Own Wayはリズムトラックから作り始めました。メロディは後から作ったパターンです。90年代に流行った風のシンセサイザーを取り入れて、女性目線のメッセージ性のある歌詞作りを意識しました。キャッチーな楽曲になったと思います。
そこでお伺いしたいのはこのアルバムタイトルの意味です。アルバム全体の言葉の 絵画的なイメージを集約しているようにも思えますし、一方で本作の中ではやや異色な仕上がりという引っかかりもありますが、この曲がタイトル曲になった理由はありますか?
f:楽曲Star Cocktailは、リリースの話が決まってから収録曲を決めるときに、あと数曲作ろうと思い、制作して出来た曲です。それで新たにStar CocktailとTake Me Awayが収録曲に加わったんです。夏をイメージした曲でよりポップさを出したかったのもあり歌い方も変えました。具体的にいうと思いきり歌ったというか。この曲で新たに歌い方のバリエーションが増えました。今までリリースしてきた曲の中ではこういう歌い方をしたことが無い故にもしかすると異色と印象づけられるのかもしれません。制作過程は違うものの、これらの曲をアルバムの軸と言っていただくのは嬉しいですね。
ありがとうございます。そして、これがアルバムタイトルになりました。
f:そうですね。Star Cocktailという言葉を作ったのが音楽活動をしていた初期の頃で、なんか良いなぁと、常に頭の片隅にあった言葉でした。今回のアルバムタイトルを決めるときに直感で浮かんだのもありこのタイトルにしました。楽しみながら作ったアルバムなので、ぱっと見て楽しそうな響きかも、と思ったりもしました。

︎「皆で作り上げていくことって素敵なことだなぁと
改めて感じています」

ayaさんは常にアートワークを手がけていますが、今回のアルバムは印象として、とても抑制の効いた世界観とそれに呼応するモノトーンの写真、それに合わせて言葉はとても絵画的で広い世界を散りばめているようで、実際にはとてもパーソナルな世界を歌っているようにも感じました。アートワークでその辺りを意識されている部分はありますか?
f:アートワークは今回、レーベルオーナーのnikさんをはじめカメラマンの小川さん、ヘアメイクをしてくださった酒井さん、イズミさん、映像作家のミヨシさんたちと皆で話し合って完成したものなんです。
アートワークそのものも、とても時間をかけたんですね。
f:衣装のディテールや色、ヘアスタイルのイメージも細かく意見を出し合いながら進んでいき、撮影では寒い中早朝からサロンで、夕日の沈む前の海で、夜は六本木ヒルズのイルミネーションの中で撮影しました。数百枚の写真の中からジャケット写真を選び、タイトルのフォントや色味も納得いくまで決めていきました。皆で作り上げていくことって素敵なことだなぁと改めて感じ、一層思い入れのあるアルバムになりました。

︎「自然の現象、ファンタジックな世界感と
叙情感を結びつけました」

星や夜空、宇宙、といった広い世界と、わたし、という存在、どちらも考えてみればとても捉えることの難しい、大きな世界と、繊細な心の感情を 含んでいるように思います。ある種のプライベート感覚というか、心の中、心象風景というような。これらはayaさんにとっては日常的なものなので しょうか、それとも特別な、あるいは非日常的なものなのでしょうか?
f:メロディーの歌詞やタイトルに取り入れている雨や月や星などの『自然の現象、宇宙観』+アイスクリーム、ブレスレット、ドレスなどの『ファンシー、ファンタジックな世界感』(ex.アイスクリームが大好きすぎてアイスクリームも私を好きなの、というIcecream Holic)+日々生きる上で感じる、愛する気持ち、迷い、自我、楽しさ、リラックス、といった『叙情感』を結びつけました。
いいエピソードですね(笑)。それは音作りもやはり同じような世界が背景にある訳ですね。
f:音作りに関しても同じく、自然の現象、宇宙観として霧をイメージしたMoon,Fog Moonのベースシンセサイザー、水の雫をイメージしたCardinal Pointのミニマルなシンセサイザーフレーズ、叙情感としてリバーヴやディレイを多用したギターNear The Rainなどです。
もう少しこの辺りについて聞かせて下さい。アートワーク、言葉、歌、声、音、あらゆる表現を通じて、つまりとても多様な方法で、それが最後に一つにつながっていくというような世界観で創作をされているような印象を受けました。実際にお話を伺ってやはりそのように感じます。作品を作る時、一番最初にイメージとして湧き出てくるものは、どんなものでしょうか。言葉、絵、メロディーなど、何がきっかけで作品が膨らんでいくのでしょうか?
f:創作するときは何も考えないで楽器に向かうことが多いです。何も浮かばなければその場でやめて、没頭するときは時間を忘れて気がついたら3時間過ぎているということもあります。普段日常でメロディーが浮かんだ時はボイスメモに録音して、ギターコードから作ることもあれば歌いやすい音階を鍵盤で合わせてシンセサイザーの音色から決めていくこともあります。そこからベースとなる音作りをしていく中でその曲のカラーや情景が浮かんできます。
とてもピュアな創作のスタイルなんですね。
f:何もない状態から作る時は、始め1音をギターや鍵盤で鳴らした時にイメージを膨らませていきます。美術館や博物館、海外旅行に行ったり、映画を見たりすることが好きで、印象に残る景色や作品は数多くあります。そのような複合がイメージとして浮かぶこともあるかもしれません。

︎「今回はダンスミュージック寄りの楽曲、弾き語り、とバリエーションを増やし新たな一面を表現できたと思います」

曲作りの方法や言葉に隠された意味など色々とお伺いできてとても良かったです。ここで、もう一度「fraqseaの」ayaさんという視点からみて、リスナーの皆さんにあらためてお伝えしたいことがあればお聞かせ下さい。
f:今回はダンスミュージック寄りの楽曲、弾き語り、とバリエーションを増やし新たな一面を表現できたと思います。星のようにちりばめられた曲たちをアルコールと一緒に飲み込んでも良いし、歌詞の中にある言葉を自分に当てはめていただくのでも、なんでも自由に楽しんでいただけたらと思います。
たしかにそういった自由さがとても上品にパッケージされていると感じます。
さて、最後になりましたが今後のfraqseaとしての活動予定があれば教えて下さい。
f:4月にリリースパーティーの予定があります。まだ未定ですが、いくつかリリースのお話があるので楽曲作りもまた始めています。
まだこれからの展開も楽しみですね。今日は、ありがとうございました。

インタビュー 30smallflowers(@30smallflowers)


Star-Cocktail
『Star Cocktail』/ fraqsea
2016年1/17リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo:PFCD54
価格:¥2,000(税抜)
実店舗限定購入特典:PROGRESSIVE FOrM 2016のNEWミックスCD(80分弱収録)+歌詞カード
【Track List】
01. 曖昧果実
02. Love Tonight
03. Icecream Holic
04. My Own Way
05. Cardinal Point
06. Always With U
07. Take Me Away
08. Star Cocktail
09. Nothing
10. We’ll Go To See The Sea
11. Moon, Fog Moon
12. Near The Rain

All Music & Lyrics by Aya

Additional Production & Mixed by Tetsuya Hikita+NIL
Mastered by KASHIWA Daisuke at Studio FLAT

Photography & Design by Satoshi Ogawa (3104 GRAPHIC)
Hair by Sakai (OFF)
Make by Izumi (OFF)

2016.1.30 12:00

【INTERVIEW】『WORKERS』/ Mulllr

workers

MOTORO FAAMの中心メンバー・Ryuta Mizkamiのソロプロジェクト・Mulllr。
bandcampで3枚のアルバムをリリースしてきた彼が、4thアルバムにして初のフィジカルとなる『WORKERS』を11/13にPROGRESSIVE FOrMからリリースした。
今までのアンビエント色の強い作品から今回のビート・ノイズの強い作品への変貌。
コンセプト色の強い彼の制作姿勢。
これらを読み解くテキストとなるインタビューを掲載する機会をいただけました。

『WORKERS』/ Mulllr
2015年11/13リリース
フォーマット:CD
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo:PFCD52
価格:¥2,000(税抜)
【Track List】
01. …and the World’s W___ O__
02. …and Late Rising
03. …and Son of the Dentist
04. …and Crowded Trains
05. …and Timecard Timecard
06. …and Checking Emails
07. …and Brunch Time
08. …and Unproductive Debate
09. …and Snoozing
10. …and Caffeine Poisoning
11. …and Huge Searchbar
12. …and Over Timeless
13. …and Dancing Alone
14. …and Excessive Drinking
15. …and Loss of Memory
16. …and Night in the Forest
17. …and Black Ceiling
18. …and Light Sleep
19. …and Light
20. …and Sleep Again
21. …and tex_
amazon ※実店舗限定の初回出荷特典として、アーティスト未発表音源の無料DLクーポンが付属。





作り手の文脈よりも受け手の解釈のユニークさの方がずっと重要と考えたい

新作「WORKERS」は、今までの作品からもある”Mulllr”ならではの鋭い電子音の反復、カットアップが緻密に構成されたサウンドはそのままに、1曲1曲ではまた違った表情を持った曲が並んでいるという印象を持ちました。それこそ一概に「電子音」と言ってしまってはいけない程、一音でも色々な表現があり、それが構成される中で各曲がまた違う表現を見せる中で、さらにその表現の幅が広がったという感じです。この辺は意識されましたか。
Mulllr(以下 M):ありがとうございます、今回は踊れる楽曲にしたいなと思って、なるべく立ってノリノリで体を動かしながら作ったんです。これはキャリアの中で初めてのことですね。ガクガクッ、ビクビクッビクって(笑)というのは冗談なのですが、前作までとの一番の違いは、各曲の長さが全体的に短くなってきていることかなと思います。前作までの10分を超えるような長尺のアンビエント楽曲では、極力少ない変化になるよう工夫していたのですが、その逆に、一曲中にめまぐるしく早い展開にして多くの情報を入れても、不協和している部分がなるべく無いようにしたくて、その点でより丁寧になっている面があると思います。
タイトルである『WORKERS』に現れているように、今作は「サラリーマンの1日」がコンセプトという事をお聞きしました。今回トータル21曲というヴォリュームですが、作品を通して聴くと1つの流れとして作品が完成されている印象です。今作の「…and Crowded trains」「…and Timecard timecard」と曲名にも現れていますが、それぞれの曲のコンセプトについても数曲可能であればお聞かせください。
M:アルバム全体を通して1曲の印象になるように、という所は前回から継続して意識しています。サラリーマンの一日が、…and として果てしなく何度も何日も繰り返されていくような円環構造にしたくて、タイトル、コンセプトがよりしっかりしたものになっていった感じです。「…and Crowded trains」、満員電車のギチギチ感。「…and Timecard timecard」、出勤しました「ウィーン・ガチャン」みたいな。ただ、その人の一日を淡々と、ごくごく単純にスケッチしていった感じにできたらと考えました。
あ、でも最近ってもうタイムカードじゃなくて電子化されてますね。「ピピっ」か、、(笑)
今回の作品のコンセプトに至った経緯は何だったのでしょうか。勝手な印象かもしれませんが、今までのMulllrの作品はどちらかと言うと記号の羅列的な的な側面があり、聞き手にコンセプトのヒントを与えるという事は無かったように思われます。
M:そうですね、分かりやすすぎるくらいのモチーフを意識的に使おうと思ったのは、MOTORO FAAMという名義で数年前に出した『…and Water Cycles』というアルバム以来かなと自覚しています。

ちょっと脱線しますが、音楽にかぎらず様々なアート作品って今コンテキスト9割、コンテンツ1割みたいな 価値の置き方になってしまっていると思うんですが、付随しているコンセプトや、制作者の名前やストーリーみたいなものに、私は興味があまりもてないんです。 「どんな見た目の人?」「男性?女性?」「どこの国?」「どういった素養がある?」「ジャンルで言うと?」みたいなタグ付けはできれば知らずにいたいな、というのが本音で。誤解でもなんでも、勝手に過大解釈や想像、妄想して楽しむ事ができれば、壁のシミも美しい絵画も、風の音も最新のダンスミュージックも、フラットに見えて、以外な面白さを発見できるのに、タグが一個つくたびに、一個面白さが減る気がするんです。作り手の文脈よりも受け手の解釈のユニークさの方がずっと重要と考えたい。

『…and Water Cycles』の頃、自分にも「タグ」がついてしまった事にも違和感を覚えて、以降、前3作まで、アートワークもタイトルも極力単純チープで無意味、記号性
を減らして自然現象や抽象概念に近づけられるかを意識してきて、小難しく考えず、良くも悪くもない、赤ん坊が初めて世界を見ているような、プリミティブな状態を極力匿名なままで作り出したいと常思っていたんです。

でもそれとは別に、いろいろなプロジェクトや、日々のちょっとしたタスクが膨大な時期があり、こういう生活の中で出てきた音が、ちょっと自己矛盾してきている感触があって「これってなんだろう?」と思った時に、忙しさからくるストレスみたいなものや、自分のエゴが、音に乗っかっちゃってきてることに気がついたんです。
『…and Water Cycles』と同じ作り方をまた始めた自分がいるなと。

何か忙しい感じの精神状態が今の自分なのならしかたない、これを「プリミティブ」と強引にして、音に乗っけてやってみよう、となるんですが、これは簡単に言うと私の憂さ晴らしで、快感とは程遠い。 それをコンセプトなしにリリースするのではなく、できれば隠したかった腹の部分を少し出して、聴いてくださる方と少しコミュニケーションの余地が欲しくなってきたんです。プリミティブでいたいけど、私たちは不完全だよね。大自然に還りたいけど、24時間戦い続けてるよね。どうしてかな?という素の自分が、メッセージみたいなものが、隠しきれなくなってしまったんだと思います。
変な質問かもしれないのですが、もし「Mulllrの1日」として作品を作るとしたらどのようなものになるでしょうか。日常をお聞きするようで申し訳ないのですが、イメー
ジだけでもお聞かせください。
M:丁度こちらのご解答と言えそうなのなものとして『WORKERS』を作れた面があるかな?と思っています。ステレオタイプな記号としての「ジャパニーズサラリーマン」という言葉を設定していますが、本当に言いたいことは、あくまで何かをする上での思考そのもの、日々の生活を送る中での私の「頭の中身」をそのまま写実しようと試みた部分が大きいので。

「…and Loss of Memory」以降はステレオタイプの「サラリーマン」ではなく、おそらく明確に私の一日になってしまっています。記憶を無くして夜の森を彷徨う毎日のMulllrですが、何故かはご想像で楽しんで頂ければ(笑)
Mulllrとしての作品は一貫して独特の作曲方法があると思うのですが、これはどのようにして生まれたものでしょうか。リズムや使い分ける楽器によって決められた既成の「ジャンル」の中の音楽とは違い、曲の構成や音の造りに非常に独特なものがあり、興味深いです。
M:私自身バンドでドラムを叩いた所が出発点のリズム野郎なのですが、途中クラシック音楽のメンバーや、ドローンミュージシャンとの共作を通し、いわゆるバンド音楽と全然違う事を学んだことで、「時間軸への疑い」を持つようになったんです。BPMってフレームワークじゃんって。ド・ミ・ソが快感を作るのと同じで、体を動かしやすい一定な太鼓が高揚感を作る、という音楽の普遍的な「正解」は一旦忘れて、音を使いはするが、音楽にはなっていないようなものもアリって考えるようになってから、BPMを意識せずに瞬間瞬間で脳が反応・錯覚するようなものを紡いでいきたい、不快だろうが不協和音もストーリーに入れたいなと思うようになり、Mulllrではこういう部分を継続して取り組んでいます。

リバーブが変化すると、お風呂場くらいの狭さからコンサートホールへ、今立っている場所が巨大化した感じにできたり、右から左にずっと音が流れていると自分が移動していたり、音程が変化するとぐにゃっと歪んたような印象になったりと、変化がでてきますよね。それを聴覚でなく脳全体で捉えてもらうことができれば、音楽としては難解でも、体感としては、タイムスリップしたり、パニックになったり、変形する建築物みたいな、非常にわかりやすいアトラクションとして表現できるはずで、クラブミュージックやクラシックの多くがこういう部分で面白いさを作り出していると思うのですが、この先の部分にもう一歩突っ込んで何かできないかなと試行錯誤しています。
Mulllr_live

今までに聴いた全ての音に影響を受けていると思います

独創的な故に、他の作品からの影響が想像しにくいという印象があります。影響を受けたアーティスト、作品などがあれば教えてください。
M:ヒドイ答えになってしまいますが、今までに聴いた全ての音に影響を受けていると思います。逆に何にも影響を受けなくなってきてしまったとも言えるのかもしれませんが、一周して日常の中の些細な事を過大評価して影響を受けられるように自己訓練しているイメージです。

恥ずかしい話、頭でっかちに「こういう事を考えてこれを作ってみたんだ」なんて話を親しい友人にしてみても、「それって◯年前に◯◯◯って人が同じことを言っているね」なんて事ばかりで、コンテキスト重視で影響を受けそうな優れたモノと、誰もやっていない境地を探し続けると、不幸な未来が待っているかも、と気が付いちゃったんです。何も作りたくなくなるだろうなって。

あくまで今日の私の場合ですが、いかに自覚的に車輪の再発明を楽しめるか、鈍感であるか、が重要な事かな?なんてことは時々考えますね。

「よそはよそ、うちはうち」ですかね(笑)

なので、文脈をマッシュアップ出来きたり面白く紹介できるタイプの方は、ジャンル問わずそのストイックさを尊敬しています。
Mulllrの音楽を説明する時に、「電子音」「ノイズ」といったワードを使用する事でちょっと難解に思われる方もいるかと思うのですが、そうとは限らないと思います。ご自身としてはどのように思われますか。
M:電子音楽・ダンスミュージック等どのジャンルと考えても破綻してしまっているし、比較的広義を扱う「エクスペリメンタル」という言葉にかろうじて仲間に入れてもらえるかな?と思いつつも、崇高な実験性も別段持ちあわせていないと自分の事を思っています。 どれかのジャンル音楽として聴いてみると不快さが半端ない。自分がリスナーでもおそらく、0点に近い評価になっちゃいそう。でも『WORKERS』にかぎらずMulllrのどうしてか0点にはならない、その数点の部分があって、とても魅力的だなと私自身はMulllrの事を思っています。
この作品の前にYui Onodera氏とのユニットReshaftとしてのアルバムのリリースがありました。こちらはよりダブテクノ、ミニマルダブ的な作品でしたが、Mulllrとしての作品との違いとして意識されましたか。
M:Reshaftは、私っぽくもなく、Yui Onodera氏っぽくもないものにしたい、という意識合わせだけが当初ありました。お互いに普段やらないアプローチを試していって、何か面白いものが出てくるならば良し、といった感じですね。結果としてお互いに、自分達が意識していなかった部分まで、自分の手癖や性質みたいなものが浮き彫りになってきて、非常に興味深い体験でした。

Mulllrは100%1人でコントロールできるので、よくも悪くも想定内で、個人的、フェティッシュな音になってしまうけど、Reshaftはもう少し余地があり、もう少し多くの方に届くのではないか?と感じています。
Mulllrとしての活動後、ライブを行われる事も増えたと思いますが、ライブでの違いは意識されていますか。
M:あまり意識していない、というよりできないんです。空気全力で読んでも上手くいかない(笑)

元々私はLiveを結構お断りしてしまっていて、時間と場所を共有する以上、ライブは演者と聴衆どちらも楽しくありたいとなると、先ほど述べた「正解」の事を考えないとならず、私のスタイルはちょっとこれの実現が難しいなとの思いが長年あったんです。

でも、近年は技術的な進歩でユーストLIVEみたいな存在が出てきたのは大きくて、 これならその人が一番リラックスできる状況でLiveを提供しやすくなってきたので、リスナーに辛さを強いず、私自身も楽しくやれるチャンスがぐっと高まったと感じています。多くないですが時々こういうライブはやりたいなと思っています。
最後にMulllr名義に限らず、今後の活動などについて教えてください。
M:Mulllrとしての活動はもちろん継続しつつ、 いろいろなアーティストと進めている別名義も少しづつ発表していけたらと考えています。 コラボは時間がかかってしまいますが、一人ではできない面白いものができると思うので、是非次回作も興味を持って頂けたら嬉しいです。

インタビュー/聞き手:小野寺(CMFLG)

2015.11.27 19:50

【INTERVIEW】僕とジョルジュ — part1 — 姫乃たま

僕とジョルジュ




本年1月ある朝通勤途中の乗換駅の階段を降りていたら頭の中をボンボンボンボンボンと速いリズムでベースの音が鳴り、続けてオルガンが、どこかで聴いたことあるなと思ったらフランスギャルのジャズ・ア・ゴーゴーだった。それが「僕とジョルジュ」制作のきっかけでした。

『僕とジョルジュ
ディナーショー』
2015年11/29(日)東京 町田 まほろ座 MACHIDA
ACT:姫乃たま / 佐藤優介 / 金子麻友美 / 澤部渡 / 井上 拓己 / シマダボーイ / and more.. 
スペシャルゲスト:山崎春美
Open 19:00 / Start 20:00
Adv ¥2,500 / Door ¥3,000(1ドリンク+1フードオーダー)

ジョルジュは、フランスの画家ジョルジュ・サンドから。
女性が男性名を名乗っているのは、想像が膨らむと思ったので。

最初に、フランスギャルやりたいって電話したんですよね、メールか。
姫乃たま(以下h):最初は(澤部渡の)バンド、スカートをバックに、姫乃たまソロ名義のCDを作ろうというお話だったような。
そしたら今年は自分名義のアルバムを出すからユニット名義にしたいって言われたわけです。
h:そうそう、そうでした。普段のライブで、地下アイドルとして歌っている音源が流通していないので、今年こそ出そうと思っていたわけです。間に合わなかったですが。
それが「僕とジュルジュ」となったの覚えてる? おれはユニット名はジャパンギャルで、とメールしたら全く無視されたわけで。
h:フランスギャルにインスパイアされ過ぎですし、ジャパンギャルってヤマンバじゃないですか。
矢野顕子のジャパニーズガールのつもりもあったんだけど。
h:まあ、その考えもわかりますが……。ジョルジュは、フランスの画家ジョルジュ・サンドから。女性が男性名を名乗っているのは、想像が膨らむと思ったので。「僕とジュルジュ」って異性の恋人にも、同性の恋人同士にも見えますよね。
色々な解釈が成されるだろうと。そこは誰も理解してなかったと思う。
h:もっと厳密に言うと、ジョルジュという犬を飼っていた知人がいたんです。名前の由来はジョルジュ・サンドだったそうです。「僕とジョルジュは最高の友達だった」と話していて、犬しか友達がいない寂しい感じや、少年と犬の組み合わせには感じるものがありましたね。
作詞は全部自分でやります、となったわけですが、当初何かコンセプトは考えたんですか?
h:最初は全くなかったですね。どんな曲ができるのか分からない中で、佐藤優介さんから18秒の曲とか送られてくるわけじゃないですか。これ、ファイル破損してんじゃないかな、という。全編、恋のうたにしようと、それだけですね。
澤部(渡)さん、佐藤(優介)さんや金子麻友美さんから曲が届き始めて歌詞が出来るのも当初調子良かったと思ったけど…。
h:制作の途中で、祖父は死ぬわ、声帯にコブができるわ、書籍(『潜行 地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー)9月に出版された)の執筆と被ってるわで、地獄でした。執筆のために出版社に寝泊まりしている生活でしたし、お風呂に3日入れないような状態で恋の歌を書いていたわけです。
最初のスタジオ入りのころ、5月でしたね。
h:作詞は楽曲が出来上がった順に手をつけていったので、最初は佐藤さんの曲でした。「無邪気な少女」と「迷子」。デモを聴いた時は、メロディの複雑さと、トラックの難解さに驚きました。その後すぐに、金子さんの曲が届いて、それが「42歳」でした。
いい曲になりました。
h:佐藤さんの曲はやはり、とても時間がかかって、金子さんの曲はすらすら作詞できた記憶があります。「42歳」なんか、歩いているうちにできました。佐藤さんの楽曲は物語性が強いので、コンセプトが浮かぶのは早かったですが、作詞はしばしば難航しましたね。
そうそう。他に印象的な曲は?
h:「恋のすゝめ」が送られてきた時は衝撃的でした。
あれはレコーディングの最終日に佐藤さんに頼んでピチカートやってみてって。
h:衝撃の方向性が違いますが、短い楽曲もショックでしたね。「君とデート」とか「内緒」とか。普段ライター仕事をやっているせいか、短文を書くのは苦手で。「君とデート」とか、ほぼ短歌じゃないですか、短歌とか俳句とか出来ないんですよ。
ブリジット・フォンテーヌに「俳句」って曲あるけど。まあ関係ないわ。
h:書籍の執筆が締切間際で、マスタリングには行けなかったので、完パケが送られてきた時は、佐藤さんの脳内が完全に表に出てきたのを感じて驚きました。レコーディングはとにかく楽しかったですが、作業的にはこれで大丈夫なのかしら、という気持ちがありました。シマダボーイ君も、楽しく叩いて帰ってから心配になったって。楽しく歌って叩いたものがすべてまとまっていて、佐藤さんには驚かされるばかりです。
どうやったって使えないと思ってたシマダボーイの録音も、その良いところ出しててエラいと思った。
h:改めて振り返ると、本当に佐藤さんと金子さんのおかげで、何にもしなかったなって思います。
ギターやったでしょ
h:ギターね。澤部さんが搬送されたからね。
あのスタジオ現場はすごかったですね、いきなりギター持たされて。
h:金子さんの褒め芸が炸裂して。誰が聴いても絶対ダメでしょ、これ使えないでしょ、という演奏もキラキラ褒めるので、いいのかな?って。
そうそう、金子さんの間違った敬語の使い方がすごい。あと素材があれば何とでもなるなって思ってたから。
h:そう。結局、佐藤さんがなんとかしちゃうんですよね。あのふたりは本当に恐ろしい人たちですよ。

今まで恋愛の歌詞を書いてこなかったので、楽しかったですね

ボーカル録りの日って体調悪かったよね。
h:喉にコブがありましたからね。おかげでボーカルの練習は脳内でしかできなかったので、当日ぶっつけで歌いました。すいません。
それは知らなかった。
h:しかし、レコーディング楽しかったですね。ソロ活動が長いので、誰かと毎日顔合わせて作業するのは本当に貴重でした。
こちらからすると、ただのその場の何の根拠もない思いつきをお願いすると、すぐ返してくれたのがよかった。
h:ありがとうございます。あとは、今まで恋愛の歌詞を書いてこなかったので、楽しかったですね。性格のせいか、どこか薄暗いのですが。「42歳」の歌詞なんて、恋人が死んだからずっと42歳なんじゃないか?という推測まで……。
誰から?
h:ファンの人とか。
そうやって勝手に言われるのが一番幸せな、楽曲として、そうやって育っていてくれるのが一番良いよね。ところで最後に、11月29日のレコ発ライブについて意気込みを
h:非常に楽しみですが、面識のないメンバーもいるので、どうなるのか全然わかんないですね! でも結局なんとかなってしまうんですよ、金子さんと佐藤さんと私でいれば。会場には螺旋階段とグランドピアノもあるそうなので、是非に遊びにいらしてください。ライターやったり司会やったりDJやったりで、ワンマンライブは4年ぶりなので貴重な日です。お待ちしております。

インタビュー/テキスト 金野篤(DIW)

→『【INTERVIEW】僕とジョルジュ — part2 — 佐藤優介 & 金子麻友美』へ

2015.11.26 11:53

【INTERVIEW】僕とジョルジュ — part2 — 佐藤優介 & 金子麻友美

僕とジョルジュ



姫乃たま、佐藤優介(カメラ=万年筆)、金子麻友美によるユニット「僕とジョルジュ」。
8月にアルバムをリリース、11/29(日)には町田のまほろ座 MACHIDAでワンマンディナーショーが行われる。
その作曲とサウンド・プロデュースを担った2人に話をうかがってみた。

『僕とジョルジュ
ディナーショー』
2015年11/29(日)東京 町田 まほろ座 MACHIDA
ACT:姫乃たま / 佐藤優介 / 金子麻友美 / 澤部渡 / 井上 拓己 / シマダボーイ / and more.. 
スペシャルゲスト:山崎春美
Open 19:00 / Start 20:00
Adv ¥2,500 / Door ¥3,000(1ドリンク+1フードオーダー)

最初はフレンチがテーマという事だったので、それに寄せてやりました

–まずこれを作ることになって作曲の発注を受けた時、どんな感じでしたか?
金子麻友美(以下k):姫乃さんは以前から知ってました、陰ながらファンでしたから。
kaneko_mayumi

–一緒にやりましたね、マーライオンの演奏で。
k:12月、去年の。ぱいぱいでか美さんのインストア(HMV渋谷レコードショップ)に無理矢理マーライオンを押し込んだやつ、姫乃さんと3マンでした。
–その前から知ってた?
k:マーライオンが自分の知り合いにアイドルがいるんすよ、と自慢してたので気になって1回見に行きました。
–では、今回の作曲のポイントを1曲ずつお願いします?
k:最初はフレンチがテーマという事だったので、それに寄せてやりました。
–当初10曲作ろうと。佐藤さん5曲、金子さん5曲の予定だったかな。
k:「42歳」は『ミヤシロ』がヒントになりました。
–宮代?何だっけ。
k:ゴーメナサイーって。
–パシフィック231ですね、ヒントだらけのすごいアルバム。
k:そうです。それのリズムを拝借しました。
–でもレコーディングの時にめっちゃボサノヴァになって出来上がったみたいな。
k:確か澤部さんがアコギを弾いてくださったんですけど、そのギターがボサノヴァっぽかった。
–録音初日?
k:初日しかいなかったじゃないですか、澤部さん、2日目に倒れちゃったから。
佐藤優介(以下s):全然覚えてない。
–それで雰囲気が決まったてことか。
k:「変な恋」は……。
–もろゲンズブールですよね。
k:そうです。
–「ジュ・テーム」、ね。
k:オマージュです。デュエット曲。
–これのコーラス指示があったんだよね、イントロはフランス語入れてます。
k:ハナモゲラ語ですけど。
–タモリの寺山修司のモノマネみたいな感じ、津軽弁がフランス語に聞こえるってやつ。
k:いえいえ、ローマ字読みしただけ。ゲンズブールの検索して出たやつを繰り返してローマ字で読んでました。
–「週末」は?
k:これは暗い曲にしようと思って、気持ち悪い感じにしました。
–デモのベースがデカかった。
k:それがなお気持ち悪いやつで、後で差し替えて。
–フラ・リッポ・リッピ、参考にって送ったんですね。
k:「さよならを数えて」は戸川純さんがカバーしてる「さよならを教えて」のオマージュです。
–フランソワーズ・アルディ。
k:途中でイモ欽トリオのノリが良いんじゃないかってなって。
–レコーディングのときにね、振り付けして歌った方が良いってなってね。
k:謎の意味の分からないタム入れて、ピュンピュンみたいな。
–ピュンピュンは必要。
k:「秋の檸檬」もデュエットになって。「無造作紳士」のオマージュです。
–:それ、自分の曲でしょ?
k:ゲンズブールです。
–金子さんのアルバム(『はじまるマジカル』)になかった?
k:「無防備天使」です。太田裕美さんです。以上です。
–すいません。
k:いえ。

フランスギャルのベスト盤が20曲入ってるからそんな感じにしてくれって。

SatoYusuke_s

–佐藤さんは?
s:最初、フランスギャル、60年代のフレンチポップみたいな路線でって言われて。だからゴーゴーっぽいの、「無邪気な少女」を最初に作ったんですけど、この曲が出来てなんだか満足しちゃった。あとは好き勝手にやろうと。その次にできたのが「迷子」で。ドビュッシーみたいな感じで歌もの作れないかなって。結構気に入ってます。
–「片目の仔猫」、これは澤部(渡)さんか。すごくいい曲ですよ。
k:アレンジがちょっと、みたいな。
s:ディレクターの人が変えようって。
k:同時録音じゃなきゃいけないって。澤部さんの曲なのに私がギター弾いて一緒に姫乃さんが歌いました。
–結果、良かった。
k:この曲の冒頭の雷、最高ですよね。
–シマダボーイが言ってたけど、アルバム(実質上の)1曲目「恋のすゝめ」がシングルのA面で、雷の音でB面が始まる、後の21曲は全部B面だって……。
s:「観光案内人」は短いやつだっけ?
–シマダボーイのパーカッション。
s:ちょっとマーチングっぽいのやってみてようって。
–現場では使い道ないだろうって感じだったけど、ミックスのときシンセが入って、いいフレーズで。
s:伊福部(昭)オマージュです。
–いい曲になりました。
s:録ったものは全部使うぞって。
–「ないしょ」ってどうして出来たんだっけ?
s:短い。歌詞は2行だけですね。短い曲が好きなんですよ。これ、CMのつもりだから番組の途中の。15秒か30秒とかでインパクトがあるのが好きなんです。
–「クーデター完遂せず」は?
s:シマダボーイ1人で8トラックぐらい重ねて 後でシンセを被せました。これもCMシリーズ。
–続けて。
s:「恋のジュジュカ」は実は昔作ったトラックで。作ったっていうかアフリカの子供達の歌なんですけど。
k:初耳です。
s:子供たちがこう歌ってるんだけどそれが5拍子なんですよ。いい歌で。それをシンセに置き換えただけなんですけど。これは山崎春美さんがすごいです。
–あれ、ミックスのとき、あの固有名詞消した?言ってはならないやつ。
s:残してますよ。
–「今夜」は?
s:ピアノのやつだ、これもCM系。わりと気に入ってます。シマダボーイのパーカッションが良い。……、「君とデート」って何だっけ…、あ、これもCMです、俳句みたいな。 
–和風で。
s:これも有りモノですけどね。
–「健康な花嫁」、これはちゃんとしてる。
s:学生の頃作った曲です。カントリー風。次の「テレビは砂嵐」は輪唱モノをやりたくて。これも伊福部オマージュ入ってます
–「巨大な遊園地」はいいメロディばかり。
s:Aメロがジョン(レノン)で、Bメロがジョージ(ハリソン)、サビがポール(マッカートニー)。Bメロが気に入ってます。
–録音の最終日、片付けようかってとき何か足りなくて、ジャックタチの「ぼくの叔父さん」みたいな曲を作ってほしいと言ったよね。それでバス停までの帰り道にピチカートVっぽいインタールードのどっちかがほしいって。
s:録音が終わったとき、大丈夫かなこれ?ってムードが全体に漂ってたので。
–全く需要がないものだった。
s:じゃあ1曲でもリード曲がほしいなって、入口としての曲が。
–出口もなかったから。
s:カルデサック、出口なし。
–袋小路なんです。そして「恋のすゝめ」、驚いた。
s:自分でも初めて作るタイプの曲でした。
–姫乃さんから歌詞がきたときは…。
s:感動しました。これ以前にも素晴らしい歌詞が続々と来てたので、それがモチベーションになったし。よかったです。

インタビュー/テキスト 金野篤(DIW)

 

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2015.11.26 11:50

【INETERVIEW】soejima takuma

soejima-takuma

福岡を拠点に活動する音楽家・soejima takuma。
俳句コア専門レーベル・basyo-labelやユーザーが素材を使用することで完成する作品『PARATEST』といった作品群で強い印象を植え付ける彼が、先日PROGRESSIVE FOrMからリリースされた1stフルアルバムをリリースした。
各所で「新たな才能」と称される彼にインタビューを申し込んでみた。




『Bouquet』/ soejima takuma
2015年10/15リリース
レーベル:PROGRESSIVE FOrM
カタログNo:PFCD51
価格:¥2,000(税抜)
【Track List】
01. Melt Alone
02. Fallout of Sky
03. Coelacanth feat. Smany
04. Catastrophe
05. A Faint Blue
06. Outbreak feat. Katsuki
07. Aire
08. Rafflesia
09. Daisy
10. Anemone feat. Ferri
11. Allium
12. Noir Fr feat. Honda Yoshiko
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ライブで演奏していた楽曲や友人の映像作品向けに制作した楽曲をリアレンジするという形で纏めました

ーー簡単な自己紹介をお願いします。
soejima takuma(以下soejima)福岡県内を中心にライブ活動や制作をしています。soejima takuma(ソエジマ タクマ)と申します。ピアノを主体に弦楽やグリッチノイズを織り交ぜた作品を多く作っています。10月の15日にPROGRESSIVE FOrMより1stフルアルバム『Boupuet』をリリースしました。
ーーこの度はアルバムのリリースおめでとうございます。アルバムをリリースしてみての感想はいかがですか?
リリースして未だ日も浅いので、あまり実感はないのですが、方々でアルバムを聴いてくれたと報告があって大変嬉しく思います。
ーー今回のアルバムは、いつ頃どのようにして制作が始まりましたか?また、どのぐらいの時間で制作されていますか?
soejima古いものだと21歳の頃に作曲した作品(M1 Melt Alone)などあって、アルバム中のほとんどの楽曲はここ1、2年ライブで演奏していた楽曲や友人の映像作品向けに制作した楽曲をリアレンジするという形で纏めました。もちろん作品によりますが、だいたい一曲が書き上がるまでの時間は100時間~200時間程度掛かったと思います。時間をかけて作ってるのでどうしても制作中に楽曲に対する新鮮さを失ってしまい作品の良し悪しの判断が困難になることも多く、同時に三曲取り掛かり、ローテーションを組むなどして、できるだけ作品への客観性を保てるよう工夫しました。アルバム全体のアプローチについてはある程度自由にさせて貰いましたがレーベルのPROGRESSIVE FOrMと随時連絡を取りながら相談し、最終的に今作『Bouquet』が仕上がりました。
ーーピアノやストリングスの音が印象的なアルバムでしたが、どのような環境で制作をしましたか?
soejimaピアノ、ストリングスだけでなく制作におけるほぼ全ての音は電子ピアノを用いて自分で演奏しMIDI入力しました。打ち込みはLogic Pro9とPro Tools LE8を使い分けて行っていますが、技術的な部分やソフトウェアの限界がある様な箇所については知人のミュージシャンにお願いして実際に演奏してもらっています。その際は大まかなイメージだけを伝えアレンジ自体はほぼ丸投げしました。仕上がったオーディオデータやMIDIデータの最終的なミックスは全てPro Toolsで行いました。
ーー今作ではFerri、Smany、本田ヨシ子、香月というゲストボーカルを迎えて作品を制作されていますが、彼女たちを選んだ理由や基準が あればお聞かせください。
soejimaアルバム全体がある程度見えた時点でボーカル曲を書いてみたら?という提案がレーベルからありまして、当初の予定では意見を気兼ねなく交換できるという理由から古い知人である香月に全てお願いするつもりでしたが、時間的な問題や香月にできる表現の制約などもあり、全曲というのは早い段階で断念しました。せっかくのアルバムということで気になっていたアーティストを片っ端から聴いていき、収録する楽曲のイメージに合わせて最終的にSmanyさん、Ferriさん、本田ヨシ子さんにそれぞれお願いするに至りました。Ferriさんと本田ヨシ子さんについては面識もやり取りも一切なかったので突然お願いする形になりましたが、お二方とも快くオファーを引き受けてくださり僕がイメージしていた以上に楽曲の完成度を高めてくれたと思っています。Smanyさんについても過去の共作を通して信頼できる素晴らしい才能を持ったアーティストだと確信していたのでアルバム制作にあたり再度共作をお願いしました。四方とも機会があればまた一緒に作品を作りたいです。
ーー今回のアルバムに限らず以前の活動、矢野ミチルさんとの共同展示やbasyo-label等を見ているとアート方向への強い志向を感じます。その 志向の源はど辺りにあると思われますか?
soejima間違いなく高校時代ですね。一緒に活動ないし、関わりのあった友人の殆どが美術関係者だったというのもあって、彼らの考え方やアートとの向き合い方にはかなり影響を受けたと思います。今の美術界隈では創作する上で「作品の意味」「作品を作る意味」といいますか、コンセプチュアルな部分を少なからず意識せざるを得ない状況があったりして興味深いです。こじ付けや後付けでもいいから作品にコンセプトを付けるという本末転倒な事もしばしばあったりして…(笑)音楽の場合ですと音そのものに具体性がないので、思想や思考よりは感情と結びつきやすく、コンセプト重視の作品はアーティストにもリスナーにもあまり好まれてないように感じます。以前共同で展示した矢野ミチルさんはそういう意味では現代アートから完全に外れているというか、確信犯的に感覚のみで作品を描いていらっしゃるのが凄く面白いです。構造的構築的に創作する僕とは逆に位置にいる点でも惹かれました。

質の良い作品はもちろんのこと、興味を持ってもらえるような発信力こそ最も大切だと痛感させられました

ーーsoejimaさんというと個人的に「basyo-label(※1)」が外せないのですが、このレーベルをやろうと思ったきっかけはどのようなも のでしたか?
soejima当初、友人のトラックメイカーのtokomanonkaや、ラッパーの近藤考次、線描の四人で何か一緒にコンピでも作ろうという話になったのが発足のきっかけです。最近はsoundcloud、bandcampなどの台頭でオンライン上で楽曲を発信しやすくなったのもあり、音楽の供給が一方的に過剰になっていて一曲のクオリティに関わらず楽曲を通しで聴いてもらうことは殆ど不可能だと認識していました。そこで他人に聴かせるのでなく自分たちだけ楽しむための音楽をやってみようという話になり、僕の方から俳句を題材にして、1分未満の短い楽曲を作りたいと提案しました。と言うのも、当時楽曲に合わせて詩を朗読するというジャンル『ポエムコア』がネットで頻繁に話題に上がっていて、オマージュとして1分未満のトラックの中で俳句を2度読むというコンセプトの元『俳句コア』というジャンルを作ってみようかなと。

※1 basyo-label:soejima takumaがsenbyo、tokomanonka、kondo kojiと主宰していた「俳句コア」専門のレーベル。コンピレーションには canooooopy、BOOL、EMDEE1、yuko lotus、LTPIMO他の豪華なメンバーが参加していた。
ーーbasyo-labelをやってみて世間の反応はいかがでしたか?また、その活動前後でsoejimaさんの音楽活動に影響がありました か?
soejimabasyo-label発足時に四人で6曲程度の簡単なEPを作ったところ、自分たちだけで当初楽しむつもりだったのが企画の不可解さや、楽曲のインスタント性が一部で話題になりまして、その後多くのミュージシャンらの賛同を得、更に2作品のコンピレーションを発表をするに至りました。この2つのコンピは参加人数が多かったのもありますが、DL数もそれぞれ100を越え、再生数もトータルで1万回以上再生されました。この件は僕自身の音楽活動の影響といいますか、誰かに作品を聴いてもらうためには、質の良い作品はもちろんのこと、興味を持ってもらえるような発信力こそ最も大切だと痛感させられました。俳句コア自体は話題性や新鮮さありきのコンテンツの一つだったと思うので、すぐに消費されてしまったのですが、得たものは凄く大きかったです。

とにかく人との繋がり、制作、
そして発信し続けることに尽きます。

ーー今年の夏に開催された「Summer War Game03」や「超能力酒場」「liminal」など、福岡で興味深いと思うイベントにはよく名前をお見かけするsoejimaさんですが、soejimaさんから見て現在の福岡のシーンはどうなっていると感じていますか?
soejima福岡だけでなく地方発信というのが徐々に強くなっているという印象です。上の質問でも触れましたが、個人の発信力がインターネットの力で高まってるので才能があるにも関わらず地方で埋もれがちだった人でも活躍しやすい状態になったのかなと思いました。福岡県内でも泉まくらさん、lee(asano+ryuhei)さん、duennさん、レーベルだとyesterday once moreなど地方在住のまま全国区で活躍しているミュージシャンも出てきて、関東で一極化していたシーンが少しずつ分散しつつあるなと。それでもレーベル、人口、ミュージシャンの数で関東の持っているアドバンテージは圧倒的だとは思います。質問の例としてあげて頂いた3つのイベントについては集客力もイベントとしての質もかなり高いのですが、国内外からも面白いアーティストの招致を積極的に行っていて、一際目立っていますし、福岡のシーンはこれからどんどん面白くなっていくと僕は思います。
ーーアルバムをリリースして、次の展望などがあればお願いいたします。
soejimaとにかく人との繋がり、制作、そして発信し続けることに尽きます。


soejima takuma『Bouquet』information
http://on.fb.me/1kW7tin

インタビュー sabadragon(@sabadragon)

2015.10.30 11:58

【INTERVIEW】transpose1周年記念インタビュー k-over

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transpose—「所属にとらわれない自由な発想のポータルとして誕生した」集団である。
月に一度のペースでアーティストの楽曲と映像のコラボを発表していくというスタイルで活動を続け、Arisaka Tomoe(阿佐ヶ谷ロマンティクス)、canooooopy、Couple、soejima takuma、空也MC、菊地紗矢、行方不明 等々の印象的なアーティストのチョイスと相まって独特の存在感を放ち続けている。
そして彼らは7月に1周年を迎えると同時にScarab Sacre + k-overの『Out of focus』をリリース。
1周年の節目となる楽曲にふさわしい印象的な作品となっている。



そこで今回この楽曲の参加者であり、transposeの中心人物の一人であるk-overにインタビューを試みた。

「ようやく1年か、といった感じです」

k-over
はじめまして。簡単な自己紹介をお願いできますか。
k-over(以下k)k-over(ケーオーヴァー)と読み、歌と作曲をしています。ミックスやリミックスのお仕事、イベント「comogomo」のオーガナイズを時々やっています。15年前、バンドをやっていた時に“Fragment”と知り合い、以降『術ノ穴』のメンバーとして活動しています。
まずはtranspose1周年おめでとうございます。1周年を迎えてみての感想をお願いいたします。
k:ありがとうございます。ようやく1年か、といった感じです。僕らはレーベルではないですが、アーティストと連絡をやりとりしていたので、毎月リリースするレーベルのオーナー、イベントのオーガナイザーの大変さをほんの少しだけ感じることができました。いい経験が出来ています。
ありがとうございます。transposeを始めるきっかけはどのようなものでしたか?
k:僕の経験上、ミュージシャンって音楽は時間をかけて作るけど、ジャケットやフライヤーは割とさらっと作っているのが気になってまして。実際自分もこんな感じかな?とあまり考えずに作って、数日経って「失敗したな」という経験がありまして。もちろん中には全部できちゃう凄い人もいるし、味のある絵を描く人もいますけど。
僕は絵やマンガを観るのが好きですが、絵を描くのはひどく苦手で。“EMDEE1”は油絵も水彩もスプレー画もマンガもと色んなタッチの絵が描ける人だし、こういう人がもし自分の曲に絵を描いてくれたらどうなるんだろう?っていうのがきっかけです。
その時にすでに現在のような形で運営する事が決まっていましたか?
k:これを始める前、ライブハウスとクラブでイベントを二人で何度か打ちました。絵の展示とライブペイント、バンドマンによるDJ、バンド、ラップ、小さいフェスのようなものをやらせて頂きました。身近にいる“Fragment”が主催している《ササクレフェス》や、元“s-explode”の今井くんがフェスを打ってたことに触発されたということもあります。

実はその時、絵の見せ方について意見をもらって、イベント運営は一旦離れ一つずつでもいいから何か作品を出さないかという考えを話し合っていました。数ヶ月後、自分のソロ曲(「むやみやたら」)の配信がありまして、彼に曲をじっくり聴いてもらった上でデザインをしてもらいました。今はEMDEE1の絵がうちの色になっていますが、その時は他のデザイナーにもどこかのタイミングでコラボレーションしたいな、という考えもありましたね。
“bugfics”時代のMVを見ていると現在のtransposeのMVのセンスと通じると思うのですが、当時もk-overさんがMVの制作をしていたのですか?
k:本当ですか(笑)bugficsの「飲石」というMVは術ノ穴の“Shohei Fujita a.k.a Wyte Cymmba”が制作してくれました。
彼も何度もこの曲を聴いて、彼がたくさんアイデアを出してくれました。ソロ活動を始める前に作った“空也MC”の「独走」という曲のMVも彼が制作しています。そう考えると今と作り方は近いのかもしれません。

「凄く分かりにくいものが作りたかった」

次に新作の『Out of focus』について質問させてください。この作品では“Scarab Sacre”さんとの共作となっていますが、どのような手順で作品作りが進みましたか?
k:この質問に関してはScarab Sacreより回答してもらいます。

Scarab Sacre(以下s)Scarab Sacre(スカレベサクレ)です。k-overさんも僕も、お互いたくさん音を重ねて曲作りするスタンスだったので、シンプル路線で行きましょう!とスタートしました。歌詞をつけるかどうかは後々決めようということで。k-overさんから試しに送られてきた言語不明の引き語りが素敵だったため、方針が決まり、曲をかいていきました。次第に気持ちがエスカレートし、最終的にはシンプルでない曲が出来上がりました。映像については、ほとんど曲が出来上がった段階から作り始めました。
「言語を失くして字幕で表現をする」という手法をとられています。ソングライティングとしてはかなり先鋭的な手法だと思っていますが、この作品でこのような手法を取ろうと思ったのはいつ頃決められたのでしょうか。また、そのような手法を取ろうと思われた動機はどのようなものでしょうか。
k:この形を提示してくれたのはScarab Sacreでした。彼とtransposeのマインドが合致したこともあり、彼に委ね、思う存分試してもらったところが大部分で、いついつにこの形でやろう!と決め打ちして始めたのではなく、偶発的に導かれたところがありますね。

s:分かり易いものがどんどん表にでてくる時代において、まじまじと説明してるのにも関わらず、凄く分かりにくいものが作りたかった、というのが動機です。大体のミュージックビデオがよく考えたら全然よく分からないってものばかりだと思ってたんで、あえてそこを分かり易く視覚化させました。映像の内容に関してですが、曲名を日本語にすると「ボケ」です。言ってることもやってることもどこかピントがズレてて、なのに一生懸命前に進もうとする。
そして同時に拒絶ポーズ(首のスイング)をとる。
願望と拒絶、伝えたいのに伝えたくない、そんな気持ちの表れです。
前作である「鍵をかけて溺れよ」が非常にはっきりと歌詞を聞かせるようなスタイルだったことと対比していると思いましたがk-overさんの中でこの2作はそれぞれどのような立ち位置にいますか?
k:今だからお話すると実は「鍵をかけて溺れよ」より先に出した「ルーパー」という曲があるのですが、そちらの方が後に作った曲なんです。
「鍵をかけて溺れよ」は自分が今までバンドでやってきたこと、共作してきたことの総決算のような思いがありまして、自分の今出来る範囲で稚拙ではありますが映像、パラパラマンガ、全部やってみました。EMDEE1にもかなり無茶を言って歌詞の内容に合わせるように絵を描いてもらいました。そのため前後しての発表になりました。

「Out Of Focus」は10代〜20代前半に聴いていたピーターガブリエル在籍時のジェネシスや、Buffalo’66に出ていた頃のヴィンセントギャロが作り出すフロイドやイエスとは少し違う甘いプログレや、ジョンフルシアンテのソロを作っていくうちに意識して、それをScarab Sacreが汲んでくれたという感じです。
バンドを組んでそのあたりの音楽からしばらく離れていたのですが、今回ようやくといいますか、ルーツが少し出せたのかなと思っています。

僕は日本語でポップスを歌っているので僕の曲はどちらもJ-popだと思っています。
k-overさんにとって映像による表現と音楽による表現の関係性はどのようなものでしょうか。
k:音楽だけで聴く時代は終わった、という方がいます。それはギターミュージックは終わったという話に似ているように思います。少し話はそれてしまいますが、電車での移動、ランニング中は映像は見れません。ですが音楽は聴きますよね。回線が弱ければ、また格安SIMなら容量の都合上音だけ聴くということも多いにあります。transposeからは楽曲はYouTubeのみの配信としていますが、絵と映像、アーティストの情報やtransposeの他の楽曲も見て欲しい、聴いて欲しいということでこのスタイルをとっています。

僕らはレーベルではないので曲の所有権は当然作者にあります。楽曲がサンクラ、はたまた流通音源となったとしても何の報告も必要なければ金銭の授受も存在しませんので自由です。この企画がきっかけで僕らが好きで協力して頂いたアーティストたちに興味を持って頂ければ音楽への希望、少なくとも僕たちは得る事が出来ます。映像は一度みて記憶していることもありますので、読み終わった本を読み返す時のように見たい!と思った時に見て頂ければ、と思っています。

…映像に関しては僕はある程度切り分けて考えています。それは映像作家の方が曲を聴いてイメージを練って、信頼関係とコンタクトがしっかりとれていれば、あまりにも出来上がった作品がかけ離れているということにはならないと思っているからです。逆に音楽をやっている人間があまり口を出し過ぎてしまうと不自然なまま終わってしまう…そんなこともあるのではないでしょうか。僕たちも出来るだけコンタクトをとって、コンセプトの乖離がないように…と思っています。どんどん違うところは言って欲しい…!とは思っていますが、年齢にはなかなか逆らえません。年齢など関係なく、お互いの表現を話しやすい環境作りをしていく、というのが音楽シーンを支える一つだと思っています。謙虚に。大人は特に。謙虚に。

「非日常を日常に持ち込みたいです。」

映像作家として気になる方がいらっしゃれば挙げてください。また、ミュージシャンとして気になる方もお願いします。
k:会社になりますが、『EPOCH』。代表の石澤さんは術ノ穴とも親交がありますし、この会社が関わった作品は常にチェックさせて頂いてます。安室奈美恵さんの「Golden Touch」はこの何年かで一番楽しかったMVですね。会社のあり方としても凄いと思います。あとはお世話になった“大月壮”さん。テクノロジーとノスタルジーを併せ持った作品、“m7kenji”さんとのタッグは何度も楽しんでいます。

ミュージシャンは上げると大変長くなるのでとりあえず“Arca”。見た目も映像も人を寄せ付けないほど飛ばしてます。あそこまで行っている人がいるとワクワクしかしませんね。語弊があるかもしれませんが音楽不況とか割とどうでも良くなります。
2年目に突入しているtransposeですが、今後transposeでやってみたい事があればおきかせください。
k:非日常を日常に持ち込みたいです。
それが絵なのか音なのか映像なのか、それともまったく別の方法なのか。どの手法が最善か、というよりどれが楽しいか、というところかもしれません。具体的なものは実はひらめきに委ねている部分が多いです。曲のアイデアが一睡も出来ていない日やトイレの中やジョギング中に生まれるような…ただ1年間はこのやり方でやっていこうと決めていたので、2年目はちょっと変えていくと思います。
今後コラボレートしてみたい方はいますか?
k:個人ですと、3名。

まず“しずくだうみ”。自分が主宰しているイベントに出演してもらったことがきっかけなのですが、歌だけじゃなくて纏っている雰囲気がとてもいいです。実際にコラボをどうやって実現させたら良いのかまったく見えてこないのですが、それも楽しみたいところです。

コラボというのは恐れ多いですが、同郷でもある“サカナクション”の山口一郎さんとお話をしてみたいです。

あと“the telephones”の石毛輝くん。9年くらい前、一緒に何かできたら、という話をして頂いたのですが出来なかったのが心残りで。いつか何かやりたいと今でも思っています。

transposeとしてはあくまで僕個人の意見だとWEB制作会社、アプリ制作会社の人、イベンター、小説家、映画監督、舞台などに何かアクションを起こしたいと思っています。


k-over プロフィール:
http://transposejp.blogspot.jp/p/blog-page.html

transpose:
http://transposejp.blogspot.jp/

インタビュー/テキスト sabadragon(@sabadragon)

2015.8.29 12:14

【INTERVIEW】
E.P.『透明コンプレックス』/ しずくだうみ、吉田仁郎

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自称「闇ポップ・シンガー・ソングライター」のしずくだうみが、3rd E.P.『透明コンプレックス』をリリース。弾き語り要素を前面に出し、「闇ポップ」な歌詞が際立つ作品に仕上がったという本作は、ライヴ定番曲や新曲まで彼女の魅力が凝縮された4曲が収録されている。前作に引き続きレコーディングやアレンジを担当した吉田仁郎としずくだの2人に、制作過程や新作収録曲のこと、そしてPVに仕込んだというメタファーなどについて語ってもらった。

スタジオでも、歌って去っていくだけって感じで。

今作も、前作『泳げない街』と同じく、録音とアレンジを吉田仁郎さんが担当しています。
吉田仁郎(以下、仁郎):前作はバンド・アレンジがメインだったんだけど、今回はそもそも、そんなにアレンジに手をつけるなと言われていたんですよね。

しずくだうみ(以下、しずくだ):今回は、弾き語りメインの音源にしたかったんですよね。

仁郎:「さようなら」は前作に近い感じでバンドっぽいアレンジにしているんですけど、それ以外は少し音を入れるくらいにしていますね。

だうみさんも一緒にアレンジを考えるんですか?
仁郎:全然ないよね。スタジオでも、歌って去っていくだけって感じで。

そこは、仁郎さんを信頼している?
しずくだ:めちゃくちゃ心配ですよ(笑)。でも、頭の中にあることを言葉にするのが下手くそなので、自分が思ったものとぜんぜん違うことが上がってきてしまうことがあるので、言ってもしょうがないかなと。

一度ゆだねてから考えようと。
しずくだ:それで上がってきたものに、少しいじって変えてもらったりしています。

頭のなかに、最初からアレンジが明確にイメ-ジできている曲もあるんですか?
しずくだ:「さようなら」はわりとガッチリとアレンジのイメ-ジがあります。

仁郎:あるんかい!初めて聞いたわ(笑)。

しずくだ:でも、ほかは本当にないというか、極端に言えば鍵盤だけでいいと思っているので。「ゲーム」なんかは特に、自分が弾き語っているときの印象が強いんですよね。

でも、ポップ圏の人たちには見向きもされないんですよ。

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「ゲ-ム」はライヴの定番曲になりつつあると思うんですけど、いつ頃作ったんですか?
仁郎:『泳げない街』がでるちょっと前ぐらいの、一緒にライブとかをやり始めた頃にサウンドクラウドにアップされたよね。

しずくだ:1年ぐらい前ですね。

だうみさんは「闇ポップ」を標榜していますけど、この曲が一番、闇とポップのバランスが絶妙だと思うんですよね。
しずくだ:でも、ポップ圏の人たちには見向きもされないんですよ。

仁郎:そうなの!?

ポップ圏というと?
しずくだ:超J-POP好きみたいな人たちがいるようなライブでは、一ミリもかすらないのでやらないです。

逆に、そういう層に好評な曲は?
しずくだ:「水色」は万人受けしますね。あとは「夜の海の夢」や「いじわるなきみのこと」ぐらい。「ゲ-ム」とか「血のインクといちょうの木」は受けが大変よろしくないです。ただ、高円寺とか下北界隈の人には受けるんですけど。
仁郎:それって、どこで判断されてるんだろうね。曲や音楽的な話じゃなくって、歌詞の話なのかな。

弾き語りなので、歌詞は大きいと思いますね。
しずくだ:そうですね。だから、イベントによってやる曲は全然変えますね。

全然知らない人には普通にきれいなPVだなと思って見てほしいんですけど、「この花は…この小物は…」って、見る人が見たらわかるようになっているんです。それで、落ち込んでほしいですね。

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今回は、だうみさんの曲のなかでも、闇寄りのものが多いですよね。
しずくだ:闇推しです。J-POP寄りの場所では売れない曲が入っています。

それは弾き語りメインのアルバムにしようとしたから、自然とそういう曲が多くなったんですかね。
しずくだ:なんか、前回はわりと人に「これを音源にしてほしい」と言われたものだけを選んだんですよ。だから私の主観がなかった。

仁郎:主観で選んだら闇になったと(笑)。「さようなら」は”THE だうみ”だよね。曲も歌詞も、だうみの王道って感じ。

しずくだ:「夜の海の夢」に匹敵するぐらいの。

PVも、悲しげな雰囲気ですよね。
しずくだ:わかる人にしかわからないようなメタファ-をたくさん仕込んだので、頑張って見つけてほしいですね。私を嫌いな人に、むしろ見てほしいです。そういう人にしか、わからないような仕掛けがいっぱいあるので。

メタファーというのは?
しずくだ:全然知らない人には普通にきれいなPVだなと思って見てほしいんですけど、「この花は…この小物は…」って、見る人が見たらわかるようになっているんです。それで、落ち込んでほしいですね。

そんな仕掛けがあったとは(笑)。そういうことは、だうみさんの活動の原動力でもあるんですかね?
しずくだ:私は、もちろん応援してくれる人の救いになりたくてやっているのはもちろんですけど、私を嫌いな人に向けて活動している部分もあるんです。各メディアにニュ-スやインタビュ-を載せたりすることで、なんやかんや目に入ってしまう存在になって、「あ-嫌だなぁ」って思われるようになって、「あ、PV出したのか。ちょっと見るか」ってなったら「グサ!」ってなるのが理想ですね(笑)。

インタビュー/テキスト:前田将博
撮影:箪笥


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『透明コンプレックス』/ しずくだうみ
6/13リリース
CD:
ライブ会場・一部店舗で流通
デジタルDL:
ototoy
通常(16bit/44.1kHz / mp3)
http://ototoy.jp/_/default/p/53452
ハイレゾ(24bit/48kHz)
http://ototoy.jp/_/default/p/53452

【Track List】
1. ゲーム
2. 血のインクといちょうの木
3. いじわるなきみのこと
4. さようなら
http://szkdumi.wix.com/3rd-ep


2015.6.24 7:21

【INTERVIEW】さとうもか


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さとうもか。
現在ネットのdiggerたちをそのポップセンスと確立されたスタイルで魅了しているアーティストである。
私自身もどういうきっかけで彼女の音源にたどり着いたかははっきりと覚えていないが、ほぼ同時期にtwitter上で私を含む複数のdiggerたちが彼女の音源に声をあげはじめた事を覚えている。

それだけの存在感でありながら情報が少なく、当初岡山在住のソロで活動をしている方らしいという情報しか手元になかった。

そんな折、彼女が5/27に下北沢のmona recordsでライブを行うという話が耳に入ったため有給をもぎとり彼女のライブを見に行くとsoundcloudの音源からただよう世界観をそのままに、しかし想像していた以上に「さとうもか」という個性をまとったアーティストが存在しており、彼女の音源に惹かれたdiggerたちのアンテナの正しさを裏付けていた。

ライブ後に色々とお話をさせていただいたが、話をしていくうちに次から次へと質問が浮かびとても短い時間では全てを消化できないと思いその場でインタビューのオファーを申し込んでみた。

自分で曲を作れば、自分好みな曲が作れるんじゃないかな?と思ったので やってみようと思いました。

まずは自己紹介をお願いいたします。
さとうもか(以下「さとう」):さとうもかです。もうすぐ21歳になります。よろしくお願いします。
「さとうもか」というお名前は本名ですか?ステージネームだとしたら由来を伺ってもよろしいでしょうか?
さとう:ステージネームです。由来は小学校の頃に大きくなったらバンドをしようと思っていて、その時考えていたバンド名が「モカ・レモン」だったので、もかはそこから。さとうは本名からとりま した。
音楽活動を始めたのはいつ頃でしょうか。
さとう:初めて1人でギターを弾きながら歌ったのは高校3年生です!それまではバンドやユニットなどをしていました。
そのバンドやユニットでは、それぞれどのような方向性の音楽をやっていましたか?
さとう:バンドの時は、特に決めていなかったのですが、女の子っぽいロック系で、ユニットではネオアコースティック系です。
作曲を始められたきっかけはどのようなものでしたか。
さとう:自分で曲を作れば、自分好みな曲が作れるんじゃないかな?と思ったので やってみようと思いました。
mona recordsでのライブ拝見しました。ガットギターの音の 響きが印象的でしたが、以前からガットギ ターを使用されているんですか?
さとう:2年前くらいから使っています。たまたま、友達が楽器屋さんへ行くのについて行ったのですが、気づいたらなぜか私がギターを買っていました。優しい音がお気に入りです!
ネックを立てて持つ スタイルが印象的でしたが、どのような環境でギターを覚えたのですか?
さとう:まわりにギターを弾いてる人がいなかったので独学です。コードはほぼ読めないので、押さえてみて合う音を弾いていたら、ボサノバっぽいと言われるようになりました。ネックを立てているのは、多分弾きやすいからだと思います。(言われるまであまり意識したことありませんでした。笑)

今作は私の書いてた日記帳のようなものになっていると思います。

今回の『velvet teens』では、ベース、パーカッション等のメンバーが参加されていますが、前作と比べて制作上どんな所が異なりましたか?
さとう:前作は私の中では美術の作品の展示会のようなものだと思っていて、今作は私の書いてた日記帳のようなものになっていると思います。色々な楽器の方に協力して頂き、1番予想外になって感動したのが、アルバムの1番に入って いる「ドラマチックじゃない」です。
歌詞の物語性が非常に高いなと思いつついつ聴いていますが、どのようなところからインスピレーションを受けて作詞をされていますか?
さとう:いつも歌詞を考える場所は、大体電車の中です。答えのないようなことをぐるぐる考えたり、過去の思い出を思い出すことが好きなので、そういう事や、何か忘れたくないと思う気持ちがあれば、なるべくメモをするようにしています。
普段はどのような場所でライブを行っていますか?
さとう:普段は、岡山のライブハウスやカフェが多いです。旅館やゲストハウスなどでも行なったことがあります。

ディズニー音楽にはとても影響をうけている気がします。

過去にどのような音楽を聴いてきましたか?また、現在はどんな音楽 を聴くことが多いですか?
さとう:小さい頃は、ディズニー音楽や両親の影響で Earth wind & fireやQUEENなどをよく聴いていました。中学生くらいからジャズやネオアコ系の歌をよく聴くようになり、高校の時はPredawn、YeYe、LOVE PSYCHEDELICO、チャットモンチー、荒井由実にハマっていました。短大に入ってから、ボサノバや、まわりの影響で 色んなジャンルの洋楽を聴くようになりました。現在は、INNOCENCE MISSIONというアーティストにハマっています。
さとうさんの曲には少しフレンチポップ的な要素を感じますが、ご自身の音楽的なルーツはどの辺りだと思われますか
さとう:ディズニー音楽にはとても影響をうけている気がします。
音楽以外のプライベートな時間で一番時間を費やしているものはなんですか?
さとう:寝ることだと思います。いつも眠そうだとよく言われるので、顔に出ないよう気をつけたいです。(笑)
目標となるミュージシャンや、今後音源制作・ライブなどで関りたい と思うミュージシャンはいますか?
さとう:INNOCENCE MISSIONの カレン・ペリスさんのように、優しいけど存在感のある、誰にも真似できないような歌を歌えるアーティストになりたいです。
今後の目標などがあればお願いいたします。
さとう:ギター、上手くなりたいです。
本日はありがとうございました。
さとう:ありがとうございました。


現在彼女の音源はsoundcloudのアカウント(@satomoka)と、既発のEP『ZZZ』、mona recordsのライブから販売をはじめた2nd EP『Velvet teens』で聴くことができる。
最新のEPである『Velvet teens』にはsoundcloudにアップされている「Girl of 31!」「左耳のネコ」も収録されているが、収録されている音源はCD-R用にカネノブミツル、せるか他のゲストミュージシャンを招いて新たにレコーディングされているためネット上で聴ける音源とは違った仕上がりとなっている。
手元において聴き比べてみるのも面白いと思う。
こちらは現在ライブ会場の他、下北沢のmona records(http://www.mona-records.com/shop/item/velvet_teens.php)、HOLIDAY! RECORDS(http://holiday2014.thebase.in/items/1621685)で購入が可能。
※追記 2015年6月20現在、mona recordsでは『Velvet teens』は完売、再入荷待ちとのことです。
※再追記 2015年6月21現在、mona recordsで『Velvet teens』を再入荷しています。

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『Velvet teens』/ さとうもか
フォーマット:CD-R
価格:¥500

【Track List】
1. ドラマチックじゃない
2. Girl of 31!
3. 誕生
4. Bittersweet Memory
5.左耳のネコ


インタビュー/テキスト sabadragon(@sabadragon)

2015.6.20 12:00

【INERVIEW】アルバム『5th life』 — blueberry, very blue —


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indiegrabが発足当初から、sabadragon個人で言えば1995年頃からなので20年に渡ってフォローし続けているポップユニット・blueberry, very blue。

細かい情報は以前書いたレビュー(http://indiegrab.m47.coreserver.jp/indiegrab.jp/wordpress/?p=4164)に任せるが、彼らは1/17に実に18年ぶりとなるニューアルバム『5th life』をフィジカルリリースした。

5th-life表紙


『5th life』blueberry, very blue
JAN コード:4580481391775
CD:¥1,500(税別) / デジタル DL(開始時期:TBA):¥1,500

取り扱い店舗
・奈良県 奈良市 レコードショップ ジャンゴ
@djangorecords
・ココナッツディスク吉祥寺店
http://coconutsdisk.com/kichijoji/
・sugar-frost Shop
http://sugarfrost.jimdo.com/english/shop/#!/Other-Japanese-Indiepop/p/39683740/category=9517009
・タワーレコード・広島店、京都店で取り扱い予定
(詳細後日発表)

・アルバムトレーラー



このアルバムは正直それまでのsoundcloudの音源を聴いて勝手に持っていた期待値を軽々と越えていく作品であり、この作品がどのように作られたか、18年という時間はこの作品と彼らにとってどのような存在だったか、それを知る必要があるのではという興味と個人的な衝動から彼らにインタビューを申し込んでみた。

自分たちが生きているということを買ってくれた人に改めて教えてもらえた感があります。

簡単な自己紹介をお願いいたします。
マスイカオル(以下マスイ):blueberry, very blue、vocal/accordionを主に担当のマスイカオルです。

サカモトケンジ(以下サカモト):その他担当のサカモトケンジです。
アルバムの完成とリリースおめでとうございます。
18年ぶりのアルバムとの事ですが、完成させてみたご感想をお伺いしてよろしいですか。
サカモト:ありがとうございます。延々と続いた長い夢 がやっと終わり、今は寝ぼけてるような感じです。まぁ~・・・大変でした。

マスイ:夏から冬まで、家の外壁工事とがっつり並行して家で録音していました。感想ですが、終わって一番思ったのは「安心」です。
アルバム発売から1ヶ月程が経過しますが、手応えの方はいかがでしょう。
サカモト:今は、出せただけで満足してます。
こんな時代にCD買ってくれる人がひとりでも居たということでは大満足です。それが手応えです。自分たちが生きているということを買ってくれた人に改めて教えてもらえた感があります。
また何処かで立ち止まることもあるかも知れないんですけど・・・忘れずに喜びをblueberry, very blueなりの形にして返していきたいです。
マスイに借りっぱなしのCD群がある自分が言うのも何ですけど。

マスイ:奈良ジャンゴレコードさんまで足をお運びいただいたり郵送のお手続きを踏んでいただき聴いてくださった皆様に一緒にまだ作りつづけている気持ちです。続くワクワク感です。ありがとうございます。
今回はどのような経緯で活動を再開されようと思ったのですか。
また、アルバム制作の話が立ち上がったのはいつ頃ですか。
マスイ:1999年に発表する予定が、目に見える動きや聴こえる形状としては今になりました。
アルバム制作は 4th fruit を発表後の自然な流れの先に予定する気持ちとしてありました。生活を営む中で、それだけの力を注ぐのが困難だったということです。

サカモト:この十数年間、マスイはライブを、ぼくはCDを、と言ってたと思います。鶏が先か卵が先かみたいな話を(笑)。
解散宣言もせず長い間放置した形で、1999年発表予定と謳ったフルアルバムも未完のまま。この中途半端な形をどうにかしたいとずっと思ってました。もういい加減にするべきだ、と日々消費されていく時間や衰えていく自分に楔を打ちたくて、まぁ打った訳です。
なので自分自身、これを復活とか再開と呼ぶのは少し違う気がしています。けじめと言った方が近いです。これからどうしていくのかの約束が出来るほど信頼されているとは思いたくないし調子に乗りたくもないですから。
デジタルリリースが数多く見られる時代に「CDでのリリース」をされた意図はどのような所にあるのでしょうか。
サカモト:音を楽しむという行為とは?ってとこになりますね。
ecoだ!無駄を省くのだ!時代の流れだ!技術革新だ!シンプルイズベストだ!と言いながら、例えばクルマのハンドルでいうところの「あそび」部分まで削いでいってるような、それくらいの勢いで何かが失われていってるような、失われてないようなよく解らない感じが今の時代なのかも知れません。
電子にだって質量はある、ただ生身の人間でそれを感じ取れる人はおそらくいない。感じ取れたからといってどうなのだ?必要ないじゃん!?みたいになる。ビニールレコードの溝を針がなぞるだけで感情が左右される仕組みすらぼくは解ってないんですけど、針の気持ちを思うと(笑)・・・。まぁ、装置全体が力を合わせて音楽を 送ろうとしているその姿はとても無駄だと思えないんですよね、ぼくはですよ。回るものへの愛しさと切なさでしょうか?つまり、回るもの、回す仕組みってエネルギーを発生させたり消費したりしてるってことです。惑星の自転や公転からビニールレコード、テープレコーダーまで。回転によって発生するものがエネルギーだとしたら音楽もエネルギーの形でしょ?だから物理にこだわってみたい、こだわってもあげたい、と。
ダウンロード販売は、blueberry, very blueの音が未来に残るためのもうひとつの手段というか可能性です。その芽を摘む理由もないですし否定する理由でもないです。

『詞を付けるときは、何度も何度も何度も聴いて、そこに言葉が聴こえてくると作業開始となります。』
『「何度も」を強調しすぎだろ?』

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実際の制作期間はどのぐらいになりましたか?
マスイ:18年間になります。

サカモト:それまでの経緯を無視すれば約一年です。
アルバム制作はどのような形で進行したのでしょうか。
サカモト:CD制作は、ぼくの願望なのでぼくが全ての指揮をとりました。計画通りにはいきませんでしたけど。
作業の分担みたいなものはありましたか?
マスイ:相方サカモトが作った曲をもらって、マスイが詞を考える、というのが主な流れであります。(5th life に関しては、サカモトが二曲の作詞をしています。)
詞を付けるときは、何度も何度も何度も聴いて、そこに言葉が聴こえてくると作業開始となります。
サカモト:「何度も」を強調しすぎだろ?それだけ何度も聴いて詞が出来なかったということは、作曲者にとっても辛く今後の行末を暗示してると思えてならんです(笑)。
アートワークやMV等の制作もお二人でやってらっしゃるのですか?
マスイ:今回、アートワークもMVもサカモトのアイデアです。
収録されている楽曲はいつ頃作られたものになりますか?
サカモト:古くは「blueberry note」発売の頃、2曲ありました。
当時、GOD’S POP RECORDSの担当者にカセットテープで「The Forthcoming Day~やがて緑の大地~」と「Time with You Is Eternity~君との時間は永遠~」を聴いてもらってます。ボーカル入ってない状態でですけどね。ちなみに仮題はそれぞれ「DEPTH」と「THE NEW」。

暫くして計7曲出来た頃に止まってしまいましたね。詞と曲、基本アレンジ、ボーカル録音が済んだ状態です。それから7~8年前、マスイに4曲渡してまたストップ。
ここまで11曲の内、「5th life」での採用が8曲。以降、マスイに渡さず自分で温めていたのが「Sorrow to Be Over ~オワルカナシミ~」を含む2曲、そして2014年に作った「For You」となります。

「聴いてくださる方の手元に届いた時、
それ以降はその人のblueberry, very blueになります」

収録されている楽曲を聴かせていただいたのですが、過去に活動されていた「ネオアコ」というフィールドを基準としつつ、ネオアコのみにこだわらないというスタンスを感じたのですが、そのあたりはどのように意識されましたか?
サカモト:作曲や編曲に関しては1stから5thまで、思うままやって来たので特に何かの枠を意識してるとか無いですけどね。拘らないことに拘るということとも違うかなぁ。
結局、何をしたって僕とマスイが何か作るとblueberry, very blueになってしまうんだから深く考え過ぎず、自分で良いと思ったことが音になるよう頑張れば良い…とマスイには言ってますし、自分でもそうしてます。

マスイ:可愛らしく~と意識をして歌詞を書いたのは2ndカセットまで、あとは自分の書きたい言葉で作詞しました。
ネオアコとかギターポップとかロックとか、括りを意識したことはありません。ネオアコ好きです。ただ、意識すると途端に難しい。
あまのじゃく、というより自然でないと、何をするのも困難で、実際日々困ってばかりです。
先行してリリースされた「オワルカナシミ」と「For You」ですが、こちらはアルバム収録にあたってリマスタリングされていると伺っていますが、リスナーが聞き比べるとしたらどの辺りに注目して欲しいです か?
サカモト:「オワルカナシミ」は、制作ソフトを他と統一したこともあり少し奥行き感が加わってます。アコースティックギターも手弾き、加えて目印としてベースのフレーズをちょっとだけ変えてあります。「For You」は、マスイのボーカルとアコーディオンは録り直し、アコースティックギターは最後のストロークを少し後ろへ移動させたりしてます。他、細々と調整してるんですけど大きくはこんなところです。
お二人が以前活動していた90年代後半と現在とではインディーミュージックのシーンはどのように違っていると考えていますか?
サカモト:違っているんですか?違っている前提だと、予想になってしまいますが・・・プロとの差が縮まっているような気がしてます。

マスイ:Twitterを始めて、昔にblueberryの音楽を聴いてくださっていたり、どこかで出逢って聴いてくださった方々のお話が聞こえる世界は、とても凄いです。
カセットアルバムに同封した葉書を返してくれた方々、ライブを見てくださってアンケートに記入くださった方お一人お一人に手紙や葉書でのお知らせを送らせていただくこと。
インディーミュージックのシーンの話、ではなかったですね。すみません!
サウンドクラウドやTwitterなどのきっかけがたくさんあるので、自然な流れでこれから知っていければと思っています。
現在のシーンの中でblueberry, very blueはどのような存在を目指したいと思っていらっしゃいますか?
サカモト:blueberry, very blueが許されるのなら自分だって許されるだろうと思ってもらえるような存在が良いですね。基準というかボーダーラインというか(笑)。
ほら、よく言うフリッパーズ以前以後みたいな感じ。

マスイ:blueberryの私は何も目指してません。
ただ何か少しずつ、自分の先にblueberryとしての未来を置いていけるような気持ちで常にいられたらと思います。
このアルバムはどのような層の方に聞いて欲しいと思っていますか?
サカモト:動くターゲットを狙い撃ちできるほどの知力も体力も無いと思ってますよ。作っている時は、これでも攻めの姿勢バリバリなんですけどね。発生させるということが攻めであり根本であり最優先事項だと思ってます。
例え多くの人の目に止まらなくても作って出しさえすれば残る可能性があるのだから、いつか誰かのどこかの未来に繋がるんではないか、と。

マスイ:特にありません。たまたま出逢って、気になれば、聴いてください!
そのアクションに、ありがとうございます!
アルバムの中でリスナーにぜひ聴いてほしいところがあればお聞かせください。
サカモト:とりあえず一曲目の1分30秒くらいは越えて聴いていただければ・・・。

マスイ:特にありません。
聴いてくださる方の手元に届いた時、それ以降はその人のblueberry, very blueになります。
最後に今後のライブや音源などの活動予定などがあればお聞かせください。
サカモト:ライブは、最低でも1回はやります。そのつもりではいます。これは僕が、CDを作ると決めた際マスイに提示したことでもありますし。
後は過去音源を何らかの形でもう一度、リメイクして発表とか。

マスイ:ライブはいつか。
私は歌ったり演奏することがとても好きなんだと、昨年6月のアコースティックライブ(b-flowerを応援するムクドリの会主催のDJイベント)に出演させていただいた際に、強く思い出させてもらいました。
ライブが自分に出来るかどうかということより、それをやってみたかったのです。

1st~4thのカセットアルバムの曲が、儚い存在にならぬように、残す作業はblueberryが終わるまでに行うこと。

試していないことがたくさんあると思うので、ひとつずつ、する気持ちでいます。普通に生活をしながらなので、うんと先の予定ですが。
本日はありがとうございました!

以前のレビューで書いた「彼らの本気度」と、今回の冒頭で書いた「期待値を軽く上回る」という言葉の溝が彼らの言葉によって次々と埋まっていく手応えを感じた。
そう、このアルバムに込められていたものは本気度だけでなく、彼らが普通に生活をして時を過ごしつつそれでも歩みを止めることのなかった18年間という重みが込められている。
その辺りについても色々書いてみたいが、それを書くと不必要に長くなってしまうのでまた機会を作っていきたいと思う。
今は彼らの作った重みをポップミュージックとして昇華してしまったこのモンスターと言っていいアルバムに酔いしれる。
そういう時期なのだと思う。

そのモンスターと言っていいアルバムは、現在奈良県のレコードショップ・ジャンゴに加え、2月末より東京のココナッツディスク吉祥寺店で取り扱いが始まり、国外向けにsugar-frost Shopでの扱いも開始された。
またタワーレコードでの扱いも予定されているという。
過去の彼らが気になる方も未聴のポップミュージックに想いを馳せる方も是非手に取ってみてほしい。

インタビュー/テキスト sabadragon(@sabadragon)

2015.3.1 11:25

【INTERVIEW】Theムッシュビ♂ト (1/2)




01

Theムッシュビ♂ト
大阪を中止として活動するシンガーソングライターにして、「J-POP」を中心として扱うネットレーベル「ポジティヴレコーズ」主宰。
他にも近年ではロックバンド「BaaBooFAZ」のキーボーディスト、女性シンガー「沙糸しろたま」のプロデュースやアイドル「吉野なお」への楽曲提供等、その活動は多岐に渡っている。
その彼が、アルバム「キラーチューンズ」以後初となるEPのリリースを控えていると聞き、インタビューを申しこんでみた。

wecannotfly

フライングEP: we can(not)fly』
1.ソニックウェーヴ/Sonicwave
2.翼をください/You Can (Not) Advance
3.スタンドアローン/Stand Alone
http://mayoware.seesaa.net/article/414009048.html
アートワーク:中川一

つけてみそかけてみそ


EP『フライングEP: we can(not)fly』

sabadragon:

おまたせいたいたしました。

Theムッシュビ♂ト:

いえいえ!

sabadragon:

まず簡単な自己紹介をお願いいたします。

Theムッシュビ♂ト:

TheTheムッシュビ♂トと申します。シンガーソングライターです。
トラックメーカー、ネットレーベル「ポジティヴレコーズ」主宰、ロックバンド「BaaBooFAZ」のキーボーディストという顔も持っていますが、この名義で活動するときの第一義はシンガーソングライターです。
好きなアイドルは菅谷梨沙子さん(Berryz工房)です。よろしくお願いします。

sabadragon:

まずは今回のEPの完成おめでとうございます。

Theムッシュビ♂ト:

ありがとうございます。

sabadragon:

今回のEPは、迷われレコードさんからのリリースとの事ですが、この制作はどの辺りからスタートしたものなんですか?

Theムッシュビ♂ト:

2013年秋にCDアルバム「キラーチューンズ」をリリースして、そこから暫くは燃え尽きじゃないですけど、CDを売ることを考えてて新作に歩を進められなかったんです。
その間に、自分がプロデュースした沙糸しろたまの「君に届け」をリリースしたり、BaaBooFAZのレコーディングとリリースで動いたりしていましたが、TheTheムッシュビ♂ト本体は「菅谷梨沙子レコーズ」からの企画盤「La Puclle/Le Soleil」しかリリースしてなくて。

でも、そうしているうちにどんどん停滞してきて、メンタル的にかなり落ち込んで来てたんです。それもあって、7月頃、心機一転する為に「今から新しいアルバムを作ろう!まずはリードトラックをネットリリースしよう!」と決めて着手しました。

迷われレコードさんからのリリースにしたのは、今までも沢山リリースさせて頂いたし、自分の原点の一つであるレーベルなので、そこからまた始めたかったんです。
単純に迷われレコードさんが好きですしね(笑)

sabadragon:

では今回のEPは新しいアルバムのリードトラックという立ち位置という事ですね。

Theムッシュビ♂ト:

そうですね。
「ソニックウェーヴ」がアルバムのリードトラックです。

アルバムは今年中のリリースを目指して作り始めていますが、「ソニックウェーヴ」ができるまでがほんとに長かったです。
すぐにできると思って、その時点で中川一さんにジャケットイラストをお願いして、7月中にはジャケットが上がってたんですが、結局かなり寝かせてしまいました。
「ソニックウェーヴ」が実際に楽曲として完成したのは10月でした。
そこからミックスやマスタリングなどが仕上がったのが、エンジニアを担当したミンカパノピカ鋭司さんのスケジュールの関係とか色々あって、先月頭になったんですけど。

この曲名は、一番最初に作ったバージョンが「音より速く君の元へ」みたいな歌詞で、そこから取ったんですが、そこから完成までに3回くらい、歌詞もメロディもアレンジも全部消してリセットしています。
なかなか納得できるものにならなくて、その間は本当に苦しくて、これができなかったら音楽辞めようってとこまで思い詰めたり。
それで、10月に完成したこのバージョンについてもそのリライトの痕跡として「ソニックウェーヴ」という曲名を残したんです。

sabadragon:

以前の楽曲と比べてもかなりモードチェンジしているので大変だったと思います。
そのモードチェンジのお話になりますが、今までの活動を見ていると初期の頃の音源から比べると々ポップな方向へと向かっていましたが、ここに来てその方向性が加速してると感じました。これは意図的なものでしょうか。

Theムッシュビ♂ト:

ありがとうございます。
ここ2年くらいで「ポップミュージックであること」についてかなり自覚的になりました。

ごく初期のスカムな方向性は、今にして思うと単なる逃げでした。
覚悟と信念を持ってそういう音楽をしているアーティストの方々は尊敬しますが、自分にはそういったものがなかったなと今は思います。
それと、やっぱり聴く人が楽しくなったり明るい気持ちになったりするもので在りたいなと思っていて、今回の作品では復活第一弾ということもあり、やりすぎなくらいポップにしようと思いました。
その辺り、Berryz工房にハマったことも一因かと思うんですが、やっぱりわかりやすいポップミュージックっていいなあと。

sabadragon:

「やりすぎなくらいポップ」は名言ですね(笑)
そのあたりは「ソニックウェーヴ」のイントロの部分から既に漂ってきています。
そのような方向に決定付けたものは何だと思われますか?

Theムッシュビ♂ト:

ありがとうございます(笑)
簡単に言えば「開き直り」じゃないかと思います。
僕はラブソングばかり作ったり歌ったりしているんですけど、そんなスタイルでありながら、昔から「恋愛弱者」っていう意識が強くて、恋をする度に自分が気持ち悪かったり、「相手にされてない感」を感じたり、「どうせ失恋するに決まっている」って思い込んだりして、いつも勝手に惨めな気持ちになっていたんです。
今まで一度も自分から好きになった人と男女の関係になったことがないですし。

前作「キラーチューンズ」のリードトラック「FIT」は「男は須く大事な人の王子様にならなければいけない」という歌詞で象徴されるように、そんな自分が「好きな人の為にカッコ良くなろう」と一歩踏み出した曲で、当時としては大きなブレイクスルーだったんですけど、そこから時間も経って、結局「カッコ良くないといけない」という意識が自分を縛って、余計に惨めになってしまったんです。外見とかだけの話じゃなく。
そんな中、EditerでDJの3106さんに勧められた清 竜人さんの「MUSIC」を聴いたんですけど、このアルバム、男性ボーカルで電波ソングとかアイドルソングみたいなのやってて、凄く気持ち悪いんですよ。褒め言葉ですけど。でも、凄く泣けるというか芯から救われたというか。今回の作品の音楽性の種明かしみたいな話なんでこの話はあんまりしたくなかったんですけど(笑)、「キモくていいんだ」と開き直って、カッコ付けることもやめようと思ったきっかけがこのアルバムだったんでそこは正直に白状します(笑)
それでまあ、「#ムッシュキモい」を経て「許してにゃん!」と言えたっていうか。

sabadragon:

なるほど。
理想的な自身ともっと自然な状態の自身のギャップを埋める作業とでもいうんでしょうか。
そのせいかもしれませんが、今作はムッシュさんの作品の持つ「内面の吐露」というテーマ性を保ってはいるんですが、従来の詞との大きな違いとして、明確な対話の形式になっていますね。

Theムッシュビ♂ト:

そうですね。
「FIT」が「理想の提示」だとしたら「ソニックウェーヴ」は「自然な状態の肯定」ですね。
「キモくて良いんだ!」ってブレイクスルーしたときに、以前のような、レトリックが多くて難しい言い回しを多用した歌詞って一見カッコ良いけど相手には伝わりにくいなと気づいたんですよ。
「キモくて良い」ってことは「素のまま相手にぶつかっていける」ってことで、それが「対話の形式」になることを促したのかなって思います。
できるだけ素の言葉で相手に伝えよう、「自分にしかわからない言い回し」は極力避けよう、と。
というか、この曲の歌詞については作詞したって感覚がないです。好きな女性への想いを文字数も何も考えず思いつくまま勢いで書いただけです(笑)

「私信」としてのEPリリース


03


sabadragon:

「好きな女性」って部分に突っ込んでいいですか?(笑)

Theムッシュビ♂ト:

はい(笑)ちょっと怖いですけど、話の流れ的に外せないですよね。
ちなみに、片思いです(笑)恋人とかでは全くないです。

sabadragon:

ここまでのインタビュー内容を総合してざっくりと言うと今回の「ソニックウェーヴ」は「好きな女性」への気持ちと彼女に対するパーソナルな語りかけ…という楽曲という事でよろしいですか?

Theムッシュビ♂ト:

そうですね。
EP全体がそうですけど、「ソニックウェーヴ」は特に「私信」という意味合いが強いです。
勿論、それをリリースしているので「私信という体のエンターテイメント」として捉えて頂いても構いません(笑)

sabadragon:

ただ、その「私信」の部分は今までにない「ポップ」な部分に明確に貢献してますね。
先ほどのお話とも絡みますが、「あるべき」である視点から聴き手というものを上手に認識した強みでしょうか。
J−POPというテーマ性から言えば今までで最もそのジャンルにコミットした作品かと思います。

Theムッシュビ♂ト:

ありがとうございます。
うーん。多分ですけど、「好きな人に聴いて欲しい」という気持ちに特化して、作品の焦点を今までにないくらい絞り込んだことが功を奏したんじゃないかと思います。
「誰に一番に聞いて欲しいか」って自問して、その「その子にだよな」って自答して。
歌詞もメロディもサウンドの方向性も全部「その子が気に入ってくれて、聴いたときに笑顔になるもの」を志向したんです。
勿論、実際はドン引きかもしれませんし、音楽は「人の心を癒したり元気付けたりするもの」であると同時に「暴力装置」であるとも思ってて、それを相手に向けてしまうことに対して一抹の不安というか怖さもありますけど。
ちなみに、ドン引きで思い出したんですが、「ムッシュキモい」という台詞はインディーアイドルとして活動中の吉野なおさんにやって頂いたのですが、その録音について「(ムッシュを)キモいと思ってないから難しい」と言われたので、自分のガチでキモいエピソードをこっそり教えました。
そしたら、「それはほんとにキモい」ってドン引きされて、結果「できました!」と(笑)
あと、曲中に唐突に「つけてみそかけてみそ」のCMを入れたのは、その子が聴いたときクスッとでもしてくれたらいいなあと(笑)

sabadragon:

その「つけてみそかけてみそ」は確か製造販売元にコンタクトを取られたとうかがっているのですが、その辺のエピソードについてお願いします。

Theムッシュビ♂ト:

「つけてみそかけてみそ」は愛知県を中心に販売されている調味料で、愛知では知らない人はいないくらいメジャーな存在なんですが、その製造販売元であるナカモ株式会社様に商標使用許諾を求めたところ快く許諾して頂きました。
この「つけてみそかけてみそ」は僕と「好きな人」との個人的なエピソードというか、まあそんな感じのアイテムなんですけど、そういった極私的な「おふざけ」にオフィシャルな「お墨付き」が付くことで、ある種の「本気度」をアピールできるかなと(笑)あとは、そこからCMソング…なんて展開も妄想しました。完全に妄想ですが、終止形で終わるメロディなので歌詞を改変したらほんとにCMソングっぽくなります!!(笑)
ちなみに、「許してにゃん」はももちこと嗣永桃子さんからの許諾を貰い忘れてました!不覚!

sabadragon:

実際にCMソングとして提案してみるという予定は?(笑)

Theムッシュビ♂ト:

反響を見てから、ですね(笑)

sabadragon:

インディーから企業タイアップというテストケースになると面白いと個人的には思いますね。

Theムッシュビ♂ト:

そうですね。
そう言った意味でも実際にタイアップしてみたいです。
どう道筋を作ったらいいかわからないので、ちょっと考えてみます。
商標使用許諾を得た時点で道筋の第一歩を歩み始めてる感もありますけど(笑)

sabadragon:

上手くいくことを心から願いますね(笑)
その部分に関して曲中に語りが入る事に80’sポップス的なものを感じますが、これは80’sポップスへのオマージュなのでしょうか。
また、そのあたりのポップミュージックに思い入れなどがあれば。

Theムッシュビ♂ト:

あ、それは言われて初めて気づきました(笑)
80年代ポップスと言うより、意識したのはミュージカルですね。
ただ、思い入れや詳しい知識は乏しいですけど、やっぱり黄金期のポップスの、完成度の高いエンターテイメント性は目指したいところです。
あの頃のポップスは、歌手も作詞家も作曲家も一流の職人だって思いますし。

>>「【INTERVIEW】Theムッシュビ♂ト (2/2)」に続く

2015.2.15 1:54